2020(04)
■陽光のオーバーレイ
++++
「改めまして、あけましておめでとうございます。レイ君がまだちょっと戻らないけど、あの子新年初っ端から抜け駆けしてるしまあいいでしょう」
「でも、こうやって俺らが会議もそこそこに飯食ってたって聞いたらどーせアイツまた暴動起こしますよ、自分だけハブられたって」
「映像で想像出来るな。年末のライブの件でもブチ切れてたって話だし」
――というワケで、実家に帰省中の朝霞を除くUSDXメンバーで食事をしに来た。最初はプロさんの住んでるマンションの一室でちゃんと会議めいたことをしてたんだけど、お正月ムードが抜けきらないのかだる~っとした雰囲気になってて。
ソルさんこと塩見さんに限っては社畜キャラを裏切らずもう仕事始めが済んでいて、当たり前のように今日も仕事だったそうだ。尤も、午前中いっぱいで終わりだったそうだけど。それでも仕事が始まっているから俺たち学生よりは気も張っている感じがする。
「もしかしなくてもレイ君て俺たち6人の中では一番短気なのかな?」
「アイツぜってー俺より短気」
「確かに、部活の現役中もそれが原因で謹慎喰らったり拳割ったりしてたもんな」
「マジで俺らの代で死人が出なかったのって奇跡だよな。スガが宇部から聞いた話がガチなら、朝霞がブチ切れて日高を殺らなかっただけでアイツにもまだ理性があったんだなって感じがする」
「そう言えば、お前たちは同じ部活だったのだな。その割に随分と他人事のような話しぶりだが」
「部活の現役中はそんなに関わりがなかったんだよ。そこそこデカイ部活だから話さない奴はマジで話さないし。朝霞とはスガが班長会議でちょろっと話してたくらいか?」
「だな。その現場でも朝霞は当時の部長とやり合ってたし、班長でプロデューサーの割には短気で熱くなり過ぎて、売られたケンカをスルー出来ないのが欠点だなとは思っていた」
「ぶっちゃけそんな良い印象もなかったから、今じゃこうやって一緒に実況やったり曲作ったりしてるって全然想像もしてなかったし、昔の俺に言っても絶対信じないよなーって」
「ちょっとチータの立ち回りを褒められただけで即落ちした奴が何かを言っているぞ」
それこそ人は話してみなければわからないというのを地で行ったのがカンと朝霞だと思う。それでなくてもカンは浦和から朝霞に関する愚痴もいろいろ聞いていたから、奴に対する感情がマイナスの方に結構振っていただろうし。洋平のことも「よく朝霞とやってるよな」とはよく言っていた。
それが去年、チータというキャラクターの立ち回りやUSDXというグループ内における役割を褒められた瞬間「心の友」にまで格上げしたんだから、カンがチョロすぎるっていうのもあるけど仲良くなるのも一瞬なんだなと思った。人間関係なんか何がきっかけで誰がどうなるかわからないなと。
「そう言えば、朝霞は新年早々初日の出を見に山に登っていたのだったな」
「俺、ちょうどその配信をリアルタイムで見てたんだよね。えっ、何かUSDXが配信始めてるんだけどって。音楽組の4人が何かしてるのかなって思ったらまさかのレイ君だし」
「リアルタイムで見てたのかよ。キョージュお前暇人か?」
「実際暇だったからね。確かにそこでもイベントに誘われなくて腹が立ったから初日の出を見に行くって言ってたよ」
「だからって何でそうなるんだよ。意味がわかんねーよ」
「でも綺麗だったよ。上手に配信出来てた。視聴者さんから“お賽銭”名目の投げ銭もたくさんいただけたし、今年も頑張らないとね」
「お賽銭って」
「何気にUSDXの投げ銭ってレイ君の単独配信だけでもある程度行ってるからね」
「マジかよ」
「レイ君に関しては“実在してる”感がいいんじゃない? 俺たちは2次元のキャラクター遊びをしてるじゃない。あの子は本当にいる、でも基本画面の向こうにいるっていう2.5次元感があって、触れそうで触れない、その不安定感とかネット慣れしてない子を自分たちが育ててますっていう感がいいんだろうとは思うね」
確かにUSDXというグループはキャラクターは本人のアバターではなく、そのキャラクターを中の人が演じているという形態を取っている。もちろんその中の人がどういう生活をしているのかも、俺たちの話している内容のどこからどこまでが本当かわからない。
