2020(02)
■師弟の血と己の何かと
++++
「ィよーう! お前ら久しいなあ!」
「本当にお前は変っわんねーな」
「圭斗テメー! それが先輩に対する態度かー!」
「ホント、圭斗と村井さんってどんだけ学年が上がっても変わりませんよね」
「そーなの。マーと圭斗ってずっとこう。でもまあこれがいいんだけどね」
インターフェイス夏合宿が終わったということで、ミキサーテストを作ったということもあり、何となく様子が気になっていたところに村井さんから連絡が入った。「ダイさんと一緒に飯でも行かねー?」っていうお誘い。俺をそれに二つ返事で了承し、ついでに誘ったらしい圭斗も一緒に4人での会食。
村井さんは親しみやすい方の人ではあるけど村井さんもダイさんも向島の、言ってしまえば大先輩に当たる人だ。だからよく知ってる圭斗がいてくれて気が楽になってるのは事実としてある。向島のノリって濃ゆいもんなあ。慧梨夏の濃さとはまたちょっと違った特有のアレがあるんだよ。
「僕は今回インターフェイスの夏合宿には完全にノータッチでしたが、どうでしたか?」
「いや~、今年もキャラの強い子たちばっかりで」
「問題とか起きませんでした?」
「起きてないと言えば嘘になるね」
「あちゃー。トラブルが起こりましたか」
「多分インターフェイスだとカズ以来じゃないかなっていうタイプのヤツね」
「俺が起こしたトラブルっつったらアレ……ですよね? あの類のヤツが起こったって、結構マズいんじゃないんですか?」
「現場は結構壮絶だったねえ。あっ、女の子同士のケンカなんだけどね」
ダイさんによれば、ミキサー講習のときに女子同士のケンカが勃発したらしい。事情を話せばかなり長くなるんだけども、最終的な結末から言えばケンカをした子のうち向島の子は合宿をドロップアウトして、その後サークルも辞めたそうだ。もう一方、星ヶ丘の子はケロっとして何事もなかったかのように講習を受けていた、と。
ちなみに、かつて俺が起こしたトラブルというのが慧梨夏を侮辱されたのにキレてミッツに手を出した、というヤツだ。胸倉を掴んで睨み上げたくらいで殴ってはなかったと思うけど(MBCCの同期全員に制止されたし)、それでも一応暴力沙汰として咲良さんからは厳重注意を受けたのを覚えている。インターフェイスではそれ以来の暴力沙汰だ。
「あのつばちゃんですら三井に手を出さなかったというのに」
「あー、つばちゃんはね」
「ちなみにその星ヶ丘の子はつばちゃんの愛弟子だからね、うん。血は争えないね」
そのケンカの他にも、今回の合宿では人間関係にまつわるトラブルがちょこちょこ起こったらしい。件の向島の子が絡んでたみたいなんだけど、それで体調を崩した子や暴言を吐かれて落ち込んでしまった子、そして現場にいた子たちのフォローやケアにはタカシが奔走していたそうだ。
「タカティはねえ、いい子だよねえ」
「アイツ、どうでした? ケアとかフォローをしてたって言っても、ちゃんと出来てたんですか?」
「それはもう! みんなのお兄さん的な感じで1年生の子からは慕われてるし、2年生の子からもタカティに任せれば大丈夫って感じで頼られてて。あの子の雰囲気とか距離感がいいんだろうね。踏み込み過ぎず、かと言って突き放すような印象でもないから」
「みんなのお兄さん、か。ちゃんとやれてんですねアイツ。良かった良かった」
機材面では全く心配してなかったけど、そうやって人に寄りそう場面での活躍は期待してなかったって言ったら誤解を生むかな。でも、機材面でも信頼されて、人とのコミュニケーションの点でもそんな風に見られるようになってたとは素直に驚きだ。言ってリアルでも妹のいる兄ちゃんだもんな。
「ああ、そうだカズ。タカティと言えばもう1つ報告しとかなきゃいけないことがあった」
「えっ何すか、怖いんですけど」
「し~んぱいしないで。いいことだから。今年のミキサーテストでカズ、タカティに何てノルマ出してた?」
「95点以上取ってトップ通過っすね」
「グロッ! 伊東お前それお前が去年咲良に言われてたノルマそのままじゃねーか!」
