2020(04)
■今の私に出来ること
＋＋＋＋
「あっサキ、おはよう。昨日やってたでじかもさんの配信見てみたよ」
「どうだった？」
「１人で喋ってるだけなのによくあれだけ話が続くなと思って。それでいて視聴者のリアルタイムのコメントに反応して返す力が凄いなと」
「あ、アナウンサーとしての視点で見ちゃった？」
こないだサキと趣味の話をしたのをきっかけに、私は日常の中で見る動画を少し増やした。サキが名物視聴者として活動しているでじかもさんっていう実況者……配信者と言うのが正しいらしいんだけど、その人の配信を見てみた。
私の知ってる実況は、編集をゴリゴリにやって、見せるところだけバンと簡潔に見せるっていう感じ。私が見た配信は本当にゲーム内の世界を歩きながら雑談をするだけのものだったんだけど、不思議とすーっと聞けちゃって。
「陸が元々ラジオとか、雑談配信系の動画とかが好きって言ってたんだよね」
「ああ、言ってたね」
「ラジオはともかく雑談配信は何がいいのかなってよくわかんなかったんだけど、当たりを引いたら雑談はハマる。確かに」
「どんな雑談が自分に合うのかを探すのも楽しいけど難しいよね」
「それ」
一応私も放送サークルのアナウンサーだから、そういう雑談系の配信とかは、うん、何と言うかね。喋り方とかがちょっと気になっちゃうんだよね。すっごいぼそぼそ喋ってて聞き取りにくいなーとか。この人は声質や滑舌がいいなーとかそういうところを見ちゃう。
自分自身を棚に上げてると言われればそうなのかもしれないけど、気になるんだから仕方ない。それを反面教師にして自分が頑張るしかないよねって。ただ、そういうのとは別にして、ただただスーッと聞けたのがでじかもさんの雑談で。
「何が合ったんだろう。わかんないけど、自分が別の作業をしながら後ろで聞いてた」
「でじかもの配信は作業用BGMにすることにも罪悪感がないんだよね。あと、最近エンディングカードのBGMを変えたんだけど、それがチータが作った曲みたくて。前のに馴染んでたけど、違和感も一瞬だったからそれも凄いなと。でじかもの人柄とか声とか、やることに合った曲を作るっていうのは」
「サキはミキサーとしての視点で見ちゃってるね」
「まあ、多少はね。いいBGMがあればどこのサイトから落として来てるのか調べるし。動画を見ててもたまにBGMやマイクのレベルが気になって内容どころじゃないこともあるよね」
やっぱり、こういう活動をしていると気になって来るものなのかなと思う。サキは私との番組に使うBGMは基本的に毎回統一してるけど、他の人とどんな番組をやることになっても大丈夫なように日々音源探しに忙しいみたいだ。
それから、定例会に出ていて他の大学の活動報告を聞いて、普段MBCCでやっているミキサー以外に動画や映像に関わる音響のことにも興味が湧いているらしい。今はラジオをメインに活動しているMBCCだけど、どんな活動にも対応出来るようになりたいんだって。柔軟性を持ちたいってことだね。
「何か、定例会でチラッと話に出てるんだけど、別にラジオに限らずみんな一緒に作品を作ってみてもいいんじゃないかって」
「それは、ステージとか、映像とか？」
「そう。今のところ青敬主導で映像作品を作るっていうのが一番現実的なのかな。もし現実になったらドラマの台本でも書くかーって星ヶ丘勢がケンカしてたよ」
「ケンカ？」
「マリン先輩と彩人、班では正プロデューサーの座を争うライバルらしいから」
「でも、切磋琢磨していい台本が出来上がるってことでしょ？ 悪いことばかりでもないと思う。でも、そうなったら私たちラジオメイン校の人間は何をするんだろう」
「だから、何でも出来るようにしとかなきゃなと。特にウチなんて人も機材もお金もある方なんだから、ラジオしか出来ませんとか言ってられる立場でもないじゃん。それに、個人単位ならラジオ以外の技術を持ってる人だっているでしょ。高木先輩はゼミでいろいろ凄いらしいし」
「個人単位の技術ね。確かに、くるみはスマホでだけど動画編集したりもするし、エージ先輩は演劇とかラジドラの簡単な脚本くらいなら書けるんだっけ」
そう考えると、私には何が出来るんだろうと思ってしまった。確かにMBCCとしての活動で留まっているならラジオのことだけ出来ればいい。だけどサキを見てると私も何か、得意なことを探す必要性を感じて来た。
「くるみと言えば、何でミキサーやってるのかおかしいくらいに商品紹介の文章とか上手いよね」
「あのスイーツブログでしょ。サキも見てる？」
「たまにね」
「そうか、何がその物のポイントで、どう紹介すれば人に刺さるのかをくるみは意識してやってるのか。私もこれから推しをプレゼンするときの参考にしよう。くるみに弟子入りしようかな」
「レナ、ササにまだプレゼンするの？」
「こないだのは序の口だからね」
私にある物はなんだろう。ひとつの物を突き詰める熱量？ だとすると、アナウンサーとしての技術とか、スタンスを極めていくのが一番向いているのかもしれない。春までの間に何を積み重ねようか。
end.
