2020(02)
■栄養補給のエゴサーチ
++++
「ふおお~、いいねいいね~、すごいね~」
「……カン、顔が緩んでるぞ」
「全くだ」
「何とでも言え」
カンとリン君と遊んでいる中で、外を歩くのはやっぱり暑いという結論に達するまでに時間は要らなかった。半ば逃げるように近場の“髭”に入り、それぞれ好きな味のかき氷を頼む。俺はイチゴ、カンは一番甘さ控えめな抹茶、リン君は白桃に練乳トッピングで。
スマホをwi-fiに繋ぐやいなやカンはいつものエゴサーチを始めてしまった。カンはちょこちょこUSDXやチータというキャラクターに関するエゴサをしてるんだけど、今日の日付がそれをさらに加速させている。と言うか、スマホで見るよりパソコンで見る方がいいような気もするけど。
「つか見ろよスガこのタグ! 「#チータ生誕祭0902」だぞ! く~っ! 俺が自分から言ったワケじゃないのにこのタグで俺の誕生日を祝うイラストやら何やらがどかどかと!」
「よかったなあ」
「クッソ棒読みしやがって!」
チータというキャラクターとして褒められることに飢えているカンは、TwitterなんかのSNSに上げられたファンアートなどもくまなく探している。それこそネット特有の伏字や隠語なんかの意味を無くすレベルの検索術。界隈ではエゴサの鬼とも呼ばれているそうだ。
今日、9月2日が誕生日であると公表しているからか、この日を目掛けてチータの誕生日を祝うイラストで賑わっているようだった。如何せんプロソルさんに比べキャラが薄く、後発組のバネレイにも負けると言われるコンとチータだ。俺はそういうキャラだからいいけど、カンは納得がいってないようで。
そうやってちょっとしたネットの声も拾い上げまくっていった結果だ。かと言ってそれを鵜呑みにしてキャラクターを変えるということはしないけど、もらった言葉を分析して今後の展開や方針を考えることには生かしているらしい。
「でも、このイラストはいいな。チータがプロバネにイジメられてる感じが」
「よくねーよ! は!? 何でイラストでまで虐げられなきゃいけねーんだ! でもありがとうございます!」
「あ、こっちはレイ作甘さ控えめケーキの件が拾われてる」
「いつだっけあれ」
「洋平の誕生日だから6月だな」
「はー、もうそんな経つか」
「あ。カン、きららもこのタグでイラスト上げてるぞ」
「マジか! お~、さすがきらら!」
カンはきゃっきゃと浮かれながらタグを辿っていいねを飛ばしまくっているようだ。それを見てはいはいよかったねと見守る俺とリン君だ。ここ1年でチャンネル登録者数もかなり増えたし、検索結果を遡っている間にも新しい物が投稿されているらしかった。カンは文字通り嬉しい悲鳴を上げている。
「はああ!? やああー!?」
「カンノ、店で奇声を上げるな」
「や、わり。素で出た」
「カン、どうした? そんなに凄いイラストがあったのか?」
「いや、今はツイッターじゃなくてLINE。でじかもさんから」
「え、個人的にLINE交換してたのか?」
「そーなんすよ。教えてって言われてちょこちょこ連絡取り合ってたんだよ。えっと? なになに……」
USDXの認知度が上がったのはひとえにこのでじかもさんという動画投稿者の影響が多々あるだろう。チャンネル登録者数80万弱いる凄い人なんだけども、その人がUSDXを知ってくれていて、自分の企画に俺たちを呼んでくれたりとか。中でも、特にチータが好きなのだという。
春の企画に呼ばれてからは、たまにコラボ動画でご一緒したりしていた。でじかもさん経由で他の実況者さんとも知り合いになれたし、その繋がりとかでUSDXのチャンネル登録者数もどんどん右肩上がりになっていったんだよな。本当にでじかもさん様様で。
「でじかもさんは何て?」
「誕生日プレゼントの名目でデジタルチケットもらった! えっ、つかヤベえ! 高級コーヒーセット! えっ、忘れる前にすぐ交換しなきゃ」
「順序的に、返信が先ではないか」
「交換を忘れる方が無礼だ。よーし、住所登録完了。返信返信……ありがとうございます、っと」
野暮だとはわかっているけど、この高級コーヒー3本セットの値段を調べさせてもらった。すると特別パッケージということもあって6000円となかなかいいお値段で、1本2000円という、とても学生がポンと買える物じゃないなと。さすがでじかもさん、大人だ。
でじかもさんからは他にも昨日公開した曲に関する感想(かなり褒めちぎられている)も届いていて、何と言うか……カンの何にそこまで惚れ込んでいるのか身内ながらによくわからない。いや、凄い奴だしいい奴ではあるんだけど、世間でのチータ評とはかけ離れていると言うか。
「……スガノ、見つけた物を報告していいか」
「怖いけど、どうぞ」
「でじかも氏のイラストタグの方に、氏がチータの誕生日プレゼントを選ぶような絵が投稿されていて、それを本人がリツイートしている」
「……まさかの公式…!?」
「それに対しては視聴者から罵倒の嵐だが」
「でじかもさんの視聴者さんはほら、「チータ君でじかものこと通報していいよ」とかそういうノリじゃんな。愛情の裏返しっつーか。つかでじかもさんの誕生日は11月とか12月とかだったな。あとで過去の動画調べるか」
end.
