2020(03)
■はじめのC・D・G
++++
「あっ、朝霞クンお帰り~。帰って来たんだね」
「ああ。こっちでの用事もちょこちょこあるし、そろそろ戻ろうと思って。あ、いつもので」
「はいは~い。5種盛りと生中ね~」
帰省から戻ってくると、朝霞クンは必ず店に夕飯を食べにくる。山羽は向島のお隣さんだけど、横に広いエリアだから何気に移動が大変でちょっと疲れるんだって。自分で夕飯を用意する気力が削がれるんだろうね。あと、長距離移動お疲れさまっていう、セルフ労い的な?
戻って来るとは聞いてたから、店にも来るだろうな~とは思ってた。で、俺はその情報をさる筋にも流してある。たまたま行った美容院で知り合った美容師さん、拳悟クン。高崎クンと一緒に飲みに来てくれてるんだよね、毎年お盆の頃に。
「つか山口お前、髪また思い切ったな」
「あっ、いい感じでしょ? オレンジのハイライト入れたんだ。いつもと違う美容院に行ってさ~」
「へえ、いいじゃねーか。ちくしょう、何でも似合いやがって」
「いらっしゃいませ~!」
「洋平クン、来たよー」
「あっ、本当に来てくれたんだ! いらっしゃい。2名様?」
「そうそう、こないだ言ってたトリプルメソッドの壮馬」
「拳悟君の後輩で、今はトリプルメソッドってバンドでギターボーカルやってる長崎壮馬っす」
「おお~、本物~。よろしく~」
今回朝霞クンに会わせたいのはこの拳悟クン。音楽の話でちょっと盛り上がって、俺の親友がギターを始めて~って話もしてたんだよね。それで、拳悟クンが朝霞クンと話してみたいな~っていうので絶対会える場所としてここを紹介したってワケ。
「そうそう朝霞クン、俺の髪、この拳悟クンにやってもらったんだ~」
「どうも~、美容師やってる川崎拳悟っていいまーす」
「ああ、どうも。朝霞薫です。いい感じに色入ってますね」
「でしょ?」
「そうそう朝霞クン、拳悟クンね、カンノ君と音楽友達なんだって!」
「は!? つかアイツ顔広すぎかよ! え、ちなみに何やってる人なんですか?」
「俺はギターだね。で、洋平クンから親友の子がギター始めたって聞いて、話したいなーと思って来たの」
「おい山口、お前ナニ人のこと喋ってんだよ、別にいいけど。いやあ、ギターを始めたって言ってもまだ全然で」
ギターの話なら俺も混ぜてーと壮馬クンも混ざって、ギター歴十何年の2人がギター歴ちょっとの朝霞クンを囲んでる。ギターを始めたきっかけだったり、カンノ君のことだったり。ギターを始めたばっかりの頃はどんな練習をしてたっけ~とかそういう話で盛り上がってる。
朝霞クンはスマホを取り出して、これこれこういう……と動画かな? 何か見せてるみたい。ベテラン2人はそれを覗き込んで、これだったら~みたいなことを分析してるみたい。って言うか朝霞クン練習動画なんか撮ってるんだね。もしやカンノ君からのノルマ?
「へえ、薫君は太一君と一緒にバンドやってんすね」
「他のメンバーはしっかりバンドマンだけど、実際出てる曲は打ち込みだし、俺はギターをやってる体っていう。打ち込みなら本当にギターをやる必要なんかないんじゃないかって話も出たけど、菅野はそこを譲らなくて」
「太一君っぽいっすね! あの人音楽にはめちゃガチっすもんね」
「まあ、俺も練習は下手なりに楽しんでやってるからいいんだけどさ。あ、これがその曲なんだけど」
「ちょっと聞かせてもらうっす。どれどれ……おー、さすが太一君、かっけー音っすね! これ、詞は誰が?」
「俺が書いてる」
「でも、これは確かに初心者には難しいね」
「そうなんだよ。俺がこれをやるには何年かかるんだって話で」
「いやいや、どーせ音源出すなら薫君の生音でやった方がいいっすよ! あっ、そしたら俺が初心者用のギター曲書くんで使ってください!」
「えっ、いいのか!?」
「全然ヨユーっす! 一応太一君に話通しといた方がいいっすよね? えーっと、太一君太一君……あったあった」
って言うか、聞こえて来る話がすごい規模に聞こえるよね。朝霞クンがカンノ君とバンドやってて? 朝霞クンはギターやってる体で話が通ってて? 実際動画サイトに上がってる音源は音楽でご飯食べてる壮馬クンも褒めるくらいの曲で? 朝霞クンのためのギター練習曲を書いてくれて?
