2020(03)
■巡らせる10月の想い
++++
「それじゃあ、練習を始めますか。はい、かんぱーい」
「いただきます。かんぱーい」
今年のオクトーバーフェストは去年と比べて規模は小さめ。アタシの誕生日を口実に行われてた無制限飲みだけど、今年はいっちー先輩がいないし、日曜日の夜だし。みんな来てくれてたんだけど、さすがに明日に備えて帰ってっちゃったよね。
タカちゃんと2人になってやることは、ビールの練習。タカちゃんはMBCCで一番お酒に強い。だけどビールだけは相性が悪いみたくて、1本飲むとまるで別人のように酔っちゃうんだよね。だから、ビールに慣れたいって言ってたまにこうやって練習してる。
いっちー先輩不在だから、おつまみを作るのはセルフサービス。たくさんあるジャガイモを適当に切ってパスタのボロネーゼソースとピザ用のとろけるチーズをたくさんかけてオーブンでちょっと焼いた物が2次会の乾杯メニュー。
「ん。おいしいです」
「簡単だから、タカちゃんも自分で作ってみたらいいよ。切ってかけて焼くだけだから」
「はー……おいしい」
「ビールは?」
「エイジともたまに飲んでるんで、ちょっとずつですけど、前よりは慣れた感じがします。んー、おいしい」
タカちゃんはお酒を飲むこともそこそこに、おかずをぱくぱくと食べ進めてる。自分の作った物をおいしいって言ってもらえると嬉しいよね。たまにこうやって飲んでると、タカちゃんの好みの味なんかもわかってきたし、好きそうなおかずも作れるようになってるよね。
「果林先輩」
「なに?」
「何て言うか、人事って難しいですね」
「対策委員の引継ぎのこととか?」
「ですね。昨日あやめから当麻と北星を対策委員にするよって連絡があったんですよ。当麻が車持ちなので、絶対すがやんを選ばなきゃいけないってことは無くなったんですけど、くるみは確定として、あと1人をどうするかなと」
「ふむ」
「すがやんは留学もしてますから緑ヶ丘だけに留まらない視点でインターフェイスも見てくれそうじゃないですか。コミュニケーション能力も高いですし。対策委員にしたいって言ってましたけど、適性としては定例会っぽいと俺は思ってるんですよね」
「それはLも同じ考えだね」
「そうなんですね。どっちかと言えば機材管理担当の引継ぎの方が悩みますね」
タカちゃんはタカちゃんなりにいろいろ考えているみたかった。今アタシとこうやって話してるみたいに、日頃からエージともこんな感じで飲みながら話しているのかもしれない。来年、自分たちの代になったらどうしていこうかっていう話とかもしてるのかな。
「システム保守の観点で言うとサキに託すのが正解だとは思うんですよね。ただ、機材管理担当っていう役職が後々サークルに関わる比重が大きくなるという意味では、シノにやってもらいたいとも思うんですね」
「やっぱり、2年生の目でもそういう感じになるんだね。アタシたちも同じ見解だよ」
「サークルに入って来た頃から比べても、シノは物凄く成長したじゃないですか。前々からまだ伸びるって言ってますけど、シノは座学で学ぶよりも自分で経験したことを咀嚼して吸収するタイプなので、外にも出したいし、いろいろやらせてみたいです」
「アタシたちと似たようなタイプではあるよね」
「ですよね。でも、夏合宿や今の大学祭の準備の様子を見てると、シノのポテンシャルは多分俺たちが思ってるより高そうですよね。こう、決断力、行動力、人を引っ張る力みたいな物がここ何年かで1番じゃないかなと。上手く育てば高崎先輩……までは行かないにしても、ああいうタイプの存在感になると思うんです」
「なるほど。それがタカちゃんの思う、素材としてのシノね」
「ですね。それに、シノは夏合宿が「いつか来たる本番のための練習」っていう本質にも気付いてたみたいですからね。先を見通す力っていうのもありそうだなと」
