2020(03)
■Two track on repeat
++++
「おーす菜月! お~、俺が打ち込んだの使ってくれてるじゃ~ん! うんうん、我ながらいい出来だ」
「何だお前たち、来たのか。あっ、リンさんもこんにちは」
菜月先輩とブースの横で待機をしていると、がやがやと賑やかな男性の3人組がやって来た。どうやら菜月先輩の知り合いのようなのだけど、一番背の小さい人がブースに設置したスピーカーの前でうんうんと頷きながらエンドレスリピートの曲を聞いているんだ。
スピーカーからは、くるみが即興で歌ったフライドポテトの歌を延々と流している。使用許可に関してはMMPらしいノリでぶんどって来たとだけ。そしてくるみの歌声に菜月先輩のツテで繋がるUSDXの音楽担当・チータが伴奏を付けてくれたとのこと。
「ポテトの売り上げはどーよ! ま、俺がテーマ曲を編曲したんだからそこそこ行ってるだろ?」
「曲の効果は知らないけど、まあまあだな。と言うか、寄ったなら売り上げに貢献しろ」
「いや、俺はごちそうされるべきじゃないか? 曲付けてんだし」
「それはお前がうちの歌を好き勝手に使ってることとの交換条件のはずだ」
「あー、お前マジ。そりゃあユーヤもお前に奢らされまくってるワケだな! 仕方ない、それじゃあポテトM」
「言うほど奢らせてないし、最近は自分の分は出してるぞ。ポテトMひとつー」
「……あの、失礼を承知でお尋ねしたいのですが」
「はいはい?」
「もしかして、USDXのチー」
「おー! 見てくれてる!? この会話内容で気付くっつーコトはチータ推しだな! よしよし!」
「あ、いや」
俺はソル推しですと言う隙も与えられず、チータですかと質問の全文を言い終える前に肯定したチータは上機嫌な様子。まあ、USDXの曲の一ファンであるということは、音楽担当であるチータを推しているというのと同義か。ここはそういうことにしておこう。
「あれ、菅野先輩ではありませんか」
「ああ、こーた。お前もいたのか。菜月さんと同じサークルだったんだな」
「ええ、そうなんですよ。それより、星ヶ丘の大学祭はいいんです? やっちゃんのステージは」
「ステージは昨日見たから今日は他の大学に行ってみようかって。何だかんだ俺たち、自分のステージばっかりでまともに大学祭巡りもしたことなかったから」
「そうなんですね。どうして向島大学を選ばれたんです?」
「カンが菜月さんに脅……いや、頼まれてフライドポテトの歌に伴奏を付けたそうなんだけど、それがどんな使われ方をされてるのか見に行きたいって言って」
そう言えば、こーたの先輩がUSDXコンの中の人っつってたな。チータの相棒ってことは多分この人がそうだ。向島大学っていう場所が、USDXの拠点になっているらしいキョージュの家に近いっていうロケーション的な事情もあったんだろう。
一度、確か猫カフェかどこかでお会いしたことのあるタートルネックの方も、声やチータとの絡み方的にバネ様の雰囲気そのままだし、これはUSDXのお忍び大学祭訪問って感じでいいだろう。えっ、じゃあソルさんは!? レイは? キョージュはお呼びでない。
「カンノ、そう言えば昨日ライブでトリプルメソッドが来てたぞ」
「マジか! えっ、ソーマ来てたの!?」
「ノサカの先輩とかいう院生に連れられてブース巡りしてた。それでポテト買わせたら、MCで宣伝してくれた上にこんなのをもらったんだぞ」
そう言って菜月先輩は、1曲リピートにしていたくるみの歌からトラックをひとつ進めた。すると、スピーカーから流れて来たのはギターの音。演奏はまさしくトリプルメソッドなんだけど、曲が、なんとくるみ作のフライドポテトの歌なのだ。
「だーっはっはっは! 何だこれ!」
「くるみバージョンの歌が頭にこびりついて離れなくなったとかで、トリプルメソッドバージョンの曲を急遽レコーディングしたんだと。高崎経由でその日のうちにデータでもらったから、さっそく使わせてもらおうかと」
