2020(03)
■知らぬ接点の結合
++++
「つーか、ガチですげえ規模だな」
「先月に引き続いて集まってくれた、イカれたメンバーを紹介するぜー」
「いや、いい。全員知ってる」
宮ちゃんから「月末の木曜日に浅浦の家に来い」と呼び出され、言われるまま指定された時間に足を運ぶと、浅浦とは結び付かねえような顔がいくつもあった。察するに浅浦はただの会場提供者っつーか被害者で、主犯は伊東と宮ちゃんで間違いないだろう。
先月29日、宮ちゃんの誕生日にも浅浦の部屋で盛大な誕生パーティーが開かれていたそうだ。俺も誘われてたんだけど、火曜日だったから参加出来なかったんだ。久々に伊東の作る飯を食いながら飲みてえとは思ったけど、こればっかりは仕方ない。
今日集まっているのは家主の浅浦に伊東と宮ちゃん、リン君、太一、菅野、それから圭斗と菜月。宮ちゃんの誕生会からはメガネっ子アウトで菜月インという感じらしい。リン君まではわかるけど、宮ちゃんの誕生日で太一だの圭斗だのが出て来るのはやっぱ謎だ。勢いだけでやってんな。
「カズ、うちの誕生会の時より気合入ってるから。高崎クン全部食べちゃって」
「端からそのつもりでビールもちゃんと仕入れて来てる。ビールの減税最高かよ」
「もちろん食後にケーキも作ってあるからね高ピー」
「おっ、マジか。そいつは至れり尽くせりだな」
「伊東、何ケーキ? 一般参加者にもお恵みをー」
「大丈夫だよなっちさん、いくら高ピーでもさすがにチョコレートケーキ1ホールは食べないと思うから。みんなで分けよう」
「やった! チョコレートケーキ!」
去年もそうだったが、無制限飲みの俺の回では食後に出て来る甘い物もきっちりと用意されていた。今年は伊東の作るチョコレートケーキか。伊東は飯を作らせても美味いが、製菓ガチ勢という印象の方が先に来る。飯よりお菓子作りの方が先に目覚めてたからかもしれねえな。
「でもこの人数分分けれるかな」
「僕はチョコレート系のスイーツはあまり好んで食べないので遠慮するよ。どうぞ好きな人に食べてもらって」
「えっ、圭斗お前チョコダメなの?」
「チョコレート単体では食べるよ。だけど、チョコレートケーキなどは苦手でね」
「カズ、俺も甘いのそんな食べないしいいわー」
「ごめんねカンカン、気が回らなくて」
「チーズ用意してくれてるから許す」
「伊東、分かってるだろうけど俺も辞退」
「あ、素で忘れてた。そーだ浅浦お前甘いのダメだったな!」
「何年目の腐れ縁だと思ってんだこの野郎」
適当に乾杯をして、目の前の飯を食って行く。伊東は相変わらず台所と部屋の往復で忙しそうにしているが、楽しそうにしてるからこれでいいのだろう。これも下戸なりに考えた飲み会で生き残る術だ。部屋の方でも電気圧力鍋と真空ナントカ鍋で調理は続いている。
「美奈から話には聞いてるけど、リン君と菜月が仲良くしてるっつーのがすげえ意外だった」
「初対面は猫カフェだったか。その後、三井という男が情報センターに張り付くようになり、美奈ツテに対処法を聞くために会っていた」
「あー、そうでしたね。三井のヤツ、りっちゃんの姉さんや他の可愛い子を出待ちしてやがって」
「……アイツはどこにでも湧いてくるな」
「つか菜月、お前実家から帰ってきた時さー、男の車に乗って来てたじゃん、あれってお前の男?」
「菜月さんに男の気配だって!? 内容次第ではお麻里様に報告だ」
「そんな物騒な話じゃないぞ。大石が緑風に旅行しに来てて、最終日にスーパーまでの道案内ついでに家まで乗っけてもらったっていうだけだ」
「なんだ、大石君か。それじゃあ本当に何もないね」
「何かその旅行で大石はやたら土産物を地方配送してたそうじゃねえか。俺も拓馬さんからぶどうとワインをお裾分けしてもらって」
「あ、そうなんだ。レオンの家のぶどう園は本当に大きくて有名だから、さぞ美味しかっただろ」
「はー!? 俺にはねーのかよアイツ! 何でユーヤばっかり! 贔屓だ!」
