2020(03)
■Consult with a trainer
++++
「おはようございまーす!」
「やァー、すがやんおはよう。今日も元気スねェー」
「おはようございます~……あの、すみません、お邪魔します~……」
「あっれ、珍しい顔スね!」
今日はすがやんがウチに来る日だと思っていたら、今日もすがやん以外のお客さんだ。そうやってこれまでにはサキやくるみが遊びに来ていたのだけど、今日は何やら事情が違っている様子。何と、今日MMPを訪ねて来たのはまさかのタカティだったのだ。ここで2年か。
「やァー、お久し振りスわ。元気そうで何より」
「ご無沙汰してます。土田先輩も変わらずお元気そうで」
「りっちゃん先輩と高木先輩は仲が良いんですか?」
「土田先輩には去年の夏合宿でお世話になったんだよ」
「へー、そうなんすねー」
「ところでタカティはどんな用事で?」
「あ、神崎先輩にちょっと相談がありまして」
「こーたスか? まあ、そのうち来るっショ。その辺に掛けて待っててくーださい」
「すみません、お邪魔します」
タカティがこーたに用事というのもなかなかに想像が付きにくいな。緑ヶ丘で進めているミュージックライブラリだの番組のアーカイブに関係するパソコンやシステム周りの話だったらLへの相談で片付くだろうし。外部の話を聞くにしても俺じゃないかなと思う。対策委員関係でも果林でいい。
緑ヶ丘と向島の学校間関係に関する真面目な話だったら、タカティじゃなくてLが律と話すことだろうし。タカティがこーたに何を話すというのか。タカティの顔がまたよくわかんねーんだよな。喜怒哀楽を全部真顔でやるような奴だから。いや、これはさすがに偏見か。
「てかどうしたタカティ、こーたに相談とか。メイド喫茶の入り方か?」
「あ、いえ、メイド喫茶の入り方ではなく」
「他に何かあったかな。恥を捨てる方法とか」
「恥はまだ捨てないですね。えーとですね、緑大の社会学部でやってるラジオについてなんですけど」
緑ヶ丘大学のサイトには、広大な敷地の中にある体育施設や綺麗な学内施設と並んでガラス張りのラジオブースの写真がドドンと載っているのを見る。ミキサーはMMPやインターフェイスなんか目じゃないくらい豪華な機材を背負ってたと思う。
「あー、あのガラス張りのすげーヤツ?」
「そうですね。あれは俺が所属してるゼミのラジオなんですけど」
「そしたらタカティもあそこで番組やってるの?」
「あのブースに入るのは基本3年生なので、俺はこれからですね。それで……先生が青女でも授業をやってるとかで、そこで気に入った子をラジオにスカウトしてきたらしいんです」
「女子の扱いだったらこーたに聞くのは間違ってないか? 魔法使い宣言して久しい奴だし」
「あ、いえ、一般の女子の扱いならササに聞きます」
「確かに」
「何気にこーたがディスられてヤすわ」
「あ、いや、そんなつもりはなかったです。神崎先輩に聞きたいのは、サドニナの扱いです。先生がスカウトしてきた中にサドニナがいまして……俺の存在がバレてしまったので否応なくペアを組むことになりまして」
「あ、それはこーたの管轄スね」
「こーただわ。もうちょっと待ってて」
何と言うか、サドニナの扱いをどうすればいいのかという相談は、普通だったら青女さんにするべきなんだよな。でも、サドニナは青女の人にもどうにもならないし、むしろ青女さんもこーたにその扱いを投げてると言うか、あれはもう呆れてるのかな。
ちなみに、タカティは向島に来る前に一応ユキにも同じ質問をしていたそうなんだ。だけど、返ってきた答えが「サドニナはこーた先輩の言うことしか聞かない」とのことだったとかで直接こーたに助けを求めに来たらしい。
「そーいやサドニナさんて俺、夏合宿でお世話になってましたよ」
「あ、そうだっけ?」
「そうですね。一応班長で」
「一応っていうのが気になるけど」
