2020(02)
■いつメンと内緒の進路希望
++++
「それじゃあ、俺たちの再会に、かんぱーい!」
「かんぱーい」
最近じゃ、こうして3人集まるのが盆時の風物詩みたくなっている。今年も去年と同じ山口がバイトをしている店で拳悟、それから万里との3人会だ。万里はいつだって帰省が短い印象があるが、今回の帰省は向こうで大学が再開するまでらしい。珍しく長い帰省に俺も拳悟も驚いている。
さっそく生中で乾杯をして、ぶっちゃけ年末にも会ってたが、3人だからこそ出来る話が出来る場は1年振り。そういう近況も含めての話に花を咲かせていく。もちろん、山口が変に首を突っ込んで来ようモンなら黙らせる準備もしつつだ。
「そう言えば、高崎と越野って今就活してるでしょ? どういう系に行くの?」
「あ、俺はもう就活終わった。倉庫会社にしたよ」
「マジで!? おめでとう!」
「それで昨日カズに中継してもらってさ、俺が内定もらった会社でバイトしてる子と会って飯食って来たんだよ」
「情報量が多いな。バイトしてる奴かよ、一緒に試験受けた奴とかじゃなくて。で、伊東が出て来るのも謎だし」
「高崎お前、大石君て知らない? カズのサークル関係の友達って言ってたけど」
「あ!? お前あの会社で就職決めたのか!」
「まあな。圭佑君からもいい会社だって話は聞いてたし。で、去年すき焼きパーティーに混ぜてもらって、大石君とはそこで知り合ったんだよ。そこにカズの姉貴もいて、それとな~く繋がりがあった的な?」
俺にとっては大石がバイトしてる会社と言うよりは、拓馬さんがいる会社だという印象の方が強い。でも、万里が主にやることになるのは事務所での入出庫管理やシステム管理になるだろうとのこと。大石はバリバリの現場系らしいが、それはイメージ通りだ。
万里はよくある就活を勝ち抜いての内定獲得だったそうだが、大石は雑談ついでにさらっと社員登用が決まったそうだ。確かに、バイトである程度結果を残してる人間だったら育成の手間もちょっとは省けそうだ。実際、大石はこの休みにフォークリフトの講習を受けることになっているとか。
「――で、塩見さんのマンツーマン指導を受けてるんだって」
「いくらフォークリフトと言え、拓馬さんのマンツーマン指導とか怖すぎかよ……」
「高崎は? 進路」
「あー……今1次試験は受かって、もうすぐ2次試験」
「何系? お前の進路希望とかさっぱり想像つかねーわ。バイク乗り回す系?」
「ちげえよ。つかそれは今のバイトだっつーの」
バイクを乗り回す系の仕事も、それはそれで魅力的だとは思うし土地勘とか方向感覚という意味でも俺にはある程度向いてるんだろうとは思う。ただ、それはバイトだからやれてるだけで、ピザ屋に限らず生業としてやるにはどうかと。
「拳悟お前聞いてる?」
「聞いてるね」
「お前、拳悟に言えて俺に言えないってことはないよな!」
「いや、お前もお前で近いダチではあるけど、拳悟とは過ごした時間が段違いだとは言っとくぞ」
「そりゃお前がヤンキーだったときのことは知らねーけどよ」
「ヤンキーだったことはねえって何遍言ったらわかるんだお前は」
「わかってて言ってま~す。ヤンキーイジリされんのが嫌なら吐けやそろそろ」
「……チッ。……星港市職員」
「は!?」
――と、驚いた声がひとつじゃなかった事に俺と拳悟はまた「は!?」と驚くのだ。もちろんこの場合、万里の他に驚いたのは、注文していたフードを席に持って来た山口だったのだが。すかさず「高崎クン星港市に就職するの~!?」なんて大袈裟に驚きやがるモンだから、余計なことを言ったらぶっ殺すぞとは目線だけで。
「ちょ、ごめんって。怖い怖い怖い」
「いいか、絶っ……対に! 誰にも言うなよ」
「でもさ~、内緒にするような進路でもなくない? むしろ立派ジャない。試験も通ってるんだし」
「ホントに。お兄さんの言う通りだぞ」
