2020(02)
■科学の入り口
++++
星港市科学館は、全国的に見てもかなり大きくて有名な施設だ。今日は「機械の歴史とAI」という企画展をやっているので、玲那と一緒にやってきた。俺はあまり機械には詳しくないけど、フィクションの分野であればSF作品などで知ってはいる。
逆に玲那はそういうところを専門に勉強しているから、この企画展もとても楽しみにしていたそうだ。AIの活用というところにも興味があるそうだけど、ロボットが好きで好きで、将来的にもロボットに関わっていたいという話は聞いた。
「俺さ、AIが搭載された人型のロボットが人間社会を支配して、みたいな本を読んだことがあってさ。こういう……人型のロボットってちょっと不気味だなって思うな」
「それがロボットアームとか、人の形を模してない物ならどう?」
「人の形を模してなければ……機械だなとしか思わないかもしれない。人の形を模すからこそ生じる感情か」
「あくまでベースは人の物だから……学習した中にそういう思想が含まれていたとして、それが社会の最適化に繋がるのなら、可能性はゼロじゃないかもね」
「でも、面白いな。玲那の解説のおかげかもしれない」
「お役に立てたなら何よりです。次は陸の好きな企画展とかにも連れてって。それでいろいろ教えて欲しいな」
「俺の好きな、か。そしたら文学展とかになると思うけど」
玲那とは学内で会うのがメインで、こうして外に出歩くデートというのは会っている時間に対してあまりやっていないかなという感じがする。だからなのか、こうして大学じゃない場所を歩いて互いの好きなことを話して、というのがかなり新鮮だ。
「せっかく来たし、他の展示も見に行ってみる?」
「そうだね。科学館の通常展示も結構凄いらしいし。陸、ここのプラネタリウム見たことある?」
「新しくなってからは見てないかもしれない。豊葦からだと、もうちょっと山羽寄りに行ったところにある天文台に大きな大きな望遠鏡があるんだよ。そこに行ってたかな」
「望遠鏡。いいね。それ、担げるレベルのじゃない本当の望遠鏡でしょ? いいなあ」
プラネタリウムのタイムテーブルを見ると、ちょうど今やっているそうだ。しばらく通常展示を見ていれば次の回に行けるかなという感じ。改めてプラネタリウムの券を買って、通常展示を回りに行く。
通常展示はフロアによってテイストが違っているんだけど、子供向けっぽい展示が案外おもしろかったりするから侮れないなって。俺があまり触れてない分野だからこその発見があるかもしれない。科学、捨てたもんじゃないな。
「もうそろそろ行ってみる? 終わりそうな時間帯だし」
「そうだね。結構な列になるって言うし」
――と、プラネタリウムに向かっていると、見知った顔が。一緒にいる背が高いあの人も見たことがあるような気がする。眠そうな顔をしてると言うか、前髪が長くて人相がわかりにくいのかな。
「あっ、ササ! レナ! おはよー! あ、もしかしなくてもデートじゃん! う~、邪魔してごめんね。また考えなしに声かけちゃった」
「気にしないで。俺たちもくるみと会えて嬉しいよ」
「そうそう。くるみは? 一緒にいるのって、確か夏合宿にいた……誰だっけ」
「青敬の北星だよ。北星、ウチのササと、レナ」
「あ~、えっと~、上川北星です~」
「って言うか、くるみこそデートなんじゃ」
「あのね、次の回のプラネタリウムで上映されるのが最新の映像技術をふんだんに使った物凄い映像なんだって! 北星は青敬で映像系の勉強を専門にやってて、普段はのんびりしてるけど、映像の話するときとかはすっごいしっかりしてるしカッコいいんだよ! あたしはこの近くのカフェにある宇宙パフェが食べたくって」
「なるほど、利害が一致したのか」
「えっと~、今度~、動画サイトのAKBCチャンネルに~、星ヶ丘の彩人に出てもらったミュージックビデオが上がるんで~、ぜひ見てくださ~い。カッコよく仕上がったから~」
「えー! とうとう出来たんだね! 見る見る!」
「……陸さん。顔、顔」
玲那、そんな目で俺を見るな。言いたいことはわかってるけど、とりあえず2人と一旦分かれてからにしてもらえませんかお願いします。いや、まあ、彩人がカッコいいのは当然として、その良さが広く世間に気付かれてしまうのは仕方ないにしても。いや、でも動画は普通に気になるから見るけど。
「あっ、もうすぐ始まるね! そろそろ並んだ方がいいかも! それじゃあササ、レナ、楽しんでね!」
「2人もね」
「またね~」
またね~と手を振る北星に、俺たちもひらひらと手を振る。何と言うか、くるみと北星はちょっといい雰囲気だな。それとも個別に出かけられるほど班の雰囲気が良かったってことなのかな。
「……ふーっ」
「陸、彩人って名前が出た瞬間の顔が分かりやすい。って言うか、動画作ってるって聞いてなかったの?」
「聞いてたんだけど、改めて向こうから言われると、何となく。カッコよくしてなかったら絶対許さないし当麻を呼び出してシメてやる」
「あーこわっ。怖いわー。陸の考え方をベースにしたAIを搭載したロボットか。自分と彩人以外全員滅ぼしそうだね」
「それはない」
「そう?」
「俺だったら玲那も残すよ」
「そう。そういうことじゃないけど、それじゃあその時は守ってね」
end.
++++
たまたま宇宙の日になりましたね。科学館できゃっきゃしててもいいかなと思った結果のササレナたちです。
ササはド文系なので科学の分野は本当に本とかで読んだことくらいのイメージしかなかったりする。意外にね。
くるちゃんと北星が特別いい雰囲気と言うよりは、くるちゃんは誰に対してもそういう感じの子なので……うん、まあ、がんばれ北星
.
