2020(03)
■ブートキャンプのお誘い
++++
「う~ん、おいし~! やっぱコンビニスイーツの原点はシュークリームだよ~!」
「くるみお前また食ってんの。美味いのはわかるけど」
「そういつも間食してて、夜ご飯入らなくならない?」
「夕方のおやつはまだセーフじゃないかな。あたし夜も全然食べれちゃう」
くるみがサークル室でおやつと称してコンビニスイーツを食べているのもよく見る光景になった。パン食の果林先輩かスイーツのくるみかっていう感じで。それにすがやんとサキが横槍を入れるのがいつもの流れだ。
「ねえシノ、おやつ食べても全然夜は食べるよね?」
「ああ、余裕余裕!」
「保険をかけたね。シノなら絶対否定されないから。本当はちょっと罪悪感があることを隠し切れてない」
「うっ…! サキの意地悪! だっておいしいんだもん! 食べたいんだもん!」
「あーあー、わかるよくるみ。授業終わった後の甘いモンって最高だよな、頭使って糖分欲するんだよ」
「すがや~ん! すがやんは優しいねえ、サキとは大違い!」
「別に、食べるのを悪いとは言ってないのに」
サキはちょっと災難だったけど、みんなの言っていることはそれなりにわかるし内容が平和なので特に口も出さないし黙って見守るだけ。サキに対してくるみは怒ってるけど、5分後にはケロッとしてるはずだから。
「そう言えば高木先輩が甘いの食べてるのあまり見ませんね。先輩、甘い物は好きですか?」
「あ、うん。好きだよ。紅茶だって甘いの飲んでるでしょ」
「そーっすね。高木先輩は午後ティーのストレートっすよね」
「で、すがやんはレモンティー」
「え、午後ティーって言うほど甘くなくないですか? って言うか高木先輩てあんまり食べないから痩せてるんだと思うんですけど、実際どうなんですか?」
「それを俺に聞くかな」
「くるみが言うほど食べてなくもなくない? 至って一般的だと思うけど」
「サキと比べるからでしょ! あたしは普通の人と比べてるの! ねえすがやん!」
「サキ、ドンマイ」
確かに俺は寝坊したときなんかはあんまり食べないんだけど、普通に食べるときは全然食べていると思う。果林先輩なんかに言わせるとそれでも全然足りてないそうだけど、それは果林先輩基準だからじゃないかといつも思っている。
甘い物もしっかりした食事も普通に好きだし、お金に余裕があれば購買でちょっと間食なんかもする。第1学食2階の購買で売ってるお好み焼きは、100円でしっかりしたボリュームだから本当にいつも助けられている。
「おはよー」
「あっ、果林先輩! 高木先輩って全然食べないですよね!」
「どーしたのくるみ。確かにタカちゃんはあんまり食べないけど」
「サキがあたしの間食にケチ付けてくるんです!」
「だから違うって言ってるじゃない」
「すがやん、元々の話は?」
「おやつを食べても晩飯が食えるか食えないかって話っすね。くるみが今さっきシュークリーム食ってたんすけど、それを見たサキがいつも間食してて夜食べられなくならないかーって」
「果林先輩はおやつ食べても夜は余裕ですよね!」
「ですよねー」
「また保険かけた」
「また意地悪言った!」
「それでタカちゃんのごはんにどう飛んだの?」
「高木先輩はあんま食べないから痩せてるんじゃないか、的な話っすね」
「それはそうだね」
聞くまでもなく分かり切ってた答えだけど、やっぱりそう返ってきますよねー。まあまあ食べてるとは思うんだけどな。確かに白米しか食べないときもあるけど、それでも茶碗2杯は食べてるし。白米のままとのりたまと、2パターンの味を楽しんでるし。
「言って食べる量と体型の因果関係は果林先輩が破壊してるから。高木先輩の食べる量だけでは一概に言えないね」
「そう言われれば確かに。果林先輩、あんだけ食ってるのどこに消えてるんすか?」
「それがアタシにもわかんないんだよね」
「果林先輩ってあれだけ食べても太らないんですか!?」
「うん、全然太んない」
「えー! 羨ましー! どうやって体型維持してるんですか!?」
「何も特別なことはしてないからアドバイスは出来ないよね」
特別なことはしていないと果林先輩は言うけど、俺は知っている。果林先輩は授業の空きコマなんかに暇だからという理由で学内のジムで体を動かしていることを。果林先輩にとっては日常だけど、普通の人にとっては十分特別な運動だ。
