2020(02)
■Gateway to Cultural Exchange
＋＋＋＋
いよいよ、夏合宿に向けて本格的に番組を作り始める段階に来た。今日は集まれる１年４人が集まって練習するっていう感じ。場所は向島大学。スクールバスのバス停からサークル棟まで徒歩15分はかかるところをよくみんな来てくれたな。
――って思ってたら、みんな駅からすがやんの車に乗ってきやがった！ ちくしょう！ 素直にバス停から歩いてきた俺がバカみたいじゃねーかよこのクソ暑い中を！ ……でも、それを言ったところでしょうがない。帰りは乗せてもらおう。
「向島のサークル棟ってちょい古めの寮みたいな雰囲気だな」
「他の大学みたく都会的な感じではないね。あっ、虫ダメな人とかいない？ 虫めっちゃ出るから気ぃつけてね」
「うえぇ……虫はちょっと嫌だな」
「たっちゃん虫ダメ!?」
「うーん、苦手。逆にみんな大丈夫なの？」
「俺は別に平気」
「うん。俺も全然。そんなん嫌がってたら発掘なんか出来ねーよ」
「えー!? わかちゃんは？」
「得意でも苦手でもないかな。あ、でもゴキブリは好きじゃない」
「ゴキブリは大体みんな好きじゃないんじゃ」
「ウチの４年生の先輩が大量のゴキブリが入った虫かごをサークル室でひっくり返して大惨事になったことがあったとかって……」
「ひっ…！ さすがに大量はねーわ」
青女のサドニナさん率いる６班は、実質的班長を青敬のあやめさんが担っている。２年生の先輩があんまラジオラジオしてないから、ラジオ成分は緑ヶ丘のすがやんに託されてる風だ。俺も向島の人間として力になりたかったけど、初心者講習会に出てなくてあんま期待されてないっぽいのが素直に悔しい。
１年生は俺、カノンと緑ヶ丘のすがやん、それから星大のわかちゃんこと若狭有紀、星ヶ丘のたっちゃんこと大沼樹生の４人。この４人だと俺が１番喧しいのかな。すがやんが俺に合わせて比較的大人しめのわかちゃんとたっちゃんを盛り立ててくれてるって感じで。
「はい、ここがMMPのサークル室でーす」
「広っ！ すげー！ おー、備え付けのホワイトボードがある～！」
「えっ、待ってすがやん、テンション上がるトコそこ？」
「ウチのサークル室はこんな開放的じゃないんだよ！ 狭いトコに人が押し込められてるし、こんな立派なホワイトボードもないし！ わー、機材周りも広い～！」
すがやんが緑ヶ丘のサークル室とウチのそれを比べて興奮している。緑ヶ丘の部屋がよほど狭いのか。確かに、野坂先輩によれば緑ヶ丘は勝手に機材のお下がりが来て壁が出来るような環境らしいし、ウチとの一番の違いはサークルに来ている人数だ。
「星大と星ヶ丘ってどんな部屋で活動してんの？」
「ウチはここの３分の２くらいの広さかな。日常的に機材を使ってるワケじゃないから、機材スペースはちょっと狭いめで」
「え、機材使わないの？」
「作品の収録をするときだけ。ウチは長めの作品を作るのがメインだから、打ち合わせの時間の方が長いんだよ」
「へー。星ヶ丘は？」
「ウチはもっと広いミーティングルームをパーテーションで仕切って班のスペースを作ってるよ」
「あー、星ヶ丘は班って概念があるんだ」
「ミーティングルームと別に物置として使ってる部室があって、機材はそこに置かれてるよ」
「学校が違うといろいろ面白いな」
星大は１時間以上の作品を作ることが多いらしくて、星ヶ丘はステージをやる学校だ。ウチと近い活動スタイルなのが緑ヶ丘だけど、機材環境が全然違うっていう話は聞いてる。パソコンを使ってたり、ミキサー自体のスペックが段違いだとか。
「向島も昼放送やってるらしいじゃん、どんな感じでやってんの？」
「ウチは30分番組を収録でやってんね。でも純正のアナウンサーが１人しかいないから、ミキサーの先輩が１人アナウンサーにシフトしてやってて」
「えっ、そんなんアリなん!?」
「全然アリ。なんなら俺もインターフェイスじゃアナウンサーで出てるけど、サークルじゃミキサーも普通にやってるし」
「えっすげーじゃん！」
「ミキサーの先輩の番組がもっと面白くて、普通パーソナリティーってすがやんとかカノンとかその人の名前でやるじゃん」
「うんうん」
「でもその先輩は、番組毎に違うキャラクターと番組名でやってて。それを４年生の先輩がオムニバス形式って名付けてた」
「番組毎に違うキャラ？ え、意味がわかんない」
「架空の人格で番組をやるんだよ。お笑いのコントみたいな感じで」
「へ～、全然想像もつかない。実際の番組のファイルない？ 聞きたいんだけど」
「多分今はないな。先輩に聞いとく」
学校が違えば環境も活動の仕方も違う。そんな班員が集まるからこそいつもとは違う風に出来るのかな。刺激を受けたりもするんだろう。
「とりあえず練習しようかー」
「そうですねー」
「暑いから窓開けるよ。虫が来ても我慢で」
end.
