2020(03)

■ワンチャンワンモアタイム!

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「うっわー、すっげー! カズお前やべーわ!」
「本当に豪勢だね。しかし、せっかく彼女さんの誕生日なのに、僕たちがお邪魔していいのかな?」
「……と言うか、ここまでの規模になるとは聞いてないぞ」

 これから始まるのは、カズ主催の手巻き寿しパーティー。浅浦クンの部屋を会場として貸してもらって、本当に適当なメンバーを呼んでるから全員が知り合いってワケでもない。いつもなら誕生日は外デートが定番だけど、今年は今年の事情があってこういう形になった。
 って言うのも、2ヶ月後には入籍してる予定だし、カズの就職先が決まったら新居を探して~って感じで予定を立ててる。就職したらおうちパーティーをやる機会も少なくなるだろうし、こういうのを敢えて記念日にやることで、思い出しやすくなるかなって。

「みんなどんどん食べてねー」
「リン君どうする? 飲むなら熱燗作るけど」
「ああ、もらおうか」
「他に、熱燗欲しい人」
「ああ、いいね。僕も欲しいところだけど、帰らないとさすがに迷惑だろう?」
「いんじゃね? 浅浦ン家ロフトもあるし4、5人くらいなら余裕だろ」
「僕はお前じゃなくて家主に聞いてるんだけどね」
「お前に言われるのは癪だけど、俺の部屋なら泊まってもらって大丈夫です。やります?」
「そしたら、僕も熱燗をいただこうかな」

 本当にいろんな友達が集まってるんだよね。家主の浅浦クンにリンちゃん、みなも、あとカズの友達の子が何人か。って言うか声とか話してることとかリンちゃんとの掛け合いで何となく察したけどみなもの推しの中の人がいますねこれは。ぴょんぴょんしてますわ。

「えっと、ポニテの子がカズの彼女さんでー、家主のイケメンがカズの幼馴染みでー、メガネの子はカズの何繋がり?」
「みなもさんは慧梨夏の友達だね。浅浦とも学科の友達だから気が付いたら結構仲良くなってて」
「え、何かリンは知ってる感じじゃんか」
「以前宮ちゃんの部屋でUSDXの生配信を見ていたのだが、そこで顔を合わせたことがある。確かあれは……」
「でじかもさんとのコラボ配信だよね、音楽堂建設の」
「ああ、レイの応援と称した鑑賞会だったな」
「いやぁー! USDX知ってるんすね! 音楽堂建設と言えばチータヤバない!? いやぁー、あれもいい曲だったなぁー、やぁー、チータはなぁー、歌物の曲を書かせても凄い! 稀代のキーボーディストっすよねえ!」
「カンノ、わざとらしいにも程があるぞ」
「そこまでやられたら完全にチータの中の人じゃないですか」
「だって積極的に自己アピールしないと褒めてもらえないんだよ! 増えろ! チータ推しの輪!」
「あ、みなもはUSDXになる前からのチータ推しなんで大丈夫ですよ」
「マジすか!? よっ…………しゃあ! 実在した!」

 あ、チータ推しが実在したことに感動した中の人がみなもに迫ってる。まあでも、レイ君の応援のために配信見てたんだよーって話になったらこの流れになるのは仕方ないよね! チータの相方、つまりコンちゃんの中の人は何かイメージ通りに、コンちゃんの中の人だなあって感じ。
 カズからコンちゃんの中の人がスガちゃん、チータの中の人がカンカン、浅浦クンと話してる美形の子がサークル関係で一緒にお偉いさんをやってた圭斗クンだと紹介を受け、挨拶をしながら飲み物を注いで回る。ただ、うち的には残念ポイントがひとつ。

「でもな~、火曜日だったのがな~、ちょっと残念だったな~!」
「確かにな。火曜日じゃなかったら高ピーも来てくれてたんだけど、こればっかりはしょうがない」
「そう言えば、高崎はFMにしうみでレギュラー番組をやっているのだったな」
「さすがリンちゃん西海市民、知ってる?」
「美奈がディレクターとしてスタッフをやっているからな、話には聞いたことがある」
「あそっか、そういや福井さんのコネでFMにしうみに潜入したって言ってたなあ高ピー」
「確かに宮ちゃんの誕生会なら高崎がいないのはやや不自然だとは思っていたが、火曜日か」

 高崎クンにも声を掛けてたんだけど、火曜日は番組があるから欠席って言われたよね。火曜日じゃなきゃ喜んで行ったんだけど、と高崎クンにしては珍しくしょぼんとしてるような、残念そうな感じだったんだよね。これはカズ主催のパーティーに飢えてるヤツだよね。

「ねえリンちゃん、10月のカレンダー出せる?」
「出したが、何を見る」
「29日って何曜日?」
「えー……木曜日だな」
「ねえカズ、10月29日ワンモアパーティーワンチャンない?」
「断然アリだな」
「これはやるでしょう。カズ主催のパーティーにセットで付いて来るのが高崎クン! これは高崎クンの誕生パーティーやるでしょ!」
「と、いうワケだから浅浦、来月も頼む」
「薄々そんな気はしてた。はいはい、わかりましたよ」
「はーい! 来月もう1回パーティーやりまーす! カズが今以上のガチ本気出すんで皆さま奮ってご参加くださーい!」
「えっマジ!?」
「いや、つかアンタどんだけの規模でやろうとしてんだ」


end.


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いちえりちゃんのルールとして、記念日には外デートっていうのがあったんですが、今回はちょっとイレギュラーなパーティーです。
って言うかいち氏の部屋がないばっかりに大層なことに巻き込まれるのは大概浅浦雅弘である。来月も部屋借りる気マンマンやんけ。来月は星高中心かな?
圭斗さんは単純にいち氏の人脈にある人の中ですぐ呼べそう判定をされたって感じなのかな。暇そうと言うよりは、近いし来いよ的な?

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