++++
カンDの誕生日です。やっぱりこの人はエゴサできゃっきゃしてるくらいがちょうどいいかなあって
エゴサできゃいきゃいできるくらい反応があるっていうのもなかなかに凄いことですね。しかも隠語やら伏字やらも破るってどんな執念や
何だかんだ言いながら付き合ってあげてるスガPとリン様、何気に優しいのかもしれない。
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「ふおお~、いいねいいね~、すごいね~」
「……カン、顔が緩んでるぞ」
「全くだ」
「何とでも言え」
カンとリン君と遊んでいる中で、外を歩くのはやっぱり暑いという結論に達するまでに時間は要らなかった。半ば逃げるように近場の“髭”に入り、それぞれ好きな味のかき氷を頼む。俺はイチゴ、カンは一番甘さ控えめな抹茶、リン君は白桃に練乳トッピングで。
スマホをwi-fiに繋ぐやいなやカンはいつものエゴサーチを始めてしまった。カンはちょこちょこUSDXやチータというキャラクターに関するエゴサをしてるんだけど、今日の日付がそれをさらに加速させている。と言うか、スマホで見るよりパソコンで見る方がいいような気もするけど。
「つか見ろよスガこのタグ! 「#チータ生誕祭0902」だぞ! く~っ! 俺が自分から言ったワケじゃないのにこのタグで俺の誕生日を祝うイラストやら何やらがどかどかと!」
「よかったなあ」
「クッソ棒読みしやがって!」
チータというキャラクターとして褒められることに飢えているカンは、TwitterなんかのSNSに上げられたファンアートなどもくまなく探している。それこそネット特有の伏字や隠語なんかの意味を無くすレベルの検索術。界隈ではエゴサの鬼とも呼ばれているそうだ。
今日、9月2日が誕生日であると公表しているからか、この日を目掛けてチータの誕生日を祝うイラストで賑わっているようだった。如何せんプロソルさんに比べキャラが薄く、後発組のバネレイにも負けると言われるコンとチータだ。俺はそういうキャラだからいいけど、カンは納得がいってないようで。
そうやってちょっとしたネットの声も拾い上げまくっていった結果だ。かと言ってそれを鵜呑みにしてキャラクターを変えるということはしないけど、もらった言葉を分析して今後の展開や方針を考えることには生かしているらしい。
「でも、このイラストはいいな。チータがプロバネにイジメられてる感じが」
「よくねーよ! は!? 何でイラストでまで虐げられなきゃいけねーんだ! でもありがとうございます!」
「あ、こっちはレイ作甘さ控えめケーキの件が拾われてる」
「いつだっけあれ」
「洋平の誕生日だから6月だな」
「はー、もうそんな経つか」
「あ。カン、きららもこのタグでイラスト上げてるぞ」
「マジか! お~、さすがきらら!」
カンはきゃっきゃと浮かれながらタグを辿っていいねを飛ばしまくっているようだ。それを見てはいはいよかったねと見守る俺とリン君だ。ここ1年でチャンネル登録者数もかなり増えたし、検索結果を遡っている間にも新しい物が投稿されているらしかった。カンは文字通り嬉しい悲鳴を上げている。
「はああ!? やああー!?」
「カンノ、店で奇声を上げるな」
「や、わり。素で出た」
「カン、どうした? そんなに凄いイラストがあったのか?」
「いや、今はツイッターじゃなくてLINE。でじかもさんから」
「え、個人的にLINE交換してたのか?」
「そーなんすよ。教えてって言われてちょこちょこ連絡取り合ってたんだよ。えっと? なになに……」
USDXの認知度が上がったのはひとえにこのでじかもさんという動画投稿者の影響が多々あるだろう。チャンネル登録者数80万弱いる凄い人なんだけども、その人がUSDXを知ってくれていて、自分の企画に俺たちを呼んでくれたりとか。中でも、特にチータが好きなのだという。
春の企画に呼ばれてからは、たまにコラボ動画でご一緒したりしていた。でじかもさん経由で他の実況者さんとも知り合いになれたし、その繋がりとかでUSDXのチャンネル登録者数もどんどん右肩上がりになっていったんだよな。本当にでじかもさん様様で。
「でじかもさんは何て?」
「誕生日プレゼントの名目でデジタルチケットもらった! えっ、つかヤベえ! 高級コーヒーセット! えっ、忘れる前にすぐ交換しなきゃ」
「順序的に、返信が先ではないか」
「交換を忘れる方が無礼だ。よーし、住所登録完了。返信返信……ありがとうございます、っと」
野暮だとはわかっているけど、この高級コーヒー3本セットの値段を調べさせてもらった。すると特別パッケージということもあって6000円となかなかいいお値段で、1本2000円という、とても学生がポンと買える物じゃないなと。さすがでじかもさん、大人だ。
でじかもさんからは他にも昨日公開した曲に関する感想(かなり褒めちぎられている)も届いていて、何と言うか……カンの何にそこまで惚れ込んでいるのか身内ながらによくわからない。いや、凄い奴だしいい奴ではあるんだけど、世間でのチータ評とはかけ離れていると言うか。
「……スガノ、見つけた物を報告していいか」
「怖いけど、どうぞ」
「でじかも氏のイラストタグの方に、氏がチータの誕生日プレゼントを選ぶような絵が投稿されていて、それを本人がリツイートしている」
「……まさかの公式…!?」
「それに対しては視聴者から罵倒の嵐だが」
「でじかもさんの視聴者さんはほら、「チータ君でじかものこと通報していいよ」とかそういうノリじゃんな。愛情の裏返しっつーか。つかでじかもさんの誕生日は11月とか12月とかだったな。あとで過去の動画調べるか」
end.
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カンDの誕生日です。やっぱりこの人はエゴサできゃっきゃしてるくらいがちょうどいいかなあって
エゴサできゃいきゃいできるくらい反応があるっていうのもなかなかに凄いことですね。しかも隠語やら伏字やらも破るってどんな執念や
何だかんだ言いながら付き合ってあげてるスガPとリン様、何気に優しいのかもしれない。
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