「あの、菜月先輩。トリプルメソッドと高崎先輩の関係は」
「ギターボーカルの壮馬は高崎が昔やってたバンドのメンバーで、一言で言えば舎弟だな」
「えー!」
「おいおい、クラファンが3月に復活したときのサポートキーボード、菅野太一も忘れんなよ!」
「お前は本当に調子がいいな」
「せっかくだからくるみバージョンとトリプルメソッドバージョンを交互で流すようにしようか」
「そうだぞ。ちゃんと俺が編曲した方も使うんだぞ」
実のところ、MMPメンバーはくるみの歌が頭にこびりついてしまっていて大変なことになっていた。ここでトリプルメソッド版が来てくれたのは頭のリセットが出来るという意味で本当に嬉しい。
「菜月、ところでその芋は星大からの譲渡品か」
「そうなんですよ。何か、引き取ることが人助けとかで」
「……星大情報センターを代表して、礼を言う。その芋はオレのバイト先から発生した物だ」
「そうだったんですか。いやはや、こちらこそこんなにいい芋をタダでもらってありがとうございました。リンさん、良かったらMサイズのでも食べます? ごちそうしますけど」
「そうか。ではいただこう」
「はー!? 菜月お前! リンには奢って何で俺には金出させるんだよー!」
「リンさんは大量のジャガイモをタダで譲ってくれたんだぞ。当たり前じゃないか」
end.
++++
そう言えばMMPが仕入れたジャガイモは星大情報センターから発生したものだった。この話リン様飾りのつもりだったけど、ギリギリで思い出した。
ちなみにUSDX学生組で今回欠席のレイ君ですが、中の人は多分星ヶ丘の大学祭にいたと思われる。戸田班のステージか、それとも映研の作品か。
くるちゃんの歌は頭から離れなくなるのでちょっと困るんだろうなあ。ぐるぐる回り始めてみんな「あー」ってなるんやろなあ
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「おーす菜月! お~、俺が打ち込んだの使ってくれてるじゃ~ん! うんうん、我ながらいい出来だ」
「何だお前たち、来たのか。あっ、リンさんもこんにちは」
菜月先輩とブースの横で待機をしていると、がやがやと賑やかな男性の3人組がやって来た。どうやら菜月先輩の知り合いのようなのだけど、一番背の小さい人がブースに設置したスピーカーの前でうんうんと頷きながらエンドレスリピートの曲を聞いているんだ。
スピーカーからは、くるみが即興で歌ったフライドポテトの歌を延々と流している。使用許可に関してはMMPらしいノリでぶんどって来たとだけ。そしてくるみの歌声に菜月先輩のツテで繋がるUSDXの音楽担当・チータが伴奏を付けてくれたとのこと。
「ポテトの売り上げはどーよ! ま、俺がテーマ曲を編曲したんだからそこそこ行ってるだろ?」
「曲の効果は知らないけど、まあまあだな。と言うか、寄ったなら売り上げに貢献しろ」
「いや、俺はごちそうされるべきじゃないか? 曲付けてんだし」
「それはお前がうちの歌を好き勝手に使ってることとの交換条件のはずだ」
「あー、お前マジ。そりゃあユーヤもお前に奢らされまくってるワケだな! 仕方ない、それじゃあポテトM」
「言うほど奢らせてないし、最近は自分の分は出してるぞ。ポテトMひとつー」
「……あの、失礼を承知でお尋ねしたいのですが」
「はいはい?」
「もしかして、USDXのチー」
「おー! 見てくれてる!? この会話内容で気付くっつーコトはチータ推しだな! よしよし!」
「あ、いや」
俺はソル推しですと言う隙も与えられず、チータですかと質問の全文を言い終える前に肯定したチータは上機嫌な様子。まあ、USDXの曲の一ファンであるということは、音楽担当であるチータを推しているというのと同義か。ここはそういうことにしておこう。
「あれ、菅野先輩ではありませんか」
「ああ、こーた。お前もいたのか。菜月さんと同じサークルだったんだな」
