2020(03)
■暗躍のごはんでコマーシャル
++++
「千葉ちゃんのごはんでコマーシャルのコーナーでは、センタービル内佐藤ゼミラジオブースにご飯を持ってお越しいただいた方に、告知タイムをプレゼントしちゃいます。食品ブースやステージの宣伝、大学祭に関係ない内容でも要相談。条件は、私にごはんを持ってきていただくこと! ラジオブースで、待ってまーす!」
大学祭2日目、俺は果林先輩と一緒に佐藤ゼミのラジオブースで番組をやっていた。ちなみに2日目は朝の11時から番組を始めて、夕方の5時までぶっ通しの6時間番組になる予定だ。もちろん、それだけ長時間の番組をやっていた経験はない。
今年から、大学祭のラジオはインターネットや音楽アプリでの同時配信をすることになった。3学年分並ぶ佐藤ゼミのブースでもそれを流しているし、学内の各所にラジオを告知する張り紙もいくらか張ってある。数字を見れば、ちょっとは聞かれてるみたいだ。
2日目という、言わば大学祭の花形とも言える日に人のあまり来ないラジオブースに軟禁されているというのもなかなか寂しくはある。だけど、ここが果林先輩曰く暗躍の場であって、実質的に隔離されているなら暴れてやる、と。
「マイク下げました」
「ふっふっふ……これでごはんとゲストを同時に呼んで番組の尺も埋めれるっていうね」
「本当に来てくれますかね。2年生にはこういうことするからとは言ってあるんですけど」
「タカちゃん、あそこあそこ」
「あっ。米福くんじゃないですか」
ちなみに、果林先輩がラジオブースに追いやられたのはこの場所を活用するためだけど、本当の理由は食品ブースに近付けないためだ。で、それに巻き込まれたのが俺っていう。まあ、これはこれで混雑を避けられて楽ではある。
外を見れば、米福くんがトレーにご飯茶碗を乗せて持って来てくれた。見た感じ、文字通りのご飯だ。それを招き入れ、果林先輩の隣、ゲスト席に座ってもらう。ミキサー席からも見えるけど、炊き込みご飯と白いご飯、それから豚汁が本当に美味しそう。
「千葉先輩、ごはんでコマーシャルお願いします」
「いよっ! 待ってました! じゃあ打ち合わせようか。ちなみに、これは?」
「白いご飯がお米同好会のご飯で、炊き込みご飯と豚汁がゼミ2年生のブースですね。千葉先輩なら炊き込みご飯をおかずに白いご飯をいけるから持って来てって高木君が言ってたので持って来てみたんですけど」
「いいねえ! 全然イケるよ! さすがお米同好会、白いご飯がきらっきらでいい匂いだわ~。ちなみに宣伝内容は?」
「お米同好会と佐藤ゼミ2年ブースでお願いします」
「了解。それじゃあ食レポが一番説得力が高いよね」
「曲明けまで30秒です」
「はーい。タカちゃん、せっかくだしカメラ使う? そこのモニターだけでも」
「そうですね。俺は実質見てるだけですし、この角度からごはん映しますか?」
「そーね。あ、米ちゃんもマイクしてくれる?」
――と、来てくれた人の食事メニューと宣伝内容を聞いて即興で番組を組み立てていくのだ。結局、果林先輩との番組ってあんまりガチガチに決め切ったところで即興番組になっちゃうんだよなあ。楽しいから全然いいんだけど。
「千葉ちゃんのごはんでコマーシャル」のコーナーが始まって、果林先輩と米福くんのトークが進む。米福くんがこれがこういう……と説明するのと並行して果林先輩がそれを食レポしてるんだけど……何と言うか、実益を兼ねてるのが凄いよなあと。
ここでの宣伝効果がどれだけあるかわからないんだけど、米福くんによれば8号館とか屋外でも端の方で展示してる人たちは暇潰しにゼミラジオの配信を見てくれていることもあるとか。なるほど、そういう人たちで視聴者数が構成されてるのか。
