2020(03)
■次走者への腕章リレー
++++
「うーん……少しずつ人が増えて来てますねー。12月だからかなー」
「そうだろうな。いくら自宅の作業環境が整っていても、場所を変えなければ作業出来んという者も一定数存在する」
「わかる気がしますねー。カフェで仕事や勉強をする人もそんな感じなんですかねー」
12月に入って、情報センターには利用者の人がちょっとずつ増え始めていた。履修登録前後やテスト前になると人が増える傾向にあるけど、今の時期は卒論の追い込みや、混雑したセンターを避ける人が早めに来てるって感じ。
俺は受付の仕事を、林原さんはバイトリーダーの書類仕事をしてる。今年の林原さんはいつものようにB番中心に仕事をしてたけど、バイトリーダーとしての仕事もあるから前よりは自習室に籠もりっ放しではなくなったなあと思う。
「綾瀬は来週にならんと戻らんようだが、来週ならまだいい」
「そうですねー。去年の感じから見てても12月はラスト2週から人が増え始めますもんねー」
「ところで川北」
「はい?」
「そろそろコイツをどうこうする頃合いだが」
そう言って林原さんは右腕にしているブルーの腕章をツンツンと叩く。この腕章は情報センターのバイトリーダーの印だ。確かに、去年もこの時期に春山さんから林原さんにこの腕章が移っていたなあと思う。え、今年はどうなるの?
「お前も春山さんからチクチクと言われ続けていただろう。通常バイトリーダーはスタッフの中で最高学年の者の中から選ばれるのだが、まさかA番専任スタッフに任せるワケにもいくまい」
「まあ、そうですよねえ」
「スタッフとしての歴もお前が一番長い。そういうワケだから、これを」
するりと外された腕章が手渡された。それはつまり、俺が林原さんの次のバイトリーダーに指名されたということだ。確かに、カナコさんは3年生だけどA番専任だしスタッフ歴も1年目。スタッフ歴で言えばアオもそうだし、そもそも有馬くんはまだ1年生。そうなるかあって。
確かに春山さんからは実質的次期バイトリーダーとして、今はナンバーツーとして林原さんを支えつつ勉強しろという風には言われていた。そうやって2年生になってからの今までは、1年生当時よりもガッツリと仕事をしてきたとは自分でも思っているけど。
だけど、いざこうして本当に腕章を渡されてみると、本当に回ってきちゃうんだと思って、それをどうしたらいいかわからない自分がいる。いや、しなきゃいけないんだろうけど。そうなるんだろうなとは薄々思っていても、どこかでまだちょっと早くないかなあと思ったりもして。
「うう……俺がバイトリーダーなんですねー……」
「オレは3月までいるつもりだ。いつまでも甘えてもらっては困るが、もうしばらくは力になろう」
「あれっ、そう言えば林原さんの進路希望って院への進学でしたっけ。どうなったんですか? 試験とか」
「そんなものはとうの昔にパスしている」
「えー! え、いや、さすがではあるんですが、いつの間に!?」
林原さんは星大の大学院にいつの間にか進むことが決まっていたようで、情報センターでのバイトをいつまで続けるかも本人の中でも既に決まっているらしい。3月までいてもらえるというのは人数的な意味でも本当に助かるしありがたい。
「まあ、それはそうとしてそういうことだからな」
「えっと、バイトリーダーって何をすればいいんですか?」
「A番とB番は特に何も変わりない。強いて言えば書類仕事が増える程度だ。スタッフのシフトを組んだり、那須田さんの尻を叩いたりだな」
「ああ……那須田さんとの兼ね合いもあるんでしたっけ。でも、シフトを組むのって難しそうですねー」
「今のメンバーはよほどかの構成員のようにスターウォーズ休暇などといったふざけた休み方をせんだろうし、強いて心配する要素があるとすれば綾瀬の公演休みと有馬の帰省程度だろう。帰省シーズンは閑散期だ、高山がいれば何とかなるだろう」
何か、ちょっとずつだけどあっという間に時間が過ぎてるんだなあって思う。俺がバイトリーダーになるくらいだもん。今の俺は2年生だから、このまま何事もなければあと2年はバイトリーダーとしての仕事をやるのかな。うう、不安だ。
「まあ、スタッフの勧誘にも今まで以上に力を入れて、帰省がどうしたなどと考えずともシフトが組めるようになれば一番いいのだがな」
「本当ですよねー」
「忘れる前に腕章をしろ」
「あっはい」
渡されていた腕章をすると、何だか変な感じしかしない。バイトリーダーかあ。
「まずは年明けの卒論ラッシュ、それを抜ければテスト前の繁忙期に入る」
「ですね」
「コピー用紙の在庫を確認して、少なければ」
「発注ですね」
「済ませてあればいいのだが、それを済ませた人間が高山の場合はどこに発注したかなど再確認させるように」
「あー……そうですね。アオってしっかりしてるけど、ちょっと抜けたところもあるんだよなー」
「発注先が学生課などになっていたら取りに行くのが面倒だからな。それに、連中はその程度のことでやたらうるさい」
end.