「そりゃあそうですよ。それがMBCCのミキサーに脈々と伝わるイズムってヤツです」
「な~んと、タカティ。満点でトップ通過」
「ええ!?」
なんてこった。決して簡単にはしなかったはずのテストでやられたか。そしてウチの1年生が全体4位と5位を取ったとか何とか。ただ、ダイさんによれば今年の子たちはテストだけじゃなくて実際の番組のレベルも結構安定して良かったらしい。
「伊東お前簡単に作ったんじゃねーのかぁ?」
「一応、レベルとしては野坂に満点を取らせないつもりで作ったはずだったんすよ! は!? 満点だと!?」
「野坂に満点を取らせないつもりとか、グロいってレベルを越えてるんだよなあ……さすが城戸女史の“イズム”を受け継いだ男だよ」
「圭斗、お前はマーか麻里から何か受け継いだイズムはないの?」
「僕は精々ムライズムがいいトコですよ」
「はー!? 圭斗お前悪乗りは俺がどうとか関係なくMMPの血だろーが!」
「オメーが一番悪質なんだよ!」
圭斗と村井さんがぎゃあぎゃあ言い始めたのを後目に、ダイさんはこれがいいのよとニコニコしてご飯を食べている。すげー器のデカさっつーか、懐の深さっつーか。そういう大人になれるかな、俺も。
「でもなー……人から受け継ぐのもいいけど、俺の何かっていうのがあるといいんですけどね」
「心配要らないんじゃない?」
「そうすか?」
「下の子たち見てたらね。わかるもんよ」
end.
++++
フェーズ1ではお馴染みだった圭斗さんと村井おじちゃんのいつものヤツだよーーーー!!! 圭斗テメー!の件大好き。
向島のキャラたちがきゃっきゃしてますが今回はいち氏のお話。合宿のその後って言うか、報告って感じですかね。テスト作ったし。
タカちゃんの成長に驚きっぱなしのいち氏ですが、テストで満点を取られてしまったことには憤慨の様子。まさかの伏兵である。
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「ィよーう! お前ら久しいなあ!」
「本当にお前は変っわんねーな」
「圭斗テメー! それが先輩に対する態度かー!」
「ホント、圭斗と村井さんってどんだけ学年が上がっても変わりませんよね」
「そーなの。マーと圭斗ってずっとこう。でもまあこれがいいんだけどね」
インターフェイス夏合宿が終わったということで、ミキサーテストを作ったということもあり、何となく様子が気になっていたところに村井さんから連絡が入った。「ダイさんと一緒に飯でも行かねー?」っていうお誘い。俺をそれに二つ返事で了承し、ついでに誘ったらしい圭斗も一緒に4人での会食。
村井さんは親しみやすい方の人ではあるけど村井さんもダイさんも向島の、言ってしまえば大先輩に当たる人だ。だからよく知ってる圭斗がいてくれて気が楽になってるのは事実としてある。向島のノリって濃ゆいもんなあ。慧梨夏の濃さとはまたちょっと違った特有のアレがあるんだよ。
「僕は今回インターフェイスの夏合宿には完全にノータッチでしたが、どうでしたか?」
「いや~、今年もキャラの強い子たちばっかりで」
「問題とか起きませんでした?」
「起きてないと言えば嘘になるね」
「あちゃー。トラブルが起こりましたか」
「多分インターフェイスだとカズ以来じゃないかなっていうタイプのヤツね」
「俺が起こしたトラブルっつったらアレ……ですよね? あの類のヤツが起こったって、結構マズいんじゃないんですか?」
「現場は結構壮絶だったねえ。あっ、女の子同士のケンカなんだけどね」
ダイさんによれば、ミキサー講習のときに女子同士のケンカが勃発したらしい。事情を話せばかなり長くなるんだけども、最終的な結末から言えばケンカをした子のうち向島の子は合宿をドロップアウトして、その後サークルも辞めたそうだ。もう一方、星ヶ丘の子はケロっとして何事もなかったかのように講習を受けていた、と。