「お米同好会COME※STANDは8号館822教室、佐藤ゼミ2年ご飯ブースは梅通り奥となっております! ぜひお越しくださ~い」
「マイク下げました」
「やっぱお米同好会最高。おいしい」
「よくよく考えたら、果林先輩はごはんを持って来てもらえますけど俺は基本見てるだけなのでなかなかに拷問ですね」
「あっ、タカちゃんも食べなよ。アタシ食べてるので良ければ」
「すみません、いただきます。それじゃあ、お米同好会のごはんを……ん、おいしい。あっ、果林先輩、外」
「あー! MBCCじゃん! 焼きそばカモーン!」
外にはくるみとすがやんが焼きそばを持って来てくれていた。ごはんでコマーシャル希望とのこと。米福くんと入れ替わりでブースに入った2人は果林先輩に焼きそばを差し出している。ああ~、この狭いブースでソースの匂いはテロだ~。
「果林先輩! MBCC焼きそばのコマーシャルお願いしまーす!」
「はいはーい」
「高木先輩にも差し入れっす!」
「えっ、俺の分もあるの!? ありがとう! ところで、売り上げはどんな感じ?」
「去年ほどじゃないですけど、結構いいと思います!」
外にはちらほらとこっちを見に来てる人も出てきたように思う。センタービルは人が少ないから休むには何気にちょうどいいしね。と言うか、果林先輩は食レポするからいいけど、俺はこの差し入れの焼きそばをいつ食べよう。曲の間?
end.
++++
ラジオブースに軟禁された果林の暗躍が始まりました。出歩けないならラジオブース内にご飯を持って来てもらおうという逆転の発想。
動画サイトなどでの生配信をしているというのはナノスパアップデート要素。配信の技術関係のこともタカちゃんには指導があったのかしら。
これは即興番組でもぐだぐだにならない能力を持つタカりんだからこそ出来たのかもしれない。なかなか真似しようとしても難しそうですね
.
++++
「千葉ちゃんのごはんでコマーシャルのコーナーでは、センタービル内佐藤ゼミラジオブースにご飯を持ってお越しいただいた方に、告知タイムをプレゼントしちゃいます。食品ブースやステージの宣伝、大学祭に関係ない内容でも要相談。条件は、私にごはんを持ってきていただくこと! ラジオブースで、待ってまーす!」
大学祭2日目、俺は果林先輩と一緒に佐藤ゼミのラジオブースで番組をやっていた。ちなみに2日目は朝の11時から番組を始めて、夕方の5時までぶっ通しの6時間番組になる予定だ。もちろん、それだけ長時間の番組をやっていた経験はない。
今年から、大学祭のラジオはインターネットや音楽アプリでの同時配信をすることになった。3学年分並ぶ佐藤ゼミのブースでもそれを流しているし、学内の各所にラジオを告知する張り紙もいくらか張ってある。数字を見れば、ちょっとは聞かれてるみたいだ。
2日目という、言わば大学祭の花形とも言える日に人のあまり来ないラジオブースに軟禁されているというのもなかなか寂しくはある。だけど、ここが果林先輩曰く暗躍の場であって、実質的に隔離されているなら暴れてやる、と。
「マイク下げました」
「ふっふっふ……これでごはんとゲストを同時に呼んで番組の尺も埋めれるっていうね」
「本当に来てくれますかね。2年生にはこういうことするからとは言ってあるんですけど」
「タカちゃん、あそこあそこ」
「あっ。米福くんじゃないですか」
ちなみに、果林先輩がラジオブースに追いやられたのはこの場所を活用するためだけど、本当の理由は食品ブースに近付けないためだ。で、それに巻き込まれたのが俺っていう。まあ、これはこれで混雑を避けられて楽ではある。
