2020(02)
■ただいまおかえりまた後で
++++
帰省していた実家から戻って、今日からまた星港での生活に戻る。戻るなりさっそく夏合宿の班打ち合わせが入って来るけど、打ち合わせの時間は一応俺が戻って来る時間に合わせてもらってるので一安心。
山羽から星港だったら新幹線を使ってパーッと行けばいいんだろうけど、いくら学割があるっつっても交通費はバカにならないし今回は鈍行で。そして、鈍行ならではのイイコトもちょっとあったりする。山羽から電車に揺られて3時間。
「ああ、いた。彩人、おかえり」
「ようリク。ただいま」
新幹線で星港まで一本だった物を、わざわざ複雑でめんどくさい乗り継ぎをした理由だ。リクの最寄り駅を経由して合流したかったんだ。どうせ打ち合わせでリクも星港方面には行かなきゃいけないしって。
打ち合わせは午後2時から。で、うちに着くのは12時頃を予定してるから、それまでは昼飯にしたり、ゆっくりしたりするのかな。ここに来るまで3時間かかってるし、うちの最寄りまではあと30分ほど。正直疲れたけど、リクに会えたからこれはこれで良し。
「実家、どうだった?」
「ゴロゴロしたり、朝霞さんとハンバーグ食べに行ったり」
「朝霞さん。ああ、俺とシノを助けてくれたあの人か。え、同郷なの?」
「そう、実は同郷で高校も一緒だったんだって。1年と4年だからちょうど入れ替わりの年だったけど」
「ふーん。そういう人が近場にいてくれると1人暮らしも楽しいだろうな」
「うん、実際事あるごとに遊びに行くようになってて。一緒に飲んだりと、か」
――と話していて、気付く。リクが妬いている顔をしていることに。マジで何の気もないんだけど、俺が話す人たちにそれとなく張り合おうとしてるっぽい? 他の人と会ったり遊んだりするのは止められないけど、その後には必ず「俺もいるよ」ってアピールしてくるんだよな。
構ってあげなきゃ拗ねるとか、どんなペットだよ。レナによれば、レナに対しては妬くとかあんまなくてよくあるリクのイメージ通りクールで大人な対応らしいから……えっ、もしかしてこれは俺がほっといたら危なっかしいとかそんなアレ? 確かに知らない女は怖いけどさ。
「も、もちろんリクも遊びに来てくれれば全然一緒に飲めるしな? よ、よし! 昼は俺が丹精込めて飯でも作っちゃおっかなー!」
「え、マジで? やった」
チョッロ。
でもこれで一安心。自分とシノを助けてもらってるから朝霞さんに対して危ない人間だっていう認識は持ってないみたいなのが救いだけど、自分の知らないところで朝霞さんと会うの禁止とか言われたらプロデューサー修行にも支障が出る。
つか、一応毎日連絡は取り合ってたんだけどな。まあ、そんな即レスばっかじゃなくて、おはようとおやすみ込みで1日3通か4通くらいだけど。あーでもそんな細かいところまで話してないし、確かにお互いどうしてたのかなとは気になるモンなのかな。
「あ、リクにお土産があってさ」
「俺に?」
「後で班打ち合わせでも皆さんに配るんだけど、それとは別に。じゃじゃーん。このバウムクーヘンがめっちゃ美味くてさ!」
「へえ。俺バウムクーヘン好きだから嬉しいよ。ありがとう」
「独り占めするも良し、家族で分けるも良し、レナと分けてもらっても」
「うーん、うちの家族で食べるには少し上品なサイズ感だから、独り占めするか玲那と食べるかになりそうだな。弟と妹がホント見境なくて」
「あ、きょうだいいるんだ」
「言ってなかったっけ?」
「うん、聞いてないと思う」
「俺が陸で、弟が海で、妹が空っていう、よくある感じの」
「統一感があって分かりやすいじゃん。ちなみにみんなにバラまくのはこれ。見てこのパッケージ。ピアノがデザインされててー」
「完全に彩人の趣味だな、ピアノがデザインされてるとか」
