2020(02)
■リーダーの無限やる気スイッチ
++++
「よーし、それじゃあ試作会の開始だー!」
「おー!」
「おー」
今日は大学祭食品ブース班のあたし、すがやん、そしてサキの3人で焼きそばの試作会を開くことになった。どんなレシピにして、どんな材料がどれだけ必要になるのかも、まずは作ってみないとわからないからね。
サキの家に来てもいいよっていうことだったから、すがやんと2人でお邪魔して。他に家の人がいないような感じだけど、仕事中だったり他の用事とかでお出かけしてるんだって。片付けさえしておけば台所も使っていいよってことだったみたい。
「でも、よく台所使うの許可してくれたよな。サキの家の人太っ腹じゃん!」
「ホントに!」
「まあ……あんまり一家団欒って感じの家でもないから、普段から台所には立ってるんだよね」
「えっ、でもサキあんまり料理得意じゃないって言ってなかった?」
「得意じゃないよ。焼いたり炒めたり、簡単なことなら出来るけど。あんまり凝ったことを期待されてもっていう意味で」
「じゃあ焼きそばくらいなら全然イケるんじゃん! すげーなーサキは。俺なんかそれすらままならねーのに学祭っぽいことしたいからって食品チームに立候補してさ」
「でも、買い出しとかするのにはすがやんの車が不可欠だし、来てくれて良かったと思うよ。ねえくるみ」
「うん! そうだよすがやん! サキの知識とすがやんの機動力、そしてあたしの……なんだろ。やっ、やる気で何とかなるよ!」
もしかしたらあたしが一番何もないんじゃないかって気がしたけど、すがやんが「やる気があるのはいいことだから」ってフォローしてくれた。でも、サキがぼそっと「やる気のある無能が一番面倒だけどね」って~!
いいもん。あたしが無能でもサキとすがやんがいるもん。サキもあたしが無能なリーダーだって言いたかったワケじゃなくて、料理面やプレゼン面では期待してるよって意味だったみたい。言葉が足りなすぎて冷や冷やした~。
「とりあえず、大学のサイトで大学祭の来場人数を調べて、それに対する売り上げ割合の多かった年のレシピを出してきてみたよ」
「えっ、割合とか見てんの」
「そうだね。売り上げが少ないから美味しくないとは限らないから。それでもやっぱり去年が圧倒的だね。そんなに美味しいのかな。まあ、作ってみればわかるか」
「材料は?」
「必要な分だけ揃えてあるよ」
「サキお前有能か!?」
「すごーい!」
「うちの台所を使える時間は限られるからね。あと、この試作会で使ったお金は会計に申請すれば通るらしいから、1人で動いた方がその辺の処理が楽かなと思って」
「サキ……凄すぎ……」
「とりあえず、去年のから作ってみようか。調理はくるみ、よろしく」
「はいっ!」
「俺はその横で一昨年のヤツを同時進行で作るから」
あんまり量を作りすぎても試食でおなか一杯になっちゃうから、半人前を3人で分けて試食することにした。まず、サキ調べで売り上げ率ナンバーワンだった去年の焼きそばを作ってみる。
材料を並べてみると、料理酒を使ってみたり、高いソースを使ってたり、意外に手間もお金もかかってるんだなって感じ。美味しくするためにそこまでやってたんだって。レシピ通りに手順を踏んで、いざフライパン。
「うわ~、いい匂~い!」
「美味そ~!」
「はい、これが一昨年の」
「こっちも美味しそうだね!」
「なあなあ、早く試食しようぜ!」
「すがやん、ちゃんと味わって食べてよ」
「大丈夫だって!」
「それじゃあ、去年のから。いただきまーす」
ん。
「おいっしい!」
「ソースがパンチあって美味いな!」
「麺ももちもちして」
「お肉も柔らか~い! なるほど、これは売れるのも納得! それじゃあ2人とも、お水飲んで」
「ん」
