2020(03)
■literary research team
++++
「おはよーございまーす」
「おはようすがやん」
「おはようございます。今日は俺もお邪魔します」
「あれっ、サキ。どうしたんだ」
緑ヶ丘から派遣されてきたすがやんは、環境の違いに戸惑いながらも何とかやっているようだ。結局昼放送のペアは律とこーたが持ち回りで担当することになり、俺は最後の昼放送をカノンとのペアで3ヶ月走ることになった。いや、マジで最後に番組やれてよかった。
さて、今日はすがやんだけじゃなくサキもこっちに遊びに来た。サキも例に漏れず俺以外の3年とは初対面なので、軽く紹介をしつつ。すがやんが誰か連れて来ることは可能性として考えてはいたけど、まさかサキだとは思っていなかった。シノかくるみだろうなと思ってたし。
「向島の読み物がとても面白いと聞いたので、見学に来ました。雑記帳がびっちり書き込まれていて読み甲斐があると」
「ってーと、ウチの雑記帳を読みに来た、っつー解釈でいースか」
「部外者には読ませられないというなら普通にサークルの見学をしますし、お邪魔はしません」
「や、会計帳簿以外のモンなら何でも読んでもらっていースよ。ウチはほぼ全員筆不精なンで、過去の雑記帳のが面白いスわ。良かったら去年の雑記帳ドーゾ」
「ありがとうございます」
律から去年の雑記帳を受け取るやいなや、サキは隅っこの席で黙々とそれを読んでいる。すがやんにこれでいいのかと尋ねてみたけど、サキは緑ヶ丘でも過去の雑記帳や書記ノートを読み漁っているし、向島の雑記帳が面白かったから読ませるために敢えて連れて来た、とのことだった。
「一応聞きヤすが、サキはどーいう感じの子なンすか」
「こういう感じの奴っすね」
「大人しくて、本ばっかり読んでる」
「合宿のミキサーテストで5位になるくらいには頭脳派って感じですねー。ウチのノートも読み尽してますし、今は学祭の準備してますけど前はどうしてたっけってなったらサキに聞けばすぐ教えてくれます」
「へー、1年生で5位はすごいスねー」
「すがやん、そのテストでシノに負けてるんだから“頭脳派”はちょっと違わない?」
「いや、そうは言ってもアイツが出来るのはミキサーテストだけだろ? お前は学校の勉強から生活の知恵まで全般的に出来るから、頭脳派で間違いねーよ。シノは実技派じゃん」
「勉強や記憶力だって俺よりササの方が」
「いーんだって! 向島の皆さん! これがウチの頭脳派です!」
「やめてよ、恥ずかしい」
律とこーたが「緑ヶ丘の子はかわいいなあ」という意見で一致して、誰だお前らという牧歌的な様子ですがやんとサキを眺めている。どうだお前ら、俺が緑ヶ丘に入り浸ってた気持ちがわかったか! いや、俺は別に1年生かわいさで入り浸ってたワケでもないんだけども。(IF比)最新の機材最高!
俺たちにこんな風に扱われたことのない奈々が「先輩たちは本当にクズっすね」といつものように言うんだけども、奈々もこのサークルにどっぷり浸かってこのノリに染まってしまっている時点で同じクズであることに違いがなかったのであった。お前も愚民だ!
「あれ」
「どーしヤしたかサキ」
「ここの記述なんですけど、これ、どういうことですか?」
「あー、これスか。書いてある通りスね。緑大の凄まじさの記録スわ」
「すがやん、去年の売り上げが異様に高かったのってこれじゃない?」
「え!? サキお前何見つけた!?」
「ここ。女装ミスコンについての記述。『緑ヶ丘は女装ミスコンでワンツーフィニッシュした連中を売り子にして、緑大の準ミスターが焼いた焼きそばを売っていたとか、そりゃあ忙しすぎてたまらないよなあ』って」
「はー……なるほど」
「ミスコンとかミスターコンテスト? とかの記述は、多分MBCCの行事じゃないから何のノートにも記録が残されてなかったんだ」
「え、そしたらどれが誰とかっていうのは」
「えーっと……準ミスターが高崎先輩、それから女装ミスコンのミスがカズ先輩、とは書いてある。準ミスはわかんないや」
緑ヶ丘では伝統的に大学祭で焼きそばを売っているそうだ。今年の担当はくるみとこの2人らしいんだけど、去年の売り上げだけ桁違いに高い謎が今の今までわからなかったと。去年のレシピに倣って試作した物は確かに美味かった、だけどそれだけで20万オーバーの売り上げになるのかって。
だけどまさかここで、菜月先輩が書き記していた雑記の中からその答えに辿り着いてしまったようだ。……っつーかこれ、曜日的に普通に昼放送の収録日だし、その日の雑記が異様に長いっていうことはそれだけ俺が遅刻してきてたんだな……いざ目の当たりにすると申し訳なさ過ぎて。
「とりあえず、俺は1回女装ミスコンについて調べてみようと思う。知ってる人がいるだろうから」
「サキー、頼むわー」
「はい、そしたらすがやんは番組録りヤすよー」
「はーい」
「あっ、向島の機材も見せてもらっていいですか?」
「どーぞどーぞ、ボロい機材スけど近くで見てもらって」
「やったあ」
end.
