2020(03)
■カレーうどん完成披露会
＋＋＋＋
「とうとう出来たんだ!?」
「一応後輩に試食してもらって、美味しいという評価はもらってるから」
「わーい！ いただきますなんだ！」
「本当に作ってくれたんだ」
菜月さんの部屋に招かれて、これから始まるのは菜月さん作カレーうどんの発表会。僕の他にはこの向かいに住む星羅と、その彼氏の菅野君も招待されている。菜月さんと菅野君は大学祭の時にも話していたように思うけど、それ以前の別件で知り合いになっていたようだね。
「菜月さん、野坂に試食させたのか」
「アイツなら多少マズい物を食べさせても罪悪感がないからな」
「試食の人選としては間違ってないかな？ 確かに多少マズい物を食べさせても罪悪感はないかもしれないけど、菜月さんの作った物を果たしてマズいと言うかどうか」
「その辺の批評は至って冷静だったぞ」
「そうかい。ならいいんだよ」
そして出て来た４人分のカレーうどんだ。僕のイメージにある菜月カレーというのは、一歩間違えると固形になって扱いが難しいペースト状だ。味に関しては申し分ないんだけどね。肉じゃがの風味のする非常に美味しいカレーだね。
どうやらこの３人の間で、その菜月カレーをベースにカレーうどんを作ってみたらどうかという話になっていたそうなんだ。そしてカレーうどんの食べたい季節になったということで、レシピの研究開発に勤しんでいたと。うん、実に美味しそうだね。
「いつもの菜月カレーをそのままぶっかけただけではないんだね」
「いつもとは作り方を少し変えてみたんだ」
「前に食べたカレーよりさらさらになってるんだ！」
「でも、一般的なカレーうどんの汁よりはちょっと濃い目で、菜月さんのカレーの面影は残ってるね」
「それじゃあ、せっかくだしいただこうか」
いただきまーすと一口啜ると、いつもの菜月カレーよりも少し辛めの汁が太めのうどんに絡んでその味を主張している。そしてうどんも彼女好みのコシのある固めの物をつかっているようだ。つか菜月カレーはうどんになっても普通に美味いな。
どう作り方が変わったのかというと、使う肉をひき肉からもも肉にしたのと、菜月カレーの肝とも言えるみじん切りのジャガイモを少し減らしたんだそうだ。それから、固形のタマネギの量を増やした、と。他にも些細な変更はあるけれど、主な変更点はそのくらいだ。
「おいしいんだ！」
「うん、美味しい。ちょっと出汁っぽい味が強くなった？」
「野菜を少し減らした分かもしれないな。で、うちはこれに一味をかけて食べるんだ」
「ん、僕もいいかな」
――と、彼女が用意した一味唐辛子の瓶だけど、それを１回で半分くらいは余裕で使うからこその菜月さんなんだよなあ。僕もこのカレーうどんに関しては普段より多く一味を借りたけど、これに星羅と菅野君はドン引きしてるじゃないか。お前ら、菜月さんはこんなモンじゃないからな！
「……菜月さん、辛くないんだ？」
「いや、これくらいがちょうどいい。辛いの好きだし」
「確かカンが菜月さんは味覚障害レベルで辛さを感じないって言ってたけど、これを見たら確かにって思うよなあ」
「菅野君、この程度であれば菜月さんにとっては序の口だよ」
「これで序の口!? 一味の瓶、軽く半分は使ったのに!?」
「ラーメン屋でMAX辛い表示のラーメンを注文して、それにさらに辛み増しを使うんだけど、備え付けの物を無くす勢いだからね」
「本当に凄いんだな」
「ワサビとかカラシは苦手だから味覚障害って言われるのは解せない」
一味で味を整えたカレーうどんを改めて啜り、菜月さんはうまーと満足げにしている。昔彼女と食事に行ったときのエピソードを語ったものの、僕自身彼女の辛さ耐性に関する言動を実際に見るのは久し振りだ。最近では辛いものを一緒に食べる機会はなかったからね。
サークルでやっていたカレーパーティーにしても辛さ増しの菜月スペシャルはご無沙汰だったし、僕ら基準のカレーを食べることが出来てとてもいい機会だったなと改めて思う。せっかく激辛が少し流行っていることだし、菜月さんと一緒に辛い物をわざわざ食べに行きたいね。
「菜月さんのことばっかり言うけど、圭斗も大概なんだ」
「ん、そうかな？」
「言わないでいたけど、菜月さんの使った残りをほとんど入れてるし松岡君もヤバいなとは思ってた」
「泰稚も思ったんだ」
「でも、僕は味覚障害レベルではないとは言っておくよ。菜月さんは甘みも辛みも味覚障害レベルだけどね」
「うるさいな」
「でも、これは本当に美味しい。やっぱり、菜月さんのカレーにカレーうどんは合ったんだ」
「そしたら、星羅さんのカレーにカレーうどんもやってみたらいいんじゃないかな」
「ボクのカレーにうどんは合うんだ？」
「やるだけやってみたらいいんじゃないか？ 菜月さんもいつもの作り方と変えてくれたわけだし」
「うーん……そうなんだ！ ボクもやってみるんだ！」
「星羅さんのカレーうどん来る!?」
そう言えば、去年のMMPでは夏至カレーに対抗する「冬至○○」を「カレーうどん」って言ってたっけか。冬になるとカレーうどんが食べたくなるのかな。
end.
＋＋＋＋
とうとうカレーうどんが出来たんだ!? 菜月さんがいつものカレーをカレーうどんにアレンジしたようです。
菜月さんの辛さ耐性のことはよく言われていますが、圭斗さんも実は結構アレだったりするのでMMPではツートップ扱いされています
星羅カレーのカレーうどんもなかなか美味しそうだけど、それに合ううどんの麺を探すのも良さそうよね
.
