2020(02)
■一発ジャンプで着地する
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「ちーちゃんとこっしーってパッと見意外な取り合わせ。変な感じする」
「いやー、カズ、マジでサンキュ! せっかく戻って来たし久々に大石君と話したいと思ってさ」
こないだ、こっしーから久々に連絡が入った。こっしーは高校の同級生で同じ男子バスケ部にいたんだけど、バスケガチ勢のこっしーとにわか勢の俺とは立つ位置が違うって言うかさ。仲良くないってワケでもなかったけど、そこまでめちゃくちゃ仲が良いワケでもなかったから。
要件っていうのが、ちーちゃんの連絡先を教えてっていうこと。何か、去年の冬に1回会ったことがあったみたいなんだよね。それでこっしーが大学のある紅社から帰省してくるのに合わせてちーちゃんと会いたいっていうので俺が中継をしてるってワケ。
「って言うか、こっしーがちーちゃんに会いたいっていうのに俺が同席する必要もなくなかった? 何で俺がいるのって感じだけど」
「カズ、そこは共通の友達がいた方が会話が弾むだろ」
「こっしーのコミュ力だったら問題ないと思うけどなあ。って言うか何系の知り合い?」
「会社関係かなあ。去年の冬に伊東さん込みですき焼きやった中のメンバーだね。高沢さんの幼馴染みだっけ」
「え、そのすき焼き美南もいたの?」
「美南じゃなくて兄貴の圭佑君。圭佑君の会社の会に混ぜてもらったんだよ。倉庫だから俺の勉強とか進路の参考になる話も聞けるかなと思ってさ」
「へー。こっしー真面目ね」
「うんうん。越野くん真面目だよ。その時からそんなこと考えてたとか。俺なんて全然だもん」
こっしーは大学で物流関係の勉強を専攻していて、進路もそういう関係の方に進もうとしているみたいだ。俺は何となく経済学部に入って、今は社会保障だとか保険の話とかを中心に履修してたけど、進路はそれとは全然関係ない方に進もうとしてるっていうな。
「って言うか2人、就活とかどーしてる?」
「俺決まった」
「俺も決まってるよー」
「マジ!? 早ない!?」
「カズは?」
「え、本命の試験の合格発表待ち。でも10月とかだからそれまでにいくつか内定キープしてって感じで」
「試験はもう終わってんだな。ちなみにどこ? 差支えがなければ」
「星港市交通局。地下鉄駅務員」
「えー! 意外!」
「うん、カズ、全然そういう素振り見せてなかったもん。へー、そうなんだ!」
これ、言うと結構意外がられるんだけど、就活は鉄道系を中心に攻めてたんだよな。鉄道オタクとかじゃないけどちょっと鉄道は好きだし、時間きっかり動くところとかめちゃ尊敬するし。何かいいなって思って。星港市交通局以外に星港鉄道と向島環状鉄道も受けたよね。
「――って、俺が2人に聞いてたんだってば。てか2人とも決まってるとかすげーよ」
「決まってるって言うけど、俺は今のバイト先の会社にそのまま就職するだけだから、凄くないよ。激しい就活を勝ち抜いたってワケでもないから」
「でも社員登用してもらえるってことは、ちーちゃんのこれまでの働きぶりが評価されたってことじゃない」
「え、大石君向西倉庫!?」
「そうだけど」
「俺も俺も!」
「えー! そうなんだ! 来春からよろしくー!」
「えー! ちーちゃんとこっしー同期!? 同僚!?」
ちーちゃんがバイト先の会社にそのまま就職するって知ってたワケじゃないと思うけど、こっしーがちーちゃんに会って話したいなって思った理由も何となくわかった気がした。縁のある人だからってことなのかなーって。でもすげーな、こう、繋がってく感じが。
「大石君は現場作業メインだと思うけど、俺はそれこそ圭佑君がやってるみたいなパソコンでの作業がメインになるのかな」
「うんうん、そうだよね」
「でも最初の何ヶ月かは現場の仕事をやるんだって。てか大石君、就職するのに面接とか受けた? 試験の日、いなかった気がするんだけど。別日程?」
「ううん、受けてない。普通に口頭で終わった」
「ゆるっ! えっ、どんな?」
「所長と4年生だし就活とかしてるでしょーって話になったんだよ。で、募集してるの見ましたー、待遇も良かったですし俺がこの会社の試験受けちゃダメですかねーって聞いたら、だったら来春からよろしくねって。それで書類を交わして、次の日には内定になってたよ」
「は!?」
ちなみにこっしーはよくある普通の就活……適性試験やら面接やらを潜り抜けて内定を勝ち得たそうだから、ちーちゃんのこの暴露に「は!?」となるのは仕方ない。何なら第三者の俺が聞いても何じゃそりゃって思うもんな。試験も何もなくて口頭で勝ち得る内定か……いや、ちーちゃんのこれまでの働きぶりへの信頼!