「たまたま火曜日で西海にいたからってだけだ」
話を聞いて気になったのか、家主の浅浦はパソコンで件のぶどう園を検索して、どのワインが美味そうだと品定めをしている。それを後ろから圭斗と菅野が覗き込んでいて、これが美味しそうだのラベルがオシャレだのと盛り上がっている。
リン君を経由した菜月との因縁を思い出した太一は、あの時の金を返せと喚いている。菜月が食べた抹茶アイスの領収証をリン君から渡されて金を払わされたとか。菜月相手に金の話をしたところで勝てる奴はそういない。強いて言えば圭斗くらいか。
これだけ人がいると、話がどんどんどんどん繋がって行って、次はどこへ飛んでいくかわからなさすぎる。それでも話してる内容が何となくわかってしまうのは、少なからず話の中に共通の知り合いがいるからなのだろう。
「俺も少し休憩しようかな」
「ああ。伊東、お前も食えよ」
「……やっぱ俺、こういうの好きだな。でも大学卒業したらなかなか出来なくなんのかなー」
「機会は作るもんだろ」
「まあね。高ピー、呼んだら来てくれる?」
「都合が合えばな。星港市内にはいるし」
「あ、そうなんだ。就職決まったの?」
「おかげさまで。お前はどうなんだ」
「俺も第一志望通ったよ。晴れて就活終了。2人で住める新居を探すよ」
「おっ、同棲か。それじゃ、お互い第一志望に通ったっつーことで、乾杯」
「俺はまだ仕事があるからウーロン茶で失礼します」
end.
++++
やると言ったら本当にやるのが慧梨夏なので、高崎の誕生日に大規模なヤツをやってます。今回は菜月さんイン。圭斗さん経由で誘ったのかな。
全員が全員知り合いじゃないけど微妙な繋がりで話がどんどん散らかって行くので共通の知人の存在はやはり大きいしナノスパあるある。
そーいや高崎もいち氏も就活終了ってことは、それぞれに新居を探し始めるのね。他にもそういうキャラが何人かいそうだね。
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「つーか、ガチですげえ規模だな」
「先月に引き続いて集まってくれた、イカれたメンバーを紹介するぜー」
「いや、いい。全員知ってる」
宮ちゃんから「月末の木曜日に浅浦の家に来い」と呼び出され、言われるまま指定された時間に足を運ぶと、浅浦とは結び付かねえような顔がいくつもあった。察するに浅浦はただの会場提供者っつーか被害者で、主犯は伊東と宮ちゃんで間違いないだろう。
先月29日、宮ちゃんの誕生日にも浅浦の部屋で盛大な誕生パーティーが開かれていたそうだ。俺も誘われてたんだけど、火曜日だったから参加出来なかったんだ。久々に伊東の作る飯を食いながら飲みてえとは思ったけど、こればっかりは仕方ない。
今日集まっているのは家主の浅浦に伊東と宮ちゃん、リン君、太一、菅野、それから圭斗と菜月。宮ちゃんの誕生会からはメガネっ子アウトで菜月インという感じらしい。リン君まではわかるけど、宮ちゃんの誕生日で太一だの圭斗だのが出て来るのはやっぱ謎だ。勢いだけでやってんな。
「カズ、うちの誕生会の時より気合入ってるから。高崎クン全部食べちゃって」
「端からそのつもりでビールもちゃんと仕入れて来てる。ビールの減税最高かよ」
「もちろん食後にケーキも作ってあるからね高ピー」
「おっ、マジか。そいつは至れり尽くせりだな」
「伊東、何ケーキ? 一般参加者にもお恵みをー」
「大丈夫だよなっちさん、いくら高ピーでもさすがにチョコレートケーキ1ホールは食べないと思うから。みんなで分けよう」
「やった! チョコレートケーキ!」
去年もそうだったが、無制限飲みの俺の回では食後に出て来る甘い物もきっちりと用意されていた。今年は伊東の作るチョコレートケーキか。伊東は飯を作らせても美味いが、製菓ガチ勢という印象の方が先に来る。飯よりお菓子作りの方が先に目覚めてたからかもしれねえな。
「でもこの人数分分けれるかな」
「僕はチョコレート系のスイーツはあまり好んで食べないので遠慮するよ。どうぞ好きな人に食べてもらって」
