2020(02)
■光と影のアチーブメント
++++
「わー、シンプルでおしゃれな部屋だね! お邪魔しまーす」
「どうぞ」
インターフェイス夏合宿で少し話した星ヶ丘のみちるちゃんから連絡が入った。もし良ければ会いませんかって。連絡先はレナから「こういう用件でみちるに教えたよ」って連絡があって、わかったよーって。レナの班の子ってみんなクール系って言うか、落ち着いててカッコいいって印象だったなあ。
みちるちゃんの存在がバーンと目に入って来たのは合宿2日目のミキサー講習。向島の萌香ちゃんとのケンカの件で。その時はちょっとへこんでて何もわかんなかったんだけど、その日の夜にちょっと話して、優しい子だな、友達になりたいなって。
「良かったらこれ」
「わ、ありがとう。箱の形的に、ケーキ?」
「ケーキ屋さんのとかじゃなくてコンビニで買ったスイーツなんだけど、これは絶対オススメってヤツを選んできたんだー」
「くるみってコンビニスイーツすごい好きなんだよね。そのくるみのオススメなら美味しいねきっと」
「えっ、って言うかあたしがコンビニスイーツ好きなの何で知ってるの?」
「レナからも聞いたし、彩人からも聞いた」
「彩人? あたしあの子とそんな話したかなあ」
「青敬の子から聞いたんじゃない? 一緒に動画作品作ってるみたいだし」
「あっ、それなら納得! 北星から話が行ってるんだね」
「実は私も、くるみが来るからってケーキを買って来てて。冷蔵庫にあるんだけど、どうしよっか」
「えー! ありがとう! あたし、甘いものなら2つでも3つでも全然イケちゃうよ」
あたしが来るからってケーキを用意してくれてるとか、みちるちゃんの気遣いがすごい。お茶にしよっかって紅茶を淹れてくれてるんだけど、合宿のあの件だけ見てみちるちゃんを怖いって言ってる子たちにはあたしが訂正して回りたいな。「みちるちゃんはとっても優しいんです!」って。
「はい、どうぞ」
「いただきます。これ、桃がゼリーの中に入ってるの?」
「そう。ゼリーの下の白いのは、桃のムース。今更だけど、桃とかゼラチンにアレルギーとかないよね」
「うん、大丈夫だよ。桃大好き。わー、オシャレなケーキ~……うずうず……」
「どうしたの?」
「あのね、あたし、こういうケーキの断面図フェチなの。コンビニスイーツの断面図動画とか撮ってて」
「ナイフ持って来ようか?」
「ううん、せっかくのケーキだもん、一番美味しく食べちゃわないと。ん~、おいっしい!」
オシャレなケーキの断面図動画を撮りたい気持ちはあったけど、やり始めると時間がかかってケーキがぬるくなっちゃうんだよね。せっかくみちるちゃんが出してくれたケーキなので、やるなら自分で買ってじっくりやろう。
「みちるちゃんの部屋って、シンプルで、きれいで、すごいね」
「最近は海月とかも遊びに来るから、割と片付けてるよ。くるみの部屋は?」
「化粧品とかアクセサリーとかが大変なことになってる。みちるちゃんどうやって片付けてるの?」
「アクセサリーは引き出しの中かな。化粧品はこのカゴの中に、こう」
「わっ、すごい! えー、見せてー! すごーい! えっ、みちるちゃんの顔も見せてね。透明感がすごいなあ。どうメイクしてるの?」
「今化粧落とすよ。ちょっと待ってて」
そう言ってみちるちゃんはクレンジングシートで化粧を落とし始めた。すると、化粧が落ちてあらわになったすっぴん顔は、まるで手品を見ているのか、それとも何かの巻き戻し映像でも見ているのかって錯覚しちゃうほど目鼻立ちがはっきりしてきて。
すっかりメイクが落ちると、今まであたしが喋ってたみちるちゃんは誰だったんだろうって思うくらいに別人になってしまった。本来の目鼻立ちや顔色、肌艶に至るまで、敢えて化粧で隠してるようにも思えて来て。
「――とまあ、こんな具合に」
「待って? えっ? お化粧してる方が地味に見えるんだけど、えっ?」
