2017(02)
■会議も現場もライブ感
++++
「こんにちは~」
「ん、ようこそ」
やっぱりこのビルはいつ来ても緊張するネ。俺がこのビルに足を踏み入れるのは、対策委員解散の日以来。春の番組制作会の後、ここから持ち出した機材を搬入するためにやってきたのが最後。
恐る恐る6階の中会議室に足を踏み入れた俺を迎えてくれるのは、定例会議長の松岡クン。松岡クンの隣の席が空いてるけど、上座は星ヶ丘の席じゃないだろうし、え~っと、どうしよう。
「山口君、星ヶ丘は大石君の隣だよ」
「ありがと~。お邪魔しま~す」
「アニ、どうしたの? って言うか朝霞は?」
「朝霞クンはね~、地元でど~しても外せない用事が入って帰れなくなっちゃって~、それで今日は俺が代理で~」
そう、今日ここで開かれるのはインターフェイスの定例会。本来星ヶ丘からは朝霞クンが代表で出席してるんだけど、先述の事情で今日は俺が代理で出席してるってワケ。松岡クンには朝霞クンから連絡してくれてたみたい。
突然朝霞クンから電話がかかってくるからビックリしたよね~。メールでも何でも良かったとは思うんだけど、電話ってことは急ぎの大事な用事だと思うから慌てて出てさ。そしたら、定例会に代わりに出て欲しいって。
「って言うか、伊東クンは?」
「ん、定例会は伊東のプチ遅刻から始まるのが様式美だよ。前対策委員は議長が時間に厳格だったけど。尤も、現対策委員は議長の遅刻癖に困らされているようだけどね、野坂君」
「そうだそうだー! ですよねー!」
「た、大変申し訳なく思っております…!」
「あれっ、今日は野坂クンと果林ちゃんもいるの?」
「対策委員のツートップには夏合宿の報告という体で来てもらってるんだよ。野坂が奇跡的に間に合ってるのに伊東の野郎通常運転しやがって」
伊東クンのプチ遅刻で松岡クンがどんどんカリカリしていく。隣で大石クンがこそっと教えてくれたことによれば、伊東クンが「わりー遅れた!」って入ってきて、松岡クンが「遅いぞ伊東! 何分遅刻だ!」って返すまでがテンプレ。
「わりー遅れた!」
「遅いぞ伊東! 13分遅刻だ!」
バンッと勢いよくドアを開けて入ってくる伊東クンと、何分遅刻だって怒鳴る松岡クン。本当にテンプレ通りだ。伊東クンの遅刻のバリエーションは駅で迷ったとか地下で迷ったとか、ビルの間で迷ったとか何パターンかあるらしい。
「でも、実は圭斗本人も時間には結構大らからしいよ」
「議長サンに言わせると“ルーズ”だね~」
そして伊東クンは俺の姿を見るなりビックリしてるんだ。そうだよね~、朝霞クンが俺になってるんだから。で、さっきと同じ説明を。
「今回は対策委員からの夏合宿の報告と、作品出展だね。夏合宿の話は長くなりそうだから、作品出展の話を先にしようか」
「はーい」
「山口君。ところで、今月の作品出展は星ヶ丘の番なんだ」
「えっ、そ~なの!?」
「朝霞君ならある程度準備してくれていると思うけど、要項を今一度伝えるから、言付けてもらっていいかな」
「任せて~、でしょでしょ~」
次回の定例会までに完パケにした作品を準備すること。作品の形態や長さは問わないけれど、音声作品であるなら30分から1時間程度に収めること。映像作品であるなら1時間を超えててもまあ。とのこと。
丸の池ステージは映像にも残せてないし、きっと朝霞クンがラジオドラマか何かを書いてくれていると思うんだけど。今日の会議の内容を報告するには電話が適してるのかな。急ぎの、大事な用事だから。
実家で羽を伸ばしてると思う朝霞クンの、朝霞Pになるスイッチを自分から押しに行くのは恐ろしくもある。だけどそれが俺の言付かった大事な仕事だから。さ~てと、俺もステージスターのスイッチ入れなきゃ、でしょでしょ~。
「それじゃあ、次は前回の作品出展のモニター用紙を回収しようか。前回はウチだから、僕まで回してくれるかな」
「あっ、松岡クン! それは言付かってないやゴメ~ン!」
「ん、心配なさらず。その件についても朝霞君から聞いているよ」
「な~んだ~、よかった~」
――と、ここで気付く。そこまでしっかり議長とやり取りしているのなら、わざわざ俺が代理で出席してきた意味は、となるのだ。ううん、やり取りしてるなら出て来させないでよってワケじゃないんだけどネ。
「それじゃあ、夏合宿の報告を受けようか」
もしかしたら、連絡には乗らない現場の雰囲気や事柄があるのかな。何だろうね。朝霞クンに聞いたら何かわかるのかな。
end.
