2020(03)
■即興?バンドで殴り込め
++++
10月の末頃にはもう年末の話が出始めていて、それが11月になるとさらに加速していた。今年の大晦日にも青山さん主催の音楽イベントが開かれるようで、オレも含めそれに呼ばれた面々は練習に忙しくしている。
今年はバンドメンバーのシャッフルもありつつ、基本となる形での楽曲披露などもしたいという話になったそうだ。例えばCONTINUEならCONTINUE、ブルースプリングならブルースプリングといったように、そのバンドでもやるぞと。
尤も、現在は長篠のホテルで清掃員という名の社畜を極めているらしい構成員に関しては、年末も例によって山籠もりをしているそうだ。青山さんから連絡があったそうなのだが、その返信をオレにするというのはどういう意味があってのことなのか。
「え、スラップソウル参加しねーの?」
「言って俺らは解散したバンドだからな。出るとしても個人単位なんじゃねえのか? まあ、関係が悪いとか音楽性の違いとかで解散したワケじゃねえからこの話自体は長谷川から全員に回ってるし、出たい奴は出てくれっつー話だな」
「ふーん。とうとう解散したんか」
「俺も仕事やこっちで忙しかったからな」
USDXの現場でもこの話になったのだが、どうやら塩見さんのバンドはいつの間にか解散していたらしい。実際開店休業状態だったようなのだが、塩見さんの仕事が多忙であったことや、バンド熱の低下などがその理由だそうだ。
スラップソウルでメジャーに行くと意気込んでいるメンバーもいたらしいが、その割に活動がなあなあだと。そう感じた塩見さんは、いつしかUSDXの活動を優先するようになっていたそうだ。塩見さん自体が元々メジャー指向ではなかったというのもある。
「つかさ、俺もスガもリンも、んでソルも現場にはいるんだったらUSDXで殴り込みとか出来ねーのかな」
「カン、お前何考えてんだ。USDXはネット上の活動であってだな」
「わーってるよ。だからググったらバレる既存の曲じゃなくて、去年のイベントで会ってたまたま縁のあったメンバーが即席バンドを組んで曲作りました! って体でやるんだよ。俺とソルはクラファンのサポメンでも顔合わせてるからそこで仲良くなって~っていう体でさ」
「オレは1曲2曲増える程度構わんが」
「さぁっすがリン! 石橋を叩いても渡らないスガとは違うぜ!」
いかにもカンノの言い出しそうなことだ。ただ、如何せんオレのムチャ振り耐性は常人より高いし、今回は前回のそれより準備期間が長い。曲を作るのはカンノの仕事だし、オレのやることは練習だけでいい。
今いるメンバーはキーボードが2人にベースとドラムの4人。よくあるピアノバンドに鍵盤を増やしたようなイメージでいいだろう。このメンバーであればジャンルや曲調問わず何でも出来るし、カンノはやりたい放題だ。
「で、チータ主動の即席バンドを組んだ体で行くとして? それはインストバンドなのか歌のあるバンドなのかっつーのが問題になるぞ」
「インストでも十分面白くなるとは思うんだよな、このメンツなら。そもそも俺がいる時点でな」
「相変わらず口のデカさは一級品だな」
「でも、ソルのボーカルも捨てるには勿体ない!」
「カン、仮にこの4人で歌物をやる場合、誰が作詞するのかという問題があるぞ。USDXでは朝霞がそれを全部担ってるワケだし」
「朝霞って頭おかしいよな、いつまでにこんだけの曲に詞つけろとかムチャなノルマ出されてるのにこなしてきやがる」
「そのノルマ出してる上にあれだけの曲を作ってる奴が言うことじゃないんだよな」
さすがに大晦日ともなると朝霞は山羽の実家に帰省しているそうだ。だから、いくら簡単にギターを弾けるようになったとは言え、この音楽祭への参加はまずないと見ていい。……いや、スケジュールを調整しかねないのがアイツなのだけれども。
「言ってお前がいればどんな音でも再現可能なんだから、ただ音を聞かせてもいいんじゃねえのか」
「インストか~、そうか~、やっぱ俺が要になってくるか~」
「そうだな。俺たちはお前のセンスに任せる。だからバンマスとして馬車馬のように働いてもらわねえとな」
「しゃーねーな! やってやらあ! お前ら見とけよ! すっげーのぶちかましてやるからな!」
「……塩見さんがカンを完全に操縦してる」
「いや、カンノほど扱いやすい奴もそういまい。実際、好きに泳がせればそれなりの曲を持ってくる」
調子に乗ったカンノであれば、1曲2曲などあっと言う間に作ってくるだろう。このメンバーでバンドを組んだということは塩見さんの方から共同主催の長谷川へと連絡をしてくれるそうで、正式にこの4人で動き出すこととなった。
「そーいやさ、リンお前ブルースプリングの方でも出るんだろ?」
「出ることにはなっているな」
「新曲とかあんの? お前が作曲担当なんだろ?」
「一応書いているが」
「っしゃあ! で、今度こそフルメンバー揃う?」
「いや、揃わん」
「っンだよ! 揃えよ! まーたベースいねーの!?」
「かの人は人の休みにこそ忙しい業種で、年末など特に繁忙期だ。実家に帰ることもままならず職場を走り回っていることだろう」
end.
++++
USDXではチータことカンDばかりが曲を書いているので忘れがちですが、リン様もブルースプリングでは作曲担当でした。
いよいよUSDXの音楽組4人が自分たちでバンドを組んで始動するようです。ゆーてこの人らは結構出来るから。USDXはギターとバイオリンがアレなだけで
さすが塩見さんはカンDの扱いもお手の物ですね。一緒にサポメンやって仲良くなった体だけあるぜ!
