2020(03)
■勝負のお買物!
++++
「あっ、あれじゃない?」
「そうだね」
緑風旅行3日目、指定されていたバス停に行くと、なっちが待っていた。今日はスーパーに行って買い物をしたり、簡単な観光をしたりして向島に戻ることになっている。なっちも俺たちと一緒に向島に戻るそうで、しばらくは3人での旅になる。
なっちは乗り物酔いをしやすいというのと、緑風でのナビ役ということもあって助手席に座ってもらうことに。話によれば、この辺りにはスーパーがないので町の方に向かって10分ほど車を走らせないといけないそうだ。
「わざわざ近くまで来てもらって悪いな」
「ううん、全然」
「って言うか、どこの宿に泊まってたんだ?」
「ここから10分くらいのところにある、七翔園っていう宿だよ」
「もうすっごいの! 菜月、アタシの肌触ってみて。すっごいつるつるなの!」
「あ、ホントだ。温泉効果で?」
「泥パックがすンごいの! 血行がよくなったからか便秘も治ってるし、もう大満足!」
「ごはんも美味しかったし、ゆっくり出来てよかったよ」
「へえ、七翔園のことは知ってたけど、そんなにいい宿なんだな」
なっちのナビに従って大きな橋を渡り、町の方に向かう。俺が欲しい醤油はどんなスーパーでも普通に売ってるみたいだけど、せっかくだからいろんな人に配るお土産とかも買って行きたいし、何を目的にするかでも行く店は変わるんだそうだ。
お土産が欲しいならショッピングモールの方がいいかなあと案内される。大手のショッピングモールだと、どこのエリアに行っても中身はあまり変わらなさそうだけど、ご当地に根付いた物はちゃんと売っているそうなのでここで買い物をすることに。
「大石、醤油はここだな。これこれ」
「あったー。どれくらい買って行こうかな。えーっと、普通の醤油もあるし、使うペース的に考えたら……2本くらい買ってみようかな。開けなかったらしばらくもつよね」
「まあ、大丈夫なんじゃないか?」
「やったー、これで俺の目的は達成されたよ。ありがとうなっち」
「うちは何もしてないぞ。と言うか、うちも普通にこっちでしか出来ない買い物してこうかな」
そう言うと、なっちは向島ではあまり見ないような調味料や食材、それからお菓子などをカゴの中にどんどん入れていった。実家からもたまに送られてくるそうだけど、自分が今すぐ欲しいと思うような物を重点的に買うみたい。
「って言うか菜月普通に買い物してない?」
「うっかりこの量になってしまった」
「まあ、車での移動だし大丈夫だと思うよ。あとはお土産を見て行こう」
「大石クンまたお土産買うんだね。ぶどう園でも卵屋さんでも配送してなかった?」
「今から買うのは生ものじゃない物だよ」
ぶどう園では兄さんやあずさ、それから塩見さんに配送した。兄さんと塩見さんにはワインも一緒に送っておいた。塩見さんの休みに合わせて配送指定はみんな日曜日。あと、塩見さんには卵屋さんからも卵を配送してある。
「え、そんなにお土産買ってるのか? 大石って節約とか倹約のイメージが強かったけど、使うところでは使うんだな」
「大石クン、旅館でも結構おかずの別注してたし、外でご飯食べたときもすっごい食べてたよ」
「ヒビキも俺が頼んだの食べてたじゃない。まあ、お金は今までに結構貯めて来てるし、ファミリーセールでの買い物の仕方をちょっと改めたらちょっと余裕が出来たと言うか」
「……まあ、お前のファミリーセールでの買い方は正直引くレベルだから、それを考え直したら確かに余裕は出来るだろうな」
「大石クンも買い物好きなんだね。アタシと話が通じるかも!」
「え、そこまでいつもいっぱい買ってるワケじゃないよ。年に3回だけだもん」
「その3回が毎回バカみたいに大量買いなんじゃないか。何万使ってるんだ?」
「え、何万だろう。割引率が高いからってうっかり買い過ぎちゃうんだよね」
部屋を片付けてみたら、ファミリーセールで買ったっきりしまわれたままの服や、品番が違うだけで全く同じ服がたっくさんあったんだよね。だから、前回のファミリーセールでは会計をする前にもう1度じっくり考えてみることにしたんだ。そしたら会計がいつもの3分の1とかに収まったよね。
