2020(02)
■The next stage for Two
++++
「野坂先輩、これからどうなっちゃうんでしょう」
「これからとは」
「萌香もいなくなっちゃったし、今は先輩たちがいるからいいんですけど、ゆくゆくはうちとカノンだけになっちゃうじゃないですか。何て言うか、何とかして萌香にも居心地のいい雰囲気づくりをするべきだったのかなって思って。それで、何がダメだったのかなって考えてたらキリがなくって」
「そもそも万人受けする分野の活動じゃない以上、そんなこと言っててもしょうがなくね。合わないなら簡単にフェードアウト出来るのも大学のサークルの良さだろ」
「それはそうですけど」
わかってたけど、野坂先輩はバッサリ言うよなあって。でも、MMPの先輩たちに中途半端な慰めを求めてもムダだってことはわかってる。思いっ切りバカにしてもらうかボコボコにされるかの2択って感じで。
オープンキャンパスの話し合いをしてても、3年生の先輩たち4人がいなくなったらどうなるのかなって考えてて。いつもぎゃあぎゃあ賑やかな先輩たちがいなくなっちゃうと、このだだっ広い部屋でカノンと2人。寂し過ぎない? って思って。
萌香は結局夏合宿をドロップアウトして、その流れでMMPもやめちゃった。体験入部のまま正式加入はしてなかったし、サークルのみんなと馴染もうって雰囲気も見られなかったから遅かれ早かれって空気はあった。でも、うちはどうにかして定着して欲しいなって望みを捨ててなかった。
「別に俺が萌香を許せないから冷たく言ってるとかじゃなくて、誰がどうだろうと言えることだからな。そもそも、萌香に居心地のいい雰囲気の条件って何だ? アイツの言動からすると、まず顔が良くて彼女のいない、かつ萌香をちやほやする男を用意しなくちゃいけない」
「それはちょっと極論じゃないですか?」
「アイツが興味を持ってたのはここでの活動じゃなくて他校のイケメンとの出会いだ。同じゼミにいるバドサーの先輩情報な。MMPの話をしてるときも活動の内容よりイケメンと出会えるっていう方に反応してたっていう話な。奈々は萌香1人に合わせてここを出会い系サークルにでもするつもりか? って言うか、ぶっちゃけ萌香の話はもうどうだっていい」
「それはそれでちょっと酷いっす」
「来期は自分とカノンの2人でやってくってもう自覚してんだろ。だったら、いない奴のことよりここに残る自分たちと、これから来てくれるであろう人のことを考えるべきだ」
「それはそうですけど」
野坂先輩の言うことも、それはそれでわかる。いない人のことよりこれからここでやっていく自分たちのことをって。いつまでも萌香のことでくよくよしてたら、カノンと何が出来るかってことを考えられなくなっちゃうし。でも、これから来てくれる人を萌香みたくミスマッチで逃がさないための反省もしておきたい。
これがMMPの空気だから後から来る方が馴染んでねって言うのは簡単だけど、そればっかりじゃなかなか受け入れてもらえないと思う。どうやって人を呼び込んでいくかっていう大問題のことを考えたら、見学に来てもらったときに嘘でもいやすそうな雰囲気を装っておかなきゃいけないだろうし。
「残るのがカノンだからこそ来期が2人でも何とかなるかもしれないって思えるくらいには、カノンには可能性がある」
「アナウンサーとミキサー、どっちの練習もしてみたりですか?」
「それもだけど、昼放送の枠が余ってるなら帯番組をやったらどうかっていう発想の面にしてもな。多分、カノンはこれからも俺たちじゃ思いつかないようなアイディアを出して来ると思う。今なら俺たちも知恵を貸したり技術的な相談にも乗れる。だけど基本的にはそれを生かすも殺すも奈々次第だ」
「うう、責任重大っすね」
「公序良俗に反しなければ、考えてみるところから始めたらいいと思う。確かに人を確実に確保していく上での反省も必要だとは思うけど、MMPの活動をどう広げて行けるだろうって考える方が圧倒的に楽しいだろ。そもそも人を確保していくにはとにかく手当たり次第に広報するって以外にないからな。某誰得プロジェクトの失敗を黒幕のお方がとうとうお認めになられたという事実もある」
「某誰得……はっ! 野坂先輩ッ! 菜月先輩の立ち上げたゲッティング☆ガールプロジェクトをディスるのはそこまでっす!」
「実際誰得だろ。春風の似合う(略)女子なんかよりイケメンの方が母数が多いと何度言って来たか。コホン。まあ何にせよ、来年の広報は頑張れ」
「うっすうっす」
そもそも2人しかいない時点で雰囲気もクソもないし、その辺は来年になってからでいいんじゃないかって野坂先輩は言う。MMPの活動をどう広げていけるだろうって考える方が確かに楽しそう。人の呼び方については……ゲッティングガールの意志は残したいんだけどなーッ!