「こっちが一昨年のね。いただきまーす」
「うん。これはこれで美味しいけど、去年のを食べた後だと、うーん」
あたしたち3人の意見では、去年の焼きそばが美味しいねという結論になった。と言うか、この焼きそばをどうより良く出来るのかっていうアイディアがなかなか思いつかなくって。毎年レシピ変える必要あるのっていう逆ギレっぽい話し合いになってる。
サキにレシピを改めて見せてもらっても、去年のレシピはソースの銘柄にしっかり注文が入ってたり、お肉の臭み消しや麺をふっくらさせるためのやり方が事細かく指示されてる。一昨年のレシピより正直かなり細かい。
「やっぱレシピがマメで細かいのってエージ先輩が絡んでたからかな」
「いくらエージ先輩が神経質でもお料理でもそうなのかな?」
「うーん、レシピが細かいだけでこうは売れないと思うから、やっぱり何か裏があるような気がする。俺はそれを中心に調べてみるよ」
「お願ーい」
「あたしとすがやんはどうしよっか。資材調達の方法とか調べる? 大量購入出来るいいお店とか」
「それは毎年緑大近くにある業務用の店にお世話になってるみたいだから、1回見てきたらいいかもね」
「待って~、サキが凄すぎてあたしリーダーっぽくない~」
「俺の仕事はあくまでくるみの補佐。くるみは俺たち以外の人と話したり仕事を振ったりするのが仕事でしょ。忙しいのは今からだね」
「そ、そっか。そうだよね! 他の人との兼ね合いとか、全然考えてなかった! よ~し、頑張るぞ~!」
end.
++++
MBCC食品チームすがくるサキの試食会です。毎年Lの部屋でやってるんだけど、今回は水面下で動き出すのにサキのおうちです。
去年の売り上げの裏側に関してはどうやらまだ1年生たちにはバレていない様子。議事録なんかには残ってないのね。
ところでレシピはどうするのかな? 変えないなら変えないでプレゼンバトルを勝ち抜けばそれでオッケーなのがMBCCスタイルだけどね!
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「よーし、それじゃあ試作会の開始だー!」
「おー!」
「おー」
今日は大学祭食品ブース班のあたし、すがやん、そしてサキの3人で焼きそばの試作会を開くことになった。どんなレシピにして、どんな材料がどれだけ必要になるのかも、まずは作ってみないとわからないからね。
サキの家に来てもいいよっていうことだったから、すがやんと2人でお邪魔して。他に家の人がいないような感じだけど、仕事中だったり他の用事とかでお出かけしてるんだって。片付けさえしておけば台所も使っていいよってことだったみたい。
「でも、よく台所使うの許可してくれたよな。サキの家の人太っ腹じゃん!」
「ホントに!」
「まあ……あんまり一家団欒って感じの家でもないから、普段から台所には立ってるんだよね」
「えっ、でもサキあんまり料理得意じゃないって言ってなかった?」
「得意じゃないよ。焼いたり炒めたり、簡単なことなら出来るけど。あんまり凝ったことを期待されてもっていう意味で」
「じゃあ焼きそばくらいなら全然イケるんじゃん! すげーなーサキは。俺なんかそれすらままならねーのに学祭っぽいことしたいからって食品チームに立候補してさ」
「でも、買い出しとかするのにはすがやんの車が不可欠だし、来てくれて良かったと思うよ。ねえくるみ」
「うん! そうだよすがやん! サキの知識とすがやんの機動力、そしてあたしの……なんだろ。やっ、やる気で何とかなるよ!」
もしかしたらあたしが一番何もないんじゃないかって気がしたけど、すがやんが「やる気があるのはいいことだから」ってフォローしてくれた。でも、サキがぼそっと「やる気のある無能が一番面倒だけどね」って~!
