2020(03)

■work hard with potatoes

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「さーて、大学祭スけど。何しヤすー?」

 いつの間にかこんな時期になってるんだなっていうのはサークルの議題で確認する。「大学祭で何する?」というのは本来春学期の終わりごろから話し合うことだけど、如何せん愚民集団である今期のMMP、ブースの申し込みだけしてすっかり忘れていたのだ。
 例年通りで行けば3日間あるうちの1日目はDJブース、2日目と3日目は食品ブースを出してるんだけども、どっちもとにかく雰囲気がゆる~い。食品もあんまりガツガツやるっていう感じじゃなくて、赤字にならない最低限だけやって売り切れたらおしまい、的な。

「りっちゃん先輩! 1コ提案いーすか!」
「お、カノン。どーぞ」
「来期以降のMMPでどうやっていくか考えたときに、ぶっちゃけ資金力が必要なんす! 確かにインターフェイスの機材環境に近いっていうのは利点っちゃ利点っすけど、インターフェイスも緑ヶ丘の人たちの力でちょっとずつ近代化してるっていうのにウチだけ進歩を止めてちゃ時代に取り残されるっす!」
「まーそースね」
「というワケで! 今年は3日間ともガッツリ稼いで来年以降の活動資金にしたいっす!」
「カノンがそこまで考えてくれてたなんて、うちはいい後輩を持ったよ~ッ! りっちゃん先輩ッ! うちからも今年はガツガツ路線で行くようお願いしますッ!」
「まァ、言って自分らはその学祭を最後に代を引き渡す側なンで、来期以降のためにって言われたら止められヤせん。こーた、ちなみに今現在の財力はどんな感じスか?」
「そうですねえ。対策委員と定例会の交通費が抑制出来てる分辛うじて支出は抑えられていますが、人数がいない分収入も少ないので、確かにここらでガッツリ稼いでおかないと後々マズいような感じではあります」
「金の話を聞かれるのが会計じゃなくて総務っていうのが会計の働きぶりを表しているな」
「何やのノサカ。ボクかて仕事しとるよ」

 カノンの提案で今年はDJブースをやめにして、3日間とも食品ブースを出すことに決まった。ただ、ガツガツ稼ぐにはそれなりに売れる物を出さなければならないし、経費の問題もある。果たしてこのメンバーでそういうアイディアを出せるか、そして調理が出来るのかという問題はある。

「それでカノン、どうやって稼ぐかの案はあるンすか?」
「あのですね、夏合宿で同じ班だった星大のわかちゃんからお知らせが来てて、読み上げますね」

 カノンが読み上げた文面によれば、星大には現在山のようにジャガイモが溢れていてその処理に困っているそうだ。物は北辰産ジャガイモで品質面や味は申し分なし。とにかく大量にあるので引き取り手を探していて、引き取ってもらえる人にはもれなくミドリが必要数の運搬をしてくれる、ということらしい。

「そのジャガイモを使って何かできないかなーって。個人的にはフライドポテトがいいっすね!」
「なるほど、ジャガイモをタダで仕入れて原価詐欺をしようっつーコトすね」
「そういうコトっすね。ただ、俺は料理出来ないんで、奈々先輩とか料理上手っすし、揚げ物出来ません?」
「揚げ物だったらうちも出来るけど、りっちゃん先輩は料理全般得意だし、ヒロ先輩はファミレスでバイトしてるでしょ、野坂先輩も揚げ物経験あるから出来ると思うよ」
「マジっすか! さすが先輩たちっす! こーた先輩はお金の管理っすね!」
「いや、俺は出来な」
「やァー、カノンにそんなに期待されちゃァ断れヤせんね」

 出来ないと言おうとしたのを律に封じられ、本格的にフライドポテトをやる流れになりそうだ。でも、ジャガイモをタダで入手できるなら、後は油と調味料、それから容器だけでいいもんな。それらがいくらくらいするのか調べることになりそうだ。
 一言でフライドポテトと言っても様々な種類がある。スタンダードな細長いタイプのヤツや、三日月形のヤツ。それから表面がカリカリしたヤツやらギザギザ、くるくる、あみあみなどいろいろ。ただ、俺たちの技量で凝ったことなど出来ないので、スタンダードがいいだろうという結論に達する。

「ただ、大量に仕入れるのはいいけど保管場所と、下拵えはどこでするのかという問題が。このメンツ全員自宅生だろ」
「……やァー、ちーっとも考えてヤせんでしたわァー。ワンチャン4年生巻き込みヤす?」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩と圭斗先輩にご迷惑をおかけすると言うのかお前は!」
「逆に言えば、菜月先輩と圭斗先輩と大学祭を楽しむ機会とも言えますよね野坂さん」
「そ、それはそれでとても尊い機会……いやしかし……」
「相変わらずナチュラルに誰かハブられてヤすわ」
「それは措いときましょう。それで土田さん、現実問題としてジャガイモの保管はどうするんです? 大体まだもらえると決まったワケでもないのに」
「あっ、それはさっきわかちゃんに連絡済みで、そのうちミドリさんから連絡が入るそうっす」
「行動が早いですね!」
「保管スよねー……広さで言えばこの部屋スけど、虫などが出る可能性もありヤすし。割と真面目に4年生案件かもしれヤせん」

 ゆくゆく先輩たちを快く送り出すための資金にするんで手伝えとかテキトーに言って場所借りヤすかァーなどと律は恐ろしいことを言っている。いやいや……まさかお前、4年生の先輩がそうそう首を縦に振ってくれるワケが……ないとも言い切れないか。最後の手段くらいに思っておいて、まずは自分たちで何とかしないと。


end.


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どうやら今年のMMPは一味違うようですね。これまでやっていたDJブースを廃止して食品ブースに一点集中するとのこと。
そして星大のジャガイモ問題も同時にある程度解決しそうで、MMPにも星大情報センターにもWIN-WINの取引になるか。リン様の様子はどうだろうか
でもこのメンバーだと確かに拠点問題は深刻だね……現役で一番近いのって誰だろう、カノンか奈々か? 少なくとも3年生ではないなあ

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