「あやめ先輩の方がどっちかと言うと班長っぽかったと言うか」
「あああ~っ! すがやんッ! なんてことをッ!」
「え、何で奈々先輩が」
「いや、奈々はスルーでいいから。別に副班長のマリンの方が班長っぽかったとかじゃないから」
「何で野坂先輩はそんな意地悪を言うんですかッ!」
「クズだからっショ」
「そんなことも知らないのか、常識だぞ」
「クズだぞってドヤ顔をするのもどうかと思うんですよ、事実だとしても」
「マリンもあやめもインターフェイス的には野坂が育てたよーなモンすからね。班の運営が真面目なのもお察しじゃないスか」
「はっ…! 確かに…! あれっ、でもその理屈で言ったらうちはどーなるんすかね」
「奈々を育てた覚えはないしなあ」
「あれっ、高木先輩大丈夫ですか? ちょっと引いてません?」
「あ、いや。でも、向島さんのノリってこんな感じだったよね。野坂先輩のキャラが違うなと思って」
いや、ちょっと待て! そーだ! タカティがいるんだった! いつものノリでやってたらついうっかりクズの本性が止まらなくなってたけど! インターフェイス的には対策委員の前議長で初心者講習会の講師にまでなる真面目な野坂さんだったはずなのにな!
「おはようございます~」
「あっ、神崎先輩おはようございます」
「あれっ、タカティじゃありませんか。どうしたんです?」
end.
++++
縁起でもない話に対しても、何かしらの傾向と対策は掴んでおかないと死んでしまうだけなので、頼れるプロを訪ねて相乗りのタカちゃんである。
あっちもこっちも大学祭直前のはずだけど、一刻も早く助けを求めたかったのでしょう。
そういや話の上でもタカちゃんとサドニナの組み合わせはちょっと未知数。でも少なくとも得意なタイプではないだろうし、どうなる
.
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「おはようございまーす!」
「やァー、すがやんおはよう。今日も元気スねェー」
「おはようございます~……あの、すみません、お邪魔します~……」
「あっれ、珍しい顔スね!」
今日はすがやんがウチに来る日だと思っていたら、今日もすがやん以外のお客さんだ。そうやってこれまでにはサキやくるみが遊びに来ていたのだけど、今日は何やら事情が違っている様子。何と、今日MMPを訪ねて来たのはまさかのタカティだったのだ。ここで2年か。
「やァー、お久し振りスわ。元気そうで何より」
「ご無沙汰してます。土田先輩も変わらずお元気そうで」
「りっちゃん先輩と高木先輩は仲が良いんですか?」
「土田先輩には去年の夏合宿でお世話になったんだよ」
「へー、そうなんすねー」
「ところでタカティはどんな用事で?」
「あ、神崎先輩にちょっと相談がありまして」
「こーたスか? まあ、そのうち来るっショ。その辺に掛けて待っててくーださい」
「すみません、お邪魔します」
タカティがこーたに用事というのもなかなかに想像が付きにくいな。緑ヶ丘で進めているミュージックライブラリだの番組のアーカイブに関係するパソコンやシステム周りの話だったらLへの相談で片付くだろうし。外部の話を聞くにしても俺じゃないかなと思う。対策委員関係でも果林でいい。
緑ヶ丘と向島の学校間関係に関する真面目な話だったら、タカティじゃなくてLが律と話すことだろうし。タカティがこーたに何を話すというのか。タカティの顔がまたよくわかんねーんだよな。喜怒哀楽を全部真顔でやるような奴だから。いや、これはさすがに偏見か。
「てかどうしたタカティ、こーたに相談とか。メイド喫茶の入り方か?」
「あ、いえ、メイド喫茶の入り方ではなく」
「他に何かあったかな。恥を捨てる方法とか」
「恥はまだ捨てないですね。えーとですね、緑大の社会学部でやってるラジオについてなんですけど」