「つか太一君LINE既読付くの早っ!」
「返信も来た?」
「えっと、「マジモンのギタリストが初心者向けの曲を用意してくれんなら助かる」って。いくら太一君でもギターは専門じゃないっすもんね。太一君で思い出したっすけど、拓馬さんってどーしてんすか?」
「え、俺に聞く?」
「だって悠哉君の親友じゃないすか拳悟君」
「いくら高崎の親友で、アイツが荒れてた頃を知ってても、俺自身拓馬さんとは後にも先にもあの時しか会ったことないからね」
「えー、じゃあやっぱ悠哉君当たるしかないじゃないすかー」
いつものメンツだから特別仲が良いってことを知ってても、あの高崎クンに親友って呼べる子がいるんだ~っていう驚きもちょっと。あと、カンノ君はLINEの既読付くのいつも早いよね。常にスマホ見てるって感じなのかな~。
「朝霞クン、俺も朝霞クンのギター聞きたいな~」
「見せたことなかったっけか」
「ないよ!」
「そしたら、このノリで帰ってからちょっとやるから、うちに来れば聞けるぞ」
end.
++++
朝霞Pが久々に実家から帰って来て、USDXの動画撮影だの生放送だのにも復帰するのかしら。長い帰省でした。
そして拳悟と朝霞Pが会う場所を作っているやまよだけど、まさか壮馬まで来るとはって感じ。多分その辺は壮馬のフットワークの軽さから。
思いがけず初心者用の曲なんて作ってもらえることになったみたいだけど、いよいよギターの練習が本格化してきたねえ
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「あっ、朝霞クンお帰り~。帰って来たんだね」
「ああ。こっちでの用事もちょこちょこあるし、そろそろ戻ろうと思って。あ、いつもので」
「はいは~い。5種盛りと生中ね~」
帰省から戻ってくると、朝霞クンは必ず店に夕飯を食べにくる。山羽は向島のお隣さんだけど、横に広いエリアだから何気に移動が大変でちょっと疲れるんだって。自分で夕飯を用意する気力が削がれるんだろうね。あと、長距離移動お疲れさまっていう、セルフ労い的な?
戻って来るとは聞いてたから、店にも来るだろうな~とは思ってた。で、俺はその情報をさる筋にも流してある。たまたま行った美容院で知り合った美容師さん、拳悟クン。高崎クンと一緒に飲みに来てくれてるんだよね、毎年お盆の頃に。
「つか山口お前、髪また思い切ったな」
「あっ、いい感じでしょ? オレンジのハイライト入れたんだ。いつもと違う美容院に行ってさ~」
「へえ、いいじゃねーか。ちくしょう、何でも似合いやがって」
「いらっしゃいませ~!」
「洋平クン、来たよー」
「あっ、本当に来てくれたんだ! いらっしゃい。2名様?」
「そうそう、こないだ言ってたトリプルメソッドの壮馬」
「拳悟君の後輩で、今はトリプルメソッドってバンドでギターボーカルやってる長崎壮馬っす」
「おお~、本物~。よろしく~」
今回朝霞クンに会わせたいのはこの拳悟クン。音楽の話でちょっと盛り上がって、俺の親友がギターを始めて~って話もしてたんだよね。それで、拳悟クンが朝霞クンと話してみたいな~っていうので絶対会える場所としてここを紹介したってワケ。
「そうそう朝霞クン、俺の髪、この拳悟クンにやってもらったんだ~」
「どうも~、美容師やってる川崎拳悟っていいまーす」
「ああ、どうも。朝霞薫です。いい感じに色入ってますね」
「でしょ?」
「そうそう朝霞クン、拳悟クンね、カンノ君と音楽友達なんだって!」
「は!? つかアイツ顔広すぎかよ! え、ちなみに何やってる人なんですか?」
「俺はギターだね。で、洋平クンから親友の子がギター始めたって聞いて、話したいなーと思って来たの」
「おい山口、お前ナニ人のこと喋ってんだよ、別にいいけど。いやあ、ギターを始めたって言ってもまだ全然で」
ギターの話なら俺も混ぜてーと壮馬クンも混ざって、ギター歴十何年の2人がギター歴ちょっとの朝霞クンを囲んでる。ギターを始めたきっかけだったり、カンノ君のことだったり。ギターを始めたばっかりの頃はどんな練習をしてたっけ~とかそういう話で盛り上がってる。
朝霞クンはスマホを取り出して、これこれこういう……と動画かな? 何か見せてるみたい。ベテラン2人はそれを覗き込んで、これだったら~みたいなことを分析してるみたい。って言うか朝霞クン練習動画なんか撮ってるんだね。もしやカンノ君からのノルマ?
