2020(03)
■悪ふざけの繋ぐ未来
++++
「よーし、これでオッケーですね! それじゃあ行って来ます!」
「頼んだぞ。情報センターの命運はお前にかかっている」
車には、積めるだけのジャガイモを積んだ。情報センターの事務所を埋め尽くしていた「北辰のじゃがいも」のケースは、向島さんが欲しいということで喜んで運搬作業に入ることになった。林原さんは「これも重要な仕事だ」と時給を発生させてくれているけど、本当にいいのかなあ。
一番近い地上の駅に行くと、りっちゃん先輩が待っていてくれた。わかちゃんに連絡をくれたのは1年生のカノンって子だけど、今日この時間に都合がつくのがりっちゃん先輩だということで付き添ってくれることになったそうだ。これは心強い。
「やァー、お久し振りスわ」
「お久し振りでーす。ジャガイモを引き取ってもらって本当にありがとうございます!」
「ヤ、こちらとしてもタダでこれだけもらえてありがたい限りスわ」
「学祭で使うんでしたよね」
「そースね。1、2年生が来期の活動費をガチで稼ぐっつってるんで。フライドポテトでもやろうかと」
「いいですねー! ポテトってつい食べちゃいますし、奈々もいますからよっぽど失敗はなさそうですね! ちなみに、カリカリ系ですか? ホクホク系ですか?」
「それは今度の試作会で決めヤす」
「試作会は大事ですね」
一般的に、ファストフード店とかではポテト1人前で100グラム前後だから、春山さんから送られてくるこの芋なら1個で2人分くらいは取れることになる。で、箱の中には大体25個くらい入ってるから1箱で50人前くらいにはならないかな。
ちなみに今回俺が積んで来たのは15ケース。もちろん、欲しいって言われてた分におまけをつけてますよね。でも、去年緑ヶ丘さんのジャガイモパーティーのためにカズ先輩の家に運んだときも、練習用があって助かったって言われたし、試作用のジャガイモだって必要だよねという理屈で。
「何か、風の噂では向島さんは結構来期ギリギリって話ですよね」
「そースね。奈々とカノンの2人しか残らないンで、次の1年生がどれだけ来るかで割と真面目に存亡の危機を迎えヤす」
「前にL先輩と定例会とかインターフェイスのことについて話してたことがあるんですけど、今までが緑ヶ丘と向島に役割が偏り過ぎてたって言われて……確かにその2校の人に任せっきりな面とかもあったなあと思って見てたんです」
「まァ、インターフェイスがラジオメインで活動してる限りは慣れてる人間が引っ張るのは自然っちゃ自然スね。ただ、作品出展を見ててもそースけど、ラジオ以外の活動をする大学さんに元気がないかっつったらそーゆーワケでもないスからね。むしろ青敬さんなんか大分勢いあると思いヤすよ」
「動画サイトとかにある青敬さんのチャンネル、結構面白いですよね」
「ま、自分らも自分らで今までの形式にこだわることなく自由にラジオ番組っつーモンをやっていけりャいーンすけどね。ま、おカタいのは緑ヶ丘に任せて、ウチは従来通り悪ふざけをスね」
少ない人数で効率的に悪ふざけをするには設備の拡充は必要不可欠で、そのためには資金力を高めないといけないというのが向島さんの達した結論だったそうだ。3年生がいるうちに悪ふざけとは何たるかを下の子たちに伝えなければならない、とも。
「別にファンフェスとか夏合宿的な行事に限定しないで合同で作品を作ってもいーと思うンすよね。それをラジオに限るからウチと緑ヶ丘が変に圧を掛けられヤすし」
「えーと、例えば」
「各大学の活動要素を含めた自主制作ドラマを青敬さん主動で制作して動画サイトに上げるとかスかね。テキトーすけど。インターフェイスの事件簿的な」
「各大学の部室でロケしたり、青女さんや星ヶ丘さんのステージが映り込んだりするんですね! わー、面白そう」
「定例会が机上で問題を語り合うのを後目に対策委員が「現場にいない奴が何をわかるんだ」っつって反抗を起こすストーリーも考えられヤすね」
向島に限らず、活動内容やそのやり方を考えていかなきゃなあとしみじみ思う。りっちゃん先輩は悪ふざけっていうけどこういうアイディアがスッと出て来るのは凄いなあって思う。多趣味だからかなあ。……そういや冴さんって今どうしてるのかな。
「ま、何にせよウチは存亡の危機を回避するのと来期の暗躍のために資金が必要なンすわ。やァー、どこかに都合よくポテトの味を引き立てる上等な塩でも転がってヤせんかねェー」
「塩の味でも変わってきますよねー。あっ、りっちゃん先輩帰りどこの駅まで行きます?」
「基本大学近くの向環の駅スけど」
「良かったらどこかでポテト食べませんか? ポテトの話してたら食べたくなっちゃって」
「お、いースね。自分も試食会に向けて予習しヤすわ」
「ジャガイモを引き取ってもらったんで、ここは俺にごちそうさせてください。この運搬も時給が発生してるんで」
end.