「緑ヶ丘との留学計画も進んでるし、秋学期は今までとは全然違って来るだろうな」
「あっ、すがやんが来るんすよねッ! あーん、何かの間違いでくるちゃんも遊びに来てくれないかなーッ!」
「下心がヤベえな」
「何を言うんですかッ! くるちゃんはかわいいんですよッ!」
「いや、くるみのことは知ってるけど、そこまで一生懸命熱弁しなきゃいけないか?」
「かわいいんですッ! くるちゃんも遊びに来てねーッ」
end.
++++
ゲッティング☆ガールの意志は残したい奈々だったけど、カノンも自分も手当たり次第にやれる人だしまあ何とかなるでしょう
萌香絡みの話題には基本辛辣なノサカだけど、それこそ終わったことよりも先のことを優先的に考えるべきというスタンス。
今ならまだ自分たちも相談に乗れるっていうのがまさにそうで、3年生にはこの秋学期が最後になるので、少しでも道筋を照らしておきたいところ。
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「野坂先輩、これからどうなっちゃうんでしょう」
「これからとは」
「萌香もいなくなっちゃったし、今は先輩たちがいるからいいんですけど、ゆくゆくはうちとカノンだけになっちゃうじゃないですか。何て言うか、何とかして萌香にも居心地のいい雰囲気づくりをするべきだったのかなって思って。それで、何がダメだったのかなって考えてたらキリがなくって」
「そもそも万人受けする分野の活動じゃない以上、そんなこと言っててもしょうがなくね。合わないなら簡単にフェードアウト出来るのも大学のサークルの良さだろ」
「それはそうですけど」
わかってたけど、野坂先輩はバッサリ言うよなあって。でも、MMPの先輩たちに中途半端な慰めを求めてもムダだってことはわかってる。思いっ切りバカにしてもらうかボコボコにされるかの2択って感じで。
オープンキャンパスの話し合いをしてても、3年生の先輩たち4人がいなくなったらどうなるのかなって考えてて。いつもぎゃあぎゃあ賑やかな先輩たちがいなくなっちゃうと、このだだっ広い部屋でカノンと2人。寂し過ぎない? って思って。
萌香は結局夏合宿をドロップアウトして、その流れでMMPもやめちゃった。体験入部のまま正式加入はしてなかったし、サークルのみんなと馴染もうって雰囲気も見られなかったから遅かれ早かれって空気はあった。でも、うちはどうにかして定着して欲しいなって望みを捨ててなかった。
「別に俺が萌香を許せないから冷たく言ってるとかじゃなくて、誰がどうだろうと言えることだからな。そもそも、萌香に居心地のいい雰囲気の条件って何だ? アイツの言動からすると、まず顔が良くて彼女のいない、かつ萌香をちやほやする男を用意しなくちゃいけない」
「それはちょっと極論じゃないですか?」
「アイツが興味を持ってたのはここでの活動じゃなくて他校のイケメンとの出会いだ。同じゼミにいるバドサーの先輩情報な。MMPの話をしてるときも活動の内容よりイケメンと出会えるっていう方に反応してたっていう話な。奈々は萌香1人に合わせてここを出会い系サークルにでもするつもりか? って言うか、ぶっちゃけ萌香の話はもうどうだっていい」
「それはそれでちょっと酷いっす」
「来期は自分とカノンの2人でやってくってもう自覚してんだろ。だったら、いない奴のことよりここに残る自分たちと、これから来てくれるであろう人のことを考えるべきだ」
「それはそうですけど」