だけど朝霞が担当している“レイ”に関しては他の5人よりも生活感が出ている。朝霞はゲームの単独配信をやることもあるし、ギターの練習動画でちょくちょく実写配信もやっている。そして今回は初日の出配信と来た。
レイは朝霞と全く別のキャラクターと言うよりは、朝霞という土台にレイという薄い皮を覆い被せた存在なんだなと。その辺、人格遊びを徹底しているキョージュというキャラクターとは真逆の路線を行っているなと思う。
「って言うか俺、ぶっちゃけゲーム下手な振りするのも飽きたんだよね。中の人的に、もう良くない? って思って」
「どうした、唐突に」
「P&S的な感じで拓馬と圧倒した動画もやりたいし、バネとも本気でやり合いたい。コンちゃんやレイ君とはシミュレーションとかボードゲームでバチバチやりたいじゃない。宇宙人狼とか」
「お前がそうしたいんならいいんじゃねえか。俺のスタンスは変わらねえからな」
「拓馬もそう言ってくれたことだし、そうさせてもらうよ」
「っつーか、俺の名前が出てねーんだよなぁ~キョージュ~…!」
「だってチータ音楽以外何やっても中途半端じゃない。何か俺とタイマン張れる分野ってあったっけ?」
「ぐっ…!」
「その点チータって、レイ君よりキャラ立ちしてないからね。音楽もいいけど、ゲームの方も頑張ってね」
「うるせー! やってやらあ! 見とけよコラぁ!」
何か、今年のUSDXはゲームのプレイ的な意味で大きく動きそうな感じがするぞ。俺も自分の得意分野をもっと伸ばさないと。
end.
++++
その現場にいない人の話で盛り上がる、ナノスパあるある。朝霞Pが残り5人の食事会からハブられています。まだ実家にいるからね、仕方ないね
そしてキョージュがキャラクター遊びの一環としてやっていたゲームが下手というキャラ付けにちょっと飽きた様子。プロ氏の本気が見られるか。
チータ君はドンマイ。今じゃすっかり音楽担当みたいになってるけど、ゲームの方は中途半端っていう評価だったらしい。
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「改めまして、あけましておめでとうございます。レイ君がまだちょっと戻らないけど、あの子新年初っ端から抜け駆けしてるしまあいいでしょう」
「でも、こうやって俺らが会議もそこそこに飯食ってたって聞いたらどーせアイツまた暴動起こしますよ、自分だけハブられたって」
「映像で想像出来るな。年末のライブの件でもブチ切れてたって話だし」
――というワケで、実家に帰省中の朝霞を除くUSDXメンバーで食事をしに来た。最初はプロさんの住んでるマンションの一室でちゃんと会議めいたことをしてたんだけど、お正月ムードが抜けきらないのかだる~っとした雰囲気になってて。
ソルさんこと塩見さんに限っては社畜キャラを裏切らずもう仕事始めが済んでいて、当たり前のように今日も仕事だったそうだ。尤も、午前中いっぱいで終わりだったそうだけど。それでも仕事が始まっているから俺たち学生よりは気も張っている感じがする。
「もしかしなくてもレイ君て俺たち6人の中では一番短気なのかな?」
「アイツぜってー俺より短気」
「確かに、部活の現役中もそれが原因で謹慎喰らったり拳割ったりしてたもんな」
「マジで俺らの代で死人が出なかったのって奇跡だよな。スガが宇部から聞いた話がガチなら、朝霞がブチ切れて日高を殺らなかっただけでアイツにもまだ理性があったんだなって感じがする」
「そう言えば、お前たちは同じ部活だったのだな。その割に随分と他人事のような話しぶりだが」
「部活の現役中はそんなに関わりがなかったんだよ。そこそこデカイ部活だから話さない奴はマジで話さないし。朝霞とはスガが班長会議でちょろっと話してたくらいか?」
「だな。その現場でも朝霞は当時の部長とやり合ってたし、班長でプロデューサーの割には短気で熱くなり過ぎて、売られたケンカをスルー出来ないのが欠点だなとは思っていた」
「ぶっちゃけそんな良い印象もなかったから、今じゃこうやって一緒に実況やったり曲作ったりしてるって全然想像もしてなかったし、昔の俺に言っても絶対信じないよなーって」
「ちょっとチータの立ち回りを褒められただけで即落ちした奴が何かを言っているぞ」
