2020(02)
■May your wishes come true
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こうしてペルセウス座流星群に合わせて菜月先輩と電話をするのが夏の恒例イベントになっているなと思う。菜月先輩は星空を見るのが好きで、プラネタリウムを見に行ったり流星群に合わせて夜空を見上げていらっしゃるのだ。
今年は向島も菜月先輩のいらっしゃる緑風も天気は良く、流れ星を探すにはちょうどいい空模様。最低でも10個は見つけたいなあと意気込んでいらっしゃる菜月先輩が電話越しでもとても可愛らしい。流れ星が流れる一瞬以外は大体雑談をしているのだけど、その時間がとても幸せだ。
「菜月先輩はこの夏で車校に通っていらっしゃるんですよね」
『そうだな。最近は専ら自校通いで。まあ、9月ごろに免許を取れればって感じ』
「実は俺も現在車校に通い始めまして」
『おっ、そうなのか』
「はい。それから、盆明けからバイトも始めることになりました」
『お前がバイト? へえ。ちなみに、何の』
「コンビニが併設しているガソリンスタンドですね」
大学3年春学期、第5セメスターのテストも終わって一段落。普通にやっていれば単位など落とすはずもないので、秋学期になれば授業をキツキツに履修していた今までよりは余裕が出来ると判断、これまでとは違った時間の使い方をすることに決めた。
まずは、自動車学校。これは、夏休みの間に終わってしまえれば一番いい。普通にやれば学科は問題ないとして、実技は講習あるのみ。で、新たな試みとして、アルバイトをとうとう始める。こーたから学生ニートと罵られることもなくなる。
「ちなみに、野暮なのは承知でお尋ねしたいのですが、就職活動などは……」
『一応内定はもらってるぞ』
「おめでとうございます! 以前仰っていらした印刷系の企業でしょうか」
『そうだな。そのように応募はしてるけど、本当に希望する職種に就けるかは入ってみてからの適性とかでまた振り分けられるらしい。ホント、工場に行けますようにって今から祈る日々だ』
「でしたら、せっかくですし流れ星にお願いしてはいかがでしょう」
『あ、そっか。よし、探すぞ』
菜月先輩は、地元の緑風エリアを中心に就職活動をしていて、印刷系の会社をメインに回っているという話は聞いていた。緑風には、製薬会社と取引のあるパッケージ会社というのが多いらしい。その中の工場の風景に惹かれた、と。
一応は四大卒になるのだから、総合職だとか企画・営業の方が採用は多そうだ。だけど菜月先輩はそういった仕事より工場での現場作業の方に惹かれるのだという。でも、わからなくもないんだ。菜月先輩には企画も向いていらっしゃるとは思うけど、職人気質でもあるから現場にも対応出来そうだと。
『こっちも野暮なのを承知で聞くけど、サークルの方はどうだ?』
「まあ、特に何も変わりなく」
『それじゃあ、下心を隠さなくなってきた1年生に誰かさんがキレ散らかしてるっていう話は聞かなくてもいいか』
「誰が喋りましたか、それを」
『あまりりっちゃんに心配かけてやるなよ』
「……確かに俺もイケメンは大好きですし、目と心の保養だときゃっきゃするにはしています。ですが、俺はラジオの活動もちゃんとやった上で、副産物的にきゃっきゃしているのであって。ただ顔のいい男と付き合いたいのであれば、来る場所が違うんじゃないかと」
『こういう時のお前は、見える面以外にもまだ抱えてるはずだ。うちで良ければ聞くぞ』
どうやら、俺が萌香に対してキレ散らかしているという話が菜月先輩と圭斗先輩に伝わってしまっているそうだ。そして、表面的に見えるイケメンどうこう以外にも理由があって、それは実際萌香どうこうとはあまり関係がないということも、菜月先輩にはわかられてしまっている。観念するしかない。
「……俺たち4人がいなくなった後のMMPのことを考えていました」
『奈々の世代になった時のことだな』
「はい。カノンは本当にやる気もあって、二刀流として日々アナの練習にもミキの練習にも励んでいます。ですが、萌香はいないものとして、奈々とカノンの2人でどうサークルの活動を維持するのかと。これまで菜月先輩ら、諸先輩方が築いて来られたMMPというサークルの波が途絶えかねないと考えたときに、こんな状態になる前にどうにか出来なかったのかと考えてイライラしていました」
