2017(03)
■張り巡らされた情報網
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「以上が大学祭のタイムテーブルになります。各班、当日までにしっかりと準備をお願いします」
丸の池ステージ直前以来となる班長会議が開かれている。大学祭に向けて本格的に始動していくということで、今日の会議にはしっかりと全員が揃っている。議事進行を宇部が行っているというのには変わりないけれど。
「監査、どうして俺の班の枠が1時間しかないんだ。俺は部長なのに朝霞班以下の扱いなのはあり得ない」
「アナウンサーの都合です」
「アナウンサーだと?」
「はい。高萩麗が大学祭当日に外出するという情報を入手しました。部長はご存知で?」
「初めて聞いたぞ、そんなこと」
「高萩麗は日高班の柱となるアナウンサーですから、その都合を考えるのは当然かと」
珍しいこともあったものだ。あの日高がぐうの音も出ていない。高萩というのは日高が寵愛している2年の女子で、それこそ日高班の柱。高萩がいなければ日高班のステージは回らないのだ。
日高は渋々タイムテーブルに納得をして、この話を閉じた。他の班長も、宇部が決めた枠は自分たちの実力相応だろうと納得した様子。しかし怖いのは宇部がどこからその情報を得たのかというところだ。
「宇部」
「あら菅野、何かしら」
恐る恐る、会議後の宇部をつついてみることにした。こういうときは菅野班が“幹部寄り”であることが生きるなと思う。
「高萩の件だ。お前はどこでそんな情報を入手してくるんだ?」
「ちょっとネットを覗けば書いてあるわよ」
「ネット? 高萩のツイッターなら俺もフォローしてるけど、そんなことが書いてあった様子は――」
「裏アカウントよ。仮にも裏とするなら鍵くらいかけておくべきだわ」
「まさかお前、部員のSNSをチェックしてるのか」
「部長から課せられた仕事よ」
日高がそんなことをする理由はひとつだろう。自分に都合の悪い挙動が見られた部員を処分する理由を作るため。本来宇部に課せられたのは須賀班、魚里班といった反体制派とされる班、そして朝霞班の監視。
宇部が言うには、須賀班は星羅の影響かみんないつも楽しそうで部に不満があるとか反抗的な様子は見られない。魚里班や朝霞班はマークされていることをわかっているからか、ボロを出さないよう徹底されているのだろうとのこと。
「ボロを出すのが見事に幹部系の班ばかりよ。私も自分の班員に謹慎と反省文の提出処分を下したわ」
「ソイツは何をしたんだ」
「インスタグラムに映える写真を撮った後始末がなってなかったのよ。食品を無駄にすることは許せないわ」
「お前は農学部だから特にそういうのが気になるのか」
「農学部じゃなくたって考えればわかることでしょう」
「まあな。何か、幹部の班だからって気が緩むのかな」
「違うわ。彼らは次のポストを狙ってるだけなのよ。ステージの事なんて考えちゃいないし、締める“気”なんて持ち合わせてないわ」
俺は一応書記という役職を持っているけど幹部と言えるほどではない。やはり部長や監査クラスになれば班にも次のポストや役得を狙ってすり寄ってくる奴も増えるのだろう。いつも冷静な宇部が苛立ちを露わにして、早口で部の現状をまくし立てる。
「高萩麗にしても、部長に従順で可愛らしい顔の裏ではどす黒い本音が渦巻いてるわ。戸田つばめの原付をパンクさせろと日高班のDに指示をしたり」
「それはさすがに引くな」
「もちろんキャプチャーは取ってあるわ。高萩麗のアカウントは酷いわよ。深夜になれば猥褻な自撮り画像がアップされたり」
「うわ、マジかよ」
「大学祭当日に出掛けるのも男絡みよ。部長はチョロいから、ちょっと可愛くお願いしたらすぐオチるそうよ。部長に媚びてるのは部での飲み代などを出させるためですって」
「うわ、引くわ。女が怖い」
「あら、須賀さんが怖くないのなら他の女がどうだろうといいじゃない」
「あ、ああ。まあな。と言うか、お前はそういう冷やかしを出来る奴だったんだな」
「私を何だと思ってるのかしら」
「厳格な監査のイメージが強い。堅物と言うか」
「そう。それならそれで構わないけれど、あなたが思う以上に冗談は通じるし、融通も利くわよ」
宇部が何を考えているのかますますわからない。女が怖いというその中には宇部のことも含まれてしまっている。宇部は軽くつついたくらいでボロを出すような奴じゃないだろう。やるなら、刺し違えてもという覚悟がなければならないのだ。
「ところで菅野、カホンの穴に突っ込んであったぬいぐるみはペンギンかしら」
「そんなトコまで見てるのか」
「可愛いと思っていたの」
end.
