2020(03)
■Try a little bit of luck
++++
「あ。すいヤせんすがやん、MDを切らしてヤしたわ。こーた、お前空MD持ってね?」
「私も持ち合わせていませんね。野坂さん、空MDはありませんか?」
「さすがに今はないぞ。と言うか、何か適当なMDを潰したらいいんじゃないのか」
MMPでの番組は、MDに録音する形式を取っている。MBCCじゃ今ではもう全ての番組をパソコンでMP3形式のファイルとして保存してるけど、まだまだインターフェイス全体ではMDを使うという文化も廃れていないようだ。
さあ番組をやろうとしたのはよかったんだけど、どうやらりっちゃん先輩もこーた先輩も空のMDを切らしてしまっていたらしかった。適当なMDを潰したらと野坂先輩は言うけど、それはちょっともったいないと思ってしまう。
「MMPって昔の番組をファイル化してないっすよね? さすがにそれで過去のディスクを潰すのはもったいないです」
「でも片道15分かけて下まで行くのは面倒だしな」
「それなンすよ」
「あの、りっちゃん先輩、俺車あるんで下まで行きますか?」
「そースね。乗せてもらえると助かりヤすわ」
「俺も腹減ったしおやつでも買いに行こう」
「あっ、俺もー!」
りっちゃん先輩と野坂先輩、それからカノンを乗せて上ってきた坂道を下る。向島大学は講義棟とサークル棟が結構離れていて、徒歩なら片道15分ほどかかる。それだけ歩けば結構な運動になるよなあ。
購買の前にある30分駐車場に車を止めると、遠巻きにカランコロンと鐘の音が聞こえる。何かやってるのかと先輩たちに尋ねると、今年もこの季節かと返ってくる。どうやら向島では恒例行事のようだった。
「お楽しみ抽選会?」
「お買い上げ金額2000円ごとに1回抽選出来るンすわ。上位の豪華景品を狙うもよし、堅実に下位の文房具購入券や学食のお食事券を狙って行くもよし」
「へー、結構いいすね」
「すげー! どーしますりっちゃん先輩、俺が夢の国のペアチケット穫ったら!」
「それはカノンの権利なンで好きな人と行ってもらえリャ」
「えっそしたらすがやん一緒に行く?」
「いいな。でも、まず当たるかって話だからな」
「とりあえずここの会計を全員分合算しヤすか。そしたらMDもありヤすし2000円くらいなら行きヤせんかネ」
俺はレモンティーを1本買うことにして、他の皆さんの買い物を見守る。りっちゃん先輩はMDと、その他必要な文房具をカゴに入れている。野坂先輩とカノンはおやつと言うには少し多めのパンを買うようだ。
「あれっ、MMPの一団じゃないか。こんなところで何をやってるんだ」
「菜月先輩おはようございます! 俺たちは昼放送収録用のMDを買いに来たところでして」
「ついでに抽選会で運試しでもしよーかと」
「ああ、いつものな」
「菜月先輩も何かご入り用なのですか?」
「うちはCDを引き取りに来たんだ」
会員登録をしていると、購買でのCD購入が定価の2割引になるらしい。普通に考えてめちゃくちゃ安くないかと思う。菜月先輩は予約品受付カウンターで注文していたそれを受け取っているのだけど……えっ、何枚買ってんのこの人。
「相変わらず菜月先輩は爆買いしヤすね」
「リリースが重なるとすぐこれだ。そうだ、抽選会やりたいんだろ? うちは特に欲しいのないし、そっちで回したらいい」
「えっ、いいんすか!? 夢の国っすよ!? 菜月先輩一緒に行く人いないんすか!?」
「カノン! お前は何と失礼なことを! 菜月先輩は一緒に行く相手の候補も少ないけど、そもそもが夢の国をディスらせたら天下一品の引きこもりでいらっしゃるだけだ!」
「あー、たまにいますもんねそーゆー人! 人混みが苦手とかっすか?」
「ノサカ、カノンよりお前の方が失礼だとは言っておくぞ」
「はっ…! 申し訳ございません、事実とは言えついオブラートを忘れてしまい――ってぇ!」
「やァー、久々に決まりヤしたね」
「……あの、野坂先輩大丈夫っすか?」
「向島じャよくあるコトすわ」
「このヘンクツ理系男は措いといて、抽選会楽しんでくれ」
菜月先輩のローキックが華麗に決まる。バシッという音がか~なり痛そうだ。でも野坂先輩によれば、鋭い見た目の割に痛くない蹴りにしてくれているので下手に避ける方が痛いんだそうだ。ローキックを受ける技術が培われたのか…!
