2020(03)
■充足のトライアングル
++++
「高木せんぱーい! お疲れさまでーす!」
「わっ。どうしたのくるみ。……だけじゃなくて、すがやんとサキもいるんだ。3人一緒?」
「はいっ!」
授業終わりで帰ろうと思っていたら、1年生3人が駆けて来た。すがやん、くるみ、それからサキの3人はとても仲が良い。3人が3人とも学部が違うんだけど、何かいつも一緒にいるイメージがあるな。
「高木先輩、最近ササとご飯に行ったんですよね!」
「そうだね。ササの家の近くのうどん屋さんに」
「えー、いいなー! ……っていう話をしてたんです!」
「俺らも先輩と飯行きたいなーって話してたんすよね」
「彩人からも聞きました。先輩の家の近くのお好み焼き屋さんに行ったって」
「えー! もっと羨ましい!」
「サキは彩人と仲が良いのかな」
「あ、定例会で一緒になってて、会議終わってから2人で飯行ってなかった?」
「うん。誘われたから」
すがくるが揃うと一気に賑やかになるなあ。会話のテンポが速すぎて俺の入る隙なんかないもんね。だから基本聞く専。って言うかサキと彩人だよ。パッと見は意外に見えそうだけど、彩人ってあれで案外陰気じゃないけど、静かな面もあるからね。そういうところが合ったのかな。
「良かったねサキ、初回で馴染めて」
「……馴染んだと言うか、すがやんが俺に話を振ってくれたり、彩人が俺に話しかけてくれたからで、1人だったらどうだったか」
「そういう縁に恵まれる運も、サキの力だから。この調子で頑張ってこう」
「はい、そうですね」
「――ってしみじみしちゃいましたけど、あたしたちは高木先輩とご飯に行きたいんです!」
「ここで会ったが100年目なんでこれから飯行きません?」
「えー……まだ5時にもなってないよ。夕飯には早くない? ねえ高木先輩。早いですよね」
「ごはんに行くのは全然いいんだけど、知っての通り、俺最近外食続きで財布がちょっと、厳しいんだよね」
「じゃあ食い溜めましょ! 俺いいトコ知ってるんすよ。とにかく安くて量が多い! シノでも満足出来ると思うんすよ」
すがやんの車にみんなで乗り込んで、そのいい店へと連れて行ってもらう。向かうのは同じ豊葦市内で、向島大学の近く。すがやんは水曜日の留学で、向島の皆さんに本当に良くしてもらっているようで何より。
向島のサークルが終わった後に、すがやんの車に乗り込んで野坂先輩や土田先輩、それからカノンと一緒にご飯を食べに行くそうだ。そんなことをやっているうちに、向島さんがよく行く食事処に詳しくなってきた、と。
「ここっす! この“たなべ”のチキンカツが美味いんす!」
店の中に入ると、壁にはたくさんの写真が飾られている。店主がそういう趣味のある人で、店に来たお客さんの写真を撮っては飾っているんだそうだ。すがやんは店主のおじさんに覚えられているようで「よう留学生!」という挨拶に「今日は緑大のメンバーで来ました!」と元気よく返している。
「この“満腹セット”っていうのがMMPの登竜門らしいんすけど、今日はMBCCなんで好きなの頼む感じで行きましょう」
「満腹セット? えーと、チキンカツが2枚にうどんかそばが2玉、ごはん、味噌汁、果物……と。790円なのに結構なボリュームだね。向島さんはこれをみんな食べるの?」
「野坂先輩とかりっちゃん先輩は余裕で食いますね。カノンはギリ食えなかったんすよね。俺も苦戦しましたけど、一応食いました」
「えー! すがやんすごーい!」
「じゃあ俺もギリギリ行けるか行けないかって感じかー……野坂先輩と土田先輩は量を食べる人だからあんまり参考にならないよね」
結局、俺はチキンカツ鍋定食(温うどん)を頼むことにした。すがやんによれば、奥村先輩がよく頼んでいるらしい(※野坂先輩情報)。つまり俺にとっても美味しいはず。すがやんはチキンカツ定食(温うどん)を、くるみはヒレカツ定食(温うどん小盛り)、サキは牛すじうどんを単品で注文。