++++
インターフェイス関係者への芋の運搬はミドリの仕事ということで、向島遠征です。りっちゃんて案外フットワークが軽いんですよね、家は近くないのに。
ミドリがちょうど去年のLの立ち位置で、偉い人から来期はどうするか考えなさいよと言われるポジションになっちゃってたんですね、いつの間にか。
りっちゃんは「IFにはいろんな活動の大学があるんだしラジオ以外もやればいいじゃない」というスタンスですね。定例会で議題になるかしら。
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「よーし、これでオッケーですね! それじゃあ行って来ます!」
「頼んだぞ。情報センターの命運はお前にかかっている」
車には、積めるだけのジャガイモを積んだ。情報センターの事務所を埋め尽くしていた「北辰のじゃがいも」のケースは、向島さんが欲しいということで喜んで運搬作業に入ることになった。林原さんは「これも重要な仕事だ」と時給を発生させてくれているけど、本当にいいのかなあ。
一番近い地上の駅に行くと、りっちゃん先輩が待っていてくれた。わかちゃんに連絡をくれたのは1年生のカノンって子だけど、今日この時間に都合がつくのがりっちゃん先輩だということで付き添ってくれることになったそうだ。これは心強い。
「やァー、お久し振りスわ」
「お久し振りでーす。ジャガイモを引き取ってもらって本当にありがとうございます!」
「ヤ、こちらとしてもタダでこれだけもらえてありがたい限りスわ」
「学祭で使うんでしたよね」
「そースね。1、2年生が来期の活動費をガチで稼ぐっつってるんで。フライドポテトでもやろうかと」
「いいですねー! ポテトってつい食べちゃいますし、奈々もいますからよっぽど失敗はなさそうですね! ちなみに、カリカリ系ですか? ホクホク系ですか?」
「それは今度の試作会で決めヤす」
「試作会は大事ですね」
一般的に、ファストフード店とかではポテト1人前で100グラム前後だから、春山さんから送られてくるこの芋なら1個で2人分くらいは取れることになる。で、箱の中には大体25個くらい入ってるから1箱で50人前くらいにはならないかな。
ちなみに今回俺が積んで来たのは15ケース。もちろん、欲しいって言われてた分におまけをつけてますよね。でも、去年緑ヶ丘さんのジャガイモパーティーのためにカズ先輩の家に運んだときも、練習用があって助かったって言われたし、試作用のジャガイモだって必要だよねという理屈で。
「何か、風の噂では向島さんは結構来期ギリギリって話ですよね」
「そースね。奈々とカノンの2人しか残らないンで、次の1年生がどれだけ来るかで割と真面目に存亡の危機を迎えヤす」
「前にL先輩と定例会とかインターフェイスのことについて話してたことがあるんですけど、今までが緑ヶ丘と向島に役割が偏り過ぎてたって言われて……確かにその2校の人に任せっきりな面とかもあったなあと思って見てたんです」
「まァ、インターフェイスがラジオメインで活動してる限りは慣れてる人間が引っ張るのは自然っちゃ自然スね。ただ、作品出展を見ててもそースけど、ラジオ以外の活動をする大学さんに元気がないかっつったらそーゆーワケでもないスからね。むしろ青敬さんなんか大分勢いあると思いヤすよ」
「動画サイトとかにある青敬さんのチャンネル、結構面白いですよね」
「ま、自分らも自分らで今までの形式にこだわることなく自由にラジオ番組っつーモンをやっていけりャいーンすけどね。ま、おカタいのは緑ヶ丘に任せて、ウチは従来通り悪ふざけをスね」
少ない人数で効率的に悪ふざけをするには設備の拡充は必要不可欠で、そのためには資金力を高めないといけないというのが向島さんの達した結論だったそうだ。3年生がいるうちに悪ふざけとは何たるかを下の子たちに伝えなければならない、とも。
「別にファンフェスとか夏合宿的な行事に限定しないで合同で作品を作ってもいーと思うンすよね。それをラジオに限るからウチと緑ヶ丘が変に圧を掛けられヤすし」
「えーと、例えば」
「各大学の活動要素を含めた自主制作ドラマを青敬さん主動で制作して動画サイトに上げるとかスかね。テキトーすけど。インターフェイスの事件簿的な」
「各大学の部室でロケしたり、青女さんや星ヶ丘さんのステージが映り込んだりするんですね! わー、面白そう」
「定例会が机上で問題を語り合うのを後目に対策委員が「現場にいない奴が何をわかるんだ」っつって反抗を起こすストーリーも考えられヤすね」
向島に限らず、活動内容やそのやり方を考えていかなきゃなあとしみじみ思う。りっちゃん先輩は悪ふざけっていうけどこういうアイディアがスッと出て来るのは凄いなあって思う。多趣味だからかなあ。……そういや冴さんって今どうしてるのかな。
「ま、何にせよウチは存亡の危機を回避するのと来期の暗躍のために資金が必要なンすわ。やァー、どこかに都合よくポテトの味を引き立てる上等な塩でも転がってヤせんかねェー」
「塩の味でも変わってきますよねー。あっ、りっちゃん先輩帰りどこの駅まで行きます?」
「基本大学近くの向環の駅スけど」
「良かったらどこかでポテト食べませんか? ポテトの話してたら食べたくなっちゃって」
「お、いースね。自分も試食会に向けて予習しヤすわ」
「ジャガイモを引き取ってもらったんで、ここは俺にごちそうさせてください。この運搬も時給が発生してるんで」
end.
++++
インターフェイス関係者への芋の運搬はミドリの仕事ということで、向島遠征です。りっちゃんて案外フットワークが軽いんですよね、家は近くないのに。
ミドリがちょうど去年のLの立ち位置で、偉い人から来期はどうするか考えなさいよと言われるポジションになっちゃってたんですね、いつの間にか。
りっちゃんは「IFにはいろんな活動の大学があるんだしラジオ以外もやればいいじゃない」というスタンスですね。定例会で議題になるかしら。
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