「お茶とピアノは山羽人の心だぞ!」
「お茶はわかるけど、ピアノも?」
リクにお土産を渡すタイミングを完全にミスったと思いつつも、どうせ俺の部屋には行くんだから手荷物になるのもちょっとの間だけだろ。セーフセーフ。でも、きょうだいがいるとか何気に新情報だな。弟とか、リクに似てんのかな。
「そう~、ピアノと言えばさー、俺青敬さんの撮影に向けてめっちゃ今練習してんだけど~、ウチの先輩が作ってくれた曲がカッコいいんだけどどちゃくそ難しくってさー、練習すんのに時間かかるから撮影9月にしてくれってマジ当麻に泣き寝入りだよ」
「曲作る先輩とかもいるんだ」
「何か、ウチの放送部にある音楽ライブ中心の班で、去年まで作曲と編曲を担当してたキーボーディストって先輩を朝霞さんが紹介してくれてさ。それで俺がどんな曲をやるのが得意なのかとか見てもらって、わざわざその撮影のためだけに曲を作ってもらった」
「部屋に行ったら練習の成果、聞かせて」
「いいけど、まだ全然だぞ」
「いいからいいから。俺が彩人の演奏を見たいだけだから」
「って言うか、飯作ってそれ食って、片付けて、打ち合わせの準備してたら時間なくならね?」
「打ち合わせが終わったらまた戻ればいい。今までの分、埋めさせて」
end.
++++
彩人が実家から帰ってきました。ちなみにPさんはもうちょっと実家の方でのんびりする様子。まあ4年生だし合宿とかもないからね
って言うか実家の方でもきゃっきゃしてたのかPさんと彩人は。本来ならこれはセコムが黙ってない。
そういや青敬の撮影がどうしたって話もあったわね。ステージが終わって帰省して、夏合宿もあってってなったら9月になるのはまあ納得かな。
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帰省していた実家から戻って、今日からまた星港での生活に戻る。戻るなりさっそく夏合宿の班打ち合わせが入って来るけど、打ち合わせの時間は一応俺が戻って来る時間に合わせてもらってるので一安心。
山羽から星港だったら新幹線を使ってパーッと行けばいいんだろうけど、いくら学割があるっつっても交通費はバカにならないし今回は鈍行で。そして、鈍行ならではのイイコトもちょっとあったりする。山羽から電車に揺られて3時間。
「ああ、いた。彩人、おかえり」
「ようリク。ただいま」
新幹線で星港まで一本だった物を、わざわざ複雑でめんどくさい乗り継ぎをした理由だ。リクの最寄り駅を経由して合流したかったんだ。どうせ打ち合わせでリクも星港方面には行かなきゃいけないしって。
打ち合わせは午後2時から。で、うちに着くのは12時頃を予定してるから、それまでは昼飯にしたり、ゆっくりしたりするのかな。ここに来るまで3時間かかってるし、うちの最寄りまではあと30分ほど。正直疲れたけど、リクに会えたからこれはこれで良し。
「実家、どうだった?」
「ゴロゴロしたり、朝霞さんとハンバーグ食べに行ったり」
「朝霞さん。ああ、俺とシノを助けてくれたあの人か。え、同郷なの?」
「そう、実は同郷で高校も一緒だったんだって。1年と4年だからちょうど入れ替わりの年だったけど」
「ふーん。そういう人が近場にいてくれると1人暮らしも楽しいだろうな」
「うん、実際事あるごとに遊びに行くようになってて。一緒に飲んだりと、か」
――と話していて、気付く。リクが妬いている顔をしていることに。マジで何の気もないんだけど、俺が話す人たちにそれとなく張り合おうとしてるっぽい? 他の人と会ったり遊んだりするのは止められないけど、その後には必ず「俺もいるよ」ってアピールしてくるんだよな。