さて、菜月先輩からもらった抽選券7枚と、自分たちの会計でもらえた1枚の計8枚を手に抽選会をやっているテーブルに付く。1等の夢の国ペアチケットに2等の大人気ゲーム機、3等のお米5キロなど、いろいろな商品がある。
「8枚ありヤすし、1人2回回しヤすか」
「えっ、俺も回していいんすか?」
「いースよ」
「そしたら、お食事券を当てたら譲る感じで」
「そースね。文房具券はこっちで買い物すリャいーだけスからね」
このテの抽選会をやるのもまず久し振りだし、あんまりいい物が当たったような記憶もないから精々参加賞の粗品がもらえるくらいだろうとは思うけど。なけなしの運をどこまで絞り出せるのか、ちょっと試してみようか。
end.
++++
毎度おなじみ向島の抽選会ですが、今年は菜月さんoutのカノやんinで顔ぶれ新たに鐘が鳴っています。菜月さんのローキックも懐かしいですね
夢の国チケットを当てたがるカノンが「すがやん一緒に行く?」って即聞いてるのがただただ可愛い。カノやんは仲良し。
果たして今回は誰が何を当てていくのか! カノやんは夢の国で楽しく遊ぶことが出来るのか! 注目ですね。
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「あ。すいヤせんすがやん、MDを切らしてヤしたわ。こーた、お前空MD持ってね?」
「私も持ち合わせていませんね。野坂さん、空MDはありませんか?」
「さすがに今はないぞ。と言うか、何か適当なMDを潰したらいいんじゃないのか」
MMPでの番組は、MDに録音する形式を取っている。MBCCじゃ今ではもう全ての番組をパソコンでMP3形式のファイルとして保存してるけど、まだまだインターフェイス全体ではMDを使うという文化も廃れていないようだ。
さあ番組をやろうとしたのはよかったんだけど、どうやらりっちゃん先輩もこーた先輩も空のMDを切らしてしまっていたらしかった。適当なMDを潰したらと野坂先輩は言うけど、それはちょっともったいないと思ってしまう。
「MMPって昔の番組をファイル化してないっすよね? さすがにそれで過去のディスクを潰すのはもったいないです」
「でも片道15分かけて下まで行くのは面倒だしな」
「それなンすよ」
「あの、りっちゃん先輩、俺車あるんで下まで行きますか?」
「そースね。乗せてもらえると助かりヤすわ」
「俺も腹減ったしおやつでも買いに行こう」
「あっ、俺もー!」
りっちゃん先輩と野坂先輩、それからカノンを乗せて上ってきた坂道を下る。向島大学は講義棟とサークル棟が結構離れていて、徒歩なら片道15分ほどかかる。それだけ歩けば結構な運動になるよなあ。
購買の前にある30分駐車場に車を止めると、遠巻きにカランコロンと鐘の音が聞こえる。何かやってるのかと先輩たちに尋ねると、今年もこの季節かと返ってくる。どうやら向島では恒例行事のようだった。
「お楽しみ抽選会?」
「お買い上げ金額2000円ごとに1回抽選出来るンすわ。上位の豪華景品を狙うもよし、堅実に下位の文房具購入券や学食のお食事券を狙って行くもよし」
「へー、結構いいすね」
「すげー! どーしますりっちゃん先輩、俺が夢の国のペアチケット穫ったら!」
「それはカノンの権利なンで好きな人と行ってもらえリャ」
「えっそしたらすがやん一緒に行く?」
「いいな。でも、まず当たるかって話だからな」
