2020(03)
■燃えろよ燃えろよお芋がうまい
++++
毎週水曜日は向島への派遣日。ここで昼放送を収録して、そのままサークルに参加して向島の皆さんとの交流をするという流れだ。もちろんただ交流したり遊んでいるだけではなく、活動報告もしっかりやらなければならないので、なかなか本格的な留学だなと慣れて来た今になってようやく思う。
サークル棟の脇にある砂利のスペースが駐車場で、車や原付が並んでいる。俺もいつものようにそこに車を停めようとすると、車などがない奥の方にMMPのメンバーが集合していた。発声練習の場所は自販機前の植え込みだし、何があったんだろうと車から降りて俺もその輪に加わる。
「やァーすがやん。おざーす」
「おはようございます。これ、何が始まるんすか?」
「もうすぐ愚民共が枝葉を集めて来ると思うンで、しばしお待ちクダサイ」
よくよく辺りを見ると、確かに奥の林の方からガサガサと音がしているような気がするんだ。向島のサークル棟は山の中だから野生動物がいる可能性も普通にあるんだけど、りっちゃん先輩が愚民って呼ぶからにはきっと3年生の先輩たちが林の中にいるんだろう。
「カノン、これ何が始まんの?」
「これだよこれこれ」
「段箱じゃん」
「りっちゃん先輩がサツマイモをもらってきたから焼き芋すんだよ。で、ジャンケンに負けた野坂先輩とヒロ先輩とこーた先輩が焚き火の材料を集めてんだ」
「焼き芋。美味そうだけど自由だなー」
MBCCでは、サークルが始まるとアナは発声練習をして、3分トークの練習をしたりリク番の練習をしたりっていう感じで各々必要な練習をしたりしている。向島ではサークルの前半ではトランプやUNOで遊び、それが終わると適当な会議をしてそれで終わるとかもある。
向島の皆さんの話によれば、水曜日は俺が来て昼放送の収録をしているから週1でまともに放送をしているしセーフ、とのこと。俺がいないときは放送サークルとは名ばかりな感じで終わることも多々あるとか。例えば、缶蹴り大会の作戦会議と練習に1回丸々使うとか。
「おーい、律ー、燃えそうなモン集めて来たけどこんなモンで良いか?」
「そースね。そんだけありャいいっショ」
先輩たちが集めてくれた木の枝とか葉っぱとか、燃えそうな物をそれらしく設置して、火を入れると焚き火になった。って言うか一応大学の敷地内だよなあ。そんなトコで焚き火なんてやって大丈夫なのかな。
芋をキッチンペーパーで包んで水をかけて、それをアルミホイルで包むと蒸されていい感じに焼き上がるらしい。本当は燃やした後の灰に埋めるのがいいらしいけどなかなかそうもいかないので、様子を見ながら回転させていくようだ。
「はー、あったけー。でも凄いな向島は。焚き火で焼き芋とか」
「これもキャンプ飯を体験しようっていう体で番組のネタになるからな」
「なるほど。何でもネタにしていくんすね」
「ちなみに去年の話になるンすが、年末特番でブラケイトっつー圭斗先輩の散歩番組を収録してたンすね。実際に圭斗先輩を歩かせて、焚き火をロケ場所に焼き芋実況なんかをやってたスね。もう1年経とうとしてヤすか、時間が経つのは早いスねェー」
「圭斗先輩が全身にカイロを貼ってらっしゃるのに火の側から動かなくて散歩番組にならなかったあの伝説のブラケイトですね」
あの時の芋は甘くて美味しかったなあとか言うほど寒くないのに圭斗先輩は大袈裟に寒がってたなあとは先輩たちが懐かしがっている。だけど、焼き芋の実況はともかく散歩だよなあ。大学祭みたく外で機材組んでたのかな。
「散歩番組なんてどーやって録るんすか? そんな長いケーブルなんてありましたっけ」
「ICレコーダーを使うンすよ。ブラケイトのためだけに中古で導入したンす」
「なるほど! えっじゃあ向島の方が収録の手法としては一歩早めにデジタル化してたんじゃないすか!」
「そう言われればそうかもしれない。でも編集とかは普通にミキサーでやってたな。今から思えば謎だ」