緑ヶ丘大学のサイトには、広大な敷地の中にある体育施設や綺麗な学内施設と並んでガラス張りのラジオブースの写真がドドンと載っているのを見る。ミキサーはMMPやインターフェイスなんか目じゃないくらい豪華な機材を背負ってたと思う。
「あー、あのガラス張りのすげーヤツ?」
「そうですね。あれは俺が所属してるゼミのラジオなんですけど」
「そしたらタカティもあそこで番組やってるの?」
「あのブースに入るのは基本3年生なので、俺はこれからですね。それで……先生が青女でも授業をやってるとかで、そこで気に入った子をラジオにスカウトしてきたらしいんです」
「女子の扱いだったらこーたに聞くのは間違ってないか? 魔法使い宣言して久しい奴だし」
「あ、いえ、一般の女子の扱いならササに聞きます」
「確かに」
「何気にこーたがディスられてヤすわ」
「あ、いや、そんなつもりはなかったです。神崎先輩に聞きたいのは、サドニナの扱いです。先生がスカウトしてきた中にサドニナがいまして……俺の存在がバレてしまったので否応なくペアを組むことになりまして」
「あ、それはこーたの管轄スね」
「こーただわ。もうちょっと待ってて」
何と言うか、サドニナの扱いをどうすればいいのかという相談は、普通だったら青女さんにするべきなんだよな。でも、サドニナは青女の人にもどうにもならないし、むしろ青女さんもこーたにその扱いを投げてると言うか、あれはもう呆れてるのかな。
ちなみに、タカティは向島に来る前に一応ユキにも同じ質問をしていたそうなんだ。だけど、返ってきた答えが「サドニナはこーた先輩の言うことしか聞かない」とのことだったとかで直接こーたに助けを求めに来たらしい。
「そーいやサドニナさんて俺、夏合宿でお世話になってましたよ」
「あ、そうだっけ?」
「そうですね。一応班長で」
「一応っていうのが気になるけど」
「あやめ先輩の方がどっちかと言うと班長っぽかったと言うか」
「あああ~っ! すがやんッ! なんてことをッ!」
「え、何で奈々先輩が」
「いや、奈々はスルーでいいから。別に副班長のマリンの方が班長っぽかったとかじゃないから」
「何で野坂先輩はそんな意地悪を言うんですかッ!」
「クズだからっショ」
「そんなことも知らないのか、常識だぞ」
「クズだぞってドヤ顔をするのもどうかと思うんですよ、事実だとしても」
「マリンもあやめもインターフェイス的には野坂が育てたよーなモンすからね。班の運営が真面目なのもお察しじゃないスか」
「はっ…! 確かに…! あれっ、でもその理屈で言ったらうちはどーなるんすかね」
「奈々を育てた覚えはないしなあ」
「あれっ、高木先輩大丈夫ですか? ちょっと引いてません?」
「あ、いや。でも、向島さんのノリってこんな感じだったよね。野坂先輩のキャラが違うなと思って」
いや、ちょっと待て! そーだ! タカティがいるんだった! いつものノリでやってたらついうっかりクズの本性が止まらなくなってたけど! インターフェイス的には対策委員の前議長で初心者講習会の講師にまでなる真面目な野坂さんだったはずなのにな!
「おはようございます~」
「あっ、神崎先輩おはようございます」
「あれっ、タカティじゃありませんか。どうしたんです?」
end.
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縁起でもない話に対しても、何かしらの傾向と対策は掴んでおかないと死んでしまうだけなので、頼れるプロを訪ねて相乗りのタカちゃんである。
あっちもこっちも大学祭直前のはずだけど、一刻も早く助けを求めたかったのでしょう。
そういや話の上でもタカちゃんとサドニナの組み合わせはちょっと未知数。でも少なくとも得意なタイプではないだろうし、どうなる
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