ちなみに、かつて俺が起こしたトラブルというのが慧梨夏を侮辱されたのにキレてミッツに手を出した、というヤツだ。胸倉を掴んで睨み上げたくらいで殴ってはなかったと思うけど(MBCCの同期全員に制止されたし)、それでも一応暴力沙汰として咲良さんからは厳重注意を受けたのを覚えている。インターフェイスではそれ以来の暴力沙汰だ。
「あのつばちゃんですら三井に手を出さなかったというのに」
「あー、つばちゃんはね」
「ちなみにその星ヶ丘の子はつばちゃんの愛弟子だからね、うん。血は争えないね」
そのケンカの他にも、今回の合宿では人間関係にまつわるトラブルがちょこちょこ起こったらしい。件の向島の子が絡んでたみたいなんだけど、それで体調を崩した子や暴言を吐かれて落ち込んでしまった子、そして現場にいた子たちのフォローやケアにはタカシが奔走していたそうだ。
「タカティはねえ、いい子だよねえ」
「アイツ、どうでした? ケアとかフォローをしてたって言っても、ちゃんと出来てたんですか?」
「それはもう! みんなのお兄さん的な感じで1年生の子からは慕われてるし、2年生の子からもタカティに任せれば大丈夫って感じで頼られてて。あの子の雰囲気とか距離感がいいんだろうね。踏み込み過ぎず、かと言って突き放すような印象でもないから」
「みんなのお兄さん、か。ちゃんとやれてんですねアイツ。良かった良かった」
機材面では全く心配してなかったけど、そうやって人に寄りそう場面での活躍は期待してなかったって言ったら誤解を生むかな。でも、機材面でも信頼されて、人とのコミュニケーションの点でもそんな風に見られるようになってたとは素直に驚きだ。言ってリアルでも妹のいる兄ちゃんだもんな。
「ああ、そうだカズ。タカティと言えばもう1つ報告しとかなきゃいけないことがあった」
「えっ何すか、怖いんですけど」
「し~んぱいしないで。いいことだから。今年のミキサーテストでカズ、タカティに何てノルマ出してた?」
「95点以上取ってトップ通過っすね」
「グロッ! 伊東お前それお前が去年咲良に言われてたノルマそのままじゃねーか!」
「そりゃあそうですよ。それがMBCCのミキサーに脈々と伝わるイズムってヤツです」
「な~んと、タカティ。満点でトップ通過」
「ええ!?」
なんてこった。決して簡単にはしなかったはずのテストでやられたか。そしてウチの1年生が全体4位と5位を取ったとか何とか。ただ、ダイさんによれば今年の子たちはテストだけじゃなくて実際の番組のレベルも結構安定して良かったらしい。
「伊東お前簡単に作ったんじゃねーのかぁ?」
「一応、レベルとしては野坂に満点を取らせないつもりで作ったはずだったんすよ! は!? 満点だと!?」
「野坂に満点を取らせないつもりとか、グロいってレベルを越えてるんだよなあ……さすが城戸女史の“イズム”を受け継いだ男だよ」
「圭斗、お前はマーか麻里から何か受け継いだイズムはないの?」
「僕は精々ムライズムがいいトコですよ」
「はー!? 圭斗お前悪乗りは俺がどうとか関係なくMMPの血だろーが!」
「オメーが一番悪質なんだよ!」
圭斗と村井さんがぎゃあぎゃあ言い始めたのを後目に、ダイさんはこれがいいのよとニコニコしてご飯を食べている。すげー器のデカさっつーか、懐の深さっつーか。そういう大人になれるかな、俺も。
「でもなー……人から受け継ぐのもいいけど、俺の何かっていうのがあるといいんですけどね」
「心配要らないんじゃない?」
「そうすか?」
「下の子たち見てたらね。わかるもんよ」
end.
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フェーズ1ではお馴染みだった圭斗さんと村井おじちゃんのいつものヤツだよーーーー!!! 圭斗テメー!の件大好き。
向島のキャラたちがきゃっきゃしてますが今回はいち氏のお話。合宿のその後って言うか、報告って感じですかね。テスト作ったし。
タカちゃんの成長に驚きっぱなしのいち氏ですが、テストで満点を取られてしまったことには憤慨の様子。まさかの伏兵である。
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