外を見れば、米福くんがトレーにご飯茶碗を乗せて持って来てくれた。見た感じ、文字通りのご飯だ。それを招き入れ、果林先輩の隣、ゲスト席に座ってもらう。ミキサー席からも見えるけど、炊き込みご飯と白いご飯、それから豚汁が本当に美味しそう。
「千葉先輩、ごはんでコマーシャルお願いします」
「いよっ! 待ってました! じゃあ打ち合わせようか。ちなみに、これは?」
「白いご飯がお米同好会のご飯で、炊き込みご飯と豚汁がゼミ2年生のブースですね。千葉先輩なら炊き込みご飯をおかずに白いご飯をいけるから持って来てって高木君が言ってたので持って来てみたんですけど」
「いいねえ! 全然イケるよ! さすがお米同好会、白いご飯がきらっきらでいい匂いだわ~。ちなみに宣伝内容は?」
「お米同好会と佐藤ゼミ2年ブースでお願いします」
「了解。それじゃあ食レポが一番説得力が高いよね」
「曲明けまで30秒です」
「はーい。タカちゃん、せっかくだしカメラ使う? そこのモニターだけでも」
「そうですね。俺は実質見てるだけですし、この角度からごはん映しますか?」
「そーね。あ、米ちゃんもマイクしてくれる?」
――と、来てくれた人の食事メニューと宣伝内容を聞いて即興で番組を組み立てていくのだ。結局、果林先輩との番組ってあんまりガチガチに決め切ったところで即興番組になっちゃうんだよなあ。楽しいから全然いいんだけど。
「千葉ちゃんのごはんでコマーシャル」のコーナーが始まって、果林先輩と米福くんのトークが進む。米福くんがこれがこういう……と説明するのと並行して果林先輩がそれを食レポしてるんだけど……何と言うか、実益を兼ねてるのが凄いよなあと。
ここでの宣伝効果がどれだけあるかわからないんだけど、米福くんによれば8号館とか屋外でも端の方で展示してる人たちは暇潰しにゼミラジオの配信を見てくれていることもあるとか。なるほど、そういう人たちで視聴者数が構成されてるのか。
「お米同好会COME※STANDは8号館822教室、佐藤ゼミ2年ご飯ブースは梅通り奥となっております! ぜひお越しくださ~い」
「マイク下げました」
「やっぱお米同好会最高。おいしい」
「よくよく考えたら、果林先輩はごはんを持って来てもらえますけど俺は基本見てるだけなのでなかなかに拷問ですね」
「あっ、タカちゃんも食べなよ。アタシ食べてるので良ければ」
「すみません、いただきます。それじゃあ、お米同好会のごはんを……ん、おいしい。あっ、果林先輩、外」
「あー! MBCCじゃん! 焼きそばカモーン!」
外にはくるみとすがやんが焼きそばを持って来てくれていた。ごはんでコマーシャル希望とのこと。米福くんと入れ替わりでブースに入った2人は果林先輩に焼きそばを差し出している。ああ~、この狭いブースでソースの匂いはテロだ~。
「果林先輩! MBCC焼きそばのコマーシャルお願いしまーす!」
「はいはーい」
「高木先輩にも差し入れっす!」
「えっ、俺の分もあるの!? ありがとう! ところで、売り上げはどんな感じ?」
「去年ほどじゃないですけど、結構いいと思います!」
外にはちらほらとこっちを見に来てる人も出てきたように思う。センタービルは人が少ないから休むには何気にちょうどいいしね。と言うか、果林先輩は食レポするからいいけど、俺はこの差し入れの焼きそばをいつ食べよう。曲の間?
end.
++++
ラジオブースに軟禁された果林の暗躍が始まりました。出歩けないならラジオブース内にご飯を持って来てもらおうという逆転の発想。
動画サイトなどでの生配信をしているというのはナノスパアップデート要素。配信の技術関係のこともタカちゃんには指導があったのかしら。
これは即興番組でもぐだぐだにならない能力を持つタカりんだからこそ出来たのかもしれない。なかなか真似しようとしても難しそうですね
.