++++
星ヶ丘も大学祭に向けて動き始めているようです。……となると、まーたどこかのプロデューサーがアレな生活をし始めるんだろうけど、今月はまだ落ち着いてるのかな
今年ガンガン動いているのはスガPですね。スガPの動きでそれまで謎だった星ヶ丘のあれこれがわかってくるのかしら
そして宇部Pの動きがやっぱり怖いヤツ。と言うか仕事どんだけ抱えてんって感じ。
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「以上が大学祭のタイムテーブルになります。各班、当日までにしっかりと準備をお願いします」
丸の池ステージ直前以来となる班長会議が開かれている。大学祭に向けて本格的に始動していくということで、今日の会議にはしっかりと全員が揃っている。議事進行を宇部が行っているというのには変わりないけれど。
「監査、どうして俺の班の枠が1時間しかないんだ。俺は部長なのに朝霞班以下の扱いなのはあり得ない」
「アナウンサーの都合です」
「アナウンサーだと?」
「はい。高萩麗が大学祭当日に外出するという情報を入手しました。部長はご存知で?」
「初めて聞いたぞ、そんなこと」
「高萩麗は日高班の柱となるアナウンサーですから、その都合を考えるのは当然かと」
珍しいこともあったものだ。あの日高がぐうの音も出ていない。高萩というのは日高が寵愛している2年の女子で、それこそ日高班の柱。高萩がいなければ日高班のステージは回らないのだ。
日高は渋々タイムテーブルに納得をして、この話を閉じた。他の班長も、宇部が決めた枠は自分たちの実力相応だろうと納得した様子。しかし怖いのは宇部がどこからその情報を得たのかというところだ。
「宇部」
「あら菅野、何かしら」
恐る恐る、会議後の宇部をつついてみることにした。こういうときは菅野班が“幹部寄り”であることが生きるなと思う。
「高萩の件だ。お前はどこでそんな情報を入手してくるんだ?」
「ちょっとネットを覗けば書いてあるわよ」
「ネット? 高萩のツイッターなら俺もフォローしてるけど、そんなことが書いてあった様子は――」
「裏アカウントよ。仮にも裏とするなら鍵くらいかけておくべきだわ」
「まさかお前、部員のSNSをチェックしてるのか」
「部長から課せられた仕事よ」
日高がそんなことをする理由はひとつだろう。自分に都合の悪い挙動が見られた部員を処分する理由を作るため。本来宇部に課せられたのは須賀班、魚里班といった反体制派とされる班、そして朝霞班の監視。
宇部が言うには、須賀班は星羅の影響かみんないつも楽しそうで部に不満があるとか反抗的な様子は見られない。魚里班や朝霞班はマークされていることをわかっているからか、ボロを出さないよう徹底されているのだろうとのこと。
「ボロを出すのが見事に幹部系の班ばかりよ。私も自分の班員に謹慎と反省文の提出処分を下したわ」
「ソイツは何をしたんだ」
「インスタグラムに映える写真を撮った後始末がなってなかったのよ。食品を無駄にすることは許せないわ」
「お前は農学部だから特にそういうのが気になるのか」
「農学部じゃなくたって考えればわかることでしょう」
「まあな。何か、幹部の班だからって気が緩むのかな」
「違うわ。彼らは次のポストを狙ってるだけなのよ。ステージの事なんて考えちゃいないし、締める“気”なんて持ち合わせてないわ」
俺は一応書記という役職を持っているけど幹部と言えるほどではない。やはり部長や監査クラスになれば班にも次のポストや役得を狙ってすり寄ってくる奴も増えるのだろう。いつも冷静な宇部が苛立ちを露わにして、早口で部の現状をまくし立てる。
「高萩麗にしても、部長に従順で可愛らしい顔の裏ではどす黒い本音が渦巻いてるわ。戸田つばめの原付をパンクさせろと日高班のDに指示をしたり」
「それはさすがに引くな」
「もちろんキャプチャーは取ってあるわ。高萩麗のアカウントは酷いわよ。深夜になれば猥褻な自撮り画像がアップされたり」
「うわ、マジかよ」
「大学祭当日に出掛けるのも男絡みよ。部長はチョロいから、ちょっと可愛くお願いしたらすぐオチるそうよ。部長に媚びてるのは部での飲み代などを出させるためですって」
「うわ、引くわ。女が怖い」
「あら、須賀さんが怖くないのなら他の女がどうだろうといいじゃない」
「あ、ああ。まあな。と言うか、お前はそういう冷やかしを出来る奴だったんだな」
「私を何だと思ってるのかしら」
「厳格な監査のイメージが強い。堅物と言うか」
「そう。それならそれで構わないけれど、あなたが思う以上に冗談は通じるし、融通も利くわよ」
宇部が何を考えているのかますますわからない。女が怖いというその中には宇部のことも含まれてしまっている。宇部は軽くつついたくらいでボロを出すような奴じゃないだろう。やるなら、刺し違えてもという覚悟がなければならないのだ。
「ところで菅野、カホンの穴に突っ込んであったぬいぐるみはペンギンかしら」
「そんなトコまで見てるのか」
「可愛いと思っていたの」
end.
++++
星ヶ丘も大学祭に向けて動き始めているようです。……となると、まーたどこかのプロデューサーがアレな生活をし始めるんだろうけど、今月はまだ落ち着いてるのかな
今年ガンガン動いているのはスガPですね。スガPの動きでそれまで謎だった星ヶ丘のあれこれがわかってくるのかしら
そして宇部Pの動きがやっぱり怖いヤツ。と言うか仕事どんだけ抱えてんって感じ。
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