『そういうことだったか。ちなみに、奈々の代が1人しかいないことが来期の危機を招いているとするなら、元を辿ればゲッティング☆ガールプロジェクトに原因がある。春風の似合う(略)子やイケメンであるかはともかく、無差別にビラは配るべきだった』
「……ですね、はい。反省しています」
『それから。サークルなんて物は時代によって変わる。プロ志向から今の空気に変わったのもちょっと前のことだ。それに、高々8代9代のサークルで、諸先輩が築いた物とかそんなの、気にするな。どんどん変えて行け。そんな中で代々変わらないMMPの強さは、誰も思いもよらないことを本当にやれる勢いと悪乗りの力だ。現に、カノンの二刀流なんかもそうじゃないか。カンザキがアナウンサーとして番組をやってるのもそうだ。カンザキのオムニバス形式の昼放送なんか、緑ヶ丘の連中じゃ絶対に思いつかないし、思いついてもやらないぞ。それをやれるからこそのMMPなんだ。思いついたことは大体やれる、そういう土壌を次代のために残しておいてやってくれ』
思いついたことは大体やれる土壌。缶蹴り大会やうまい棒レース然りで。一見しょうもないようなことでもすぐには否定せず、やれるかどうかを考える余地を残しておいた方がいいのかもしれない。
『あ! 工場勤務!』
「流れましたか!?」
『……遅かったか。よーし、次だ次』
「はい」
end.
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これも季節のお話。最近は向島の存在感が薄いからと言って無理矢理いろいろ捻じ込んでるワケではないはず
いろいろむしゃくしゃしている様子のノサカですが、やっぱり表面に出ている物よりもっと奥深くを暴けるのは菜月さんなのでしょう
そして菜月さんがとうとうゲッティング☆ガールプロジェクトの失敗を認めたぞ!! これは何気にニュースだ
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こうしてペルセウス座流星群に合わせて菜月先輩と電話をするのが夏の恒例イベントになっているなと思う。菜月先輩は星空を見るのが好きで、プラネタリウムを見に行ったり流星群に合わせて夜空を見上げていらっしゃるのだ。
今年は向島も菜月先輩のいらっしゃる緑風も天気は良く、流れ星を探すにはちょうどいい空模様。最低でも10個は見つけたいなあと意気込んでいらっしゃる菜月先輩が電話越しでもとても可愛らしい。流れ星が流れる一瞬以外は大体雑談をしているのだけど、その時間がとても幸せだ。
「菜月先輩はこの夏で車校に通っていらっしゃるんですよね」
『そうだな。最近は専ら自校通いで。まあ、9月ごろに免許を取れればって感じ』
「実は俺も現在車校に通い始めまして」
『おっ、そうなのか』
「はい。それから、盆明けからバイトも始めることになりました」
『お前がバイト? へえ。ちなみに、何の』
「コンビニが併設しているガソリンスタンドですね」
大学3年春学期、第5セメスターのテストも終わって一段落。普通にやっていれば単位など落とすはずもないので、秋学期になれば授業をキツキツに履修していた今までよりは余裕が出来ると判断、これまでとは違った時間の使い方をすることに決めた。
まずは、自動車学校。これは、夏休みの間に終わってしまえれば一番いい。普通にやれば学科は問題ないとして、実技は講習あるのみ。で、新たな試みとして、アルバイトをとうとう始める。こーたから学生ニートと罵られることもなくなる。
「ちなみに、野暮なのは承知でお尋ねしたいのですが、就職活動などは……」
『一応内定はもらってるぞ』
「おめでとうございます! 以前仰っていらした印刷系の企業でしょうか」
『そうだな。そのように応募はしてるけど、本当に希望する職種に就けるかは入ってみてからの適性とかでまた振り分けられるらしい。ホント、工場に行けますようにって今から祈る日々だ』
「でしたら、せっかくですし流れ星にお願いしてはいかがでしょう」