「ええ、そうなんですよ。それより、星ヶ丘の大学祭はいいんです? やっちゃんのステージは」
「ステージは昨日見たから今日は他の大学に行ってみようかって。何だかんだ俺たち、自分のステージばっかりでまともに大学祭巡りもしたことなかったから」
「そうなんですね。どうして向島大学を選ばれたんです?」
「カンが菜月さんに脅……いや、頼まれてフライドポテトの歌に伴奏を付けたそうなんだけど、それがどんな使われ方をされてるのか見に行きたいって言って」
そう言えば、こーたの先輩がUSDXコンの中の人っつってたな。チータの相棒ってことは多分この人がそうだ。向島大学っていう場所が、USDXの拠点になっているらしいキョージュの家に近いっていうロケーション的な事情もあったんだろう。
一度、確か猫カフェかどこかでお会いしたことのあるタートルネックの方も、声やチータとの絡み方的にバネ様の雰囲気そのままだし、これはUSDXのお忍び大学祭訪問って感じでいいだろう。えっ、じゃあソルさんは!? レイは? キョージュはお呼びでない。
「カンノ、そう言えば昨日ライブでトリプルメソッドが来てたぞ」
「マジか! えっ、ソーマ来てたの!?」
「ノサカの先輩とかいう院生に連れられてブース巡りしてた。それでポテト買わせたら、MCで宣伝してくれた上にこんなのをもらったんだぞ」
そう言って菜月先輩は、1曲リピートにしていたくるみの歌からトラックをひとつ進めた。すると、スピーカーから流れて来たのはギターの音。演奏はまさしくトリプルメソッドなんだけど、曲が、なんとくるみ作のフライドポテトの歌なのだ。
「だーっはっはっは! 何だこれ!」
「くるみバージョンの歌が頭にこびりついて離れなくなったとかで、トリプルメソッドバージョンの曲を急遽レコーディングしたんだと。高崎経由でその日のうちにデータでもらったから、さっそく使わせてもらおうかと」
「あの、菜月先輩。トリプルメソッドと高崎先輩の関係は」
「ギターボーカルの壮馬は高崎が昔やってたバンドのメンバーで、一言で言えば舎弟だな」
「えー!」
「おいおい、クラファンが3月に復活したときのサポートキーボード、菅野太一も忘れんなよ!」
「お前は本当に調子がいいな」
「せっかくだからくるみバージョンとトリプルメソッドバージョンを交互で流すようにしようか」
「そうだぞ。ちゃんと俺が編曲した方も使うんだぞ」
実のところ、MMPメンバーはくるみの歌が頭にこびりついてしまっていて大変なことになっていた。ここでトリプルメソッド版が来てくれたのは頭のリセットが出来るという意味で本当に嬉しい。
「菜月、ところでその芋は星大からの譲渡品か」
「そうなんですよ。何か、引き取ることが人助けとかで」
「……星大情報センターを代表して、礼を言う。その芋はオレのバイト先から発生した物だ」
「そうだったんですか。いやはや、こちらこそこんなにいい芋をタダでもらってありがとうございました。リンさん、良かったらMサイズのでも食べます? ごちそうしますけど」
「そうか。ではいただこう」
「はー!? 菜月お前! リンには奢って何で俺には金出させるんだよー!」
「リンさんは大量のジャガイモをタダで譲ってくれたんだぞ。当たり前じゃないか」
end.
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そう言えばMMPが仕入れたジャガイモは星大情報センターから発生したものだった。この話リン様飾りのつもりだったけど、ギリギリで思い出した。
ちなみにUSDX学生組で今回欠席のレイ君ですが、中の人は多分星ヶ丘の大学祭にいたと思われる。戸田班のステージか、それとも映研の作品か。
くるちゃんの歌は頭から離れなくなるのでちょっと困るんだろうなあ。ぐるぐる回り始めてみんな「あー」ってなるんやろなあ
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