「はー、散歩番組なんか考えたこともなかったし、それもヒロ先輩が合宿で中継とかやってたから外に出るって発想になってたんすか?」
「いや、全然。全員がノリと勢いだけでやってるからな」
確かに、ノリと勢いじゃなかったら焼き芋やろうっていう発想にはならないよなあ。でも、ICレコーダーで録音した物があれば、ウチだったらパソコンもあるしやりたい放題の番組が出来るんじゃないか。なんなら缶蹴りの実況だって出来そうだ。
「さ、焼けヤしたよ。はい、すがやんとカノンからどーぞ」
「ありがとうございまーす!」
「いただきまーす! わ、中超真っ黄色! 甘そ~!」
「ん、甘い!」
「マジか! 俺も俺も! ふーっ……ん、うめ~! 甘いっす、美味いっす!」
「そしたら2、3年も食いヤしょーか」
とりあえず、焚き火と焼き芋の写真を1枚。それをMBCC1年のグループLINEにのっける。多分大体のメンバーから「何やってんだ」って思われそうだけど、くるみは甘い焼き芋に食い付くかな?
「キャンプ飯って言うからには、飯盒で飯とか焚いてみたいっすね」
「あ~、アリだ。絶対美味い」
「それならカレーも欲しいところですね」
「はっ…! カレパのフラグ!?」
「野坂、どこで誰が作ったカレーを食うンすか」
end.
++++
キャンプ飯と言えばキャンプ飯かもしれない焚き火での焼き芋です。向島はこれがあるから自由なんだよな。許可取りに関しては不明。
すがやんとカノンって喋り方とかも似てるからあんまり差別化できないなあ。でもすがやんの方が大人しめかな。夏の話ですがやんが俺に合わせてくれてるって言われてるしね
MBCCメンバーにも焼き芋の話が回ってるのね。次回のサークルは向島との交流会の日だけど、その話には触れられるのかしら
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毎週水曜日は向島への派遣日。ここで昼放送を収録して、そのままサークルに参加して向島の皆さんとの交流をするという流れだ。もちろんただ交流したり遊んでいるだけではなく、活動報告もしっかりやらなければならないので、なかなか本格的な留学だなと慣れて来た今になってようやく思う。
サークル棟の脇にある砂利のスペースが駐車場で、車や原付が並んでいる。俺もいつものようにそこに車を停めようとすると、車などがない奥の方にMMPのメンバーが集合していた。発声練習の場所は自販機前の植え込みだし、何があったんだろうと車から降りて俺もその輪に加わる。
「やァーすがやん。おざーす」
「おはようございます。これ、何が始まるんすか?」
「もうすぐ愚民共が枝葉を集めて来ると思うンで、しばしお待ちクダサイ」
よくよく辺りを見ると、確かに奥の林の方からガサガサと音がしているような気がするんだ。向島のサークル棟は山の中だから野生動物がいる可能性も普通にあるんだけど、りっちゃん先輩が愚民って呼ぶからにはきっと3年生の先輩たちが林の中にいるんだろう。
「カノン、これ何が始まんの?」
「これだよこれこれ」
「段箱じゃん」
「りっちゃん先輩がサツマイモをもらってきたから焼き芋すんだよ。で、ジャンケンに負けた野坂先輩とヒロ先輩とこーた先輩が焚き火の材料を集めてんだ」
「焼き芋。美味そうだけど自由だなー」
MBCCでは、サークルが始まるとアナは発声練習をして、3分トークの練習をしたりリク番の練習をしたりっていう感じで各々必要な練習をしたりしている。向島ではサークルの前半ではトランプやUNOで遊び、それが終わると適当な会議をしてそれで終わるとかもある。
向島の皆さんの話によれば、水曜日は俺が来て昼放送の収録をしているから週1でまともに放送をしているしセーフ、とのこと。俺がいないときは放送サークルとは名ばかりな感じで終わることも多々あるとか。例えば、缶蹴り大会の作戦会議と練習に1回丸々使うとか。