果林先輩が特異体質なのは実際そうなんだけど、それでも陸上部時代のルーティンを守りたいとか筋力を維持したいという理由でトレーニングも継続してやっている。食べた物を代謝するだけの土壌は一般の人より整っているはずだ。
「くるみ、果林先輩は何もしてないって言うけど実際はジムとか行ってるからね」
「あー、やっぱり!」
「せっかく学内にジムあるんだから使わないと損じゃんね。一般のジムより全然安いし回数券とかあるのが使いやすいからね。知ってた? ランニングマシンで走った分だけミドカのポイントになるんだよ」
「えっ、本当ですか?」
「うん、本当。今は5倍キャンペーン中だから100メートルで5点」
「あんまり周知されてないですよね」
「そのチラシ、ジムにしか貼ってないからね」
「でも、あたしも運動とかした方がいいかなって気がしてきました! 果林先輩、1回ジムに連れてってください! 先輩がどんな風に運動してるのか体験したいです!」
「うん、それは全然いいよ。男子も来る? タカちゃんは来ようか、スタジオ泊続きで体鈍ってるはずだから。すがやんとサキは?」
「あっ、俺はやります!」
「俺は遠慮します」
えーっと……これ、俺は否応なしに果林先輩式トレーニングに参加させられるってことなのかな。……元陸上インハイ選手のトレーニングに根っからの文化系の俺がついていけるはずがないんですよねー。こわいなー。
end.
++++
軍隊式とかにはならないと思うけど、果林って元々筋トレとか普通にやってるからタカちゃんとくるみがひいひい言ってるのに鞭を打ちそうではある
くるみとサキがちょっとバチバチ、ピリピリしてるのもなかなかにかわいい。すがやんは多分2人ともにフォローは入れてる。板挟み体質。
走った分だけポイントになるっていうのは果林にとってはなかなかお得なシステムですね。体を動かして得たポイントでまたご飯を食べられてって
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「う~ん、おいし~! やっぱコンビニスイーツの原点はシュークリームだよ~!」
「くるみお前また食ってんの。美味いのはわかるけど」
「そういつも間食してて、夜ご飯入らなくならない?」
「夕方のおやつはまだセーフじゃないかな。あたし夜も全然食べれちゃう」
くるみがサークル室でおやつと称してコンビニスイーツを食べているのもよく見る光景になった。パン食の果林先輩かスイーツのくるみかっていう感じで。それにすがやんとサキが横槍を入れるのがいつもの流れだ。
「ねえシノ、おやつ食べても全然夜は食べるよね?」
「ああ、余裕余裕!」
「保険をかけたね。シノなら絶対否定されないから。本当はちょっと罪悪感があることを隠し切れてない」
「うっ…! サキの意地悪! だっておいしいんだもん! 食べたいんだもん!」
「あーあー、わかるよくるみ。授業終わった後の甘いモンって最高だよな、頭使って糖分欲するんだよ」
「すがや~ん! すがやんは優しいねえ、サキとは大違い!」
「別に、食べるのを悪いとは言ってないのに」
サキはちょっと災難だったけど、みんなの言っていることはそれなりにわかるし内容が平和なので特に口も出さないし黙って見守るだけ。サキに対してくるみは怒ってるけど、5分後にはケロッとしてるはずだから。
「そう言えば高木先輩が甘いの食べてるのあまり見ませんね。先輩、甘い物は好きですか?」
「あ、うん。好きだよ。紅茶だって甘いの飲んでるでしょ」
「そーっすね。高木先輩は午後ティーのストレートっすよね」
「で、すがやんはレモンティー」
「え、午後ティーって言うほど甘くなくないですか? って言うか高木先輩てあんまり食べないから痩せてるんだと思うんですけど、実際どうなんですか?」
「それを俺に聞くかな」
「くるみが言うほど食べてなくもなくない? 至って一般的だと思うけど」
「サキと比べるからでしょ! あたしは普通の人と比べてるの! ねえすがやん!」
「サキ、ドンマイ」