野坂先輩の言うことも、それはそれでわかる。いない人のことよりこれからここでやっていく自分たちのことをって。いつまでも萌香のことでくよくよしてたら、カノンと何が出来るかってことを考えられなくなっちゃうし。でも、これから来てくれる人を萌香みたくミスマッチで逃がさないための反省もしておきたい。
これがMMPの空気だから後から来る方が馴染んでねって言うのは簡単だけど、そればっかりじゃなかなか受け入れてもらえないと思う。どうやって人を呼び込んでいくかっていう大問題のことを考えたら、見学に来てもらったときに嘘でもいやすそうな雰囲気を装っておかなきゃいけないだろうし。
「残るのがカノンだからこそ来期が2人でも何とかなるかもしれないって思えるくらいには、カノンには可能性がある」
「アナウンサーとミキサー、どっちの練習もしてみたりですか?」
「それもだけど、昼放送の枠が余ってるなら帯番組をやったらどうかっていう発想の面にしてもな。多分、カノンはこれからも俺たちじゃ思いつかないようなアイディアを出して来ると思う。今なら俺たちも知恵を貸したり技術的な相談にも乗れる。だけど基本的にはそれを生かすも殺すも奈々次第だ」
「うう、責任重大っすね」
「公序良俗に反しなければ、考えてみるところから始めたらいいと思う。確かに人を確実に確保していく上での反省も必要だとは思うけど、MMPの活動をどう広げて行けるだろうって考える方が圧倒的に楽しいだろ。そもそも人を確保していくにはとにかく手当たり次第に広報するって以外にないからな。某誰得プロジェクトの失敗を黒幕のお方がとうとうお認めになられたという事実もある」
「某誰得……はっ! 野坂先輩ッ! 菜月先輩の立ち上げたゲッティング☆ガールプロジェクトをディスるのはそこまでっす!」
「実際誰得だろ。春風の似合う(略)女子なんかよりイケメンの方が母数が多いと何度言って来たか。コホン。まあ何にせよ、来年の広報は頑張れ」
「うっすうっす」
そもそも2人しかいない時点で雰囲気もクソもないし、その辺は来年になってからでいいんじゃないかって野坂先輩は言う。MMPの活動をどう広げていけるだろうって考える方が確かに楽しそう。人の呼び方については……ゲッティングガールの意志は残したいんだけどなーッ!
「緑ヶ丘との留学計画も進んでるし、秋学期は今までとは全然違って来るだろうな」
「あっ、すがやんが来るんすよねッ! あーん、何かの間違いでくるちゃんも遊びに来てくれないかなーッ!」
「下心がヤベえな」
「何を言うんですかッ! くるちゃんはかわいいんですよッ!」
「いや、くるみのことは知ってるけど、そこまで一生懸命熱弁しなきゃいけないか?」
「かわいいんですッ! くるちゃんも遊びに来てねーッ」
end.
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ゲッティング☆ガールの意志は残したい奈々だったけど、カノンも自分も手当たり次第にやれる人だしまあ何とかなるでしょう
萌香絡みの話題には基本辛辣なノサカだけど、それこそ終わったことよりも先のことを優先的に考えるべきというスタンス。
今ならまだ自分たちも相談に乗れるっていうのがまさにそうで、3年生にはこの秋学期が最後になるので、少しでも道筋を照らしておきたいところ。
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