2020(03)
■思ったよりは平和島
++++
「ゴローさん、私、どこか違う卓に移動します? 例えば、雨竜と交代するとか」
今日は対策委員が主催する夏合宿の打ち上げと称した焼肉飲み会。モニター会に来てくれたりお世話になった3年生の先輩や、1年生2年生が参加しての大所帯。去年の焼肉飲み会が凄く楽しかったから、今年もそうしようかって予約するのも早かったよね。
で、くじ引きで席を決めたんだけど……みちると隣り合わせになった青敬の北星がガチガチに緊張してるんだよね。元々人とのコミュニケーションが得意な方ではないみたいなんだけど、北星はみちるを怖がってるみたくて。
それって言うのも合宿2日目、ミキサー講習での乱闘の件だよね。みちると向島の萌香が文字通りの殴り合いに発展して、っていう。あの場にいたミキサーはみんな騒然としたし、北星はそれ以来みちるへの苦手意識があるみたくって。
「だ、大丈夫です~。すみません~」
「本当に大丈夫?」
「はい~。みちるちゃんが優しい子だっていうのは~、くるちゃんから聞いて~知ってはいるので~」
「よっぽど変なことをしなければ別に何もしないし。例えば、くるみを泣かせたりすれば容赦はしないけど」
「ひ~っ、しないよ~、絶対しないよ~!」
北星が緑ヶ丘のくるちゃんを好きらしいという話は、いつしかインターフェイスでもみんなが知ってることになっていた。何か、野坂先輩のなっち先輩に対するそれみたいな感じでみんな表立って冷やかしたりしなくって、陰ながらめちゃくちゃ応援してるんだよね。
くるちゃん関係のことで北星本人をつつけるのは、青敬さんの同期以外だったら唯一みちるがそうなんだって。みちるは夏合宿の後からくるちゃんと仲良くしていて、お揃いのテディベアを買ったり一緒にお酒を飲んだりって日頃から交友を深めてるみたい。
「へえ、北星とみちるはくるみと仲良くしてくれてるんだね。お姉さんは嬉しいよ。いつもありがとね」
「いえ、くるみには良くしてもらってます」
「はい~。こちらこそ~」
この卓には北星とみちる、それからミドリと果林先輩がいる。……果林先輩がいるっていうのが食べる物の確保的な意味ではちょっと心配ではあるけど、食べ放題の店だから大丈夫っちゃ大丈夫か。
「北星、そこに紙エプロンあるからちゃんとつけなね。焼肉のたれってはねたら染みになるから」
「ありがとうございます~」
「毎回くるみが染み抜きしてくれるワケじゃないからね」
「わざとじゃないよ~」
……こう、みちるが北星を牽制してる感が物凄いなあ。果林先輩はミドリにも紙エプロンを付けるように促している。去年の夏からのイメージだけど、果林先輩ってタカティを引っ張ってるし、それこそ本人の言うようにお姉さんな雰囲気があるんだよね。
そうこうしてる間に対策委員議長のアオが挨拶をしてくれて、みんなで乾杯。こないだお酒デビューをした俺は、今回はコーラハイで乾杯。これには去年ソフトドリンクのコーラで乾杯をさせてもらった果林先輩もニッコニコだよね。飲めるようになったんだ、って。
「それじゃあ食べましょうか! いっただっきまーす!」
「……みちる、北星、積極的に取りに行かないと無くなるよ」
「はい、果林さんの噂は高木さんから聞いてます」
「え、みちるってタカちゃんとも交友あるの?」
「高木さんは彩人と仲が良くて、家が近いこともあって私もたまに食事をしたり飲んだりするんです」
っていう話は彩人からも聞いている。彩人って本当にタカティの事が好きだなーと思う。俺やマリンより懐いてるって言うか。
「そうなんだね。え、ちなみにタカちゃんは何て言ってるの?」
「果林さんは本当にいっぱい食べて、美味しそうに食べるから一緒に食事するのが楽しいと。それから本当に料理上手で、ある物で簡単に作っちゃうのに凄く美味しいって」