++++
いい読み物があることをすがやんが発見、サキを連れて来てみました。菜月さんの日記帳と化していた時代の読み物はさぞ読み応えがあるでしょう
緑ヶ丘の子はかわいいなあとにこにこしているドSコンビもなかなかにかわいいヤツ。もしかしなくてもノサカが一番クズなのでは。樹理ちゃんのことは言えんぞ
そして着々とTKGに迫る調査の手。果たして奴は逃げ切ることが出来るのか。上手いこと誤魔化すことは出来るのか
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「おはよーございまーす」
「おはようすがやん」
「おはようございます。今日は俺もお邪魔します」
「あれっ、サキ。どうしたんだ」
緑ヶ丘から派遣されてきたすがやんは、環境の違いに戸惑いながらも何とかやっているようだ。結局昼放送のペアは律とこーたが持ち回りで担当することになり、俺は最後の昼放送をカノンとのペアで3ヶ月走ることになった。いや、マジで最後に番組やれてよかった。
さて、今日はすがやんだけじゃなくサキもこっちに遊びに来た。サキも例に漏れず俺以外の3年とは初対面なので、軽く紹介をしつつ。すがやんが誰か連れて来ることは可能性として考えてはいたけど、まさかサキだとは思っていなかった。シノかくるみだろうなと思ってたし。
「向島の読み物がとても面白いと聞いたので、見学に来ました。雑記帳がびっちり書き込まれていて読み甲斐があると」
「ってーと、ウチの雑記帳を読みに来た、っつー解釈でいースか」
「部外者には読ませられないというなら普通にサークルの見学をしますし、お邪魔はしません」
「や、会計帳簿以外のモンなら何でも読んでもらっていースよ。ウチはほぼ全員筆不精なンで、過去の雑記帳のが面白いスわ。良かったら去年の雑記帳ドーゾ」
「ありがとうございます」
律から去年の雑記帳を受け取るやいなや、サキは隅っこの席で黙々とそれを読んでいる。すがやんにこれでいいのかと尋ねてみたけど、サキは緑ヶ丘でも過去の雑記帳や書記ノートを読み漁っているし、向島の雑記帳が面白かったから読ませるために敢えて連れて来た、とのことだった。
「一応聞きヤすが、サキはどーいう感じの子なンすか」
「こういう感じの奴っすね」
「大人しくて、本ばっかり読んでる」
「合宿のミキサーテストで5位になるくらいには頭脳派って感じですねー。ウチのノートも読み尽してますし、今は学祭の準備してますけど前はどうしてたっけってなったらサキに聞けばすぐ教えてくれます」
「へー、1年生で5位はすごいスねー」
「すがやん、そのテストでシノに負けてるんだから“頭脳派”はちょっと違わない?」
「いや、そうは言ってもアイツが出来るのはミキサーテストだけだろ? お前は学校の勉強から生活の知恵まで全般的に出来るから、頭脳派で間違いねーよ。シノは実技派じゃん」
「勉強や記憶力だって俺よりササの方が」
「いーんだって! 向島の皆さん! これがウチの頭脳派です!」
「やめてよ、恥ずかしい」
律とこーたが「緑ヶ丘の子はかわいいなあ」という意見で一致して、誰だお前らという牧歌的な様子ですがやんとサキを眺めている。どうだお前ら、俺が緑ヶ丘に入り浸ってた気持ちがわかったか! いや、俺は別に1年生かわいさで入り浸ってたワケでもないんだけども。(IF比)最新の機材最高!
俺たちにこんな風に扱われたことのない奈々が「先輩たちは本当にクズっすね」といつものように言うんだけども、奈々もこのサークルにどっぷり浸かってこのノリに染まってしまっている時点で同じクズであることに違いがなかったのであった。お前も愚民だ!
「あれ」
「どーしヤしたかサキ」
「ここの記述なんですけど、これ、どういうことですか?」
「あー、これスか。書いてある通りスね。緑大の凄まじさの記録スわ」
「すがやん、去年の売り上げが異様に高かったのってこれじゃない?」
「え!? サキお前何見つけた!?」
「ここ。女装ミスコンについての記述。『緑ヶ丘は女装ミスコンでワンツーフィニッシュした連中を売り子にして、緑大の準ミスターが焼いた焼きそばを売っていたとか、そりゃあ忙しすぎてたまらないよなあ』って」
「はー……なるほど」
「ミスコンとかミスターコンテスト? とかの記述は、多分MBCCの行事じゃないから何のノートにも記録が残されてなかったんだ」
「え、そしたらどれが誰とかっていうのは」
「えーっと……準ミスターが高崎先輩、それから女装ミスコンのミスがカズ先輩、とは書いてある。準ミスはわかんないや」
緑ヶ丘では伝統的に大学祭で焼きそばを売っているそうだ。今年の担当はくるみとこの2人らしいんだけど、去年の売り上げだけ桁違いに高い謎が今の今までわからなかったと。去年のレシピに倣って試作した物は確かに美味かった、だけどそれだけで20万オーバーの売り上げになるのかって。
だけどまさかここで、菜月先輩が書き記していた雑記の中からその答えに辿り着いてしまったようだ。……っつーかこれ、曜日的に普通に昼放送の収録日だし、その日の雑記が異様に長いっていうことはそれだけ俺が遅刻してきてたんだな……いざ目の当たりにすると申し訳なさ過ぎて。
「とりあえず、俺は1回女装ミスコンについて調べてみようと思う。知ってる人がいるだろうから」
「サキー、頼むわー」
「はい、そしたらすがやんは番組録りヤすよー」
「はーい」
「あっ、向島の機材も見せてもらっていいですか?」
「どーぞどーぞ、ボロい機材スけど近くで見てもらって」
「やったあ」
end.
++++
いい読み物があることをすがやんが発見、サキを連れて来てみました。菜月さんの日記帳と化していた時代の読み物はさぞ読み応えがあるでしょう
緑ヶ丘の子はかわいいなあとにこにこしているドSコンビもなかなかにかわいいヤツ。もしかしなくてもノサカが一番クズなのでは。樹理ちゃんのことは言えんぞ
そして着々とTKGに迫る調査の手。果たして奴は逃げ切ることが出来るのか。上手いこと誤魔化すことは出来るのか
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