2020(04)
■ごはんも野菜も食べよう
++++
「ああ、果林先輩。来てもらってありがとうございます」
「本当に凄いねえ」
「これでもまだ分けた結果なんですよ」
タカちゃんから救援要請があったので、部屋にお邪魔する。事前に聞いていた通り、台所にはたくさんの野菜が入った段ボールが置かれている。アタシは今日、この野菜をどうにかしてほしいという用件で呼ばれたんだ。
何でも、タカちゃんは星ヶ丘の彩人とみちる、それから同じく近所に住んでいる朝霞P先輩とお鍋をやってたらしい。そのお鍋に使ってくださいとみちるが野菜を持って来たそうなんだけど、その量がとてつもなくて。それでも一応彩人や朝霞P先輩とも分けた結果らしいんだけど。
「でも、これだけの野菜を持って来るってすごいねみちるって」
「星ヶ丘って農学部があるじゃないですか」
「そうだね」
「何か、農学部の先輩が趣味で作ってる野菜を定期的に分けてくれるそうなんですが、その量がとんでもないらしくって。みちるも普段から彩人や朝霞先輩と分けてるそうなんですけど、余るみたいですね」
「その先輩って人もどれだけ作ってるんだろうね」
「畑が趣味らしいんですよね。食べるんじゃなくて作ることを目的にしてるので収拾がつかなくなるとか」
「それでアタシが招集された、と」
「そういうワケです。俺は料理もあまり得意じゃないですし、普段は扱わない野菜もありますから」
段ボールの中にはキャベツや白菜、ブロッコリーにカボチャなどなど、いろんな野菜が入っている。今の季節の野菜ばっかりだね、さすが畑から来てるだけあって。あ、大根とカブもある。他にはニンジンにサツマイモ。
さて、ただ消費するだけなら何でもいいんだけど、問題はタカちゃんにどう食べさせるかだからね。タカちゃんは好き嫌いが多いし、普段からあんまりまともにご飯を食べてない。何とかこの機にちゃんとしたご飯を食べてもらいたい。
何を作るかは大体決まったから、スーパーまで原付でひとっ走りして足りない物を補充する。戻って来て手を洗ったら、さっそく調理を始めていく。タカちゃんはアタシを料理上手だと思ってくれてるらしいから、それなりの物を作らないとね。
「果林先輩、何か手伝いましょうか?」
「んー、そしたら今アタシ切ってるじゃん野菜。これをそれぞれ半分ずつお鍋で炒めてくれる?」
「わかりました。順番とかありますか?」
「全部一緒くたでいいよ」
切った野菜はタカちゃんに炒めてもらって、アタシは他の野菜もどんどん切って行く。全部野菜を切れたら鍋に投入して、味付けの準備。今回作ろうとしているのは野菜たっぷりミネストローネ。ホールトマトもどーんと投入。
タカちゃんは野菜が嫌いで、一番嫌いなのは生のトマト。だけど加熱すればトマトだって他の野菜だって何となく食べれるようになることを知っている。なんならトマトソースのパスタなんかは大好きだもんね。
「コンソメに、塩コショウに、ニンニクにっと」
「これは煮物ですかね」
「煮物って言うかスープだね。ミネストローネ」
「ああ、いいですね」
「ミネストローネ好き?」
「はい、好きです」
「じゃあ良かった。今回敢えてジャガイモは入れてないから。あとでジップロックに詰めて冷凍するから、明日以降もあっためて食べれるよ」
「ありがとうございます」
「朝のパンに添えるだけでもごはんの量も増えるし、バランスもよくならないかな」
タカちゃんの家にある一番大きなお鍋で作ったから、結構な量のミネストローネが出来た。とは言えアタシが食べちゃうとすぐ終わっちゃうので、今回作ったのはタカちゃんの保存食用。次に作るのが今から食べる用っていう計画で材料を切っていた。
「それじゃ、これが保存用のジップロックね」
「結構な袋になりましたね。あっためるときはレンジで大丈夫ですか?」
「レンジでもいいし、お湯であっためてもいいし。中身を割って器に入れてチンでもいいよ」