＋＋＋＋
サドニナ班の１年生４人……すがやんとカノン以外の２人にも名前が付きました。名前が付いたのでそれぞれの学校でも出番があればいいなあ
そしてゴキブリをぶちまけたというのは坂井さんが持って来たあの虫カゴの件ですね。蒼希がうっかりひっくり返しちゃったヤツ。懐かしい。
向島のサークル室は他の大学と比べても広め。さらに今は人数が少ないので活動中なんかは本当に広々としてただただだだっ広いんだろうなあ
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いよいよ、夏合宿に向けて本格的に番組を作り始める段階に来た。今日は集まれる１年４人が集まって練習するっていう感じ。場所は向島大学。スクールバスのバス停からサークル棟まで徒歩15分はかかるところをよくみんな来てくれたな。
――って思ってたら、みんな駅からすがやんの車に乗ってきやがった！ ちくしょう！ 素直にバス停から歩いてきた俺がバカみたいじゃねーかよこのクソ暑い中を！ ……でも、それを言ったところでしょうがない。帰りは乗せてもらおう。
「向島のサークル棟ってちょい古めの寮みたいな雰囲気だな」
「他の大学みたく都会的な感じではないね。あっ、虫ダメな人とかいない？ 虫めっちゃ出るから気ぃつけてね」
「うえぇ……虫はちょっと嫌だな」
「たっちゃん虫ダメ!?」
「うーん、苦手。逆にみんな大丈夫なの？」
「俺は別に平気」
「うん。俺も全然。そんなん嫌がってたら発掘なんか出来ねーよ」
「えー!? わかちゃんは？」
「得意でも苦手でもないかな。あ、でもゴキブリは好きじゃない」
「ゴキブリは大体みんな好きじゃないんじゃ」
「ウチの４年生の先輩が大量のゴキブリが入った虫かごをサークル室でひっくり返して大惨事になったことがあったとかって……」
「ひっ…！ さすがに大量はねーわ」
青女のサドニナさん率いる６班は、実質的班長を青敬のあやめさんが担っている。２年生の先輩があんまラジオラジオしてないから、ラジオ成分は緑ヶ丘のすがやんに託されてる風だ。俺も向島の人間として力になりたかったけど、初心者講習会に出てなくてあんま期待されてないっぽいのが素直に悔しい。
１年生は俺、カノンと緑ヶ丘のすがやん、それから星大のわかちゃんこと若狭有紀、星ヶ丘のたっちゃんこと大沼樹生の４人。この４人だと俺が１番喧しいのかな。すがやんが俺に合わせて比較的大人しめのわかちゃんとたっちゃんを盛り立ててくれてるって感じで。
「はい、ここがMMPのサークル室でーす」
「広っ！ すげー！ おー、備え付けのホワイトボードがある～！」
「えっ、待ってすがやん、テンション上がるトコそこ？」
「ウチのサークル室はこんな開放的じゃないんだよ！ 狭いトコに人が押し込められてるし、こんな立派なホワイトボードもないし！ わー、機材周りも広い～！」
すがやんが緑ヶ丘のサークル室とウチのそれを比べて興奮している。緑ヶ丘の部屋がよほど狭いのか。確かに、野坂先輩によれば緑ヶ丘は勝手に機材のお下がりが来て壁が出来るような環境らしいし、ウチとの一番の違いはサークルに来ている人数だ。
「星大と星ヶ丘ってどんな部屋で活動してんの？」
「ウチはここの３分の２くらいの広さかな。日常的に機材を使ってるワケじゃないから、機材スペースはちょっと狭いめで」
「え、機材使わないの？」
「作品の収録をするときだけ。ウチは長めの作品を作るのがメインだから、打ち合わせの時間の方が長いんだよ」
「へー。星ヶ丘は？」
「ウチはもっと広いミーティングルームをパーテーションで仕切って班のスペースを作ってるよ」
「あー、星ヶ丘は班って概念があるんだ」
「ミーティングルームと別に物置として使ってる部室があって、機材はそこに置かれてるよ」
「学校が違うといろいろ面白いな」
星大は１時間以上の作品を作ることが多いらしくて、星ヶ丘はステージをやる学校だ。ウチと近い活動スタイルなのが緑ヶ丘だけど、機材環境が全然違うっていう話は聞いてる。パソコンを使ってたり、ミキサー自体のスペックが段違いだとか。
「向島も昼放送やってるらしいじゃん、どんな感じでやってんの？」
「ウチは30分番組を収録でやってんね。でも純正のアナウンサーが１人しかいないから、ミキサーの先輩が１人アナウンサーにシフトしてやってて」
「えっ、そんなんアリなん!?」
「全然アリ。なんなら俺もインターフェイスじゃアナウンサーで出てるけど、サークルじゃミキサーも普通にやってるし」
「えっすげーじゃん！」
「ミキサーの先輩の番組がもっと面白くて、普通パーソナリティーってすがやんとかカノンとかその人の名前でやるじゃん」
「うんうん」
「でもその先輩は、番組毎に違うキャラクターと番組名でやってて。それを４年生の先輩がオムニバス形式って名付けてた」
「番組毎に違うキャラ？ え、意味がわかんない」
「架空の人格で番組をやるんだよ。お笑いのコントみたいな感じで」
「へ～、全然想像もつかない。実際の番組のファイルない？ 聞きたいんだけど」
「多分今はないな。先輩に聞いとく」
学校が違えば環境も活動の仕方も違う。そんな班員が集まるからこそいつもとは違う風に出来るのかな。刺激を受けたりもするんだろう。
「とりあえず練習しようかー」
「そうですねー」
「暑いから窓開けるよ。虫が来ても我慢で」
end.
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サドニナ班の１年生４人……すがやんとカノン以外の２人にも名前が付きました。名前が付いたのでそれぞれの学校でも出番があればいいなあ
そしてゴキブリをぶちまけたというのは坂井さんが持って来たあの虫カゴの件ですね。蒼希がうっかりひっくり返しちゃったヤツ。懐かしい。
向島のサークル室は他の大学と比べても広め。さらに今は人数が少ないので活動中なんかは本当に広々としてただただだだっ広いんだろうなあ
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