2020(03)
■自然の恵みの非日常
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「わー、すっごい。お肌つるっつる! ちょっと触ってみて」
「わ、すごいね! 本当にすべすべ」
「まだ体あったかいし、これ本当にすっごいわ。これやってるの、国内探してもなかなかないんでしょ?」
「そうだね、この宿が国内随一ってレベルで凄いみたい」
温泉サークル第2回旅行、今回は緑風にある温泉宿にやってきた。朝から高速を走って昼頃にはもう緑風にいたんだけど、簡単に辺りを散策しながら宿の方へと少しずつ近付いて行って。チェックインしてちょっと部屋でのんびりして、さっそく温泉に入ってすっきり。平日で少し人が少ないっていうのもあって、静かでいいなって。
そして今回の宿のポイントは、温泉だけじゃなくて、施設にある。温泉成分をたっぷり含んだ泥パックみたいなのがあって、10キロの温泉泥を全身に塗ることで温浴効果を高めるんだそうだ。温泉の泉質がまず女性にいいそうなんだけど、泥パックとかもヒビキは好きそうだったから予約しておいてみたんだよね。
「大石クンも調子どう?」
「あのね、すっごいスッキリしてるよね。体が軽いって言うか」
「思ったより安かったし、明日もやりたいなー」
「お金に余裕があるんだったらやったらいいんじゃないかな」
「えっ、やるやる! 明日は泥パックだけじゃなくてエステも足しちゃう!」
「俺はエステをやらない分、ごはんを追加しようかな」
泥パックでお肌がすべすべになってヒビキはかなり喜んでいるようだった。ちなみにこの泥パック、本来女性限定らしいんだけど、カップルの場合のみ男性も受けられるらしいんだ。せっかくだしやってみたらってヒビキに勧められて俺も受けてみたんだけど、これは凄い。
美肌とかデトックスだけじゃなくて、疲労回復や腰痛・肩凝りの改善にもいいそうなんだ。あったかい泥を体全体に塗られてしばらく置かれてると、ふわ~っと気持ちよくなって寝ちゃいそうになるんだよね。リラックスできてたっていう解釈でいいのかな。結果、俺もスッキリしちゃったよね。
「でも、どうやってこんな宿見つけたの?」
「普通にネットだよ。今回は海の幸を楽しむって言ってたでしょ? だから海の幸がおいしい宿で調べて出て来た宿を比較して、値段とか、施設とか、いろいろ見た上でここに決めたんだよ」
「ふーん。普通に調べて出て来るんだね」
「うん。普通に調べて出て来たね。でも、静かでいい雰囲気だよね。山の中で、川が流れてて。緑風の川って大きくて流れが速いね」
「ホント別世界みたい。そう言えば、明日行くアヤネん家のぶどう園からは近いの?」
「まあまあ近いみたいよ。20分くらいかな」
「あっ、本当に割と近いんだね! 3日目は菜月と合流することになってるでしょ? それは?」
「なっちの実家からもそこそこ近いみたいよ。10分くらいだって」
「菜月の地元ってこの辺なんだ!」
この近くには趣のある町並みもあるみたいだし、この周辺の観光で2泊3日を十分楽しめそう。明日は朝からぶどう狩りに行く予定。ぶどうは朝のうちの方が冷たくて新鮮でおいしいんだって。その後でぶどう園近くの卵屋さんに行こうかなって。
会社の所長からは、バイトばっかりしてないで友達と遊んで来いって言われてバイトのシフトは入れてもらえなかったし、卒業までに今ある有給を使い切りなさいとも言われてる。正社員になるとまた契約が変わるみたいだから。有給、全然使ってないから結構溜まっちゃってるんだよね。
「そうだ、スーパーにも行かなきゃいけないんだったよね! 何買うんだっけ、味噌だっけ、醤油だっけ?」
「醤油だね」
「そんなに美味しい醤油なの?」