いいもん。あたしが無能でもサキとすがやんがいるもん。サキもあたしが無能なリーダーだって言いたかったワケじゃなくて、料理面やプレゼン面では期待してるよって意味だったみたい。言葉が足りなすぎて冷や冷やした~。
「とりあえず、大学のサイトで大学祭の来場人数を調べて、それに対する売り上げ割合の多かった年のレシピを出してきてみたよ」
「えっ、割合とか見てんの」
「そうだね。売り上げが少ないから美味しくないとは限らないから。それでもやっぱり去年が圧倒的だね。そんなに美味しいのかな。まあ、作ってみればわかるか」
「材料は?」
「必要な分だけ揃えてあるよ」
「サキお前有能か!?」
「すごーい!」
「うちの台所を使える時間は限られるからね。あと、この試作会で使ったお金は会計に申請すれば通るらしいから、1人で動いた方がその辺の処理が楽かなと思って」
「サキ……凄すぎ……」
「とりあえず、去年のから作ってみようか。調理はくるみ、よろしく」
「はいっ!」
「俺はその横で一昨年のヤツを同時進行で作るから」
あんまり量を作りすぎても試食でおなか一杯になっちゃうから、半人前を3人で分けて試食することにした。まず、サキ調べで売り上げ率ナンバーワンだった去年の焼きそばを作ってみる。
材料を並べてみると、料理酒を使ってみたり、高いソースを使ってたり、意外に手間もお金もかかってるんだなって感じ。美味しくするためにそこまでやってたんだって。レシピ通りに手順を踏んで、いざフライパン。
「うわ~、いい匂~い!」
「美味そ~!」
「はい、これが一昨年の」
「こっちも美味しそうだね!」
「なあなあ、早く試食しようぜ!」
「すがやん、ちゃんと味わって食べてよ」
「大丈夫だって!」
「それじゃあ、去年のから。いただきまーす」
ん。
「おいっしい!」
「ソースがパンチあって美味いな!」
「麺ももちもちして」
「お肉も柔らか~い! なるほど、これは売れるのも納得! それじゃあ2人とも、お水飲んで」
「ん」
「こっちが一昨年のね。いただきまーす」
「うん。これはこれで美味しいけど、去年のを食べた後だと、うーん」
あたしたち3人の意見では、去年の焼きそばが美味しいねという結論になった。と言うか、この焼きそばをどうより良く出来るのかっていうアイディアがなかなか思いつかなくって。毎年レシピ変える必要あるのっていう逆ギレっぽい話し合いになってる。
サキにレシピを改めて見せてもらっても、去年のレシピはソースの銘柄にしっかり注文が入ってたり、お肉の臭み消しや麺をふっくらさせるためのやり方が事細かく指示されてる。一昨年のレシピより正直かなり細かい。
「やっぱレシピがマメで細かいのってエージ先輩が絡んでたからかな」
「いくらエージ先輩が神経質でもお料理でもそうなのかな?」
「うーん、レシピが細かいだけでこうは売れないと思うから、やっぱり何か裏があるような気がする。俺はそれを中心に調べてみるよ」
「お願ーい」
「あたしとすがやんはどうしよっか。資材調達の方法とか調べる? 大量購入出来るいいお店とか」
「それは毎年緑大近くにある業務用の店にお世話になってるみたいだから、1回見てきたらいいかもね」
「待って~、サキが凄すぎてあたしリーダーっぽくない~」
「俺の仕事はあくまでくるみの補佐。くるみは俺たち以外の人と話したり仕事を振ったりするのが仕事でしょ。忙しいのは今からだね」
「そ、そっか。そうだよね! 他の人との兼ね合いとか、全然考えてなかった! よ~し、頑張るぞ~!」
end.
++++
MBCC食品チームすがくるサキの試食会です。毎年Lの部屋でやってるんだけど、今回は水面下で動き出すのにサキのおうちです。
去年の売り上げの裏側に関してはどうやらまだ1年生たちにはバレていない様子。議事録なんかには残ってないのね。
ところでレシピはどうするのかな? 変えないなら変えないでプレゼンバトルを勝ち抜けばそれでオッケーなのがMBCCスタイルだけどね!
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