「この向かいの“摩天楼”は中華の店なんすけど、唐揚げがすげーデカいんす。で、食後のコーヒーがセルフで、タダなんすよ」
「へえ、いろいろ行ってるんだね」
「他には他には?」
「えっと、この上の方にあるサンパチラーメンだろ。ここはおでんがうまい。あとラーメン屋が2軒ほど」
「豊葦グルメ通じゃんすがやん!」
「俺なんか全然だっつーの。それこそくるみだって高崎先輩にいろいろ連れてってもらってんだから豊葦のスイーツ通じゃねーのかよ」
「えー、それこそあたしなんて全然だよ! でも高崎先輩は豊葦のカフェ&スイーツ通で間違いないね」
すがやんとくるみがわいわいと会話をするのを後目に、サキはメニューの本をいつものように黙々と読んでるし。それでも話はちゃんと聞いているというのだから、案外バランスのいい3人なのかもしれない。
「おーい、写真撮るぞー」
「あっ、写真ですって先輩!」
「えっと、拒否権はなさそうな感じだよね?」
「こんなトコで緑大の俺らを知ってる人なんかそうそういませんって。撮っときましょうよ」
「そうですよ! せっかくですし!」
「おいサキ! メニュー表立てるな! 出て来い!」
「えー……本当に撮るの?」
end.
++++
すがくるサキをただただきゃっきゃさせたかっただけのお話。ある意味向島遠征編とも言える。
菜月さんとタカちゃんの味覚は結構近くて、好き嫌いも似ているので菜月さんに美味しければタカちゃんにとっても大体美味しい。良き指標ですね
すがやんの留学が終わるとMMPはサークル後のごはんにもなかなか行けなくなるのね。次の1年生に期待しよう
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「高木せんぱーい! お疲れさまでーす!」
「わっ。どうしたのくるみ。……だけじゃなくて、すがやんとサキもいるんだ。3人一緒?」
「はいっ!」
授業終わりで帰ろうと思っていたら、1年生3人が駆けて来た。すがやん、くるみ、それからサキの3人はとても仲が良い。3人が3人とも学部が違うんだけど、何かいつも一緒にいるイメージがあるな。
「高木先輩、最近ササとご飯に行ったんですよね!」
「そうだね。ササの家の近くのうどん屋さんに」
「えー、いいなー! ……っていう話をしてたんです!」
「俺らも先輩と飯行きたいなーって話してたんすよね」
「彩人からも聞きました。先輩の家の近くのお好み焼き屋さんに行ったって」
「えー! もっと羨ましい!」
「サキは彩人と仲が良いのかな」
「あ、定例会で一緒になってて、会議終わってから2人で飯行ってなかった?」
「うん。誘われたから」
すがくるが揃うと一気に賑やかになるなあ。会話のテンポが速すぎて俺の入る隙なんかないもんね。だから基本聞く専。って言うかサキと彩人だよ。パッと見は意外に見えそうだけど、彩人ってあれで案外陰気じゃないけど、静かな面もあるからね。そういうところが合ったのかな。
「良かったねサキ、初回で馴染めて」
「……馴染んだと言うか、すがやんが俺に話を振ってくれたり、彩人が俺に話しかけてくれたからで、1人だったらどうだったか」
「そういう縁に恵まれる運も、サキの力だから。この調子で頑張ってこう」
「はい、そうですね」
「――ってしみじみしちゃいましたけど、あたしたちは高木先輩とご飯に行きたいんです!」
「ここで会ったが100年目なんでこれから飯行きません?」
「えー……まだ5時にもなってないよ。夕飯には早くない? ねえ高木先輩。早いですよね」
「ごはんに行くのは全然いいんだけど、知っての通り、俺最近外食続きで財布がちょっと、厳しいんだよね」
