2020(04)
■ニューフェイスの登竜門
＋＋＋＋
「あ。美奈、高崎、いらっしゃい」
「福井ちゃん、ゆうちゃんも３期お疲れさまー！」
「こんばんは……」
「お疲れさまっす」
「さ、座って座って。あら、そっちの子は？」
FMにしうみの登竜門と言われて連れて来られたのは、西海駅前にあるpetite maisonというバーだ。少し小ぢんまりした店で、知る人ぞ知るっていう感じの場所にある。一見でも入れないことはないけれど、店に通う人からの紹介があった方が入りやすいとか。
福井さんと高崎先輩を迎えたのは、大柄で派手な服を着た人と、スウェットの人。俺はバーに来るのが初めてだし、それでなくても何かちょっと不思議な雰囲気の場所に、どうしていいかわからず先輩の後ろに隠れている。
「年明けから、局でアルバイトをすることになった子……佐崎君ていう……」
「あら、そうなの。それじゃあアタシとも顔を合わせることになるわね」
「佐崎君……この人は、ベティさん……このバーのママで、FMにしうみでは「ベティのお部屋」という番組を持っている……」
「あ、えっと、佐崎大樹です」
「美奈の枠に入るんだね。今日からもう働いてたの？」
「今日は、見学……BJの後輩でもあるから……」
「へえ、緑ヶ丘の子なんだ」
「そちらのスタッフさん？ は」
「ああ、ごめんごめん。俺は大石千景。美奈と同じ星大UHBCの４年で、インターフェイスでは定例会だったんだよ。俺は兄さんの弟で、たまにこうやって店の手伝いをしてるんだ。今日は美奈と高崎が番組終わりの打ち上げで来るって言うから来てて」
ベティさんは大柄だけどそういう女の人かなと思ったけど、大石さんがベティさんを指して兄さんって言ってたってことは、男の人なのか。まあ、そうか。明らかに大きいもんなあ。ササより大きいんじゃないかな。
「定例会の先輩なんですね。俺も、先月から定例会に出始めました」
「へー、そうなんだねー。ここで会ったのも縁だし、俺は大学を出ちゃうけど西海にはいるからこれからもよろしく。ちなみに佐崎君はインターフェイスではどう呼ばれてるの？」
「サキって呼ばれてます。佐崎のサキで」
「サキちゃんていうのね」
「前々から思ってたんだけどよ、何でお前らササキが３人いるのに全員名字からDJネーム取ってんだよ。区別出来やしねえ」
「ああ、それは確か、敢えて名字から取ってネタにしよう的な感じで決まってたと思います」
「そんなこったろうとは思ったけどな」
とりあえず頼むものを頼んで、乾杯を。番組お疲れさまでしたとこれからよろしくお願いしますという意味合い。そして、ベティさんお手製という料理が出て来る。これがいい意味でバーらしくないんだけど、物凄く美味しいんだそうだ。
高崎先輩と福井さんは美味しそうに食べてるけど、今が10時半だし今から食べるのもな。ちょっとつまめるものがあれば嬉しいんだけど。って言うか高崎先輩、よく食べるなあ。シノと同じくらい？ ううん、もっと食べるかも。
「大樹、こんな時間だし飯が食えねえならドライフルーツとかナッツもあるからな」
「ドライフルーツって何があるんですか？」
「ドライフルーツはいろいろあるよー。オレンジ、パイナップル、マンゴー、レモン、リンゴ、ショウガ、それから……あ、味見してみたいならミックスも出来るよ」
「ミックスでお願いします」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
俺は夕飯が済んでたし、元々そんなに量が食べれないからフルーツをつまむ。普段ドライフルーツなんて食べないけど、結構美味しいな。お試しのミックスっていうのがあって良かった。普段のおやつもこれにしたいかも。
「サキちゃんは家で夕飯を食べてから見学に行ったのね」
「そうです。元々そんなに量を食べないですけど、このドライフルーツは美味しいです」
「気に入ってもらえてよかったわ」
「サキって、どうしてFMにしうみでバイトしようと思ったの？」
「最近サークルでいろんな手法で番組をやるようになって、ラジオってやりようによってはもっといろいろ出来るのかなって思ったんです」
「へえ、さすが。緑ヶ丘はいろんな番組をやってるんだねー」
「何か、向島とネットで繋いで遠隔中継をやったとか、緑大のガラス張りのラジオブースから食堂に番組を飛ばして同時放送をやったらしいぞ」
「えっ、そんなことも出来るの!? へー、それだけ出来るならインターフェイスの可能性も広がるね」
「元々雑談動画が好きでラジオをやろうと思ったんですけど、いろいろ勉強してるうちに、もっとちゃんとやりたいと思って」
「あら、それならアタシも応援するわよ。若い子の好奇心！ いいわあ～」
コミュニティFMとは言えラジオの現場だし、それで生活してる人たちのいる場所だ。だから、サークルの場で自分たちが試行錯誤するだけじゃなくて、プロの技法というのを教えてもらえないかなとも思う。それを大学に持ち帰ることが出来れば。
end.