＋＋＋＋
最近仲良しのサキレナです。サークル活動の中でガッツリ動いて行く中ではなかなかのコンビなのかも。
これからもどんどん技術を伸ばしていかなきゃなあっていう話でまとまってはいるのですが、レナの個人スキルとは。なんだろね。
そして、サキが結構頑張ってるのかな。ラジオしか出来ませんとか言ってられる立場でもない、とはなかなかに厳しめですね。
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「あっサキ、おはよう。昨日やってたでじかもさんの配信見てみたよ」
「どうだった？」
「１人で喋ってるだけなのによくあれだけ話が続くなと思って。それでいて視聴者のリアルタイムのコメントに反応して返す力が凄いなと」
「あ、アナウンサーとしての視点で見ちゃった？」
こないだサキと趣味の話をしたのをきっかけに、私は日常の中で見る動画を少し増やした。サキが名物視聴者として活動しているでじかもさんっていう実況者……配信者と言うのが正しいらしいんだけど、その人の配信を見てみた。
私の知ってる実況は、編集をゴリゴリにやって、見せるところだけバンと簡潔に見せるっていう感じ。私が見た配信は本当にゲーム内の世界を歩きながら雑談をするだけのものだったんだけど、不思議とすーっと聞けちゃって。
「陸が元々ラジオとか、雑談配信系の動画とかが好きって言ってたんだよね」
「ああ、言ってたね」
「ラジオはともかく雑談配信は何がいいのかなってよくわかんなかったんだけど、当たりを引いたら雑談はハマる。確かに」
「どんな雑談が自分に合うのかを探すのも楽しいけど難しいよね」
「それ」
一応私も放送サークルのアナウンサーだから、そういう雑談系の配信とかは、うん、何と言うかね。喋り方とかがちょっと気になっちゃうんだよね。すっごいぼそぼそ喋ってて聞き取りにくいなーとか。この人は声質や滑舌がいいなーとかそういうところを見ちゃう。
自分自身を棚に上げてると言われればそうなのかもしれないけど、気になるんだから仕方ない。それを反面教師にして自分が頑張るしかないよねって。ただ、そういうのとは別にして、ただただスーッと聞けたのがでじかもさんの雑談で。
「何が合ったんだろう。わかんないけど、自分が別の作業をしながら後ろで聞いてた」
「でじかもの配信は作業用BGMにすることにも罪悪感がないんだよね。あと、最近エンディングカードのBGMを変えたんだけど、それがチータが作った曲みたくて。前のに馴染んでたけど、違和感も一瞬だったからそれも凄いなと。でじかもの人柄とか声とか、やることに合った曲を作るっていうのは」
「サキはミキサーとしての視点で見ちゃってるね」
「まあ、多少はね。いいBGMがあればどこのサイトから落として来てるのか調べるし。動画を見ててもたまにBGMやマイクのレベルが気になって内容どころじゃないこともあるよね」
やっぱり、こういう活動をしていると気になって来るものなのかなと思う。サキは私との番組に使うBGMは基本的に毎回統一してるけど、他の人とどんな番組をやることになっても大丈夫なように日々音源探しに忙しいみたいだ。
それから、定例会に出ていて他の大学の活動報告を聞いて、普段MBCCでやっているミキサー以外に動画や映像に関わる音響のことにも興味が湧いているらしい。今はラジオをメインに活動しているMBCCだけど、どんな活動にも対応出来るようになりたいんだって。柔軟性を持ちたいってことだね。
「何か、定例会でチラッと話に出てるんだけど、別にラジオに限らずみんな一緒に作品を作ってみてもいいんじゃないかって」
「それは、ステージとか、映像とか？」
「そう。今のところ青敬主導で映像作品を作るっていうのが一番現実的なのかな。もし現実になったらドラマの台本でも書くかーって星ヶ丘勢がケンカしてたよ」
「ケンカ？」
「マリン先輩と彩人、班では正プロデューサーの座を争うライバルらしいから」
「でも、切磋琢磨していい台本が出来上がるってことでしょ？ 悪いことばかりでもないと思う。でも、そうなったら私たちラジオメイン校の人間は何をするんだろう」
「だから、何でも出来るようにしとかなきゃなと。特にウチなんて人も機材もお金もある方なんだから、ラジオしか出来ませんとか言ってられる立場でもないじゃん。それに、個人単位ならラジオ以外の技術を持ってる人だっているでしょ。高木先輩はゼミでいろいろ凄いらしいし」
「個人単位の技術ね。確かに、くるみはスマホでだけど動画編集したりもするし、エージ先輩は演劇とかラジドラの簡単な脚本くらいなら書けるんだっけ」
そう考えると、私には何が出来るんだろうと思ってしまった。確かにMBCCとしての活動で留まっているならラジオのことだけ出来ればいい。だけどサキを見てると私も何か、得意なことを探す必要性を感じて来た。
「くるみと言えば、何でミキサーやってるのかおかしいくらいに商品紹介の文章とか上手いよね」
「あのスイーツブログでしょ。サキも見てる？」
「たまにね」
「そうか、何がその物のポイントで、どう紹介すれば人に刺さるのかをくるみは意識してやってるのか。私もこれから推しをプレゼンするときの参考にしよう。くるみに弟子入りしようかな」
「レナ、ササにまだプレゼンするの？」
「こないだのは序の口だからね」
私にある物はなんだろう。ひとつの物を突き詰める熱量？ だとすると、アナウンサーとしての技術とか、スタンスを極めていくのが一番向いているのかもしれない。春までの間に何を積み重ねようか。
end.
＋＋＋＋
最近仲良しのサキレナです。サークル活動の中でガッツリ動いて行く中ではなかなかのコンビなのかも。
これからもどんどん技術を伸ばしていかなきゃなあっていう話でまとまってはいるのですが、レナの個人スキルとは。なんだろね。
そして、サキが結構頑張ってるのかな。ラジオしか出来ませんとか言ってられる立場でもない、とはなかなかに厳しめですね。
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