2020(02)
■適材適所の直前リサーチ
＋＋＋＋
「夏休みの間に１回温泉行くんだよね。どこ行く？」
「そう、その話なんだけど、今回は緑風に行きたいと思ってるんだ」
「緑風？」
ヒビキと結成した混浴温泉サークル２回目の旅行は、大学が夏休みの間に１回行っておこうという話になっていた。言って２人とも４年生だしそこまで授業もないからいつだっていいんだろうけど、前回が６月だしそろそろ行っておきたくて。
そして、緑風に行きたいというのは個人的な理由。母さんが生きてた時に作ってくれてたおひたしの、隠し味的な醤油を買いに行きたいっていう。なっちに聞いたら、スーパーならどこにでも売ってるそうだから、その買い物を。
「――っていうワケで、醤油を買いに行きたいんだよね。ネットでも調べたけど、通販ってやってないっぽくて」
「うん、いいよいいよ！ 山羽は山の幸が美味しかったから、緑風では海の幸を食べたいね！」
「ありがとう。そうだね、海の幸なんて絶対美味しいよね」
「そうだ大石クン、ウチのアヤネって知ってる？」
「えっとー……確か縦ロールの」
「そう、ゴスロリのアヤネ。あのアヤネの実家が緑風では有名なぶどう園で、今の季節はぶどう狩りも出来るんだって！」
「えー！ いいね！ ぶどう狩りかー、やったことないし、楽しみだなー。予約とか大丈夫なの？」
「団体じゃなきゃ大丈夫なんだって」
「そしたら、ぶどう狩りも行こうかー」
ここだよーって見せてもらったぶどう園のサイトがすっごい。青女さんは去年このぶどう園で作られたジュースを大学祭の喫茶で売っていたそうだ。絶対美味しいよね。ぶどうそのものやジュースだけじゃなくて、ワインがとても美味しいんだそうだ。
ぶどうもジュースも、それからワイン。兄さんにも味わってもらいたいなあ。そんな風に考えていたら、ホームページに地方発送についての案内が載ってたから一安心。兄さんとあずさと、あと朝霞と塩見さんにも送ろうかな。
「って言うか大石クン、９月ってバイト結構忙しいんじゃなかったっけ？」
「そうなんだけど、所長が「大学生活最後の夏休みなのにバイトばっかりしてないで友達と遊んで来い」って言って強制的に休み入れられちゃってさ」
「えっ、いい所長なんじゃないの？」
「俺がそうしたくてしてたんだけど、今までの長期休みもずっと働き詰めだったんだよね。働きたいなら正式に社員になってからたくさん働かせてやるぞ～って」
「あ、今のバイト先に就職するの？」
「うん。募集してるって見たから軽い気で「俺が応募してもいいんですかねー」って聞いたら「じゃあ来春からよろしく」って」
「軽っ！ アタシとかすっごい戦い抜いてるのに！」
「みんなの就活の話を聞いててちょっと申し訳なくは思ってるよ」
就活の話はさておいて、行く場所の候補は少しずつ決まって来た。だけど結構なボリュームになりそうだしいっそ２泊３日にしようかっていう案まで浮上している。温泉に海の幸、ぶどう園にって、やりたいことも何気に多い。せっかく緑風に行くんなら、なっちにもおすすめの場所を聞いておきたい。
ここが面白そうだねーって調べてると、ここもあそこもって感じで行きたくなるんだよね。思えば、旅行の機会ってあんまりなかったし、これはこれでいい機会で経験なんだとは思う。でも一度兄さんとも泊まりで旅行してみたいなって思い始めてて。お店のこともあるし難しいだろうけど。
「今アヤネと菜月に緑風のおすすめを聞いてて、アヤネからはうちのぶどう園でしょって分かり切ってる返信が来たんだけど、菜月からも返信があったよ」
「早いねー。何て？」
「全国チェーンの店じゃなくて、緑風の回るお寿司は美味しいよって」
「いいね、海の幸」
「あと、“ラーメン８号”にはぜひ行ってくださいって」
「ラーメンね。緑風の有名なヤツかな」
「それとは違うらしいんだけど、ローカル食の部類だね。こっちで言う寿さし屋的な。それから、美味しい卵とプリンのお店に、美味しい卵とソフトクリームのお店に……って、卵のお店ばっかりなんだけど」
「あっ、その情報欲しい！」
「大石クン、卵好きなの？」
「バイト先の社員さんで卵が主食の人がいてさ。その人へのお土産にしてもいいかなって」
「卵が主食って。大丈夫なの？」
「うーん、至って健康だし大丈夫なんじゃないかな」
確か、塩見さんがバレンタインデーになっちからもらってたのが緑風で有名なお店の卵とプリンたちのセットだったんだよね。多分それが美味しい卵とプリンのお店で、それとは別にソフトクリームのお店があるんだ。地図も送られてきてるらしいけど、ぶどう園からは結構近いみたいだ。
「って言うか菜月がまだ緑風にいるなら引き摺ってナビしてもらったらいいんじゃない？ 今回も車で行くんだよね？」
「そのつもりだったよ。なっちとの合流もアリだね、楽しそうだし」
「じゃアタシ話付けとくよ。菜月のアポ取りと各所のチェックはするし、宿は大石クンのセンスでよろしく」
「了解しました」
end.