「いろんな方法で解凍できるんですね」
「あ、でもそこまで日持ちしないから、帰省までには食べ切ってね」
「わかりました」
「冷蔵庫にも書いて貼っとくし。この付箋借りるね。って言うかタカちゃん台所で付箋なんか使う柄だっけ」
「それを使ってるのは主にエイジですね」
「ですよねー」
「ミネストローネ(帰省までに食べる!)」とメモ書きをして、冷蔵庫に貼り付ける。タカちゃんのためのメモでもありつつ、エージに宛てて伝えるためのメモでもある。この部屋の台所を管理してるのはエージだって話だし。冷蔵庫整理ついでにお尻叩いてくれないかな。
「はー、これで野菜も粗方使えましたし、保存食も出来ましたし。本当にありがとうございます」
「タカちゃんにはちゃんとしたごはんを食べてもらわなきゃいけないからね。さ! さっそく食べよっか」
「そうですね」
「今食べるヤツにはジャガイモも入れたんだよ。美味しくいただきましょう。黒コショウあったっけ」
「あ、えっと、どこでしたっけ。あるにはあるんですよ」
自分の家の台所のはずなのに物の場所を把握してないのには不安になりつつも、ごはんはごはんとして美味しくいただけるはずなのでそれは本当に楽しみ。料理してると食べる時のことを考えてずっとわくわくしちゃうんだよね。
「あっ、ありました」
「それじゃあ食べようか」
「果林先輩、彩人からもらった食パンがあるんですけど、焼きますか?」
「焼く」
end.
++++
ただただタカりんが正義というだけのお話。偏食のTKGに野菜を食べさせようキャンペーン。ミネストローネが美味しい季節。
ひかりの野菜も季節ごとにみちるの元にお裾分けされているようですね。彩人もその恩恵を受けてるのかな。今の季節だとお鍋もいいね
いくらずぼらのTKGでもレンチンぐらいは出来るだろうとスープを冷凍保存する果林のお姉さん振りよ。ごはんは大事。
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「ああ、果林先輩。来てもらってありがとうございます」
「本当に凄いねえ」
「これでもまだ分けた結果なんですよ」
タカちゃんから救援要請があったので、部屋にお邪魔する。事前に聞いていた通り、台所にはたくさんの野菜が入った段ボールが置かれている。アタシは今日、この野菜をどうにかしてほしいという用件で呼ばれたんだ。
何でも、タカちゃんは星ヶ丘の彩人とみちる、それから同じく近所に住んでいる朝霞P先輩とお鍋をやってたらしい。そのお鍋に使ってくださいとみちるが野菜を持って来たそうなんだけど、その量がとてつもなくて。それでも一応彩人や朝霞P先輩とも分けた結果らしいんだけど。
「でも、これだけの野菜を持って来るってすごいねみちるって」
「星ヶ丘って農学部があるじゃないですか」
「そうだね」
「何か、農学部の先輩が趣味で作ってる野菜を定期的に分けてくれるそうなんですが、その量がとんでもないらしくって。みちるも普段から彩人や朝霞先輩と分けてるそうなんですけど、余るみたいですね」
「その先輩って人もどれだけ作ってるんだろうね」
「畑が趣味らしいんですよね。食べるんじゃなくて作ることを目的にしてるので収拾がつかなくなるとか」
「それでアタシが招集された、と」
「そういうワケです。俺は料理もあまり得意じゃないですし、普段は扱わない野菜もありますから」
段ボールの中にはキャベツや白菜、ブロッコリーにカボチャなどなど、いろんな野菜が入っている。今の季節の野菜ばっかりだね、さすが畑から来てるだけあって。あ、大根とカブもある。他にはニンジンにサツマイモ。
さて、ただ消費するだけなら何でもいいんだけど、問題はタカちゃんにどう食べさせるかだからね。タカちゃんは好き嫌いが多いし、普段からあんまりまともにご飯を食べてない。何とかこの機にちゃんとしたご飯を食べてもらいたい。