++++
いよいよ星大情報センターもバイトリーダーを交代する季節になったようです。しかし今回は異例ですが2年生に引き継がれることになりました
と言うかリン様はいつの間に進路が決まってたんですかね。さすが一般の学生が就活ごっこをしてる時間をUSDXの活動に充てるだけと言った人や
忘れがちになるのが蒼希のドジっ子設定……思い出した頃にやらかしてくれるといいけど、細かいヤツを連発するのも見たい。
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「うーん……少しずつ人が増えて来てますねー。12月だからかなー」
「そうだろうな。いくら自宅の作業環境が整っていても、場所を変えなければ作業出来んという者も一定数存在する」
「わかる気がしますねー。カフェで仕事や勉強をする人もそんな感じなんですかねー」
12月に入って、情報センターには利用者の人がちょっとずつ増え始めていた。履修登録前後やテスト前になると人が増える傾向にあるけど、今の時期は卒論の追い込みや、混雑したセンターを避ける人が早めに来てるって感じ。
俺は受付の仕事を、林原さんはバイトリーダーの書類仕事をしてる。今年の林原さんはいつものようにB番中心に仕事をしてたけど、バイトリーダーとしての仕事もあるから前よりは自習室に籠もりっ放しではなくなったなあと思う。
「綾瀬は来週にならんと戻らんようだが、来週ならまだいい」
「そうですねー。去年の感じから見てても12月はラスト2週から人が増え始めますもんねー」
「ところで川北」
「はい?」
「そろそろコイツをどうこうする頃合いだが」
そう言って林原さんは右腕にしているブルーの腕章をツンツンと叩く。この腕章は情報センターのバイトリーダーの印だ。確かに、去年もこの時期に春山さんから林原さんにこの腕章が移っていたなあと思う。え、今年はどうなるの?
「お前も春山さんからチクチクと言われ続けていただろう。通常バイトリーダーはスタッフの中で最高学年の者の中から選ばれるのだが、まさかA番専任スタッフに任せるワケにもいくまい」
「まあ、そうですよねえ」
「スタッフとしての歴もお前が一番長い。そういうワケだから、これを」
するりと外された腕章が手渡された。それはつまり、俺が林原さんの次のバイトリーダーに指名されたということだ。確かに、カナコさんは3年生だけどA番専任だしスタッフ歴も1年目。スタッフ歴で言えばアオもそうだし、そもそも有馬くんはまだ1年生。そうなるかあって。
確かに春山さんからは実質的次期バイトリーダーとして、今はナンバーツーとして林原さんを支えつつ勉強しろという風には言われていた。そうやって2年生になってからの今までは、1年生当時よりもガッツリと仕事をしてきたとは自分でも思っているけど。
だけど、いざこうして本当に腕章を渡されてみると、本当に回ってきちゃうんだと思って、それをどうしたらいいかわからない自分がいる。いや、しなきゃいけないんだろうけど。そうなるんだろうなとは薄々思っていても、どこかでまだちょっと早くないかなあと思ったりもして。
「うう……俺がバイトリーダーなんですねー……」
「オレは3月までいるつもりだ。いつまでも甘えてもらっては困るが、もうしばらくは力になろう」
「あれっ、そう言えば林原さんの進路希望って院への進学でしたっけ。どうなったんですか? 試験とか」
「そんなものはとうの昔にパスしている」
「えー! え、いや、さすがではあるんですが、いつの間に!?」
林原さんは星大の大学院にいつの間にか進むことが決まっていたようで、情報センターでのバイトをいつまで続けるかも本人の中でも既に決まっているらしい。3月までいてもらえるというのは人数的な意味でも本当に助かるしありがたい。
「まあ、それはそうとしてそういうことだからな」
「えっと、バイトリーダーって何をすればいいんですか?」
「A番とB番は特に何も変わりない。強いて言えば書類仕事が増える程度だ。スタッフのシフトを組んだり、那須田さんの尻を叩いたりだな」
「ああ……那須田さんとの兼ね合いもあるんでしたっけ。でも、シフトを組むのって難しそうですねー」
「今のメンバーはよほどかの構成員のようにスターウォーズ休暇などといったふざけた休み方をせんだろうし、強いて心配する要素があるとすれば綾瀬の公演休みと有馬の帰省程度だろう。帰省シーズンは閑散期だ、高山がいれば何とかなるだろう」
何か、ちょっとずつだけどあっという間に時間が過ぎてるんだなあって思う。俺がバイトリーダーになるくらいだもん。今の俺は2年生だから、このまま何事もなければあと2年はバイトリーダーとしての仕事をやるのかな。うう、不安だ。
「まあ、スタッフの勧誘にも今まで以上に力を入れて、帰省がどうしたなどと考えずともシフトが組めるようになれば一番いいのだがな」
「本当ですよねー」
「忘れる前に腕章をしろ」
「あっはい」
渡されていた腕章をすると、何だか変な感じしかしない。バイトリーダーかあ。
「まずは年明けの卒論ラッシュ、それを抜ければテスト前の繁忙期に入る」
「ですね」
「コピー用紙の在庫を確認して、少なければ」
「発注ですね」
「済ませてあればいいのだが、それを済ませた人間が高山の場合はどこに発注したかなど再確認させるように」
「あー……そうですね。アオってしっかりしてるけど、ちょっと抜けたところもあるんだよなー」
「発注先が学生課などになっていたら取りに行くのが面倒だからな。それに、連中はその程度のことでやたらうるさい」
end.
++++
いよいよ星大情報センターもバイトリーダーを交代する季節になったようです。しかし今回は異例ですが2年生に引き継がれることになりました
と言うかリン様はいつの間に進路が決まってたんですかね。さすが一般の学生が就活ごっこをしてる時間をUSDXの活動に充てるだけと言った人や
忘れがちになるのが蒼希のドジっ子設定……思い出した頃にやらかしてくれるといいけど、細かいヤツを連発するのも見たい。
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