2020(03)

■Money and future plans

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「えーと、収入から固定費と、支出を引いて、利益はっと……」
「ドキドキ、ドキドキ」
「えー、12万4252円ですね」
「えーッ!? こーた先輩本当ですかッ!?」
「ええ、2回計算し直しましたから、間違いありませんね」

 大学祭が終わってやることは、食品ブースの収支報告だ。例によって会計のヒロではなく総務のこーたが諸経費の計算をし、いくらの利益が出たかを報告してくれる。まあ、金の事ならこーたに任せろというのは当人たちの資質もさることながら、こーたが独学で簿記の資格を取ってることも大きい。
 さて、3日間で12万ちょっとの利益が出たと、今までのMMPでは考えられない程の結果になったワケだ。今までは売り上げよりも楽しむことがメインで、赤字を出さないことをメインに少ない数を売り切ったらおしまいというスタンスだったから。
 だけど今年は今後の活動資金のために放送サークルとしてのアイデンティティであるDJブースを一旦捨て、商売に全振りした。その結果がこうだから、俺たちにもやれば出来たんだなと思い知ることとなった。

「えー、奈々先輩、どんな機材買いましょう! パソコンは絶対欲しいところですよね!」
「そーだねッ! ミキサーもちょっと古いし、少し型を上げたいねッ!」
「奈々、カノン、先のことに想いを馳せるのもいいですけど、この利益を全部あなたたちの機材に使うのはどうかと思いますよ」
「え。他に何に使うんすか! せっかく儲けた金を使っちゃダメって、それじゃあ何のために頑張ったんすか!」

 儲けた12万ちょっとの使い道を夢見ていたところにこーたから水を差され、カノンは明らかに不服な様子。だけど、2人の様子を見ていると確かに浮足立ってて地に足がちょっと付いてなさそうな感じがある。

「あの、カノン、近い近い。近いですって。別に全額取り上げようってワケじゃないですよ」
「じゃーどーゆーつもりなんすか」
「例えば、急な出費にも対応出来るよう貯金してサークル費の底上げですとか。他には、4年生の先輩方にも協力していただいたわけですから、何かしらの謝礼は必要でしょう」
「こーたの言うことにも一理ありヤす。カノン、奈々、4年生に対する謝礼についてはちッと考えてくだセェ」
「そうだぞ。4年生の先輩方の多大なるご協力のおかげで今年の俺たちがあったんだからな」
「そうですねッ! 試作会でお部屋を借りたり冷凍庫を占拠したり、調理器具を借りたり……よくよく考えたら圭斗先輩と菜月先輩なしでこの売り上げにはならなかったっす! あと、くるちゃんの歌に伴奏付けてくれたりッ!」
「実際売り上げにはトリプルメソッド効果も大きかったワケですから。サインとフライドポテトの歌の新バージョンの音源をくれたのも、菜月先輩の顔があってですし」
「そう考えたら確かにお礼は必要っすね。奈々先輩、どうします?」
「それはまた考えようッ!」

 本当に、今年のブース運営に関しては圭斗先輩と菜月先輩のご協力がなかったらここまでスムーズには行っていなかったことは間違いないので、後日盛大にお礼をさせていただこうという方針に無事着地することとなった。
 ご自宅が大学近くということでそこに拠点を張らせていただいたり、備品を借りたり圭斗先輩は調理まで手伝っていただき、菜月先輩は音楽面での手助けが非常に強力だったなあと思う。実際トリプルメソッドがライブのMCで言ってたポテトとして売れてた感もある。

「土田さん、その理屈で言えばジャガイモを仕入れさせていただいた星大さんにも何か必要になるんですかね」
「あー、確かに。でも引き取ることが人助けっていう体っシたよね。引き取った時点で解決してヤせん?」
「あと、確かあの芋は星大の放送サークルじゃなくてパソコン自習室から出た物で、ミドリが仲介役をしてたってだけだから」
「とりあえず菓子折り包んでミドリに投げときヤしょーか。奈々、定例会に行く時でも適当なお菓子を買ってミドリに渡しといてくだサイ」
「わかりましたっす!」

 さて、お礼して回るところの候補を上げて、それに各いくらくらい使うかというところまで予算を立てて初めて自分たちが自由に使える金がわかるのだ。星大さんには3000円ほど、先輩方には5000円が2人分で1万円と予算が設定されたので、その残りの使い道だ。
 やっぱり金のこととなるとこーたの説得力がこのサークルの誰よりもある。とりあえずはおおよそ半分の6万円を貯蓄に回して、ひとまず5万円で出来る設備投資を考えてみたらどうですかねと将来設計の相談が始まっている。

「それじゃあカノン、せっかくですから会計帳簿の書き方の練習をしましょう。これに大学祭の収支を記して現在の状態にしてもらえますか?」
「わかりましたっす。こーた先輩! 先輩たちとかの謝礼に関しては、領収証が来てからでいーんすよね?」
「そうですね。今記録するのは大学祭の売り上げまでです」
「えーっと、使ったお金が……」

 と言うか、誰が会計だったのやら。それはそうと次の代がとうとう動き始めた。踏ん張りどころの第10代MMP。もうしばらくは見守れるけど、その先はどうなっていくんだろうな。まあ、頑張れ。


end.


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ヒロが会計っぽい仕事をしてる姿をこの1年どのお話で見ただろうか! 大体神崎が会計の仕事をしてたんだよなあ
というワケで、MMPの食品ブースはいい具合に黒字でした。利益の全部を打ち上げに回すMBCCとは違い、ここはこれからの設備投資などに回します。
将来設計の相談って、保険屋さんみたいですね。でも、奈々とカノンの2人だとどこまでもぶっ放しそうなので今はまだ先輩がいてよかったね

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