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10月の末頃にはもう年末の話が出始めていて、それが11月になるとさらに加速していた。今年の大晦日にも青山さん主催の音楽イベントが開かれるようで、オレも含めそれに呼ばれた面々は練習に忙しくしている。
今年はバンドメンバーのシャッフルもありつつ、基本となる形での楽曲披露などもしたいという話になったそうだ。例えばCONTINUEならCONTINUE、ブルースプリングならブルースプリングといったように、そのバンドでもやるぞと。
尤も、現在は長篠のホテルで清掃員という名の社畜を極めているらしい構成員に関しては、年末も例によって山籠もりをしているそうだ。青山さんから連絡があったそうなのだが、その返信をオレにするというのはどういう意味があってのことなのか。
「え、スラップソウル参加しねーの?」
「言って俺らは解散したバンドだからな。出るとしても個人単位なんじゃねえのか? まあ、関係が悪いとか音楽性の違いとかで解散したワケじゃねえからこの話自体は長谷川から全員に回ってるし、出たい奴は出てくれっつー話だな」
「ふーん。とうとう解散したんか」
「俺も仕事やこっちで忙しかったからな」
USDXの現場でもこの話になったのだが、どうやら塩見さんのバンドはいつの間にか解散していたらしい。実際開店休業状態だったようなのだが、塩見さんの仕事が多忙であったことや、バンド熱の低下などがその理由だそうだ。
スラップソウルでメジャーに行くと意気込んでいるメンバーもいたらしいが、その割に活動がなあなあだと。そう感じた塩見さんは、いつしかUSDXの活動を優先するようになっていたそうだ。塩見さん自体が元々メジャー指向ではなかったというのもある。
「つかさ、俺もスガもリンも、んでソルも現場にはいるんだったらUSDXで殴り込みとか出来ねーのかな」
「カン、お前何考えてんだ。USDXはネット上の活動であってだな」
「わーってるよ。だからググったらバレる既存の曲じゃなくて、去年のイベントで会ってたまたま縁のあったメンバーが即席バンドを組んで曲作りました! って体でやるんだよ。俺とソルはクラファンのサポメンでも顔合わせてるからそこで仲良くなって~っていう体でさ」
「オレは1曲2曲増える程度構わんが」
「さぁっすがリン! 石橋を叩いても渡らないスガとは違うぜ!」
いかにもカンノの言い出しそうなことだ。ただ、如何せんオレのムチャ振り耐性は常人より高いし、今回は前回のそれより準備期間が長い。曲を作るのはカンノの仕事だし、オレのやることは練習だけでいい。
今いるメンバーはキーボードが2人にベースとドラムの4人。よくあるピアノバンドに鍵盤を増やしたようなイメージでいいだろう。このメンバーであればジャンルや曲調問わず何でも出来るし、カンノはやりたい放題だ。
「で、チータ主動の即席バンドを組んだ体で行くとして? それはインストバンドなのか歌のあるバンドなのかっつーのが問題になるぞ」
「インストでも十分面白くなるとは思うんだよな、このメンツなら。そもそも俺がいる時点でな」
「相変わらず口のデカさは一級品だな」
「でも、ソルのボーカルも捨てるには勿体ない!」
「カン、仮にこの4人で歌物をやる場合、誰が作詞するのかという問題があるぞ。USDXでは朝霞がそれを全部担ってるワケだし」
「朝霞って頭おかしいよな、いつまでにこんだけの曲に詞つけろとかムチャなノルマ出されてるのにこなしてきやがる」
「そのノルマ出してる上にあれだけの曲を作ってる奴が言うことじゃないんだよな」
さすがに大晦日ともなると朝霞は山羽の実家に帰省しているそうだ。だから、いくら簡単にギターを弾けるようになったとは言え、この音楽祭への参加はまずないと見ていい。……いや、スケジュールを調整しかねないのがアイツなのだけれども。
「言ってお前がいればどんな音でも再現可能なんだから、ただ音を聞かせてもいいんじゃねえのか」
「インストか~、そうか~、やっぱ俺が要になってくるか~」
「そうだな。俺たちはお前のセンスに任せる。だからバンマスとして馬車馬のように働いてもらわねえとな」
「しゃーねーな! やってやらあ! お前ら見とけよ! すっげーのぶちかましてやるからな!」
「……塩見さんがカンを完全に操縦してる」
「いや、カンノほど扱いやすい奴もそういまい。実際、好きに泳がせればそれなりの曲を持ってくる」
調子に乗ったカンノであれば、1曲2曲などあっと言う間に作ってくるだろう。このメンバーでバンドを組んだということは塩見さんの方から共同主催の長谷川へと連絡をしてくれるそうで、正式にこの4人で動き出すこととなった。
「そーいやさ、リンお前ブルースプリングの方でも出るんだろ?」
「出ることにはなっているな」
「新曲とかあんの? お前が作曲担当なんだろ?」
「一応書いているが」
「っしゃあ! で、今度こそフルメンバー揃う?」
「いや、揃わん」
「っンだよ! 揃えよ! まーたベースいねーの!?」
「かの人は人の休みにこそ忙しい業種で、年末など特に繁忙期だ。実家に帰ることもままならず職場を走り回っていることだろう」
end.
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USDXではチータことカンDばかりが曲を書いているので忘れがちですが、リン様もブルースプリングでは作曲担当でした。
いよいよUSDXの音楽組4人が自分たちでバンドを組んで始動するようです。ゆーてこの人らは結構出来るから。USDXはギターとバイオリンがアレなだけで
さすが塩見さんはカンDの扱いもお手の物ですね。一緒にサポメンやって仲良くなった体だけあるぜ!
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