＋＋＋＋
ちーちゃんが自分を「俺は兄さんの弟で」と自己紹介をするのが個人的ポイント。兄さんの弟。うん。まあそうやね。
サキがちびちびとドライフルーツを食べてそうなのもいいし、今後大学の購買とかでちょっと何か欲しいなって時にも買ってるといい。
MBCCのササキトリオのDJネームの付け方に関しては今年度はちゃんとやってなかったと思うのでまた来年度以降にでも。
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「あ。美奈、高崎、いらっしゃい」
「福井ちゃん、ゆうちゃんも３期お疲れさまー！」
「こんばんは……」
「お疲れさまっす」
「さ、座って座って。あら、そっちの子は？」
FMにしうみの登竜門と言われて連れて来られたのは、西海駅前にあるpetite maisonというバーだ。少し小ぢんまりした店で、知る人ぞ知るっていう感じの場所にある。一見でも入れないことはないけれど、店に通う人からの紹介があった方が入りやすいとか。
福井さんと高崎先輩を迎えたのは、大柄で派手な服を着た人と、スウェットの人。俺はバーに来るのが初めてだし、それでなくても何かちょっと不思議な雰囲気の場所に、どうしていいかわからず先輩の後ろに隠れている。
「年明けから、局でアルバイトをすることになった子……佐崎君ていう……」
「あら、そうなの。それじゃあアタシとも顔を合わせることになるわね」
「佐崎君……この人は、ベティさん……このバーのママで、FMにしうみでは「ベティのお部屋」という番組を持っている……」
「あ、えっと、佐崎大樹です」
「美奈の枠に入るんだね。今日からもう働いてたの？」
「今日は、見学……BJの後輩でもあるから……」
「へえ、緑ヶ丘の子なんだ」
「そちらのスタッフさん？ は」
「ああ、ごめんごめん。俺は大石千景。美奈と同じ星大UHBCの４年で、インターフェイスでは定例会だったんだよ。俺は兄さんの弟で、たまにこうやって店の手伝いをしてるんだ。今日は美奈と高崎が番組終わりの打ち上げで来るって言うから来てて」
ベティさんは大柄だけどそういう女の人かなと思ったけど、大石さんがベティさんを指して兄さんって言ってたってことは、男の人なのか。まあ、そうか。明らかに大きいもんなあ。ササより大きいんじゃないかな。
「定例会の先輩なんですね。俺も、先月から定例会に出始めました」
「へー、そうなんだねー。ここで会ったのも縁だし、俺は大学を出ちゃうけど西海にはいるからこれからもよろしく。ちなみに佐崎君はインターフェイスではどう呼ばれてるの？」
「サキって呼ばれてます。佐崎のサキで」
「サキちゃんていうのね」
「前々から思ってたんだけどよ、何でお前らササキが３人いるのに全員名字からDJネーム取ってんだよ。区別出来やしねえ」
「ああ、それは確か、敢えて名字から取ってネタにしよう的な感じで決まってたと思います」
「そんなこったろうとは思ったけどな」
とりあえず頼むものを頼んで、乾杯を。番組お疲れさまでしたとこれからよろしくお願いしますという意味合い。そして、ベティさんお手製という料理が出て来る。これがいい意味でバーらしくないんだけど、物凄く美味しいんだそうだ。
高崎先輩と福井さんは美味しそうに食べてるけど、今が10時半だし今から食べるのもな。ちょっとつまめるものがあれば嬉しいんだけど。って言うか高崎先輩、よく食べるなあ。シノと同じくらい？ ううん、もっと食べるかも。
「大樹、こんな時間だし飯が食えねえならドライフルーツとかナッツもあるからな」
「ドライフルーツって何があるんですか？」
「ドライフルーツはいろいろあるよー。オレンジ、パイナップル、マンゴー、レモン、リンゴ、ショウガ、それから……あ、味見してみたいならミックスも出来るよ」
「ミックスでお願いします」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
俺は夕飯が済んでたし、元々そんなに量が食べれないからフルーツをつまむ。普段ドライフルーツなんて食べないけど、結構美味しいな。お試しのミックスっていうのがあって良かった。普段のおやつもこれにしたいかも。
「サキちゃんは家で夕飯を食べてから見学に行ったのね」
「そうです。元々そんなに量を食べないですけど、このドライフルーツは美味しいです」
「気に入ってもらえてよかったわ」
「サキって、どうしてFMにしうみでバイトしようと思ったの？」
「最近サークルでいろんな手法で番組をやるようになって、ラジオってやりようによってはもっといろいろ出来るのかなって思ったんです」
「へえ、さすが。緑ヶ丘はいろんな番組をやってるんだねー」
「何か、向島とネットで繋いで遠隔中継をやったとか、緑大のガラス張りのラジオブースから食堂に番組を飛ばして同時放送をやったらしいぞ」
「えっ、そんなことも出来るの!? へー、それだけ出来るならインターフェイスの可能性も広がるね」
「元々雑談動画が好きでラジオをやろうと思ったんですけど、いろいろ勉強してるうちに、もっとちゃんとやりたいと思って」
「あら、それならアタシも応援するわよ。若い子の好奇心！ いいわあ～」
コミュニティFMとは言えラジオの現場だし、それで生活してる人たちのいる場所だ。だから、サークルの場で自分たちが試行錯誤するだけじゃなくて、プロの技法というのを教えてもらえないかなとも思う。それを大学に持ち帰ることが出来れば。
end.
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ちーちゃんが自分を「俺は兄さんの弟で」と自己紹介をするのが個人的ポイント。兄さんの弟。うん。まあそうやね。
サキがちびちびとドライフルーツを食べてそうなのもいいし、今後大学の購買とかでちょっと何か欲しいなって時にも買ってるといい。
MBCCのササキトリオのDJネームの付け方に関しては今年度はちゃんとやってなかったと思うのでまた来年度以降にでも。
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