2020(04)
■私らしく愛して推して
++++
「それで、何を話せばいい?」
「うーん、そうだなあ。俺も密かに好きなこととかの話をしたし、レナが実は好きな物とかの話にしようか」
昼放送終わりでサキをお茶に誘った。第1学食の2階購買のイートインスペースで。番組で2ヶ月使ったBGMが変わっていたのを発端に、サキの趣味の話を聞いた。実は同じゲームをやってたり、サキが実況界の大物の脇を固める名物視聴者だったりするっていう話も聞けて楽しかった。
次は私のターンということで、私の「実は好きな物」の話をすることになった。とは言えサキとはあまりこういう話をしたことがないから、ロボットやバイクの話以外なら大体「実は好きな物」の話になってしまいそう。
「実は好きな物……特撮かな。戦隊シリーズに仮面ライダー」
「根っこでは今のレナに繋がってるね」
「あ、わかる?」
「どっちも何となくメカメカしい雰囲気があるもんね」
「話とかも好きなんだよ」
「へえ」
「あと、アンパンマンも好き」
「アンパンマン?」
「……と言うか、アニメ特有の、悪役の技術力に惹かれるヤツ」
「あーはい」
子供向けアニメとかである、悪役が乗り回してる巨大メカとかロボットとか、ああいうのが本当に大好き。絵に描いたような機械で打ちっぱなしましたみたいな拠点にしてもそうだけど。あとは、ゲームでよく見る機械で作りましたみたいな都市がシビれる。
「昔からさ、好きな物って何となくこう、系統がさ。私、ブルマになりたいって今でも思ってるし」
「ブルマ?」
「ドラゴンボールの」
「ああ、はい。イメージは出来た」
「サキ、クロノトリガーはやったことある? 実況で見たとかでもいいよ」
「それは実際に俺がやったね。あれは名作だよ。いろいろ移植されるわけだ」
「お察しかと思うけど、ルッカにも憧れたしロボが可愛いよね」
「ことごとく期待を裏切らないね」
――という話を陸としたことはない。何でしてないかっていうと、そういう話の流れになってないから。どうしてもロボット、機械の何がどうしてああしてっていうことを話してると今、そしてこれから実現するであろう技術の話になってしまうから。
陸は一言で言えば文学少年だから、創作物に関する話に対する理解はそれなりにあると思う。でもゲームの話もしてないし、そういった、私の好きな作品の話云々のことにはなかなか行けなくて。サキ相手だとこんなに自然に話せるのに、不思議で仕方ない。
「そういう趣味ってやっぱり物心ついたときから?」
「そうだね。アニメや特撮のロボットとか乗り物に喜ぶ子供で、働く車とかも大好き。マンガやゲームでメカニックの女の子に出会ってからは、私もこうなりたいって思って今に至ってる。おかしいかな」
「ううん。凄くいいと思うよ。……らしくないね、レナが「おかしいかな」なんて聞くとか」
「やっぱり、こういう趣味だから「女の子なのに」ってよく言われたんだ」
「確かに言われがちな趣味ではあるね。親御さんとか?」
「ううん、うちの親はむしろ協力的。お父さんとツーリングも行くし」
「それはお父さんは嬉しいだろうね。お母さんは?」
「特撮の話とかするよ。お母さんは若手俳優を目当てに見てる感じだけど、録画とかしてくれるし助かってる」
友達とかに趣味を話しても理解されないし変人扱いされることにも慣れ過ぎて、適当に話を合わせる技術ばっかり磨かれてたと思う。ナントカ女子って言われるのもうんざり。男の領域とか女の領域とか、めんどくさすぎる。やりたいことをやるのの何が悪いんだって。
「ねえサキ」
「なに?」
「陸に私の好きな、これは履修してっていう作品を推したいんだけど、この熱量で行って引かれないかな」
「熱量に関してはいいと思うけど、推したいっていうのはゲーム? アニメ? それともドラマ?」
「全部」
「うーん……まあ、簡単なプレゼン資料を作るところから始めたらいいんじゃない? ほら、本の帯を書くみたいな感じでさ」
「そうか、本の帯か。確かに、小説とかには付いてるもんね。ナイスアイディア」