＋＋＋＋
ちーちゃんとヒビキの温泉サークルは今度第２回の旅行が決行されそうですね。現地での様子も見られるかしら。
そしてちょこっと思い出したのがアヤネことレオンの存在。青女勢は大学祭でもお世話になってるし、ぶどう園の現地にもちょっと行ってみたいかもね
さて、センスでよろしくと言われた宿選び。そういやちーちゃんが宿を選ぶセンスと言うか、基準って何だろう。ご飯かな？
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「夏休みの間に１回温泉行くんだよね。どこ行く？」
「そう、その話なんだけど、今回は緑風に行きたいと思ってるんだ」
「緑風？」
ヒビキと結成した混浴温泉サークル２回目の旅行は、大学が夏休みの間に１回行っておこうという話になっていた。言って２人とも４年生だしそこまで授業もないからいつだっていいんだろうけど、前回が６月だしそろそろ行っておきたくて。
そして、緑風に行きたいというのは個人的な理由。母さんが生きてた時に作ってくれてたおひたしの、隠し味的な醤油を買いに行きたいっていう。なっちに聞いたら、スーパーならどこにでも売ってるそうだから、その買い物を。
「――っていうワケで、醤油を買いに行きたいんだよね。ネットでも調べたけど、通販ってやってないっぽくて」
「うん、いいよいいよ！ 山羽は山の幸が美味しかったから、緑風では海の幸を食べたいね！」
「ありがとう。そうだね、海の幸なんて絶対美味しいよね」
「そうだ大石クン、ウチのアヤネって知ってる？」
「えっとー……確か縦ロールの」
「そう、ゴスロリのアヤネ。あのアヤネの実家が緑風では有名なぶどう園で、今の季節はぶどう狩りも出来るんだって！」
「えー！ いいね！ ぶどう狩りかー、やったことないし、楽しみだなー。予約とか大丈夫なの？」
「団体じゃなきゃ大丈夫なんだって」
「そしたら、ぶどう狩りも行こうかー」
ここだよーって見せてもらったぶどう園のサイトがすっごい。青女さんは去年このぶどう園で作られたジュースを大学祭の喫茶で売っていたそうだ。絶対美味しいよね。ぶどうそのものやジュースだけじゃなくて、ワインがとても美味しいんだそうだ。
ぶどうもジュースも、それからワイン。兄さんにも味わってもらいたいなあ。そんな風に考えていたら、ホームページに地方発送についての案内が載ってたから一安心。兄さんとあずさと、あと朝霞と塩見さんにも送ろうかな。
「って言うか大石クン、９月ってバイト結構忙しいんじゃなかったっけ？」
「そうなんだけど、所長が「大学生活最後の夏休みなのにバイトばっかりしてないで友達と遊んで来い」って言って強制的に休み入れられちゃってさ」
「えっ、いい所長なんじゃないの？」
「俺がそうしたくてしてたんだけど、今までの長期休みもずっと働き詰めだったんだよね。働きたいなら正式に社員になってからたくさん働かせてやるぞ～って」
「あ、今のバイト先に就職するの？」
「うん。募集してるって見たから軽い気で「俺が応募してもいいんですかねー」って聞いたら「じゃあ来春からよろしく」って」
「軽っ！ アタシとかすっごい戦い抜いてるのに！」
「みんなの就活の話を聞いててちょっと申し訳なくは思ってるよ」
就活の話はさておいて、行く場所の候補は少しずつ決まって来た。だけど結構なボリュームになりそうだしいっそ２泊３日にしようかっていう案まで浮上している。温泉に海の幸、ぶどう園にって、やりたいことも何気に多い。せっかく緑風に行くんなら、なっちにもおすすめの場所を聞いておきたい。
ここが面白そうだねーって調べてると、ここもあそこもって感じで行きたくなるんだよね。思えば、旅行の機会ってあんまりなかったし、これはこれでいい機会で経験なんだとは思う。でも一度兄さんとも泊まりで旅行してみたいなって思い始めてて。お店のこともあるし難しいだろうけど。
「今アヤネと菜月に緑風のおすすめを聞いてて、アヤネからはうちのぶどう園でしょって分かり切ってる返信が来たんだけど、菜月からも返信があったよ」
「早いねー。何て？」
「全国チェーンの店じゃなくて、緑風の回るお寿司は美味しいよって」
「いいね、海の幸」
「あと、“ラーメン８号”にはぜひ行ってくださいって」
「ラーメンね。緑風の有名なヤツかな」
「それとは違うらしいんだけど、ローカル食の部類だね。こっちで言う寿さし屋的な。それから、美味しい卵とプリンのお店に、美味しい卵とソフトクリームのお店に……って、卵のお店ばっかりなんだけど」
「あっ、その情報欲しい！」
「大石クン、卵好きなの？」
「バイト先の社員さんで卵が主食の人がいてさ。その人へのお土産にしてもいいかなって」
「卵が主食って。大丈夫なの？」
「うーん、至って健康だし大丈夫なんじゃないかな」
確か、塩見さんがバレンタインデーになっちからもらってたのが緑風で有名なお店の卵とプリンたちのセットだったんだよね。多分それが美味しい卵とプリンのお店で、それとは別にソフトクリームのお店があるんだ。地図も送られてきてるらしいけど、ぶどう園からは結構近いみたいだ。
「って言うか菜月がまだ緑風にいるなら引き摺ってナビしてもらったらいいんじゃない？ 今回も車で行くんだよね？」
「そのつもりだったよ。なっちとの合流もアリだね、楽しそうだし」
「じゃアタシ話付けとくよ。菜月のアポ取りと各所のチェックはするし、宿は大石クンのセンスでよろしく」
「了解しました」
end.
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ちーちゃんとヒビキの温泉サークルは今度第２回の旅行が決行されそうですね。現地での様子も見られるかしら。
そしてちょこっと思い出したのがアヤネことレオンの存在。青女勢は大学祭でもお世話になってるし、ぶどう園の現地にもちょっと行ってみたいかもね
さて、センスでよろしくと言われた宿選び。そういやちーちゃんが宿を選ぶセンスと言うか、基準って何だろう。ご飯かな？
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