「高木せんぱ~い、人を見る目が養われてますね~」
「もう、俺は真面目に言ってるのに」
「ごめんごめん」
そんな風にほっぺたをつついて茶化しながらも、アタシはタカちゃんもサークルに入って来た頃と比べると物凄く成長したなあってしみじみ思ってる。人のことには我関せずって感じでいつだって一歩引いたところで自分の世界にいた子だったのにね。
今じゃ後輩の面倒も誰より見てるし、夏合宿でも人間関係のトラブルをケアする役割だったっていう話でしょ。本当に、あのタカちゃんがねえって感じでお姉さんは嬉しいですよ。お酒とごはんがどんどん進んじゃいますよねー。
「でも、対策委員は誰を出そうね」
「果林先輩、くるみが決まってますけど、ミキミキはまずいですかね?」
「他の大学さんも見てだけど、アナ陣は? ササとか良さそうだけど。1年生のまとめ役っぽいし」
「すがやんが定例会だとすれば、個人的にはシノを出したいんですよね。あと、ササは意外にああいう活動に向かないですね」
「えっ、そうなんだ。本当に意外だね。何で?」
「ササはまとめ役と言うより補佐タイプですね。それから、自分とごく近しい人との世界が一番大事なので、1人のために100人を殺すのにも躊躇がないんですよ。時として冷酷で非情と言うか。正直、インターフェイスには6人の中で1番厳しいですね」
「あー……なるほどね」
end.
++++
TKGのササシノ観は多分世間一般のササがシノの保護者で、的なヤツとはちょっと違いそう。これからが楽しみ。
久し振りのタカりんがただただかわいいし、ビールの練習しながら真面目な話しつつも延々ともぐもぐしてるのがかわいい。タカりんは正義。
タカりんがかわいいのでもっともっと増産したい。フェーズ2初年度は佐藤ゼミの話も盛り上がってるし、実はやりたい放題なのでは!?
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「それじゃあ、練習を始めますか。はい、かんぱーい」
「いただきます。かんぱーい」
今年のオクトーバーフェストは去年と比べて規模は小さめ。アタシの誕生日を口実に行われてた無制限飲みだけど、今年はいっちー先輩がいないし、日曜日の夜だし。みんな来てくれてたんだけど、さすがに明日に備えて帰ってっちゃったよね。
タカちゃんと2人になってやることは、ビールの練習。タカちゃんはMBCCで一番お酒に強い。だけどビールだけは相性が悪いみたくて、1本飲むとまるで別人のように酔っちゃうんだよね。だから、ビールに慣れたいって言ってたまにこうやって練習してる。
いっちー先輩不在だから、おつまみを作るのはセルフサービス。たくさんあるジャガイモを適当に切ってパスタのボロネーゼソースとピザ用のとろけるチーズをたくさんかけてオーブンでちょっと焼いた物が2次会の乾杯メニュー。
「ん。おいしいです」
「簡単だから、タカちゃんも自分で作ってみたらいいよ。切ってかけて焼くだけだから」
「はー……おいしい」
「ビールは?」
「エイジともたまに飲んでるんで、ちょっとずつですけど、前よりは慣れた感じがします。んー、おいしい」
タカちゃんはお酒を飲むこともそこそこに、おかずをぱくぱくと食べ進めてる。自分の作った物をおいしいって言ってもらえると嬉しいよね。たまにこうやって飲んでると、タカちゃんの好みの味なんかもわかってきたし、好きそうなおかずも作れるようになってるよね。
「果林先輩」
「なに?」
「何て言うか、人事って難しいですね」
「対策委員の引継ぎのこととか?」
「ですね。昨日あやめから当麻と北星を対策委員にするよって連絡があったんですよ。当麻が車持ちなので、絶対すがやんを選ばなきゃいけないってことは無くなったんですけど、くるみは確定として、あと1人をどうするかなと」
「ふむ」