「おーい、律ー、燃えそうなモン集めて来たけどこんなモンで良いか?」
「そースね。そんだけありャいいっショ」
先輩たちが集めてくれた木の枝とか葉っぱとか、燃えそうな物をそれらしく設置して、火を入れると焚き火になった。って言うか一応大学の敷地内だよなあ。そんなトコで焚き火なんてやって大丈夫なのかな。
芋をキッチンペーパーで包んで水をかけて、それをアルミホイルで包むと蒸されていい感じに焼き上がるらしい。本当は燃やした後の灰に埋めるのがいいらしいけどなかなかそうもいかないので、様子を見ながら回転させていくようだ。
「はー、あったけー。でも凄いな向島は。焚き火で焼き芋とか」
「これもキャンプ飯を体験しようっていう体で番組のネタになるからな」
「なるほど。何でもネタにしていくんすね」
「ちなみに去年の話になるンすが、年末特番でブラケイトっつー圭斗先輩の散歩番組を収録してたンすね。実際に圭斗先輩を歩かせて、焚き火をロケ場所に焼き芋実況なんかをやってたスね。もう1年経とうとしてヤすか、時間が経つのは早いスねェー」
「圭斗先輩が全身にカイロを貼ってらっしゃるのに火の側から動かなくて散歩番組にならなかったあの伝説のブラケイトですね」
あの時の芋は甘くて美味しかったなあとか言うほど寒くないのに圭斗先輩は大袈裟に寒がってたなあとは先輩たちが懐かしがっている。だけど、焼き芋の実況はともかく散歩だよなあ。大学祭みたく外で機材組んでたのかな。
「散歩番組なんてどーやって録るんすか? そんな長いケーブルなんてありましたっけ」
「ICレコーダーを使うンすよ。ブラケイトのためだけに中古で導入したンす」
「なるほど! えっじゃあ向島の方が収録の手法としては一歩早めにデジタル化してたんじゃないすか!」
「そう言われればそうかもしれない。でも編集とかは普通にミキサーでやってたな。今から思えば謎だ」
「はー、散歩番組なんか考えたこともなかったし、それもヒロ先輩が合宿で中継とかやってたから外に出るって発想になってたんすか?」
「いや、全然。全員がノリと勢いだけでやってるからな」
確かに、ノリと勢いじゃなかったら焼き芋やろうっていう発想にはならないよなあ。でも、ICレコーダーで録音した物があれば、ウチだったらパソコンもあるしやりたい放題の番組が出来るんじゃないか。なんなら缶蹴りの実況だって出来そうだ。
「さ、焼けヤしたよ。はい、すがやんとカノンからどーぞ」
「ありがとうございまーす!」
「いただきまーす! わ、中超真っ黄色! 甘そ~!」
「ん、甘い!」
「マジか! 俺も俺も! ふーっ……ん、うめ~! 甘いっす、美味いっす!」
「そしたら2、3年も食いヤしょーか」
とりあえず、焚き火と焼き芋の写真を1枚。それをMBCC1年のグループLINEにのっける。多分大体のメンバーから「何やってんだ」って思われそうだけど、くるみは甘い焼き芋に食い付くかな?
「キャンプ飯って言うからには、飯盒で飯とか焚いてみたいっすね」
「あ~、アリだ。絶対美味い」
「それならカレーも欲しいところですね」
「はっ…! カレパのフラグ!?」
「野坂、どこで誰が作ったカレーを食うンすか」
end.
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キャンプ飯と言えばキャンプ飯かもしれない焚き火での焼き芋です。向島はこれがあるから自由なんだよな。許可取りに関しては不明。
すがやんとカノンって喋り方とかも似てるからあんまり差別化できないなあ。でもすがやんの方が大人しめかな。夏の話ですがやんが俺に合わせてくれてるって言われてるしね
MBCCメンバーにも焼き芋の話が回ってるのね。次回のサークルは向島との交流会の日だけど、その話には触れられるのかしら
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