2020(02)
■舞台袖のコンテスト
++++
インターフェイスの加盟校が持ち回りで提出することになっているのが作品出展だ。それぞれの大学の活動報告と言うか、こんなことをやってますっていうのを作品として提出して、品評し合おうっていう企画。各大学の得意分野の作品を、30分から1時間くらいの長さで作ってさ。
星ヶ丘では毎年ラジオドラマを作って提出してた。ステージメイン校なのに何でわざわざラジオドラマなのか、そもそも丸の池ステージがあるんだからその映像でも提出すればいいんじゃないのかって点に関して言えば、大人の事情ですとしか答えようがない。
今年はそんな事情がちょっと解決して、丸の池ステージの映像を残すことが出来た。提出用に一応それも編集するにはしたんだけど、マリンも彩人もラジドラの話を振って来たから書くなら書いてきな、と返事をしてある。で、2人分の台本がアタシの手元に揃った。
「と! いうことで、マリンと彩人以外のメンバーに集まってもらったんだけど」
「今日はラジドラの台本を読むのがメインでいいんですよね」
「そーね。今回は特に演劇部出のゲンゴローに活躍してもらわなきゃなんないからね」
アタシの一存でどっちの本を採用するか決めても良かったけど、正直本の良し悪しがちゃんとわかるかって言ったら微妙なライン。ディレクター的に、本の内容が実現出来るかを現実的に捉えることが出来るってくらい。だから、他の班員にも見てもらう。
海月とみちるにも意見は求めたいけど、ここで頼れるのはゲンゴローだ。アタシは実現性について見がちだけど、ゲンゴローには話の上での面白さを見てもらいたい。高校時代は演劇部で、今も舞台に足を運んでるそうだから、期待大だよね。何よりあの朝霞サンと話が合うくらいだしね。
「一応人数分刷って来たからこれを読んでもらって、どっちが好きか選んで。ちなみに、どっちがどっちの本かってのは伏せるから」
「この選抜の仕方が緊張感があっていいですね」
「そうね。書いた人間の名前とかじゃなくて、どっちの本がいいかっていうことだけで選びたいからね。率直に意見は欲しいし、モニター会の要領で気になったことがあったら本に書きこんで」
「わかりました」
みんなしばらく無言で本を読み進んで、気になったところに書きこみをしていく。やっぱ、ディレクターとして技術的なところで気になるところが良く見える。正直、朝霞サンが本を書いてた時代は渡された物をただやってた感じだったから、こうやって本を皆で見るって言うのもかなり新鮮な作業だ。
ただ、今はプロデューサー戦国時代。これからは本が2冊上がって来るってことだ。彩人は夏も本を書いてたそうだけど、それを出さなくてガチで後悔したって言ってた。これからはガンガン書いて行くとも。アタシのスタンスがスタンスだから、マリンもうかうかしてられないって意気込んでる。
ステージをやる上ではプロデューサーの協力体制を築くのも必須。だけどただの仲良しこよしだけじゃなくて、互いに競うところは競って高め合っていかないと。余談だけど、アナウンサーのちょっとしたこともまとめて海月に渡してある。みんな学祭までにレベルアップしていかないとね。
「読めましたー」
「そしたら、みんな読めたかな。じゃ、せーので好きだった方の本を立てようか。せーのっ。……ふむ。2対1か」
「俺はこっちが好きですね。音声だからこそ出来る、まさにラジオドラマって感じの話で」
「私はこっちが好きです! えーっと、根拠とかは、特にないですけど」
「ちなみにだけど、鳥の子の話がマリンで、すれ違いの話が彩人の本ね」
「へー、マリンってこんなかわいい話を書くんだ」
「私は、彩人がこんな裏のある話を書くなんて思ってもなかったです」
投票の内訳としては、彩人がゲンゴローとみちるの2票でマリンが海月の1票を集めた。今回、同率を防ぐためにアタシは参加しなかったんだけど、第一印象で好きだと思ったのは彩人の本だ。マリンの話は分かりやすい一方で、ラジオドラマとして実現させるには結構ムチャがある。
もちろん彩人の本にも粗はあるんだけど、班が持ち得る機材や技術で実現出来る難易度だ。本の内容的にも、アイディア自体はよくある同音異義だとかガバガバな語彙から生じる誤解が生むトラブルでのドタバタ劇なんだけど、テンポがいいんだよね。
「まあでも、せっかくモニターしたし細かいトコは2人ともに見直してもらうわ。とりあえず、彩人の本をベースに今回のラジドラはやっていきましょう」
「これ、マリンの本はどうなるんですか? お蔵入りですか?」
「今回の作品出展ではやんないけど、完全に没にすんのも勿体ないし、時間ある時にでもやったらいいんじゃない? 学祭終わってから1、2年生でやってもいいし」
「そしたら、これから必要な音源を探すような感じですかね」
「そーね。ミキとDは音源を探したり、機材面メインに準備する。アナは本の読み込み。Pは総合演出、APはPの補佐って感じかな。せっかくだしこの作品出展でPの2人がどう連携するかっていう練習にしよう」
そうとなったら投票結果とこれからの方針を伝えないとな。さーてどうなる。
end.