「そう。敢えて地味にしてるんだよ。のっぺりするようにして、顔色のトーンも少し落として」
「どうしてか聞いていい?」
「高校の時は結構顔が売れちゃってたから、地味になって普通の、殴り合いのケンカとかをしない生活を送りたかったんだよ。大学では普通の友達が欲しいなって」
「そうだったんだね。あたしはみちるちゃんの、普通の友達だよ」
「ありがとう。あの女に毒づかれて傷付いたはずなのに、くるみは眩しすぎるなあ。私なんかが直視出来る存在じゃないかも」
「えー! そんなこと言わないでー! とーもーだーち! ねっ!」
「ん」
話してることからすると、みちるちゃんも今まで結構いろいろあって傷付いて来てるんだろうな。だから人の痛みがわかるし、それを乗り越える気持ちの上での強さもあるのかなって。普通の生活を送りたい、普通の友達が欲しいなんて、あたしは考えたこともなかった。あって当たり前だから。
「みちるちゃん、何かやりたいことがあったら遠慮なく言ってね!」
「くるみって、お泊りとか出来る家風?」
「うん、全然出来るよ! 高校の時とかお泊り勉強会とかで友達の家とかよく泊まらせてもらって、実際は勉強そっちのけで恋バナしたりしてたなー」
「へえ。くるみ、良かったら私の部屋にも泊まりに来てね。最短で今日から全然オッケーだし」
「えー! 今日オッケーなの!? みちるちゃんと夜通しお喋りしたーい!」
end.
++++
みちるから見たらくるちゃんは純粋無垢すぎて眩しいようです。だからこそ逆に今時こんな子がいるのかっていう興味もありそう
そしてみちるの大学デビューは顔面からも現れていた様子。本当は目鼻立ちもはっきりしてるけど、敢えて地味に見せるようメイク術でカバー。
この感じで行ったらゆくゆくみちるがくるちゃんのボディーガードとかやってそうだしモンペ化の可能性もワンチャンあるな……
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「わー、シンプルでおしゃれな部屋だね! お邪魔しまーす」
「どうぞ」
インターフェイス夏合宿で少し話した星ヶ丘のみちるちゃんから連絡が入った。もし良ければ会いませんかって。連絡先はレナから「こういう用件でみちるに教えたよ」って連絡があって、わかったよーって。レナの班の子ってみんなクール系って言うか、落ち着いててカッコいいって印象だったなあ。
みちるちゃんの存在がバーンと目に入って来たのは合宿2日目のミキサー講習。向島の萌香ちゃんとのケンカの件で。その時はちょっとへこんでて何もわかんなかったんだけど、その日の夜にちょっと話して、優しい子だな、友達になりたいなって。
「良かったらこれ」
「わ、ありがとう。箱の形的に、ケーキ?」
「ケーキ屋さんのとかじゃなくてコンビニで買ったスイーツなんだけど、これは絶対オススメってヤツを選んできたんだー」
「くるみってコンビニスイーツすごい好きなんだよね。そのくるみのオススメなら美味しいねきっと」
「えっ、って言うかあたしがコンビニスイーツ好きなの何で知ってるの?」
「レナからも聞いたし、彩人からも聞いた」
「彩人? あたしあの子とそんな話したかなあ」
「青敬の子から聞いたんじゃない? 一緒に動画作品作ってるみたいだし」
「あっ、それなら納得! 北星から話が行ってるんだね」
「実は私も、くるみが来るからってケーキを買って来てて。冷蔵庫にあるんだけど、どうしよっか」
「えー! ありがとう! あたし、甘いものなら2つでも3つでも全然イケちゃうよ」
あたしが来るからってケーキを用意してくれてるとか、みちるちゃんの気遣いがすごい。お茶にしよっかって紅茶を淹れてくれてるんだけど、合宿のあの件だけ見てみちるちゃんを怖いって言ってる子たちにはあたしが訂正して回りたいな。「みちるちゃんはとっても優しいんです!」って。
「はい、どうぞ」
「いただきます。これ、桃がゼリーの中に入ってるの?」
