2020(04)
■データと手順で人が為す
++++
「でもまさか、玲那から「バスケが見たい」なんて誘われるとは思わなかったな」
「あまりスポーツ観戦の経験もないし、1人で来るにはハードルが高くて。でも、付き合ってもらってありがとう」
今日のデートはアクティブにスポーツ観戦。それもバスケットボール。最近では玲那の好きな特撮系の作品を鑑賞してばかりだったから、行くのが体育館でもとても広く感じるし、視野がぱあっと広がった感じがある。
だけど、謎なのはどうしてバスケだったのかというところだ。これまで鑑賞した作品の中にもバスケットボールを扱った物はひとつもなかったし、現在進行形でバスケマンガにハマっているということでもなさそうだ。きっかけがわからなさすぎる。
「陸はバスケの経験は」
「体育の授業でやったくらい」
「まあ、そうだよね。って言うか陸って中学とか高校で何の部活やってたの?」
「中学は剣道で、高校は陸上。トラックで」
「へえ、そうなんだ。どっちも似合うね」
「だからさ、MBCCに入るだろ。果林先輩があの千葉さんって知った時には真面目に驚いたよ。何で陸上やってないんだって。まあ、敢えて触れることでもないだろうから聞かないし、今更聞けないけどさ」
「果林先輩って陸上界ではそんなに凄い人だったの? 元インハイ選手だとはチラッと聞いたけど」
「中学高校の100メートルと200メートルの向島記録は今でも全部あの人の記録だとは」
どういう進路に進むのかというのは本人が決めることなので、周りがどうこう言うことでもない。ただ、果林先輩が陸上からラジオにっていうのは衝撃の転身だ。とは言え、ラジオはラジオで心地よく聞けてしまう声や話術を持っていたので天は二物を与えてしまったのかと思う。
アナウンサーとしてのテクニックという点で言えば、果林先輩は高崎先輩からビシバシ扱かれたという風に言っていた。そして俺たちに対する果林先輩からの指導も、たまにピンポイントで痛いところを突かれたりもしたし、その厳しさがMBCCの色なのだろう。
「そうじゃなくて、どうして玲那が突然バスケに興味を持ったのかっていう話だよ」
「学科の友達のよっちゃんがサークルでバスケやってるんだけど、その子の話を聞いて、実際に見てみたくなったんだよね」
「その、よっちゃん? どんな話を」
「スリーポイントシュートってあるでしょ。コート外側の半円の外から打つ難しいシュート」
「うん。伊東さんの彼女さんがスリーポイントシューターだって言ってたな」
「バスケロボットっていうのを大きなクラブの親元が開発してるんだけど、それっていうのはAIでシュートの軌道を計算して正確にスリーポイントを決めるっていう動作をするのね」
「なるほど、それで実際のスリーポイントがどんなものかを見るために」
「です」
何気に玲那はアクティブなので、自分の興味関心が向いた物のある所にはひょいひょいと足を運んでしまう節がある。アクティブと言うか、フットワークが軽いと言うべきか。今日のバスケにしてもバスケロボやスリーポイントシュートに対する興味だったらしい。
「だけどよっちゃんの話っていうのがそれだけじゃなくて」
「ロボットの話だけじゃなくて?」
「そう。確かにロボットは受けたボールを正確にリングに沈めるんだけど、実際に人間がシュートを打つところを見たら、男の人と女の人ではまずシュートフォームが違うんだって」
「ああ、テレビで見たことあるけど確かにそうかも。女子って両手でシュートしてた気がする」
「違うシュートフォームに、指先とか脚とか、身体からの力のかかり方も違って来る。要は、個人差だよね。だけどスリーポイントシューターという人たちは毎回生じる微妙な誤差を自分の感覚で修正しながら正確にリングに沈めていくと。機械がそれを出来るのは全く驚かないんだけど、人間はそれをどうやってやっているのかっていうことが興味深いって言って」
「よっちゃんはサークルの中で研究をしてるんだ」