「そういうことじゃねえんだよ。俺にだってポリシーっつーモンがあるんだよ」
「お詫びに俺の進路も言う? これでイーブンっしょ」
「既に知ってるモンを改めて聞いたところで何がある」
「だよね~、知ってた」
あんまり自分のことをベラベラ喋る方でもないし、今はFMにしうみで番組も持ってるから、自分のことをベラベラ喋ることでやらかすのもよろしくない。今はちょっとしたことで炎上だの不祥事だのと言われちまうから、予防するに越したことはない。
星港市の職員を志したのは、この街に関わる仕事がしてみたかったからだ。それから、狭き門であるということもまた魅力だった。やってダメでも浪人するつもりはない。学内で講座などもあったが、独学で何とか。どうせならやれるところまでやってみたいと思って現在に至っている。
「そういや拳悟、お前はいつから髪を切れるようになるんだ?」
「あっそうだ! 美容師っつっても最初は助手みたいな感じなんだろ?」
「大体3年目くらいだね。いろいろ練習しなきゃいけないことも多いし、それぞれの技術試験もあるし。それに受かったらスタイリストデビューだね」
「スタイリストデビューか。良い響きだな」
「そーう、だから毎日めっちゃ頑張ってるー。」
「そしたら来年は会社員と公務員とスタイリストの会になってたらいいな!」
「そうだな」
「そうだね」
「よーし、生中頼むぞー! お兄さーん!」
end.
++++
夏恒例となっている星高のいつメンたちが今年も去年と同じ店で集会をしているようです。SPゲストはお馴染みやまよ。
高崎の進路希望がこうやって公の場でちゃんと明らかになるのはフェーズ1ではなかったので、これが初めてのことになります。これまでは濁してたのよね
こっしーがしばらくは向島にいるようなので、他の星高勢とのあれやこれやがあったらいいなあ。
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「それじゃあ、俺たちの再会に、かんぱーい!」
「かんぱーい」
最近じゃ、こうして3人集まるのが盆時の風物詩みたくなっている。今年も去年と同じ山口がバイトをしている店で拳悟、それから万里との3人会だ。万里はいつだって帰省が短い印象があるが、今回の帰省は向こうで大学が再開するまでらしい。珍しく長い帰省に俺も拳悟も驚いている。
さっそく生中で乾杯をして、ぶっちゃけ年末にも会ってたが、3人だからこそ出来る話が出来る場は1年振り。そういう近況も含めての話に花を咲かせていく。もちろん、山口が変に首を突っ込んで来ようモンなら黙らせる準備もしつつだ。
「そう言えば、高崎と越野って今就活してるでしょ? どういう系に行くの?」
「あ、俺はもう就活終わった。倉庫会社にしたよ」
「マジで!? おめでとう!」
「それで昨日カズに中継してもらってさ、俺が内定もらった会社でバイトしてる子と会って飯食って来たんだよ」
「情報量が多いな。バイトしてる奴かよ、一緒に試験受けた奴とかじゃなくて。で、伊東が出て来るのも謎だし」
「高崎お前、大石君て知らない? カズのサークル関係の友達って言ってたけど」
「あ!? お前あの会社で就職決めたのか!」
「まあな。圭佑君からもいい会社だって話は聞いてたし。で、去年すき焼きパーティーに混ぜてもらって、大石君とはそこで知り合ったんだよ。そこにカズの姉貴もいて、それとな~く繋がりがあった的な?」
俺にとっては大石がバイトしてる会社と言うよりは、拓馬さんがいる会社だという印象の方が強い。でも、万里が主にやることになるのは事務所での入出庫管理やシステム管理になるだろうとのこと。大石はバリバリの現場系らしいが、それはイメージ通りだ。
万里はよくある就活を勝ち抜いての内定獲得だったそうだが、大石は雑談ついでにさらっと社員登用が決まったそうだ。確かに、バイトである程度結果を残してる人間だったら育成の手間もちょっとは省けそうだ。実際、大石はこの休みにフォークリフトの講習を受けることになっているとか。