「そう。ゼリーの下の白いのは、桃のムース。今更だけど、桃とかゼラチンにアレルギーとかないよね」
「うん、大丈夫だよ。桃大好き。わー、オシャレなケーキ~……うずうず……」
「どうしたの?」
「あのね、あたし、こういうケーキの断面図フェチなの。コンビニスイーツの断面図動画とか撮ってて」
「ナイフ持って来ようか?」
「ううん、せっかくのケーキだもん、一番美味しく食べちゃわないと。ん~、おいっしい!」
オシャレなケーキの断面図動画を撮りたい気持ちはあったけど、やり始めると時間がかかってケーキがぬるくなっちゃうんだよね。せっかくみちるちゃんが出してくれたケーキなので、やるなら自分で買ってじっくりやろう。
「みちるちゃんの部屋って、シンプルで、きれいで、すごいね」
「最近は海月とかも遊びに来るから、割と片付けてるよ。くるみの部屋は?」
「化粧品とかアクセサリーとかが大変なことになってる。みちるちゃんどうやって片付けてるの?」
「アクセサリーは引き出しの中かな。化粧品はこのカゴの中に、こう」
「わっ、すごい! えー、見せてー! すごーい! えっ、みちるちゃんの顔も見せてね。透明感がすごいなあ。どうメイクしてるの?」
「今化粧落とすよ。ちょっと待ってて」
そう言ってみちるちゃんはクレンジングシートで化粧を落とし始めた。すると、化粧が落ちてあらわになったすっぴん顔は、まるで手品を見ているのか、それとも何かの巻き戻し映像でも見ているのかって錯覚しちゃうほど目鼻立ちがはっきりしてきて。
すっかりメイクが落ちると、今まであたしが喋ってたみちるちゃんは誰だったんだろうって思うくらいに別人になってしまった。本来の目鼻立ちや顔色、肌艶に至るまで、敢えて化粧で隠してるようにも思えて来て。
「――とまあ、こんな具合に」
「待って? えっ? お化粧してる方が地味に見えるんだけど、えっ?」
「そう。敢えて地味にしてるんだよ。のっぺりするようにして、顔色のトーンも少し落として」
「どうしてか聞いていい?」
「高校の時は結構顔が売れちゃってたから、地味になって普通の、殴り合いのケンカとかをしない生活を送りたかったんだよ。大学では普通の友達が欲しいなって」
「そうだったんだね。あたしはみちるちゃんの、普通の友達だよ」
「ありがとう。あの女に毒づかれて傷付いたはずなのに、くるみは眩しすぎるなあ。私なんかが直視出来る存在じゃないかも」
「えー! そんなこと言わないでー! とーもーだーち! ねっ!」
「ん」
話してることからすると、みちるちゃんも今まで結構いろいろあって傷付いて来てるんだろうな。だから人の痛みがわかるし、それを乗り越える気持ちの上での強さもあるのかなって。普通の生活を送りたい、普通の友達が欲しいなんて、あたしは考えたこともなかった。あって当たり前だから。
「みちるちゃん、何かやりたいことがあったら遠慮なく言ってね!」
「くるみって、お泊りとか出来る家風?」
「うん、全然出来るよ! 高校の時とかお泊り勉強会とかで友達の家とかよく泊まらせてもらって、実際は勉強そっちのけで恋バナしたりしてたなー」
「へえ。くるみ、良かったら私の部屋にも泊まりに来てね。最短で今日から全然オッケーだし」
「えー! 今日オッケーなの!? みちるちゃんと夜通しお喋りしたーい!」
end.
++++
みちるから見たらくるちゃんは純粋無垢すぎて眩しいようです。だからこそ逆に今時こんな子がいるのかっていう興味もありそう
そしてみちるの大学デビューは顔面からも現れていた様子。本当は目鼻立ちもはっきりしてるけど、敢えて地味に見せるようメイク術でカバー。
この感じで行ったらゆくゆくみちるがくるちゃんのボディーガードとかやってそうだしモンペ化の可能性もワンチャンあるな……
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