「多分、母さんが使ってたんじゃないかなーっていう醤油なんだ。うちの三食丼って、卵と鮭フレークとほうれん草のおひたしが乗ってるんだけど、そのおひたしとかに使ってたっぽい醤油なんだよ。他には、キュウリを浸けたり玉子焼きを作ってもおいしいみたい」
「家の味を再現するみたいなこと?」
「うん。兄さんの作るおひたしもおいしいし、自分でもある程度料理は出来るんだけど……やっぱり、恋しくなっちゃうんだよね。もう11年も経ってるのに。ごめんねヒビキ、そのためだけに今回の行き先を緑風にしたんだ」
「そんなの、全然いいのに。実際アタシお肌もすべすべだし既に結構満足してるよ? 美容に嬉しい宿だし、アタシの需要にもバッチリハマってるから」
「あはは、ありがとう。次はヒビキの都合で行きたい場所を決めてね」
「でも、宿は大石クンが探して欲しいよね。今までのセンスで言ったら絶対アタシが探すよりいいトコ見つけてくれそうだし」
「えー、一緒に探そうよ。今回はたまたまだよ」
あと2日、せっかく来たんだし思いっ切り食べて、温泉に入って楽しもうと思う。いろんなことを忘れて、自然の中でゆっくり出来そうだし。さっそくこの夕飯からおかずを別注出来るみたいだけど、何を頼もうかな。やっぱり海の物がいいかな。
「あっ、あとでそこのイスでお酒飲もうよ」
「いいね。やっぱり緑風だし日本酒がおいしいのかな」
end.
++++
温泉旅行編。4年生にもなると時間に余裕が出来て海外旅行をするという人もいるんじゃないかな。この2人はささやかな温泉旅行です。
これでただの温泉友達なので、人間関係のあり方に興味の強い朝霞Pなんかはやっぱり旅行の様子なんかも覗き見たいんじゃないかな。研究の一環としてね
ちーちゃんはお得情報とかそういうのに強そうだし、宿選びにしてもいいポイントをピンポイントで見つけてくれそう感がある
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「わー、すっごい。お肌つるっつる! ちょっと触ってみて」
「わ、すごいね! 本当にすべすべ」
「まだ体あったかいし、これ本当にすっごいわ。これやってるの、国内探してもなかなかないんでしょ?」
「そうだね、この宿が国内随一ってレベルで凄いみたい」
温泉サークル第2回旅行、今回は緑風にある温泉宿にやってきた。朝から高速を走って昼頃にはもう緑風にいたんだけど、簡単に辺りを散策しながら宿の方へと少しずつ近付いて行って。チェックインしてちょっと部屋でのんびりして、さっそく温泉に入ってすっきり。平日で少し人が少ないっていうのもあって、静かでいいなって。
そして今回の宿のポイントは、温泉だけじゃなくて、施設にある。温泉成分をたっぷり含んだ泥パックみたいなのがあって、10キロの温泉泥を全身に塗ることで温浴効果を高めるんだそうだ。温泉の泉質がまず女性にいいそうなんだけど、泥パックとかもヒビキは好きそうだったから予約しておいてみたんだよね。
「大石クンも調子どう?」
「あのね、すっごいスッキリしてるよね。体が軽いって言うか」
「思ったより安かったし、明日もやりたいなー」
「お金に余裕があるんだったらやったらいいんじゃないかな」
「えっ、やるやる! 明日は泥パックだけじゃなくてエステも足しちゃう!」
「俺はエステをやらない分、ごはんを追加しようかな」
泥パックでお肌がすべすべになってヒビキはかなり喜んでいるようだった。ちなみにこの泥パック、本来女性限定らしいんだけど、カップルの場合のみ男性も受けられるらしいんだ。せっかくだしやってみたらってヒビキに勧められて俺も受けてみたんだけど、これは凄い。
美肌とかデトックスだけじゃなくて、疲労回復や腰痛・肩凝りの改善にもいいそうなんだ。あったかい泥を体全体に塗られてしばらく置かれてると、ふわ~っと気持ちよくなって寝ちゃいそうになるんだよね。リラックスできてたっていう解釈でいいのかな。結果、俺もスッキリしちゃったよね。