「そんな感じだね。でもサークルにいるシューターの先輩たちがもうすぐ卒業しちゃうからって慌ててるような感じだったよね。何とかして記録しないとって」
よっちゃんというその人は、機械が取って代わった人間の仕事の中で、逆に機械には微妙に再現出来ない人間だからこその身体的動作に対する興味があるらしい。そしてその話を聞いてさらに興味をそそられたのが玲那というわけだ。
やっぱり、大学生活の中で何をどう研究していくのかということは早いうちから考えておいた方がいいのかな。今現在の俺はやっぱりラジオに関することになってくるんだろうけど、ラジオにどう切り込んでいくかに個性が出るんだろう。
「はー、でも思ったより楽しかったなバスケ」
「確かに、スポーツ観戦なんてテレビでしかしないもんな」
「陸さんって体育スケートだっけ」
「そうだな。玲那は何だっけ」
「アーチェリー」
「緑ヶ丘大学の体育の種目って、他の大学と比べるとちょっと変わってるらしいな。星ヶ丘は選択肢もウチより少ないらしいし」
「まあ、そうでしょう。ウチは体育施設がウリの大学なんだから。ゴルフ場が遠いってサキが嘆くくらいの広さだし」
「サキが嘆くって相当だな。でも、ゴルフか。ちょっとやってみたかったかも」
「別に授業じゃなくても打ちっ放しは使えるらしいよ。ジムとかプールもそうだし」
end.
++++
フェーズ2初年度ということで、MBCCやその他一部の箱以外はなかなか新キャラクターも出せずに小ぢんまりとやっていたのですが、ここでGREENsに布石。
あと、たまに忘れそうになるけど果林は向島陸上界のスーパースターでした。知ってる人からすれば陸上やってないのが驚きっていうレベルの。
やっぱレナのフットワークが軽すぎるんだよなあ。ナノスパの中でも屈指の軽さかもしれない。某Pさんとなかなかいい勝負になりそうな気がするよ。
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「でもまさか、玲那から「バスケが見たい」なんて誘われるとは思わなかったな」
「あまりスポーツ観戦の経験もないし、1人で来るにはハードルが高くて。でも、付き合ってもらってありがとう」
今日のデートはアクティブにスポーツ観戦。それもバスケットボール。最近では玲那の好きな特撮系の作品を鑑賞してばかりだったから、行くのが体育館でもとても広く感じるし、視野がぱあっと広がった感じがある。
だけど、謎なのはどうしてバスケだったのかというところだ。これまで鑑賞した作品の中にもバスケットボールを扱った物はひとつもなかったし、現在進行形でバスケマンガにハマっているということでもなさそうだ。きっかけがわからなさすぎる。
「陸はバスケの経験は」
「体育の授業でやったくらい」
「まあ、そうだよね。って言うか陸って中学とか高校で何の部活やってたの?」
「中学は剣道で、高校は陸上。トラックで」
「へえ、そうなんだ。どっちも似合うね」
「だからさ、MBCCに入るだろ。果林先輩があの千葉さんって知った時には真面目に驚いたよ。何で陸上やってないんだって。まあ、敢えて触れることでもないだろうから聞かないし、今更聞けないけどさ」
「果林先輩って陸上界ではそんなに凄い人だったの? 元インハイ選手だとはチラッと聞いたけど」
「中学高校の100メートルと200メートルの向島記録は今でも全部あの人の記録だとは」
どういう進路に進むのかというのは本人が決めることなので、周りがどうこう言うことでもない。ただ、果林先輩が陸上からラジオにっていうのは衝撃の転身だ。とは言え、ラジオはラジオで心地よく聞けてしまう声や話術を持っていたので天は二物を与えてしまったのかと思う。
アナウンサーとしてのテクニックという点で言えば、果林先輩は高崎先輩からビシバシ扱かれたという風に言っていた。そして俺たちに対する果林先輩からの指導も、たまにピンポイントで痛いところを突かれたりもしたし、その厳しさがMBCCの色なのだろう。