『あ、そっか。よし、探すぞ』
菜月先輩は、地元の緑風エリアを中心に就職活動をしていて、印刷系の会社をメインに回っているという話は聞いていた。緑風には、製薬会社と取引のあるパッケージ会社というのが多いらしい。その中の工場の風景に惹かれた、と。
一応は四大卒になるのだから、総合職だとか企画・営業の方が採用は多そうだ。だけど菜月先輩はそういった仕事より工場での現場作業の方に惹かれるのだという。でも、わからなくもないんだ。菜月先輩には企画も向いていらっしゃるとは思うけど、職人気質でもあるから現場にも対応出来そうだと。
『こっちも野暮なのを承知で聞くけど、サークルの方はどうだ?』
「まあ、特に何も変わりなく」
『それじゃあ、下心を隠さなくなってきた1年生に誰かさんがキレ散らかしてるっていう話は聞かなくてもいいか』
「誰が喋りましたか、それを」
『あまりりっちゃんに心配かけてやるなよ』
「……確かに俺もイケメンは大好きですし、目と心の保養だときゃっきゃするにはしています。ですが、俺はラジオの活動もちゃんとやった上で、副産物的にきゃっきゃしているのであって。ただ顔のいい男と付き合いたいのであれば、来る場所が違うんじゃないかと」
『こういう時のお前は、見える面以外にもまだ抱えてるはずだ。うちで良ければ聞くぞ』
どうやら、俺が萌香に対してキレ散らかしているという話が菜月先輩と圭斗先輩に伝わってしまっているそうだ。そして、表面的に見えるイケメンどうこう以外にも理由があって、それは実際萌香どうこうとはあまり関係がないということも、菜月先輩にはわかられてしまっている。観念するしかない。
「……俺たち4人がいなくなった後のMMPのことを考えていました」
『奈々の世代になった時のことだな』
「はい。カノンは本当にやる気もあって、二刀流として日々アナの練習にもミキの練習にも励んでいます。ですが、萌香はいないものとして、奈々とカノンの2人でどうサークルの活動を維持するのかと。これまで菜月先輩ら、諸先輩方が築いて来られたMMPというサークルの波が途絶えかねないと考えたときに、こんな状態になる前にどうにか出来なかったのかと考えてイライラしていました」
『そういうことだったか。ちなみに、奈々の代が1人しかいないことが来期の危機を招いているとするなら、元を辿ればゲッティング☆ガールプロジェクトに原因がある。春風の似合う(略)子やイケメンであるかはともかく、無差別にビラは配るべきだった』
「……ですね、はい。反省しています」
『それから。サークルなんて物は時代によって変わる。プロ志向から今の空気に変わったのもちょっと前のことだ。それに、高々8代9代のサークルで、諸先輩が築いた物とかそんなの、気にするな。どんどん変えて行け。そんな中で代々変わらないMMPの強さは、誰も思いもよらないことを本当にやれる勢いと悪乗りの力だ。現に、カノンの二刀流なんかもそうじゃないか。カンザキがアナウンサーとして番組をやってるのもそうだ。カンザキのオムニバス形式の昼放送なんか、緑ヶ丘の連中じゃ絶対に思いつかないし、思いついてもやらないぞ。それをやれるからこそのMMPなんだ。思いついたことは大体やれる、そういう土壌を次代のために残しておいてやってくれ』
思いついたことは大体やれる土壌。缶蹴り大会やうまい棒レース然りで。一見しょうもないようなことでもすぐには否定せず、やれるかどうかを考える余地を残しておいた方がいいのかもしれない。
『あ! 工場勤務!』
「流れましたか!?」
『……遅かったか。よーし、次だ次』
「はい」
end.
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これも季節のお話。最近は向島の存在感が薄いからと言って無理矢理いろいろ捻じ込んでるワケではないはず
いろいろむしゃくしゃしている様子のノサカですが、やっぱり表面に出ている物よりもっと奥深くを暴けるのは菜月さんなのでしょう
そして菜月さんがとうとうゲッティング☆ガールプロジェクトの失敗を認めたぞ!! これは何気にニュースだ
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