「でも、どうやってこんな宿見つけたの?」
「普通にネットだよ。今回は海の幸を楽しむって言ってたでしょ? だから海の幸がおいしい宿で調べて出て来た宿を比較して、値段とか、施設とか、いろいろ見た上でここに決めたんだよ」
「ふーん。普通に調べて出て来るんだね」
「うん。普通に調べて出て来たね。でも、静かでいい雰囲気だよね。山の中で、川が流れてて。緑風の川って大きくて流れが速いね」
「ホント別世界みたい。そう言えば、明日行くアヤネん家のぶどう園からは近いの?」
「まあまあ近いみたいよ。20分くらいかな」
「あっ、本当に割と近いんだね! 3日目は菜月と合流することになってるでしょ? それは?」
「なっちの実家からもそこそこ近いみたいよ。10分くらいだって」
「菜月の地元ってこの辺なんだ!」
この近くには趣のある町並みもあるみたいだし、この周辺の観光で2泊3日を十分楽しめそう。明日は朝からぶどう狩りに行く予定。ぶどうは朝のうちの方が冷たくて新鮮でおいしいんだって。その後でぶどう園近くの卵屋さんに行こうかなって。
会社の所長からは、バイトばっかりしてないで友達と遊んで来いって言われてバイトのシフトは入れてもらえなかったし、卒業までに今ある有給を使い切りなさいとも言われてる。正社員になるとまた契約が変わるみたいだから。有給、全然使ってないから結構溜まっちゃってるんだよね。
「そうだ、スーパーにも行かなきゃいけないんだったよね! 何買うんだっけ、味噌だっけ、醤油だっけ?」
「醤油だね」
「そんなに美味しい醤油なの?」
「多分、母さんが使ってたんじゃないかなーっていう醤油なんだ。うちの三食丼って、卵と鮭フレークとほうれん草のおひたしが乗ってるんだけど、そのおひたしとかに使ってたっぽい醤油なんだよ。他には、キュウリを浸けたり玉子焼きを作ってもおいしいみたい」
「家の味を再現するみたいなこと?」
「うん。兄さんの作るおひたしもおいしいし、自分でもある程度料理は出来るんだけど……やっぱり、恋しくなっちゃうんだよね。もう11年も経ってるのに。ごめんねヒビキ、そのためだけに今回の行き先を緑風にしたんだ」
「そんなの、全然いいのに。実際アタシお肌もすべすべだし既に結構満足してるよ? 美容に嬉しい宿だし、アタシの需要にもバッチリハマってるから」
「あはは、ありがとう。次はヒビキの都合で行きたい場所を決めてね」
「でも、宿は大石クンが探して欲しいよね。今までのセンスで言ったら絶対アタシが探すよりいいトコ見つけてくれそうだし」
「えー、一緒に探そうよ。今回はたまたまだよ」
あと2日、せっかく来たんだし思いっ切り食べて、温泉に入って楽しもうと思う。いろんなことを忘れて、自然の中でゆっくり出来そうだし。さっそくこの夕飯からおかずを別注出来るみたいだけど、何を頼もうかな。やっぱり海の物がいいかな。
「あっ、あとでそこのイスでお酒飲もうよ」
「いいね。やっぱり緑風だし日本酒がおいしいのかな」
end.
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温泉旅行編。4年生にもなると時間に余裕が出来て海外旅行をするという人もいるんじゃないかな。この2人はささやかな温泉旅行です。
これでただの温泉友達なので、人間関係のあり方に興味の強い朝霞Pなんかはやっぱり旅行の様子なんかも覗き見たいんじゃないかな。研究の一環としてね
ちーちゃんはお得情報とかそういうのに強そうだし、宿選びにしてもいいポイントをピンポイントで見つけてくれそう感がある
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