「え、照れるなあ」
「それから、ミドリさんもサバ缶料理のエキスパートだという風に聞いてます」
「えー! 誰から!?」
「高木さんからですね。彼女さんにもよく作ってあげてるって」
「ちょっと~! タカティ~!」
「ミドリってサバ缶好きなの?」
「地元では一般的な食材なんですよ。サバ缶があれば汁物や煮物の味が整えやすいですし重宝してます」
「へー、アタシも今度食べてみよう。ユキちゃんに好評だった料理とかってあるの?」
「最近だとサバ缶の豆乳スープうどんですかねー」
レシピも結構簡単だそうで、ミドリが女性陣にレシピを教えている。ちょっと聞いた感じでも、俺にも出来そうだ。サバ缶って万能なんだなあ。
「私もやってみようかな。くるみ誘って一緒に食べよう」
「え~! みちるちゃんばっかり~! お、俺も誘ってよ~」
「……仕方ないなあ。誘ったら本当に来る?」
「行く~! えっと、そういう時って~、材料とか持って行くんだよね~」
「そんなの気にしなくていいのに」
「そういうのはちゃんとしろって~、あやめさんと当麻が言ってた~」
みちると北星って、本当にNGな関係でもないんだなあ。くるちゃんを巡るナントカ的な? 何か、思ったよりも意外と平和な卓になってるのかもしれない。みんなそれなりにちゃんとお肉も食べられてるしね。
end.
++++
席順どうしようってツールを使って適当に分けたらみちると北星が一緒になったんで、まあこうなるよね
MBCCのお姉ちゃん、果林もいるからか話は果林を中心に回ってる感じかしら。うちのくるみがお世話になってますって話題で入れるし
タカちゃんとみちるか。お互い淡々と会話を弾ませてそうだなあとは思う。彩人がいたらどんな感じに話を回してくれるんだろうか
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「ゴローさん、私、どこか違う卓に移動します? 例えば、雨竜と交代するとか」
今日は対策委員が主催する夏合宿の打ち上げと称した焼肉飲み会。モニター会に来てくれたりお世話になった3年生の先輩や、1年生2年生が参加しての大所帯。去年の焼肉飲み会が凄く楽しかったから、今年もそうしようかって予約するのも早かったよね。
で、くじ引きで席を決めたんだけど……みちると隣り合わせになった青敬の北星がガチガチに緊張してるんだよね。元々人とのコミュニケーションが得意な方ではないみたいなんだけど、北星はみちるを怖がってるみたくて。
それって言うのも合宿2日目、ミキサー講習での乱闘の件だよね。みちると向島の萌香が文字通りの殴り合いに発展して、っていう。あの場にいたミキサーはみんな騒然としたし、北星はそれ以来みちるへの苦手意識があるみたくって。
「だ、大丈夫です~。すみません~」
「本当に大丈夫?」
「はい~。みちるちゃんが優しい子だっていうのは~、くるちゃんから聞いて~知ってはいるので~」
「よっぽど変なことをしなければ別に何もしないし。例えば、くるみを泣かせたりすれば容赦はしないけど」
「ひ~っ、しないよ~、絶対しないよ~!」
北星が緑ヶ丘のくるちゃんを好きらしいという話は、いつしかインターフェイスでもみんなが知ってることになっていた。何か、野坂先輩のなっち先輩に対するそれみたいな感じでみんな表立って冷やかしたりしなくって、陰ながらめちゃくちゃ応援してるんだよね。
くるちゃん関係のことで北星本人をつつけるのは、青敬さんの同期以外だったら唯一みちるがそうなんだって。みちるは夏合宿の後からくるちゃんと仲良くしていて、お揃いのテディベアを買ったり一緒にお酒を飲んだりって日頃から交友を深めてるみたい。
「へえ、北星とみちるはくるみと仲良くしてくれてるんだね。お姉さんは嬉しいよ。いつもありがとね」