「えっ、圭斗お前チョコダメなの?」
「チョコレート単体では食べるよ。だけど、チョコレートケーキなどは苦手でね」
「カズ、俺も甘いのそんな食べないしいいわー」
「ごめんねカンカン、気が回らなくて」
「チーズ用意してくれてるから許す」
「伊東、分かってるだろうけど俺も辞退」
「あ、素で忘れてた。そーだ浅浦お前甘いのダメだったな!」
「何年目の腐れ縁だと思ってんだこの野郎」
適当に乾杯をして、目の前の飯を食って行く。伊東は相変わらず台所と部屋の往復で忙しそうにしているが、楽しそうにしてるからこれでいいのだろう。これも下戸なりに考えた飲み会で生き残る術だ。部屋の方でも電気圧力鍋と真空ナントカ鍋で調理は続いている。
「美奈から話には聞いてるけど、リン君と菜月が仲良くしてるっつーのがすげえ意外だった」
「初対面は猫カフェだったか。その後、三井という男が情報センターに張り付くようになり、美奈ツテに対処法を聞くために会っていた」
「あー、そうでしたね。三井のヤツ、りっちゃんの姉さんや他の可愛い子を出待ちしてやがって」
「……アイツはどこにでも湧いてくるな」
「つか菜月、お前実家から帰ってきた時さー、男の車に乗って来てたじゃん、あれってお前の男?」
「菜月さんに男の気配だって!? 内容次第ではお麻里様に報告だ」
「そんな物騒な話じゃないぞ。大石が緑風に旅行しに来てて、最終日にスーパーまでの道案内ついでに家まで乗っけてもらったっていうだけだ」
「なんだ、大石君か。それじゃあ本当に何もないね」
「何かその旅行で大石はやたら土産物を地方配送してたそうじゃねえか。俺も拓馬さんからぶどうとワインをお裾分けしてもらって」
「あ、そうなんだ。レオンの家のぶどう園は本当に大きくて有名だから、さぞ美味しかっただろ」
「はー!? 俺にはねーのかよアイツ! 何でユーヤばっかり! 贔屓だ!」
「たまたま火曜日で西海にいたからってだけだ」
話を聞いて気になったのか、家主の浅浦はパソコンで件のぶどう園を検索して、どのワインが美味そうだと品定めをしている。それを後ろから圭斗と菅野が覗き込んでいて、これが美味しそうだのラベルがオシャレだのと盛り上がっている。
リン君を経由した菜月との因縁を思い出した太一は、あの時の金を返せと喚いている。菜月が食べた抹茶アイスの領収証をリン君から渡されて金を払わされたとか。菜月相手に金の話をしたところで勝てる奴はそういない。強いて言えば圭斗くらいか。
これだけ人がいると、話がどんどんどんどん繋がって行って、次はどこへ飛んでいくかわからなさすぎる。それでも話してる内容が何となくわかってしまうのは、少なからず話の中に共通の知り合いがいるからなのだろう。
「俺も少し休憩しようかな」
「ああ。伊東、お前も食えよ」
「……やっぱ俺、こういうの好きだな。でも大学卒業したらなかなか出来なくなんのかなー」
「機会は作るもんだろ」
「まあね。高ピー、呼んだら来てくれる?」
「都合が合えばな。星港市内にはいるし」
「あ、そうなんだ。就職決まったの?」
「おかげさまで。お前はどうなんだ」
「俺も第一志望通ったよ。晴れて就活終了。2人で住める新居を探すよ」
「おっ、同棲か。それじゃ、お互い第一志望に通ったっつーことで、乾杯」
「俺はまだ仕事があるからウーロン茶で失礼します」
end.
++++
やると言ったら本当にやるのが慧梨夏なので、高崎の誕生日に大規模なヤツをやってます。今回は菜月さんイン。圭斗さん経由で誘ったのかな。
全員が全員知り合いじゃないけど微妙な繋がりで話がどんどん散らかって行くので共通の知人の存在はやはり大きいしナノスパあるある。
そーいや高崎もいち氏も就活終了ってことは、それぞれに新居を探し始めるのね。他にもそういうキャラが何人かいそうだね。
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