あと、朝霞に手伝ってもらってこれはもう着ないだろうなって服を整理して売りに出したりもしてみた。俺の持ってる服は安く買ってるけど一応ブランドものだから、売ったらそれなりの値段になったよね。手放すっていう概念がなかったから片付けは新鮮だったし、スペースに余裕が出来てまた新たな出会いにも期待できそうだ。
「ところでなっち、緑風のお土産でこれっていうのは何かあるかな」
「うちが好きなのはこれだな。カスタードが中に入ってて美味しい。でも1個150円とかだからたくさんバラまくには高いかも。無難に行くならせんべい系になるかな」
「ふーん、おせんべいか」
「身近に酒好きな人がいるならこういう、日本酒とか。うちも村井サンや麻里さんによく買ってったなあ」
「お酒かー。ちょっと買って行こうかな」
「アタシこのかわいいのにしようかな。あんまりたくさんの人に配る予定もないし、デザイン重視で」
結局、ここでもたくさんお土産を買い過ぎちゃって、カートに乗せて運ぶハメになっちゃったよね。何だかんだ買い物を始めると買い込み過ぎちゃう3人だったみたい。これで2泊3日の緑風旅行はおしまい。次の学費を捻出すれば、後はもう生活費しか考えなくていいし、自分のことにももっとお金を使えるようになるかな。
「お昼は何食べようか」
「それはもう、地元民の菜月が決めるべきじゃない?」
「えー……プレッシャーだなー……」
end.
++++
今回の菜月さんは基本的にナビ役で、ちーちゃんの車にお世話になるのに交通費もちゃんと払ってるのかな。
ちーちゃんのファミリーセールの爆買いは本当に結構な買い込み方なので、それを考え直すだけで余裕が出来るのよね。数万単位なんだろうなあ……
しかし片付けを手伝ってるのが明らかに片付けが苦手な人なんだけども、洋服に関することだから手伝えるのかしら。
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「あっ、あれじゃない?」
「そうだね」
緑風旅行3日目、指定されていたバス停に行くと、なっちが待っていた。今日はスーパーに行って買い物をしたり、簡単な観光をしたりして向島に戻ることになっている。なっちも俺たちと一緒に向島に戻るそうで、しばらくは3人での旅になる。
なっちは乗り物酔いをしやすいというのと、緑風でのナビ役ということもあって助手席に座ってもらうことに。話によれば、この辺りにはスーパーがないので町の方に向かって10分ほど車を走らせないといけないそうだ。
「わざわざ近くまで来てもらって悪いな」
「ううん、全然」
「って言うか、どこの宿に泊まってたんだ?」
「ここから10分くらいのところにある、七翔園っていう宿だよ」
「もうすっごいの! 菜月、アタシの肌触ってみて。すっごいつるつるなの!」
「あ、ホントだ。温泉効果で?」
「泥パックがすンごいの! 血行がよくなったからか便秘も治ってるし、もう大満足!」
「ごはんも美味しかったし、ゆっくり出来てよかったよ」
「へえ、七翔園のことは知ってたけど、そんなにいい宿なんだな」
なっちのナビに従って大きな橋を渡り、町の方に向かう。俺が欲しい醤油はどんなスーパーでも普通に売ってるみたいだけど、せっかくだからいろんな人に配るお土産とかも買って行きたいし、何を目的にするかでも行く店は変わるんだそうだ。
お土産が欲しいならショッピングモールの方がいいかなあと案内される。大手のショッピングモールだと、どこのエリアに行っても中身はあまり変わらなさそうだけど、ご当地に根付いた物はちゃんと売っているそうなのでここで買い物をすることに。
「大石、醤油はここだな。これこれ」
「あったー。どれくらい買って行こうかな。えーっと、普通の醤油もあるし、使うペース的に考えたら……2本くらい買ってみようかな。開けなかったらしばらくもつよね」
「まあ、大丈夫なんじゃないか?」
「やったー、これで俺の目的は達成されたよ。ありがとうなっち」