「すがやんは留学もしてますから緑ヶ丘だけに留まらない視点でインターフェイスも見てくれそうじゃないですか。コミュニケーション能力も高いですし。対策委員にしたいって言ってましたけど、適性としては定例会っぽいと俺は思ってるんですよね」
「それはLも同じ考えだね」
「そうなんですね。どっちかと言えば機材管理担当の引継ぎの方が悩みますね」
タカちゃんはタカちゃんなりにいろいろ考えているみたかった。今アタシとこうやって話してるみたいに、日頃からエージともこんな感じで飲みながら話しているのかもしれない。来年、自分たちの代になったらどうしていこうかっていう話とかもしてるのかな。
「システム保守の観点で言うとサキに託すのが正解だとは思うんですよね。ただ、機材管理担当っていう役職が後々サークルに関わる比重が大きくなるという意味では、シノにやってもらいたいとも思うんですね」
「やっぱり、2年生の目でもそういう感じになるんだね。アタシたちも同じ見解だよ」
「サークルに入って来た頃から比べても、シノは物凄く成長したじゃないですか。前々からまだ伸びるって言ってますけど、シノは座学で学ぶよりも自分で経験したことを咀嚼して吸収するタイプなので、外にも出したいし、いろいろやらせてみたいです」
「アタシたちと似たようなタイプではあるよね」
「ですよね。でも、夏合宿や今の大学祭の準備の様子を見てると、シノのポテンシャルは多分俺たちが思ってるより高そうですよね。こう、決断力、行動力、人を引っ張る力みたいな物がここ何年かで1番じゃないかなと。上手く育てば高崎先輩……までは行かないにしても、ああいうタイプの存在感になると思うんです」
「なるほど。それがタカちゃんの思う、素材としてのシノね」
「ですね。それに、シノは夏合宿が「いつか来たる本番のための練習」っていう本質にも気付いてたみたいですからね。先を見通す力っていうのもありそうだなと」
「高木せんぱ~い、人を見る目が養われてますね~」
「もう、俺は真面目に言ってるのに」
「ごめんごめん」
そんな風にほっぺたをつついて茶化しながらも、アタシはタカちゃんもサークルに入って来た頃と比べると物凄く成長したなあってしみじみ思ってる。人のことには我関せずって感じでいつだって一歩引いたところで自分の世界にいた子だったのにね。
今じゃ後輩の面倒も誰より見てるし、夏合宿でも人間関係のトラブルをケアする役割だったっていう話でしょ。本当に、あのタカちゃんがねえって感じでお姉さんは嬉しいですよ。お酒とごはんがどんどん進んじゃいますよねー。
「でも、対策委員は誰を出そうね」
「果林先輩、くるみが決まってますけど、ミキミキはまずいですかね?」
「他の大学さんも見てだけど、アナ陣は? ササとか良さそうだけど。1年生のまとめ役っぽいし」
「すがやんが定例会だとすれば、個人的にはシノを出したいんですよね。あと、ササは意外にああいう活動に向かないですね」
「えっ、そうなんだ。本当に意外だね。何で?」
「ササはまとめ役と言うより補佐タイプですね。それから、自分とごく近しい人との世界が一番大事なので、1人のために100人を殺すのにも躊躇がないんですよ。時として冷酷で非情と言うか。正直、インターフェイスには6人の中で1番厳しいですね」
「あー……なるほどね」
end.
++++
TKGのササシノ観は多分世間一般のササがシノの保護者で、的なヤツとはちょっと違いそう。これからが楽しみ。
久し振りのタカりんがただただかわいいし、ビールの練習しながら真面目な話しつつも延々ともぐもぐしてるのがかわいい。タカりんは正義。
タカりんがかわいいのでもっともっと増産したい。フェーズ2初年度は佐藤ゼミの話も盛り上がってるし、実はやりたい放題なのでは!?
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