++++
星ヶ丘の作品出展は大人の事情でラジドラを出してたんだけど、ステージの映像があるならそれを出しちゃえばいいんですね
ただ、書けるものを書く機会は多い方がいいという考え方の班なので、ラジドラもやれるならやっちゃう。その辺は朝霞班時代から変わりませんね
台本の読み込みやらモニターやらをしっかりやってるし、これも戸田班の英才教育のように見えて来るよ
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インターフェイスの加盟校が持ち回りで提出することになっているのが作品出展だ。それぞれの大学の活動報告と言うか、こんなことをやってますっていうのを作品として提出して、品評し合おうっていう企画。各大学の得意分野の作品を、30分から1時間くらいの長さで作ってさ。
星ヶ丘では毎年ラジオドラマを作って提出してた。ステージメイン校なのに何でわざわざラジオドラマなのか、そもそも丸の池ステージがあるんだからその映像でも提出すればいいんじゃないのかって点に関して言えば、大人の事情ですとしか答えようがない。
今年はそんな事情がちょっと解決して、丸の池ステージの映像を残すことが出来た。提出用に一応それも編集するにはしたんだけど、マリンも彩人もラジドラの話を振って来たから書くなら書いてきな、と返事をしてある。で、2人分の台本がアタシの手元に揃った。
「と! いうことで、マリンと彩人以外のメンバーに集まってもらったんだけど」
「今日はラジドラの台本を読むのがメインでいいんですよね」
「そーね。今回は特に演劇部出のゲンゴローに活躍してもらわなきゃなんないからね」
アタシの一存でどっちの本を採用するか決めても良かったけど、正直本の良し悪しがちゃんとわかるかって言ったら微妙なライン。ディレクター的に、本の内容が実現出来るかを現実的に捉えることが出来るってくらい。だから、他の班員にも見てもらう。
海月とみちるにも意見は求めたいけど、ここで頼れるのはゲンゴローだ。アタシは実現性について見がちだけど、ゲンゴローには話の上での面白さを見てもらいたい。高校時代は演劇部で、今も舞台に足を運んでるそうだから、期待大だよね。何よりあの朝霞サンと話が合うくらいだしね。
「一応人数分刷って来たからこれを読んでもらって、どっちが好きか選んで。ちなみに、どっちがどっちの本かってのは伏せるから」
「この選抜の仕方が緊張感があっていいですね」
「そうね。書いた人間の名前とかじゃなくて、どっちの本がいいかっていうことだけで選びたいからね。率直に意見は欲しいし、モニター会の要領で気になったことがあったら本に書きこんで」
「わかりました」
みんなしばらく無言で本を読み進んで、気になったところに書きこみをしていく。やっぱ、ディレクターとして技術的なところで気になるところが良く見える。正直、朝霞サンが本を書いてた時代は渡された物をただやってた感じだったから、こうやって本を皆で見るって言うのもかなり新鮮な作業だ。
ただ、今はプロデューサー戦国時代。これからは本が2冊上がって来るってことだ。彩人は夏も本を書いてたそうだけど、それを出さなくてガチで後悔したって言ってた。これからはガンガン書いて行くとも。アタシのスタンスがスタンスだから、マリンもうかうかしてられないって意気込んでる。
ステージをやる上ではプロデューサーの協力体制を築くのも必須。だけどただの仲良しこよしだけじゃなくて、互いに競うところは競って高め合っていかないと。余談だけど、アナウンサーのちょっとしたこともまとめて海月に渡してある。みんな学祭までにレベルアップしていかないとね。
「読めましたー」
「そしたら、みんな読めたかな。じゃ、せーので好きだった方の本を立てようか。せーのっ。……ふむ。2対1か」
「俺はこっちが好きですね。音声だからこそ出来る、まさにラジオドラマって感じの話で」
「私はこっちが好きです! えーっと、根拠とかは、特にないですけど」
「ちなみにだけど、鳥の子の話がマリンで、すれ違いの話が彩人の本ね」
「へー、マリンってこんなかわいい話を書くんだ」
「私は、彩人がこんな裏のある話を書くなんて思ってもなかったです」
投票の内訳としては、彩人がゲンゴローとみちるの2票でマリンが海月の1票を集めた。今回、同率を防ぐためにアタシは参加しなかったんだけど、第一印象で好きだと思ったのは彩人の本だ。マリンの話は分かりやすい一方で、ラジオドラマとして実現させるには結構ムチャがある。
もちろん彩人の本にも粗はあるんだけど、班が持ち得る機材や技術で実現出来る難易度だ。本の内容的にも、アイディア自体はよくある同音異義だとかガバガバな語彙から生じる誤解が生むトラブルでのドタバタ劇なんだけど、テンポがいいんだよね。
「まあでも、せっかくモニターしたし細かいトコは2人ともに見直してもらうわ。とりあえず、彩人の本をベースに今回のラジドラはやっていきましょう」
「これ、マリンの本はどうなるんですか? お蔵入りですか?」
「今回の作品出展ではやんないけど、完全に没にすんのも勿体ないし、時間ある時にでもやったらいいんじゃない? 学祭終わってから1、2年生でやってもいいし」
「そしたら、これから必要な音源を探すような感じですかね」
「そーね。ミキとDは音源を探したり、機材面メインに準備する。アナは本の読み込み。Pは総合演出、APはPの補佐って感じかな。せっかくだしこの作品出展でPの2人がどう連携するかっていう練習にしよう」
そうとなったら投票結果とこれからの方針を伝えないとな。さーてどうなる。
end.
++++
星ヶ丘の作品出展は大人の事情でラジドラを出してたんだけど、ステージの映像があるならそれを出しちゃえばいいんですね
ただ、書けるものを書く機会は多い方がいいという考え方の班なので、ラジドラもやれるならやっちゃう。その辺は朝霞班時代から変わりませんね
台本の読み込みやらモニターやらをしっかりやってるし、これも戸田班の英才教育のように見えて来るよ
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