「それで、夏休みの間にフォークリフトの講習受けて来てねって言われてるんだよ。お金は会社で出すからって」
「そっか、現場だとフォークリフトとかも乗るんだ」
「そうだね。一応今までも塩見さんにさらっと教えてはもらってたけど、内定をもらってからは、実際にちょっと乗らせてもらってマンツーマン指導を受けてる」
「塩見さんのマンツーマン指導とか怖そうだけど贅沢だな」
「うん、本当に」
資格を取るための勉強とか、内定をもらってからもやることはいろいろあるんだなって。なんならちーちゃんは今からが繁忙期だし、来春に向けたアピールの場でもあるんだよね。俺はまだまだ結果待ちをしながらの就活が続くけど、慧梨夏はもう決まってるし、みんなそれぞれやってんだなって。はー、俺はどうなるやら。
end.
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夏だからセーフその2。いち氏を中継役に、ちーちゃんとこっしーです。来春から倉庫会社の同僚になる物流系コンビ。
そしてさらっといち氏の進路希望なんかも明かされましたね。鉄道系を攻めてたか。つか「時間きっかり動くところとかめちゃ尊敬」って。確かに苦手分野だけど
慧梨夏の進路も決まったみたいだし、慧梨夏と言えば就活友達のあの人はどうしたのかしら。就活終わったのかな?
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「ちーちゃんとこっしーってパッと見意外な取り合わせ。変な感じする」
「いやー、カズ、マジでサンキュ! せっかく戻って来たし久々に大石君と話したいと思ってさ」
こないだ、こっしーから久々に連絡が入った。こっしーは高校の同級生で同じ男子バスケ部にいたんだけど、バスケガチ勢のこっしーとにわか勢の俺とは立つ位置が違うって言うかさ。仲良くないってワケでもなかったけど、そこまでめちゃくちゃ仲が良いワケでもなかったから。
要件っていうのが、ちーちゃんの連絡先を教えてっていうこと。何か、去年の冬に1回会ったことがあったみたいなんだよね。それでこっしーが大学のある紅社から帰省してくるのに合わせてちーちゃんと会いたいっていうので俺が中継をしてるってワケ。
「って言うか、こっしーがちーちゃんに会いたいっていうのに俺が同席する必要もなくなかった? 何で俺がいるのって感じだけど」
「カズ、そこは共通の友達がいた方が会話が弾むだろ」
「こっしーのコミュ力だったら問題ないと思うけどなあ。って言うか何系の知り合い?」
「会社関係かなあ。去年の冬に伊東さん込みですき焼きやった中のメンバーだね。高沢さんの幼馴染みだっけ」
「え、そのすき焼き美南もいたの?」
「美南じゃなくて兄貴の圭佑君。圭佑君の会社の会に混ぜてもらったんだよ。倉庫だから俺の勉強とか進路の参考になる話も聞けるかなと思ってさ」
「へー。こっしー真面目ね」
「うんうん。越野くん真面目だよ。その時からそんなこと考えてたとか。俺なんて全然だもん」
こっしーは大学で物流関係の勉強を専攻していて、進路もそういう関係の方に進もうとしているみたいだ。俺は何となく経済学部に入って、今は社会保障だとか保険の話とかを中心に履修してたけど、進路はそれとは全然関係ない方に進もうとしてるっていうな。
「って言うか2人、就活とかどーしてる?」
「俺決まった」
「俺も決まってるよー」
「マジ!? 早ない!?」
「カズは?」
「え、本命の試験の合格発表待ち。でも10月とかだからそれまでにいくつか内定キープしてって感じで」
「試験はもう終わってんだな。ちなみにどこ? 差支えがなければ」
「星港市交通局。地下鉄駅務員」
「えー! 意外!」