++++
星港市科学館は、全国的に見てもかなり大きくて有名な施設だ。今日は「機械の歴史とAI」という企画展をやっているので、玲那と一緒にやってきた。俺はあまり機械には詳しくないけど、フィクションの分野であればSF作品などで知ってはいる。
逆に玲那はそういうところを専門に勉強しているから、この企画展もとても楽しみにしていたそうだ。AIの活用というところにも興味があるそうだけど、ロボットが好きで好きで、将来的にもロボットに関わっていたいという話は聞いた。
「俺さ、AIが搭載された人型のロボットが人間社会を支配して、みたいな本を読んだことがあってさ。こういう……人型のロボットってちょっと不気味だなって思うな」
「それがロボットアームとか、人の形を模してない物ならどう?」
「人の形を模してなければ……機械だなとしか思わないかもしれない。人の形を模すからこそ生じる感情か」
「あくまでベースは人の物だから……学習した中にそういう思想が含まれていたとして、それが社会の最適化に繋がるのなら、可能性はゼロじゃないかもね」
「でも、面白いな。玲那の解説のおかげかもしれない」
「お役に立てたなら何よりです。次は陸の好きな企画展とかにも連れてって。それでいろいろ教えて欲しいな」
「俺の好きな、か。そしたら文学展とかになると思うけど」
玲那とは学内で会うのがメインで、こうして外に出歩くデートというのは会っている時間に対してあまりやっていないかなという感じがする。だからなのか、こうして大学じゃない場所を歩いて互いの好きなことを話して、というのがかなり新鮮だ。
「せっかく来たし、他の展示も見に行ってみる?」
「そうだね。科学館の通常展示も結構凄いらしいし。陸、ここのプラネタリウム見たことある?」
「新しくなってからは見てないかもしれない。豊葦からだと、もうちょっと山羽寄りに行ったところにある天文台に大きな大きな望遠鏡があるんだよ。そこに行ってたかな」
「望遠鏡。いいね。それ、担げるレベルのじゃない本当の望遠鏡でしょ? いいなあ」
プラネタリウムのタイムテーブルを見ると、ちょうど今やっているそうだ。しばらく通常展示を見ていれば次の回に行けるかなという感じ。改めてプラネタリウムの券を買って、通常展示を回りに行く。
通常展示はフロアによってテイストが違っているんだけど、子供向けっぽい展示が案外おもしろかったりするから侮れないなって。俺があまり触れてない分野だからこその発見があるかもしれない。科学、捨てたもんじゃないな。
「もうそろそろ行ってみる? 終わりそうな時間帯だし」
「そうだね。結構な列になるって言うし」
――と、プラネタリウムに向かっていると、見知った顔が。一緒にいる背が高いあの人も見たことがあるような気がする。眠そうな顔をしてると言うか、前髪が長くて人相がわかりにくいのかな。
「あっ、ササ! レナ! おはよー! あ、もしかしなくてもデートじゃん! う~、邪魔してごめんね。また考えなしに声かけちゃった」
「気にしないで。俺たちもくるみと会えて嬉しいよ」
「そうそう。くるみは? 一緒にいるのって、確か夏合宿にいた……誰だっけ」
「青敬の北星だよ。北星、ウチのササと、レナ」
「あ~、えっと~、上川北星です~」
「って言うか、くるみこそデートなんじゃ」
「あのね、次の回のプラネタリウムで上映されるのが最新の映像技術をふんだんに使った物凄い映像なんだって! 北星は青敬で映像系の勉強を専門にやってて、普段はのんびりしてるけど、映像の話するときとかはすっごいしっかりしてるしカッコいいんだよ! あたしはこの近くのカフェにある宇宙パフェが食べたくって」
「なるほど、利害が一致したのか」
「えっと~、今度~、動画サイトのAKBCチャンネルに~、星ヶ丘の彩人に出てもらったミュージックビデオが上がるんで~、ぜひ見てくださ~い。カッコよく仕上がったから~」
「えー! とうとう出来たんだね! 見る見る!」
「……陸さん。顔、顔」
玲那、そんな目で俺を見るな。言いたいことはわかってるけど、とりあえず2人と一旦分かれてからにしてもらえませんかお願いします。いや、まあ、彩人がカッコいいのは当然として、その良さが広く世間に気付かれてしまうのは仕方ないにしても。いや、でも動画は普通に気になるから見るけど。
「あっ、もうすぐ始まるね! そろそろ並んだ方がいいかも! それじゃあササ、レナ、楽しんでね!」
「2人もね」
「またね~」
またね~と手を振る北星に、俺たちもひらひらと手を振る。何と言うか、くるみと北星はちょっといい雰囲気だな。それとも個別に出かけられるほど班の雰囲気が良かったってことなのかな。
「……ふーっ」
「陸、彩人って名前が出た瞬間の顔が分かりやすい。って言うか、動画作ってるって聞いてなかったの?」
「聞いてたんだけど、改めて向こうから言われると、何となく。カッコよくしてなかったら絶対許さないし当麻を呼び出してシメてやる」
「あーこわっ。怖いわー。陸の考え方をベースにしたAIを搭載したロボットか。自分と彩人以外全員滅ぼしそうだね」
「それはない」
「そう?」
「俺だったら玲那も残すよ」
「そう。そういうことじゃないけど、それじゃあその時は守ってね」
end.
++++
たまたま宇宙の日になりましたね。科学館できゃっきゃしててもいいかなと思った結果のササレナたちです。
ササはド文系なので科学の分野は本当に本とかで読んだことくらいのイメージしかなかったりする。意外にね。
くるちゃんと北星が特別いい雰囲気と言うよりは、くるちゃんは誰に対してもそういう感じの子なので……うん、まあ、がんばれ北星
.