「じゃあ食い溜めましょ! 俺いいトコ知ってるんすよ。とにかく安くて量が多い! シノでも満足出来ると思うんすよ」
すがやんの車にみんなで乗り込んで、そのいい店へと連れて行ってもらう。向かうのは同じ豊葦市内で、向島大学の近く。すがやんは水曜日の留学で、向島の皆さんに本当に良くしてもらっているようで何より。
向島のサークルが終わった後に、すがやんの車に乗り込んで野坂先輩や土田先輩、それからカノンと一緒にご飯を食べに行くそうだ。そんなことをやっているうちに、向島さんがよく行く食事処に詳しくなってきた、と。
「ここっす! この“たなべ”のチキンカツが美味いんす!」
店の中に入ると、壁にはたくさんの写真が飾られている。店主がそういう趣味のある人で、店に来たお客さんの写真を撮っては飾っているんだそうだ。すがやんは店主のおじさんに覚えられているようで「よう留学生!」という挨拶に「今日は緑大のメンバーで来ました!」と元気よく返している。
「この“満腹セット”っていうのがMMPの登竜門らしいんすけど、今日はMBCCなんで好きなの頼む感じで行きましょう」
「満腹セット? えーと、チキンカツが2枚にうどんかそばが2玉、ごはん、味噌汁、果物……と。790円なのに結構なボリュームだね。向島さんはこれをみんな食べるの?」
「野坂先輩とかりっちゃん先輩は余裕で食いますね。カノンはギリ食えなかったんすよね。俺も苦戦しましたけど、一応食いました」
「えー! すがやんすごーい!」
「じゃあ俺もギリギリ行けるか行けないかって感じかー……野坂先輩と土田先輩は量を食べる人だからあんまり参考にならないよね」
結局、俺はチキンカツ鍋定食(温うどん)を頼むことにした。すがやんによれば、奥村先輩がよく頼んでいるらしい(※野坂先輩情報)。つまり俺にとっても美味しいはず。すがやんはチキンカツ定食(温うどん)を、くるみはヒレカツ定食(温うどん小盛り)、サキは牛すじうどんを単品で注文。
「この向かいの“摩天楼”は中華の店なんすけど、唐揚げがすげーデカいんす。で、食後のコーヒーがセルフで、タダなんすよ」
「へえ、いろいろ行ってるんだね」
「他には他には?」
「えっと、この上の方にあるサンパチラーメンだろ。ここはおでんがうまい。あとラーメン屋が2軒ほど」
「豊葦グルメ通じゃんすがやん!」
「俺なんか全然だっつーの。それこそくるみだって高崎先輩にいろいろ連れてってもらってんだから豊葦のスイーツ通じゃねーのかよ」
「えー、それこそあたしなんて全然だよ! でも高崎先輩は豊葦のカフェ&スイーツ通で間違いないね」
すがやんとくるみがわいわいと会話をするのを後目に、サキはメニューの本をいつものように黙々と読んでるし。それでも話はちゃんと聞いているというのだから、案外バランスのいい3人なのかもしれない。
「おーい、写真撮るぞー」
「あっ、写真ですって先輩!」
「えっと、拒否権はなさそうな感じだよね?」
「こんなトコで緑大の俺らを知ってる人なんかそうそういませんって。撮っときましょうよ」
「そうですよ! せっかくですし!」
「おいサキ! メニュー表立てるな! 出て来い!」
「えー……本当に撮るの?」
end.
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すがくるサキをただただきゃっきゃさせたかっただけのお話。ある意味向島遠征編とも言える。
菜月さんとタカちゃんの味覚は結構近くて、好き嫌いも似ているので菜月さんに美味しければタカちゃんにとっても大体美味しい。良き指標ですね
すがやんの留学が終わるとMMPはサークル後のごはんにもなかなか行けなくなるのね。次の1年生に期待しよう
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