「ゲームを実際にやるのは時間もかかるし、見やすい実況動画を教えてもいいかもね。ドラマやアニメは3話まで見てみて、面白ければ続きもどうぞって感じで勧めてみたら?」
私の趣味で科学館に付いて来てもらったりっていうのはあったんだけど、ガッツリとした布教活動っていうのはやったことがないから、軽めのジャブ程度にね。やりたいと思うワケで。互いの興味を紹介し合うのもいいけど、一緒の物事に関しても話したいし。
「うーん……多分だけど、ササはレナがこういう話をしても引かないんじゃない?」
「根拠は?」
「ササ自身、人には言いにくいことを抱えてるでしょ。で、レナはそれを受け入れて彼と付き合ってる。そのレナが今までササと話せなかったこと、特にそれが好きな物、一緒に分かち合いたい物の話だったら喜んで聞いてくれると思うよ。ササはそういう奴じゃないかな」
「サキ、ありがと。そうだね、もっと陸を信じなきゃね」
さっきはサキをお茶に誘って正解だったかもって言ったけど、かもじゃない、大正解だ。こういう相談にも乗ってもらって今日は本当に感謝しかない。すがやんじゃないけど、サキはいい奴で、みんな思ってるよりもっと凄いんだぞって私も推したいくらい。とりあえず彩人には自慢しとこう。
「と言うか、ササって結構タフだから、推した作品見るのに徹夜とかしても全然余裕そうで怖い」
「あー……見てくれるならほどほどにって言っとかなきゃ」
end.
++++
サキとレナの趣味の話、レナのターンです。意外とそういう話をササとしてないのね。そしてサキがご意見番みたいになってる
多分レナはここで言及されてる作品以外にもっといろいろ見たりやったりしてるし、フェーズ2の1年生の中ではオタクっ気が強い方なのかも。
そしてササに対する英才教育が始まるのか…? 2年生に上がる頃には結構な感じになってそうですね
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「それで、何を話せばいい?」
「うーん、そうだなあ。俺も密かに好きなこととかの話をしたし、レナが実は好きな物とかの話にしようか」
昼放送終わりでサキをお茶に誘った。第1学食の2階購買のイートインスペースで。番組で2ヶ月使ったBGMが変わっていたのを発端に、サキの趣味の話を聞いた。実は同じゲームをやってたり、サキが実況界の大物の脇を固める名物視聴者だったりするっていう話も聞けて楽しかった。
次は私のターンということで、私の「実は好きな物」の話をすることになった。とは言えサキとはあまりこういう話をしたことがないから、ロボットやバイクの話以外なら大体「実は好きな物」の話になってしまいそう。
「実は好きな物……特撮かな。戦隊シリーズに仮面ライダー」
「根っこでは今のレナに繋がってるね」
「あ、わかる?」
「どっちも何となくメカメカしい雰囲気があるもんね」
「話とかも好きなんだよ」
「へえ」
「あと、アンパンマンも好き」
「アンパンマン?」
「……と言うか、アニメ特有の、悪役の技術力に惹かれるヤツ」
「あーはい」
子供向けアニメとかである、悪役が乗り回してる巨大メカとかロボットとか、ああいうのが本当に大好き。絵に描いたような機械で打ちっぱなしましたみたいな拠点にしてもそうだけど。あとは、ゲームでよく見る機械で作りましたみたいな都市がシビれる。
「昔からさ、好きな物って何となくこう、系統がさ。私、ブルマになりたいって今でも思ってるし」
「ブルマ?」
「ドラゴンボールの」
「ああ、はい。イメージは出来た」
「サキ、クロノトリガーはやったことある? 実況で見たとかでもいいよ」
「それは実際に俺がやったね。あれは名作だよ。いろいろ移植されるわけだ」
「お察しかと思うけど、ルッカにも憧れたしロボが可愛いよね」
「ことごとく期待を裏切らないね」