確かに俺は寝坊したときなんかはあんまり食べないんだけど、普通に食べるときは全然食べていると思う。果林先輩なんかに言わせるとそれでも全然足りてないそうだけど、それは果林先輩基準だからじゃないかといつも思っている。
甘い物もしっかりした食事も普通に好きだし、お金に余裕があれば購買でちょっと間食なんかもする。第1学食2階の購買で売ってるお好み焼きは、100円でしっかりしたボリュームだから本当にいつも助けられている。
「おはよー」
「あっ、果林先輩! 高木先輩って全然食べないですよね!」
「どーしたのくるみ。確かにタカちゃんはあんまり食べないけど」
「サキがあたしの間食にケチ付けてくるんです!」
「だから違うって言ってるじゃない」
「すがやん、元々の話は?」
「おやつを食べても晩飯が食えるか食えないかって話っすね。くるみが今さっきシュークリーム食ってたんすけど、それを見たサキがいつも間食してて夜食べられなくならないかーって」
「果林先輩はおやつ食べても夜は余裕ですよね!」
「ですよねー」
「また保険かけた」
「また意地悪言った!」
「それでタカちゃんのごはんにどう飛んだの?」
「高木先輩はあんま食べないから痩せてるんじゃないか、的な話っすね」
「それはそうだね」
聞くまでもなく分かり切ってた答えだけど、やっぱりそう返ってきますよねー。まあまあ食べてるとは思うんだけどな。確かに白米しか食べないときもあるけど、それでも茶碗2杯は食べてるし。白米のままとのりたまと、2パターンの味を楽しんでるし。
「言って食べる量と体型の因果関係は果林先輩が破壊してるから。高木先輩の食べる量だけでは一概に言えないね」
「そう言われれば確かに。果林先輩、あんだけ食ってるのどこに消えてるんすか?」
「それがアタシにもわかんないんだよね」
「果林先輩ってあれだけ食べても太らないんですか!?」
「うん、全然太んない」
「えー! 羨ましー! どうやって体型維持してるんですか!?」
「何も特別なことはしてないからアドバイスは出来ないよね」
特別なことはしていないと果林先輩は言うけど、俺は知っている。果林先輩は授業の空きコマなんかに暇だからという理由で学内のジムで体を動かしていることを。果林先輩にとっては日常だけど、普通の人にとっては十分特別な運動だ。
果林先輩が特異体質なのは実際そうなんだけど、それでも陸上部時代のルーティンを守りたいとか筋力を維持したいという理由でトレーニングも継続してやっている。食べた物を代謝するだけの土壌は一般の人より整っているはずだ。
「くるみ、果林先輩は何もしてないって言うけど実際はジムとか行ってるからね」
「あー、やっぱり!」
「せっかく学内にジムあるんだから使わないと損じゃんね。一般のジムより全然安いし回数券とかあるのが使いやすいからね。知ってた? ランニングマシンで走った分だけミドカのポイントになるんだよ」
「えっ、本当ですか?」
「うん、本当。今は5倍キャンペーン中だから100メートルで5点」
「あんまり周知されてないですよね」
「そのチラシ、ジムにしか貼ってないからね」
「でも、あたしも運動とかした方がいいかなって気がしてきました! 果林先輩、1回ジムに連れてってください! 先輩がどんな風に運動してるのか体験したいです!」
「うん、それは全然いいよ。男子も来る? タカちゃんは来ようか、スタジオ泊続きで体鈍ってるはずだから。すがやんとサキは?」
「あっ、俺はやります!」
「俺は遠慮します」
えーっと……これ、俺は否応なしに果林先輩式トレーニングに参加させられるってことなのかな。……元陸上インハイ選手のトレーニングに根っからの文化系の俺がついていけるはずがないんですよねー。こわいなー。
end.
++++
軍隊式とかにはならないと思うけど、果林って元々筋トレとか普通にやってるからタカちゃんとくるみがひいひい言ってるのに鞭を打ちそうではある
くるみとサキがちょっとバチバチ、ピリピリしてるのもなかなかにかわいい。すがやんは多分2人ともにフォローは入れてる。板挟み体質。
走った分だけポイントになるっていうのは果林にとってはなかなかお得なシステムですね。体を動かして得たポイントでまたご飯を食べられてって
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