「へえ、薫君は太一君と一緒にバンドやってんすね」
「他のメンバーはしっかりバンドマンだけど、実際出てる曲は打ち込みだし、俺はギターをやってる体っていう。打ち込みなら本当にギターをやる必要なんかないんじゃないかって話も出たけど、菅野はそこを譲らなくて」
「太一君っぽいっすね! あの人音楽にはめちゃガチっすもんね」
「まあ、俺も練習は下手なりに楽しんでやってるからいいんだけどさ。あ、これがその曲なんだけど」
「ちょっと聞かせてもらうっす。どれどれ……おー、さすが太一君、かっけー音っすね! これ、詞は誰が?」
「俺が書いてる」
「でも、これは確かに初心者には難しいね」
「そうなんだよ。俺がこれをやるには何年かかるんだって話で」
「いやいや、どーせ音源出すなら薫君の生音でやった方がいいっすよ! あっ、そしたら俺が初心者用のギター曲書くんで使ってください!」
「えっ、いいのか!?」
「全然ヨユーっす! 一応太一君に話通しといた方がいいっすよね? えーっと、太一君太一君……あったあった」
って言うか、聞こえて来る話がすごい規模に聞こえるよね。朝霞クンがカンノ君とバンドやってて? 朝霞クンはギターやってる体で話が通ってて? 実際動画サイトに上がってる音源は音楽でご飯食べてる壮馬クンも褒めるくらいの曲で? 朝霞クンのためのギター練習曲を書いてくれて?
「つか太一君LINE既読付くの早っ!」
「返信も来た?」
「えっと、「マジモンのギタリストが初心者向けの曲を用意してくれんなら助かる」って。いくら太一君でもギターは専門じゃないっすもんね。太一君で思い出したっすけど、拓馬さんってどーしてんすか?」
「え、俺に聞く?」
「だって悠哉君の親友じゃないすか拳悟君」
「いくら高崎の親友で、アイツが荒れてた頃を知ってても、俺自身拓馬さんとは後にも先にもあの時しか会ったことないからね」
「えー、じゃあやっぱ悠哉君当たるしかないじゃないすかー」
いつものメンツだから特別仲が良いってことを知ってても、あの高崎クンに親友って呼べる子がいるんだ~っていう驚きもちょっと。あと、カンノ君はLINEの既読付くのいつも早いよね。常にスマホ見てるって感じなのかな~。
「朝霞クン、俺も朝霞クンのギター聞きたいな~」
「見せたことなかったっけか」
「ないよ!」
「そしたら、このノリで帰ってからちょっとやるから、うちに来れば聞けるぞ」
end.
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朝霞Pが久々に実家から帰って来て、USDXの動画撮影だの生放送だのにも復帰するのかしら。長い帰省でした。
そして拳悟と朝霞Pが会う場所を作っているやまよだけど、まさか壮馬まで来るとはって感じ。多分その辺は壮馬のフットワークの軽さから。
思いがけず初心者用の曲なんて作ってもらえることになったみたいだけど、いよいよギターの練習が本格化してきたねえ
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