「――で、塩見さんのマンツーマン指導を受けてるんだって」
「いくらフォークリフトと言え、拓馬さんのマンツーマン指導とか怖すぎかよ……」
「高崎は? 進路」
「あー……今1次試験は受かって、もうすぐ2次試験」
「何系? お前の進路希望とかさっぱり想像つかねーわ。バイク乗り回す系?」
「ちげえよ。つかそれは今のバイトだっつーの」
バイクを乗り回す系の仕事も、それはそれで魅力的だとは思うし土地勘とか方向感覚という意味でも俺にはある程度向いてるんだろうとは思う。ただ、それはバイトだからやれてるだけで、ピザ屋に限らず生業としてやるにはどうかと。
「拳悟お前聞いてる?」
「聞いてるね」
「お前、拳悟に言えて俺に言えないってことはないよな!」
「いや、お前もお前で近いダチではあるけど、拳悟とは過ごした時間が段違いだとは言っとくぞ」
「そりゃお前がヤンキーだったときのことは知らねーけどよ」
「ヤンキーだったことはねえって何遍言ったらわかるんだお前は」
「わかってて言ってま~す。ヤンキーイジリされんのが嫌なら吐けやそろそろ」
「……チッ。……星港市職員」
「は!?」
――と、驚いた声がひとつじゃなかった事に俺と拳悟はまた「は!?」と驚くのだ。もちろんこの場合、万里の他に驚いたのは、注文していたフードを席に持って来た山口だったのだが。すかさず「高崎クン星港市に就職するの~!?」なんて大袈裟に驚きやがるモンだから、余計なことを言ったらぶっ殺すぞとは目線だけで。
「ちょ、ごめんって。怖い怖い怖い」
「いいか、絶っ……対に! 誰にも言うなよ」
「でもさ~、内緒にするような進路でもなくない? むしろ立派ジャない。試験も通ってるんだし」
「ホントに。お兄さんの言う通りだぞ」
「そういうことじゃねえんだよ。俺にだってポリシーっつーモンがあるんだよ」
「お詫びに俺の進路も言う? これでイーブンっしょ」
「既に知ってるモンを改めて聞いたところで何がある」
「だよね~、知ってた」
あんまり自分のことをベラベラ喋る方でもないし、今はFMにしうみで番組も持ってるから、自分のことをベラベラ喋ることでやらかすのもよろしくない。今はちょっとしたことで炎上だの不祥事だのと言われちまうから、予防するに越したことはない。
星港市の職員を志したのは、この街に関わる仕事がしてみたかったからだ。それから、狭き門であるということもまた魅力だった。やってダメでも浪人するつもりはない。学内で講座などもあったが、独学で何とか。どうせならやれるところまでやってみたいと思って現在に至っている。
「そういや拳悟、お前はいつから髪を切れるようになるんだ?」
「あっそうだ! 美容師っつっても最初は助手みたいな感じなんだろ?」
「大体3年目くらいだね。いろいろ練習しなきゃいけないことも多いし、それぞれの技術試験もあるし。それに受かったらスタイリストデビューだね」
「スタイリストデビューか。良い響きだな」
「そーう、だから毎日めっちゃ頑張ってるー。」
「そしたら来年は会社員と公務員とスタイリストの会になってたらいいな!」
「そうだな」
「そうだね」
「よーし、生中頼むぞー! お兄さーん!」
end.
++++
夏恒例となっている星高のいつメンたちが今年も去年と同じ店で集会をしているようです。SPゲストはお馴染みやまよ。
高崎の進路希望がこうやって公の場でちゃんと明らかになるのはフェーズ1ではなかったので、これが初めてのことになります。これまでは濁してたのよね
こっしーがしばらくは向島にいるようなので、他の星高勢とのあれやこれやがあったらいいなあ。
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