構ってあげなきゃ拗ねるとか、どんなペットだよ。レナによれば、レナに対しては妬くとかあんまなくてよくあるリクのイメージ通りクールで大人な対応らしいから……えっ、もしかしてこれは俺がほっといたら危なっかしいとかそんなアレ? 確かに知らない女は怖いけどさ。
「も、もちろんリクも遊びに来てくれれば全然一緒に飲めるしな? よ、よし! 昼は俺が丹精込めて飯でも作っちゃおっかなー!」
「え、マジで? やった」
チョッロ。
でもこれで一安心。自分とシノを助けてもらってるから朝霞さんに対して危ない人間だっていう認識は持ってないみたいなのが救いだけど、自分の知らないところで朝霞さんと会うの禁止とか言われたらプロデューサー修行にも支障が出る。
つか、一応毎日連絡は取り合ってたんだけどな。まあ、そんな即レスばっかじゃなくて、おはようとおやすみ込みで1日3通か4通くらいだけど。あーでもそんな細かいところまで話してないし、確かにお互いどうしてたのかなとは気になるモンなのかな。
「あ、リクにお土産があってさ」
「俺に?」
「後で班打ち合わせでも皆さんに配るんだけど、それとは別に。じゃじゃーん。このバウムクーヘンがめっちゃ美味くてさ!」
「へえ。俺バウムクーヘン好きだから嬉しいよ。ありがとう」
「独り占めするも良し、家族で分けるも良し、レナと分けてもらっても」
「うーん、うちの家族で食べるには少し上品なサイズ感だから、独り占めするか玲那と食べるかになりそうだな。弟と妹がホント見境なくて」
「あ、きょうだいいるんだ」
「言ってなかったっけ?」
「うん、聞いてないと思う」
「俺が陸で、弟が海で、妹が空っていう、よくある感じの」
「統一感があって分かりやすいじゃん。ちなみにみんなにバラまくのはこれ。見てこのパッケージ。ピアノがデザインされててー」
「完全に彩人の趣味だな、ピアノがデザインされてるとか」
「お茶とピアノは山羽人の心だぞ!」
「お茶はわかるけど、ピアノも?」
リクにお土産を渡すタイミングを完全にミスったと思いつつも、どうせ俺の部屋には行くんだから手荷物になるのもちょっとの間だけだろ。セーフセーフ。でも、きょうだいがいるとか何気に新情報だな。弟とか、リクに似てんのかな。
「そう~、ピアノと言えばさー、俺青敬さんの撮影に向けてめっちゃ今練習してんだけど~、ウチの先輩が作ってくれた曲がカッコいいんだけどどちゃくそ難しくってさー、練習すんのに時間かかるから撮影9月にしてくれってマジ当麻に泣き寝入りだよ」
「曲作る先輩とかもいるんだ」
「何か、ウチの放送部にある音楽ライブ中心の班で、去年まで作曲と編曲を担当してたキーボーディストって先輩を朝霞さんが紹介してくれてさ。それで俺がどんな曲をやるのが得意なのかとか見てもらって、わざわざその撮影のためだけに曲を作ってもらった」
「部屋に行ったら練習の成果、聞かせて」
「いいけど、まだ全然だぞ」
「いいからいいから。俺が彩人の演奏を見たいだけだから」
「って言うか、飯作ってそれ食って、片付けて、打ち合わせの準備してたら時間なくならね?」
「打ち合わせが終わったらまた戻ればいい。今までの分、埋めさせて」
end.
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彩人が実家から帰ってきました。ちなみにPさんはもうちょっと実家の方でのんびりする様子。まあ4年生だし合宿とかもないからね
って言うか実家の方でもきゃっきゃしてたのかPさんと彩人は。本来ならこれはセコムが黙ってない。
そういや青敬の撮影がどうしたって話もあったわね。ステージが終わって帰省して、夏合宿もあってってなったら9月になるのはまあ納得かな。
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