「そうじゃなくて、どうして玲那が突然バスケに興味を持ったのかっていう話だよ」
「学科の友達のよっちゃんがサークルでバスケやってるんだけど、その子の話を聞いて、実際に見てみたくなったんだよね」
「その、よっちゃん? どんな話を」
「スリーポイントシュートってあるでしょ。コート外側の半円の外から打つ難しいシュート」
「うん。伊東さんの彼女さんがスリーポイントシューターだって言ってたな」
「バスケロボットっていうのを大きなクラブの親元が開発してるんだけど、それっていうのはAIでシュートの軌道を計算して正確にスリーポイントを決めるっていう動作をするのね」
「なるほど、それで実際のスリーポイントがどんなものかを見るために」
「です」
何気に玲那はアクティブなので、自分の興味関心が向いた物のある所にはひょいひょいと足を運んでしまう節がある。アクティブと言うか、フットワークが軽いと言うべきか。今日のバスケにしてもバスケロボやスリーポイントシュートに対する興味だったらしい。
「だけどよっちゃんの話っていうのがそれだけじゃなくて」
「ロボットの話だけじゃなくて?」
「そう。確かにロボットは受けたボールを正確にリングに沈めるんだけど、実際に人間がシュートを打つところを見たら、男の人と女の人ではまずシュートフォームが違うんだって」
「ああ、テレビで見たことあるけど確かにそうかも。女子って両手でシュートしてた気がする」
「違うシュートフォームに、指先とか脚とか、身体からの力のかかり方も違って来る。要は、個人差だよね。だけどスリーポイントシューターという人たちは毎回生じる微妙な誤差を自分の感覚で修正しながら正確にリングに沈めていくと。機械がそれを出来るのは全く驚かないんだけど、人間はそれをどうやってやっているのかっていうことが興味深いって言って」
「よっちゃんはサークルの中で研究をしてるんだ」
「そんな感じだね。でもサークルにいるシューターの先輩たちがもうすぐ卒業しちゃうからって慌ててるような感じだったよね。何とかして記録しないとって」
よっちゃんというその人は、機械が取って代わった人間の仕事の中で、逆に機械には微妙に再現出来ない人間だからこその身体的動作に対する興味があるらしい。そしてその話を聞いてさらに興味をそそられたのが玲那というわけだ。
やっぱり、大学生活の中で何をどう研究していくのかということは早いうちから考えておいた方がいいのかな。今現在の俺はやっぱりラジオに関することになってくるんだろうけど、ラジオにどう切り込んでいくかに個性が出るんだろう。
「はー、でも思ったより楽しかったなバスケ」
「確かに、スポーツ観戦なんてテレビでしかしないもんな」
「陸さんって体育スケートだっけ」
「そうだな。玲那は何だっけ」
「アーチェリー」
「緑ヶ丘大学の体育の種目って、他の大学と比べるとちょっと変わってるらしいな。星ヶ丘は選択肢もウチより少ないらしいし」
「まあ、そうでしょう。ウチは体育施設がウリの大学なんだから。ゴルフ場が遠いってサキが嘆くくらいの広さだし」
「サキが嘆くって相当だな。でも、ゴルフか。ちょっとやってみたかったかも」
「別に授業じゃなくても打ちっ放しは使えるらしいよ。ジムとかプールもそうだし」
end.
++++
フェーズ2初年度ということで、MBCCやその他一部の箱以外はなかなか新キャラクターも出せずに小ぢんまりとやっていたのですが、ここでGREENsに布石。
あと、たまに忘れそうになるけど果林は向島陸上界のスーパースターでした。知ってる人からすれば陸上やってないのが驚きっていうレベルの。
やっぱレナのフットワークが軽すぎるんだよなあ。ナノスパの中でも屈指の軽さかもしれない。某Pさんとなかなかいい勝負になりそうな気がするよ。
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