「いえ、くるみには良くしてもらってます」
「はい~。こちらこそ~」
この卓には北星とみちる、それからミドリと果林先輩がいる。……果林先輩がいるっていうのが食べる物の確保的な意味ではちょっと心配ではあるけど、食べ放題の店だから大丈夫っちゃ大丈夫か。
「北星、そこに紙エプロンあるからちゃんとつけなね。焼肉のたれってはねたら染みになるから」
「ありがとうございます~」
「毎回くるみが染み抜きしてくれるワケじゃないからね」
「わざとじゃないよ~」
……こう、みちるが北星を牽制してる感が物凄いなあ。果林先輩はミドリにも紙エプロンを付けるように促している。去年の夏からのイメージだけど、果林先輩ってタカティを引っ張ってるし、それこそ本人の言うようにお姉さんな雰囲気があるんだよね。
そうこうしてる間に対策委員議長のアオが挨拶をしてくれて、みんなで乾杯。こないだお酒デビューをした俺は、今回はコーラハイで乾杯。これには去年ソフトドリンクのコーラで乾杯をさせてもらった果林先輩もニッコニコだよね。飲めるようになったんだ、って。
「それじゃあ食べましょうか! いっただっきまーす!」
「……みちる、北星、積極的に取りに行かないと無くなるよ」
「はい、果林さんの噂は高木さんから聞いてます」
「え、みちるってタカちゃんとも交友あるの?」
「高木さんは彩人と仲が良くて、家が近いこともあって私もたまに食事をしたり飲んだりするんです」
っていう話は彩人からも聞いている。彩人って本当にタカティの事が好きだなーと思う。俺やマリンより懐いてるって言うか。
「そうなんだね。え、ちなみにタカちゃんは何て言ってるの?」
「果林さんは本当にいっぱい食べて、美味しそうに食べるから一緒に食事するのが楽しいと。それから本当に料理上手で、ある物で簡単に作っちゃうのに凄く美味しいって」
「え、照れるなあ」
「それから、ミドリさんもサバ缶料理のエキスパートだという風に聞いてます」
「えー! 誰から!?」
「高木さんからですね。彼女さんにもよく作ってあげてるって」
「ちょっと~! タカティ~!」
「ミドリってサバ缶好きなの?」
「地元では一般的な食材なんですよ。サバ缶があれば汁物や煮物の味が整えやすいですし重宝してます」
「へー、アタシも今度食べてみよう。ユキちゃんに好評だった料理とかってあるの?」
「最近だとサバ缶の豆乳スープうどんですかねー」
レシピも結構簡単だそうで、ミドリが女性陣にレシピを教えている。ちょっと聞いた感じでも、俺にも出来そうだ。サバ缶って万能なんだなあ。
「私もやってみようかな。くるみ誘って一緒に食べよう」
「え~! みちるちゃんばっかり~! お、俺も誘ってよ~」
「……仕方ないなあ。誘ったら本当に来る?」
「行く~! えっと、そういう時って~、材料とか持って行くんだよね~」
「そんなの気にしなくていいのに」
「そういうのはちゃんとしろって~、あやめさんと当麻が言ってた~」
みちると北星って、本当にNGな関係でもないんだなあ。くるちゃんを巡るナントカ的な? 何か、思ったよりも意外と平和な卓になってるのかもしれない。みんなそれなりにちゃんとお肉も食べられてるしね。
end.
++++
席順どうしようってツールを使って適当に分けたらみちると北星が一緒になったんで、まあこうなるよね
MBCCのお姉ちゃん、果林もいるからか話は果林を中心に回ってる感じかしら。うちのくるみがお世話になってますって話題で入れるし
タカちゃんとみちるか。お互い淡々と会話を弾ませてそうだなあとは思う。彩人がいたらどんな感じに話を回してくれるんだろうか
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