「うちは何もしてないぞ。と言うか、うちも普通にこっちでしか出来ない買い物してこうかな」
そう言うと、なっちは向島ではあまり見ないような調味料や食材、それからお菓子などをカゴの中にどんどん入れていった。実家からもたまに送られてくるそうだけど、自分が今すぐ欲しいと思うような物を重点的に買うみたい。
「って言うか菜月普通に買い物してない?」
「うっかりこの量になってしまった」
「まあ、車での移動だし大丈夫だと思うよ。あとはお土産を見て行こう」
「大石クンまたお土産買うんだね。ぶどう園でも卵屋さんでも配送してなかった?」
「今から買うのは生ものじゃない物だよ」
ぶどう園では兄さんやあずさ、それから塩見さんに配送した。兄さんと塩見さんにはワインも一緒に送っておいた。塩見さんの休みに合わせて配送指定はみんな日曜日。あと、塩見さんには卵屋さんからも卵を配送してある。
「え、そんなにお土産買ってるのか? 大石って節約とか倹約のイメージが強かったけど、使うところでは使うんだな」
「大石クン、旅館でも結構おかずの別注してたし、外でご飯食べたときもすっごい食べてたよ」
「ヒビキも俺が頼んだの食べてたじゃない。まあ、お金は今までに結構貯めて来てるし、ファミリーセールでの買い物の仕方をちょっと改めたらちょっと余裕が出来たと言うか」
「……まあ、お前のファミリーセールでの買い方は正直引くレベルだから、それを考え直したら確かに余裕は出来るだろうな」
「大石クンも買い物好きなんだね。アタシと話が通じるかも!」
「え、そこまでいつもいっぱい買ってるワケじゃないよ。年に3回だけだもん」
「その3回が毎回バカみたいに大量買いなんじゃないか。何万使ってるんだ?」
「え、何万だろう。割引率が高いからってうっかり買い過ぎちゃうんだよね」
部屋を片付けてみたら、ファミリーセールで買ったっきりしまわれたままの服や、品番が違うだけで全く同じ服がたっくさんあったんだよね。だから、前回のファミリーセールでは会計をする前にもう1度じっくり考えてみることにしたんだ。そしたら会計がいつもの3分の1とかに収まったよね。
あと、朝霞に手伝ってもらってこれはもう着ないだろうなって服を整理して売りに出したりもしてみた。俺の持ってる服は安く買ってるけど一応ブランドものだから、売ったらそれなりの値段になったよね。手放すっていう概念がなかったから片付けは新鮮だったし、スペースに余裕が出来てまた新たな出会いにも期待できそうだ。
「ところでなっち、緑風のお土産でこれっていうのは何かあるかな」
「うちが好きなのはこれだな。カスタードが中に入ってて美味しい。でも1個150円とかだからたくさんバラまくには高いかも。無難に行くならせんべい系になるかな」
「ふーん、おせんべいか」
「身近に酒好きな人がいるならこういう、日本酒とか。うちも村井サンや麻里さんによく買ってったなあ」
「お酒かー。ちょっと買って行こうかな」
「アタシこのかわいいのにしようかな。あんまりたくさんの人に配る予定もないし、デザイン重視で」
結局、ここでもたくさんお土産を買い過ぎちゃって、カートに乗せて運ぶハメになっちゃったよね。何だかんだ買い物を始めると買い込み過ぎちゃう3人だったみたい。これで2泊3日の緑風旅行はおしまい。次の学費を捻出すれば、後はもう生活費しか考えなくていいし、自分のことにももっとお金を使えるようになるかな。
「お昼は何食べようか」
「それはもう、地元民の菜月が決めるべきじゃない?」
「えー……プレッシャーだなー……」
end.
++++
今回の菜月さんは基本的にナビ役で、ちーちゃんの車にお世話になるのに交通費もちゃんと払ってるのかな。
ちーちゃんのファミリーセールの爆買いは本当に結構な買い込み方なので、それを考え直すだけで余裕が出来るのよね。数万単位なんだろうなあ……
しかし片付けを手伝ってるのが明らかに片付けが苦手な人なんだけども、洋服に関することだから手伝えるのかしら。
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