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「とうとう出来たんだ!?」
「一応後輩に試食してもらって、美味しいという評価はもらってるから」
「わーい！ いただきますなんだ！」
「本当に作ってくれたんだ」
菜月さんの部屋に招かれて、これから始まるのは菜月さん作カレーうどんの発表会。僕の他にはこの向かいに住む星羅と、その彼氏の菅野君も招待されている。菜月さんと菅野君は大学祭の時にも話していたように思うけど、それ以前の別件で知り合いになっていたようだね。
「菜月さん、野坂に試食させたのか」
「アイツなら多少マズい物を食べさせても罪悪感がないからな」
「試食の人選としては間違ってないかな？ 確かに多少マズい物を食べさせても罪悪感はないかもしれないけど、菜月さんの作った物を果たしてマズいと言うかどうか」
「その辺の批評は至って冷静だったぞ」
「そうかい。ならいいんだよ」
そして出て来た４人分のカレーうどんだ。僕のイメージにある菜月カレーというのは、一歩間違えると固形になって扱いが難しいペースト状だ。味に関しては申し分ないんだけどね。肉じゃがの風味のする非常に美味しいカレーだね。
どうやらこの３人の間で、その菜月カレーをベースにカレーうどんを作ってみたらどうかという話になっていたそうなんだ。そしてカレーうどんの食べたい季節になったということで、レシピの研究開発に勤しんでいたと。うん、実に美味しそうだね。
「いつもの菜月カレーをそのままぶっかけただけではないんだね」
「いつもとは作り方を少し変えてみたんだ」
「前に食べたカレーよりさらさらになってるんだ！」
「でも、一般的なカレーうどんの汁よりはちょっと濃い目で、菜月さんのカレーの面影は残ってるね」
「それじゃあ、せっかくだしいただこうか」
いただきまーすと一口啜ると、いつもの菜月カレーよりも少し辛めの汁が太めのうどんに絡んでその味を主張している。そしてうどんも彼女好みのコシのある固めの物をつかっているようだ。つか菜月カレーはうどんになっても普通に美味いな。
どう作り方が変わったのかというと、使う肉をひき肉からもも肉にしたのと、菜月カレーの肝とも言えるみじん切りのジャガイモを少し減らしたんだそうだ。それから、固形のタマネギの量を増やした、と。他にも些細な変更はあるけれど、主な変更点はそのくらいだ。
「おいしいんだ！」
「うん、美味しい。ちょっと出汁っぽい味が強くなった？」
「野菜を少し減らした分かもしれないな。で、うちはこれに一味をかけて食べるんだ」
「ん、僕もいいかな」
――と、彼女が用意した一味唐辛子の瓶だけど、それを１回で半分くらいは余裕で使うからこその菜月さんなんだよなあ。僕もこのカレーうどんに関しては普段より多く一味を借りたけど、これに星羅と菅野君はドン引きしてるじゃないか。お前ら、菜月さんはこんなモンじゃないからな！
「……菜月さん、辛くないんだ？」
「いや、これくらいがちょうどいい。辛いの好きだし」
「確かカンが菜月さんは味覚障害レベルで辛さを感じないって言ってたけど、これを見たら確かにって思うよなあ」
「菅野君、この程度であれば菜月さんにとっては序の口だよ」
「これで序の口!? 一味の瓶、軽く半分は使ったのに!?」
「ラーメン屋でMAX辛い表示のラーメンを注文して、それにさらに辛み増しを使うんだけど、備え付けの物を無くす勢いだからね」
「本当に凄いんだな」
「ワサビとかカラシは苦手だから味覚障害って言われるのは解せない」
一味で味を整えたカレーうどんを改めて啜り、菜月さんはうまーと満足げにしている。昔彼女と食事に行ったときのエピソードを語ったものの、僕自身彼女の辛さ耐性に関する言動を実際に見るのは久し振りだ。最近では辛いものを一緒に食べる機会はなかったからね。
サークルでやっていたカレーパーティーにしても辛さ増しの菜月スペシャルはご無沙汰だったし、僕ら基準のカレーを食べることが出来てとてもいい機会だったなと改めて思う。せっかく激辛が少し流行っていることだし、菜月さんと一緒に辛い物をわざわざ食べに行きたいね。
「菜月さんのことばっかり言うけど、圭斗も大概なんだ」
「ん、そうかな？」
「言わないでいたけど、菜月さんの使った残りをほとんど入れてるし松岡君もヤバいなとは思ってた」
「泰稚も思ったんだ」
「でも、僕は味覚障害レベルではないとは言っておくよ。菜月さんは甘みも辛みも味覚障害レベルだけどね」
「うるさいな」
「でも、これは本当に美味しい。やっぱり、菜月さんのカレーにカレーうどんは合ったんだ」
「そしたら、星羅さんのカレーにカレーうどんもやってみたらいいんじゃないかな」
「ボクのカレーにうどんは合うんだ？」
「やるだけやってみたらいいんじゃないか？ 菜月さんもいつもの作り方と変えてくれたわけだし」
「うーん……そうなんだ！ ボクもやってみるんだ！」
「星羅さんのカレーうどん来る!?」
そう言えば、去年のMMPでは夏至カレーに対抗する「冬至○○」を「カレーうどん」って言ってたっけか。冬になるとカレーうどんが食べたくなるのかな。
end.
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とうとうカレーうどんが出来たんだ!? 菜月さんがいつものカレーをカレーうどんにアレンジしたようです。
菜月さんの辛さ耐性のことはよく言われていますが、圭斗さんも実は結構アレだったりするのでMMPではツートップ扱いされています
星羅カレーのカレーうどんもなかなか美味しそうだけど、それに合ううどんの麺を探すのも良さそうよね
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