「うん、カズ、全然そういう素振り見せてなかったもん。へー、そうなんだ!」
これ、言うと結構意外がられるんだけど、就活は鉄道系を中心に攻めてたんだよな。鉄道オタクとかじゃないけどちょっと鉄道は好きだし、時間きっかり動くところとかめちゃ尊敬するし。何かいいなって思って。星港市交通局以外に星港鉄道と向島環状鉄道も受けたよね。
「――って、俺が2人に聞いてたんだってば。てか2人とも決まってるとかすげーよ」
「決まってるって言うけど、俺は今のバイト先の会社にそのまま就職するだけだから、凄くないよ。激しい就活を勝ち抜いたってワケでもないから」
「でも社員登用してもらえるってことは、ちーちゃんのこれまでの働きぶりが評価されたってことじゃない」
「え、大石君向西倉庫!?」
「そうだけど」
「俺も俺も!」
「えー! そうなんだ! 来春からよろしくー!」
「えー! ちーちゃんとこっしー同期!? 同僚!?」
ちーちゃんがバイト先の会社にそのまま就職するって知ってたワケじゃないと思うけど、こっしーがちーちゃんに会って話したいなって思った理由も何となくわかった気がした。縁のある人だからってことなのかなーって。でもすげーな、こう、繋がってく感じが。
「大石君は現場作業メインだと思うけど、俺はそれこそ圭佑君がやってるみたいなパソコンでの作業がメインになるのかな」
「うんうん、そうだよね」
「でも最初の何ヶ月かは現場の仕事をやるんだって。てか大石君、就職するのに面接とか受けた? 試験の日、いなかった気がするんだけど。別日程?」
「ううん、受けてない。普通に口頭で終わった」
「ゆるっ! えっ、どんな?」
「所長と4年生だし就活とかしてるでしょーって話になったんだよ。で、募集してるの見ましたー、待遇も良かったですし俺がこの会社の試験受けちゃダメですかねーって聞いたら、だったら来春からよろしくねって。それで書類を交わして、次の日には内定になってたよ」
「は!?」
ちなみにこっしーはよくある普通の就活……適性試験やら面接やらを潜り抜けて内定を勝ち得たそうだから、ちーちゃんのこの暴露に「は!?」となるのは仕方ない。何なら第三者の俺が聞いても何じゃそりゃって思うもんな。試験も何もなくて口頭で勝ち得る内定か……いや、ちーちゃんのこれまでの働きぶりへの信頼!
「それで、夏休みの間にフォークリフトの講習受けて来てねって言われてるんだよ。お金は会社で出すからって」
「そっか、現場だとフォークリフトとかも乗るんだ」
「そうだね。一応今までも塩見さんにさらっと教えてはもらってたけど、内定をもらってからは、実際にちょっと乗らせてもらってマンツーマン指導を受けてる」
「塩見さんのマンツーマン指導とか怖そうだけど贅沢だな」
「うん、本当に」
資格を取るための勉強とか、内定をもらってからもやることはいろいろあるんだなって。なんならちーちゃんは今からが繁忙期だし、来春に向けたアピールの場でもあるんだよね。俺はまだまだ結果待ちをしながらの就活が続くけど、慧梨夏はもう決まってるし、みんなそれぞれやってんだなって。はー、俺はどうなるやら。
end.
++++
夏だからセーフその2。いち氏を中継役に、ちーちゃんとこっしーです。来春から倉庫会社の同僚になる物流系コンビ。
そしてさらっといち氏の進路希望なんかも明かされましたね。鉄道系を攻めてたか。つか「時間きっかり動くところとかめちゃ尊敬」って。確かに苦手分野だけど
慧梨夏の進路も決まったみたいだし、慧梨夏と言えば就活友達のあの人はどうしたのかしら。就活終わったのかな?
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