「とりあえずここの会計を全員分合算しヤすか。そしたらMDもありヤすし2000円くらいなら行きヤせんかネ」
俺はレモンティーを1本買うことにして、他の皆さんの買い物を見守る。りっちゃん先輩はMDと、その他必要な文房具をカゴに入れている。野坂先輩とカノンはおやつと言うには少し多めのパンを買うようだ。
「あれっ、MMPの一団じゃないか。こんなところで何をやってるんだ」
「菜月先輩おはようございます! 俺たちは昼放送収録用のMDを買いに来たところでして」
「ついでに抽選会で運試しでもしよーかと」
「ああ、いつものな」
「菜月先輩も何かご入り用なのですか?」
「うちはCDを引き取りに来たんだ」
会員登録をしていると、購買でのCD購入が定価の2割引になるらしい。普通に考えてめちゃくちゃ安くないかと思う。菜月先輩は予約品受付カウンターで注文していたそれを受け取っているのだけど……えっ、何枚買ってんのこの人。
「相変わらず菜月先輩は爆買いしヤすね」
「リリースが重なるとすぐこれだ。そうだ、抽選会やりたいんだろ? うちは特に欲しいのないし、そっちで回したらいい」
「えっ、いいんすか!? 夢の国っすよ!? 菜月先輩一緒に行く人いないんすか!?」
「カノン! お前は何と失礼なことを! 菜月先輩は一緒に行く相手の候補も少ないけど、そもそもが夢の国をディスらせたら天下一品の引きこもりでいらっしゃるだけだ!」
「あー、たまにいますもんねそーゆー人! 人混みが苦手とかっすか?」
「ノサカ、カノンよりお前の方が失礼だとは言っておくぞ」
「はっ…! 申し訳ございません、事実とは言えついオブラートを忘れてしまい――ってぇ!」
「やァー、久々に決まりヤしたね」
「……あの、野坂先輩大丈夫っすか?」
「向島じャよくあるコトすわ」
「このヘンクツ理系男は措いといて、抽選会楽しんでくれ」
菜月先輩のローキックが華麗に決まる。バシッという音がか~なり痛そうだ。でも野坂先輩によれば、鋭い見た目の割に痛くない蹴りにしてくれているので下手に避ける方が痛いんだそうだ。ローキックを受ける技術が培われたのか…!
さて、菜月先輩からもらった抽選券7枚と、自分たちの会計でもらえた1枚の計8枚を手に抽選会をやっているテーブルに付く。1等の夢の国ペアチケットに2等の大人気ゲーム機、3等のお米5キロなど、いろいろな商品がある。
「8枚ありヤすし、1人2回回しヤすか」
「えっ、俺も回していいんすか?」
「いースよ」
「そしたら、お食事券を当てたら譲る感じで」
「そースね。文房具券はこっちで買い物すリャいーだけスからね」
このテの抽選会をやるのもまず久し振りだし、あんまりいい物が当たったような記憶もないから精々参加賞の粗品がもらえるくらいだろうとは思うけど。なけなしの運をどこまで絞り出せるのか、ちょっと試してみようか。
end.
++++
毎度おなじみ向島の抽選会ですが、今年は菜月さんoutのカノやんinで顔ぶれ新たに鐘が鳴っています。菜月さんのローキックも懐かしいですね
夢の国チケットを当てたがるカノンが「すがやん一緒に行く?」って即聞いてるのがただただ可愛い。カノやんは仲良し。
果たして今回は誰が何を当てていくのか! カノやんは夢の国で楽しく遊ぶことが出来るのか! 注目ですね。
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