何を作るかは大体決まったから、スーパーまで原付でひとっ走りして足りない物を補充する。戻って来て手を洗ったら、さっそく調理を始めていく。タカちゃんはアタシを料理上手だと思ってくれてるらしいから、それなりの物を作らないとね。
「果林先輩、何か手伝いましょうか?」
「んー、そしたら今アタシ切ってるじゃん野菜。これをそれぞれ半分ずつお鍋で炒めてくれる?」
「わかりました。順番とかありますか?」
「全部一緒くたでいいよ」
切った野菜はタカちゃんに炒めてもらって、アタシは他の野菜もどんどん切って行く。全部野菜を切れたら鍋に投入して、味付けの準備。今回作ろうとしているのは野菜たっぷりミネストローネ。ホールトマトもどーんと投入。
タカちゃんは野菜が嫌いで、一番嫌いなのは生のトマト。だけど加熱すればトマトだって他の野菜だって何となく食べれるようになることを知っている。なんならトマトソースのパスタなんかは大好きだもんね。
「コンソメに、塩コショウに、ニンニクにっと」
「これは煮物ですかね」
「煮物って言うかスープだね。ミネストローネ」
「ああ、いいですね」
「ミネストローネ好き?」
「はい、好きです」
「じゃあ良かった。今回敢えてジャガイモは入れてないから。あとでジップロックに詰めて冷凍するから、明日以降もあっためて食べれるよ」
「ありがとうございます」
「朝のパンに添えるだけでもごはんの量も増えるし、バランスもよくならないかな」
タカちゃんの家にある一番大きなお鍋で作ったから、結構な量のミネストローネが出来た。とは言えアタシが食べちゃうとすぐ終わっちゃうので、今回作ったのはタカちゃんの保存食用。次に作るのが今から食べる用っていう計画で材料を切っていた。
「それじゃ、これが保存用のジップロックね」
「結構な袋になりましたね。あっためるときはレンジで大丈夫ですか?」
「レンジでもいいし、お湯であっためてもいいし。中身を割って器に入れてチンでもいいよ」
「いろんな方法で解凍できるんですね」
「あ、でもそこまで日持ちしないから、帰省までには食べ切ってね」
「わかりました」
「冷蔵庫にも書いて貼っとくし。この付箋借りるね。って言うかタカちゃん台所で付箋なんか使う柄だっけ」
「それを使ってるのは主にエイジですね」
「ですよねー」
「ミネストローネ(帰省までに食べる!)」とメモ書きをして、冷蔵庫に貼り付ける。タカちゃんのためのメモでもありつつ、エージに宛てて伝えるためのメモでもある。この部屋の台所を管理してるのはエージだって話だし。冷蔵庫整理ついでにお尻叩いてくれないかな。
「はー、これで野菜も粗方使えましたし、保存食も出来ましたし。本当にありがとうございます」
「タカちゃんにはちゃんとしたごはんを食べてもらわなきゃいけないからね。さ! さっそく食べよっか」
「そうですね」
「今食べるヤツにはジャガイモも入れたんだよ。美味しくいただきましょう。黒コショウあったっけ」
「あ、えっと、どこでしたっけ。あるにはあるんですよ」
自分の家の台所のはずなのに物の場所を把握してないのには不安になりつつも、ごはんはごはんとして美味しくいただけるはずなのでそれは本当に楽しみ。料理してると食べる時のことを考えてずっとわくわくしちゃうんだよね。
「あっ、ありました」
「それじゃあ食べようか」
「果林先輩、彩人からもらった食パンがあるんですけど、焼きますか?」
「焼く」
end.
++++
ただただタカりんが正義というだけのお話。偏食のTKGに野菜を食べさせようキャンペーン。ミネストローネが美味しい季節。
ひかりの野菜も季節ごとにみちるの元にお裾分けされているようですね。彩人もその恩恵を受けてるのかな。今の季節だとお鍋もいいね
いくらずぼらのTKGでもレンチンぐらいは出来るだろうとスープを冷凍保存する果林のお姉さん振りよ。ごはんは大事。
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