――という話を陸としたことはない。何でしてないかっていうと、そういう話の流れになってないから。どうしてもロボット、機械の何がどうしてああしてっていうことを話してると今、そしてこれから実現するであろう技術の話になってしまうから。
陸は一言で言えば文学少年だから、創作物に関する話に対する理解はそれなりにあると思う。でもゲームの話もしてないし、そういった、私の好きな作品の話云々のことにはなかなか行けなくて。サキ相手だとこんなに自然に話せるのに、不思議で仕方ない。
「そういう趣味ってやっぱり物心ついたときから?」
「そうだね。アニメや特撮のロボットとか乗り物に喜ぶ子供で、働く車とかも大好き。マンガやゲームでメカニックの女の子に出会ってからは、私もこうなりたいって思って今に至ってる。おかしいかな」
「ううん。凄くいいと思うよ。……らしくないね、レナが「おかしいかな」なんて聞くとか」
「やっぱり、こういう趣味だから「女の子なのに」ってよく言われたんだ」
「確かに言われがちな趣味ではあるね。親御さんとか?」
「ううん、うちの親はむしろ協力的。お父さんとツーリングも行くし」
「それはお父さんは嬉しいだろうね。お母さんは?」
「特撮の話とかするよ。お母さんは若手俳優を目当てに見てる感じだけど、録画とかしてくれるし助かってる」
友達とかに趣味を話しても理解されないし変人扱いされることにも慣れ過ぎて、適当に話を合わせる技術ばっかり磨かれてたと思う。ナントカ女子って言われるのもうんざり。男の領域とか女の領域とか、めんどくさすぎる。やりたいことをやるのの何が悪いんだって。
「ねえサキ」
「なに?」
「陸に私の好きな、これは履修してっていう作品を推したいんだけど、この熱量で行って引かれないかな」
「熱量に関してはいいと思うけど、推したいっていうのはゲーム? アニメ? それともドラマ?」
「全部」
「うーん……まあ、簡単なプレゼン資料を作るところから始めたらいいんじゃない? ほら、本の帯を書くみたいな感じでさ」
「そうか、本の帯か。確かに、小説とかには付いてるもんね。ナイスアイディア」
「ゲームを実際にやるのは時間もかかるし、見やすい実況動画を教えてもいいかもね。ドラマやアニメは3話まで見てみて、面白ければ続きもどうぞって感じで勧めてみたら?」
私の趣味で科学館に付いて来てもらったりっていうのはあったんだけど、ガッツリとした布教活動っていうのはやったことがないから、軽めのジャブ程度にね。やりたいと思うワケで。互いの興味を紹介し合うのもいいけど、一緒の物事に関しても話したいし。
「うーん……多分だけど、ササはレナがこういう話をしても引かないんじゃない?」
「根拠は?」
「ササ自身、人には言いにくいことを抱えてるでしょ。で、レナはそれを受け入れて彼と付き合ってる。そのレナが今までササと話せなかったこと、特にそれが好きな物、一緒に分かち合いたい物の話だったら喜んで聞いてくれると思うよ。ササはそういう奴じゃないかな」
「サキ、ありがと。そうだね、もっと陸を信じなきゃね」
さっきはサキをお茶に誘って正解だったかもって言ったけど、かもじゃない、大正解だ。こういう相談にも乗ってもらって今日は本当に感謝しかない。すがやんじゃないけど、サキはいい奴で、みんな思ってるよりもっと凄いんだぞって私も推したいくらい。とりあえず彩人には自慢しとこう。
「と言うか、ササって結構タフだから、推した作品見るのに徹夜とかしても全然余裕そうで怖い」
「あー……見てくれるならほどほどにって言っとかなきゃ」
end.
++++
サキとレナの趣味の話、レナのターンです。意外とそういう話をササとしてないのね。そしてサキがご意見番みたいになってる
多分レナはここで言及されてる作品以外にもっといろいろ見たりやったりしてるし、フェーズ2の1年生の中ではオタクっ気が強い方なのかも。
そしてササに対する英才教育が始まるのか…? 2年生に上がる頃には結構な感じになってそうですね
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