それこそ人は話してみなければわからないというのを地で行ったのがカンと朝霞だと思う。それでなくてもカンは浦和から朝霞に関する愚痴もいろいろ聞いていたから、奴に対する感情がマイナスの方に結構振っていただろうし。洋平のことも「よく朝霞とやってるよな」とはよく言っていた。
それが去年、チータというキャラクターの立ち回りやUSDXというグループ内における役割を褒められた瞬間「心の友」にまで格上げしたんだから、カンがチョロすぎるっていうのもあるけど仲良くなるのも一瞬なんだなと思った。人間関係なんか何がきっかけで誰がどうなるかわからないなと。
「そう言えば、朝霞は新年早々初日の出を見に山に登っていたのだったな」
「俺、ちょうどその配信をリアルタイムで見てたんだよね。えっ、何かUSDXが配信始めてるんだけどって。音楽組の4人が何かしてるのかなって思ったらまさかのレイ君だし」
「リアルタイムで見てたのかよ。キョージュお前暇人か?」
「実際暇だったからね。確かにそこでもイベントに誘われなくて腹が立ったから初日の出を見に行くって言ってたよ」
「だからって何でそうなるんだよ。意味がわかんねーよ」
「でも綺麗だったよ。上手に配信出来てた。視聴者さんから“お賽銭”名目の投げ銭もたくさんいただけたし、今年も頑張らないとね」
「お賽銭って」
「何気にUSDXの投げ銭ってレイ君の単独配信だけでもある程度行ってるからね」
「マジかよ」
「レイ君に関しては“実在してる”感がいいんじゃない? 俺たちは2次元のキャラクター遊びをしてるじゃない。あの子は本当にいる、でも基本画面の向こうにいるっていう2.5次元感があって、触れそうで触れない、その不安定感とかネット慣れしてない子を自分たちが育ててますっていう感がいいんだろうとは思うね」
確かにUSDXというグループはキャラクターは本人のアバターではなく、そのキャラクターを中の人が演じているという形態を取っている。もちろんその中の人がどういう生活をしているのかも、俺たちの話している内容のどこからどこまでが本当かわからない。
だけど朝霞が担当している“レイ”に関しては他の5人よりも生活感が出ている。朝霞はゲームの単独配信をやることもあるし、ギターの練習動画でちょくちょく実写配信もやっている。そして今回は初日の出配信と来た。
レイは朝霞と全く別のキャラクターと言うよりは、朝霞という土台にレイという薄い皮を覆い被せた存在なんだなと。その辺、人格遊びを徹底しているキョージュというキャラクターとは真逆の路線を行っているなと思う。
「って言うか俺、ぶっちゃけゲーム下手な振りするのも飽きたんだよね。中の人的に、もう良くない? って思って」
「どうした、唐突に」
「P&S的な感じで拓馬と圧倒した動画もやりたいし、バネとも本気でやり合いたい。コンちゃんやレイ君とはシミュレーションとかボードゲームでバチバチやりたいじゃない。宇宙人狼とか」
「お前がそうしたいんならいいんじゃねえか。俺のスタンスは変わらねえからな」
「拓馬もそう言ってくれたことだし、そうさせてもらうよ」
「っつーか、俺の名前が出てねーんだよなぁ~キョージュ~…!」
「だってチータ音楽以外何やっても中途半端じゃない。何か俺とタイマン張れる分野ってあったっけ?」
「ぐっ…!」
「その点チータって、レイ君よりキャラ立ちしてないからね。音楽もいいけど、ゲームの方も頑張ってね」
「うるせー! やってやらあ! 見とけよコラぁ!」
何か、今年のUSDXはゲームのプレイ的な意味で大きく動きそうな感じがするぞ。俺も自分の得意分野をもっと伸ばさないと。
end.
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その現場にいない人の話で盛り上がる、ナノスパあるある。朝霞Pが残り5人の食事会からハブられています。まだ実家にいるからね、仕方ないね
そしてキョージュがキャラクター遊びの一環としてやっていたゲームが下手というキャラ付けにちょっと飽きた様子。プロ氏の本気が見られるか。
チータ君はドンマイ。今じゃすっかり音楽担当みたいになってるけど、ゲームの方は中途半端っていう評価だったらしい。
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