++++
洋平ちゃんin定例会です。朝霞Pがどうしても外せない用事って何だったのだろうか……
定例会の様式美は今回も健在。ヒビキはじゃがりこ食べてるしちーちゃんはまったりしてる。2年生たちもまったりしてる。
しかしいち氏の遅刻のバリエーションである。見事に迷ったばっかりだけど、いち氏家電とか機材とか得意なんだからスマホのナビ使えばいいんじゃないかな……
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「こんにちは~」
「ん、ようこそ」
やっぱりこのビルはいつ来ても緊張するネ。俺がこのビルに足を踏み入れるのは、対策委員解散の日以来。春の番組制作会の後、ここから持ち出した機材を搬入するためにやってきたのが最後。
恐る恐る6階の中会議室に足を踏み入れた俺を迎えてくれるのは、定例会議長の松岡クン。松岡クンの隣の席が空いてるけど、上座は星ヶ丘の席じゃないだろうし、え~っと、どうしよう。
「山口君、星ヶ丘は大石君の隣だよ」
「ありがと~。お邪魔しま~す」
「アニ、どうしたの? って言うか朝霞は?」
「朝霞クンはね~、地元でど~しても外せない用事が入って帰れなくなっちゃって~、それで今日は俺が代理で~」
そう、今日ここで開かれるのはインターフェイスの定例会。本来星ヶ丘からは朝霞クンが代表で出席してるんだけど、先述の事情で今日は俺が代理で出席してるってワケ。松岡クンには朝霞クンから連絡してくれてたみたい。
突然朝霞クンから電話がかかってくるからビックリしたよね~。メールでも何でも良かったとは思うんだけど、電話ってことは急ぎの大事な用事だと思うから慌てて出てさ。そしたら、定例会に代わりに出て欲しいって。
「って言うか、伊東クンは?」
「ん、定例会は伊東のプチ遅刻から始まるのが様式美だよ。前対策委員は議長が時間に厳格だったけど。尤も、現対策委員は議長の遅刻癖に困らされているようだけどね、野坂君」
「そうだそうだー! ですよねー!」
「た、大変申し訳なく思っております…!」
「あれっ、今日は野坂クンと果林ちゃんもいるの?」
「対策委員のツートップには夏合宿の報告という体で来てもらってるんだよ。野坂が奇跡的に間に合ってるのに伊東の野郎通常運転しやがって」
伊東クンのプチ遅刻で松岡クンがどんどんカリカリしていく。隣で大石クンがこそっと教えてくれたことによれば、伊東クンが「わりー遅れた!」って入ってきて、松岡クンが「遅いぞ伊東! 何分遅刻だ!」って返すまでがテンプレ。
「わりー遅れた!」
「遅いぞ伊東! 13分遅刻だ!」
バンッと勢いよくドアを開けて入ってくる伊東クンと、何分遅刻だって怒鳴る松岡クン。本当にテンプレ通りだ。伊東クンの遅刻のバリエーションは駅で迷ったとか地下で迷ったとか、ビルの間で迷ったとか何パターンかあるらしい。
「でも、実は圭斗本人も時間には結構大らからしいよ」
「議長サンに言わせると“ルーズ”だね~」
そして伊東クンは俺の姿を見るなりビックリしてるんだ。そうだよね~、朝霞クンが俺になってるんだから。で、さっきと同じ説明を。
「今回は対策委員からの夏合宿の報告と、作品出展だね。夏合宿の話は長くなりそうだから、作品出展の話を先にしようか」
「はーい」
「山口君。ところで、今月の作品出展は星ヶ丘の番なんだ」
「えっ、そ~なの!?」
「朝霞君ならある程度準備してくれていると思うけど、要項を今一度伝えるから、言付けてもらっていいかな」
「任せて~、でしょでしょ~」
次回の定例会までに完パケにした作品を準備すること。作品の形態や長さは問わないけれど、音声作品であるなら30分から1時間程度に収めること。映像作品であるなら1時間を超えててもまあ。とのこと。
丸の池ステージは映像にも残せてないし、きっと朝霞クンがラジオドラマか何かを書いてくれていると思うんだけど。今日の会議の内容を報告するには電話が適してるのかな。急ぎの、大事な用事だから。
実家で羽を伸ばしてると思う朝霞クンの、朝霞Pになるスイッチを自分から押しに行くのは恐ろしくもある。だけどそれが俺の言付かった大事な仕事だから。さ~てと、俺もステージスターのスイッチ入れなきゃ、でしょでしょ~。
「それじゃあ、次は前回の作品出展のモニター用紙を回収しようか。前回はウチだから、僕まで回してくれるかな」
「あっ、松岡クン! それは言付かってないやゴメ~ン!」
「ん、心配なさらず。その件についても朝霞君から聞いているよ」
「な~んだ~、よかった~」
――と、ここで気付く。そこまでしっかり議長とやり取りしているのなら、わざわざ俺が代理で出席してきた意味は、となるのだ。ううん、やり取りしてるなら出て来させないでよってワケじゃないんだけどネ。
「それじゃあ、夏合宿の報告を受けようか」
もしかしたら、連絡には乗らない現場の雰囲気や事柄があるのかな。何だろうね。朝霞クンに聞いたら何かわかるのかな。
end.
++++
洋平ちゃんin定例会です。朝霞Pがどうしても外せない用事って何だったのだろうか……
定例会の様式美は今回も健在。ヒビキはじゃがりこ食べてるしちーちゃんはまったりしてる。2年生たちもまったりしてる。
しかしいち氏の遅刻のバリエーションである。見事に迷ったばっかりだけど、いち氏家電とか機材とか得意なんだからスマホのナビ使えばいいんじゃないかな……
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