2020(02)

■ぐちぐちでしょぼーん

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 緑ヶ丘大学はとっくにテストも終わっているし、今日はエイジの誕生日。でもってエイジは夏合宿の打ち合わせで星港まで出て来る。というワケで今日はエイジと俺の部屋で飲もうかという話をしていた。それ自体は別に誕生日に関係なくいつもやってることだけど、いつもと違う点が1つ。

「ハナちゃんがいるって珍しいね。久し振りって言うか」
「もーね、しょぼんなんですよ! 飲まなきゃやってらんないって感じ!」
「――っつー感じで最近ちょっとストレス溜めてるっぽかったから、飲むならハナも呼ぼうかと思って」
「まあ、俺は全然いいけど。ああ、ハナちゃんいるなら冷房付けなきゃなあ」

 エイジだけだったら窓を開け放っておしまいだけど、ハナちゃんはさすがにお客さん扱いをしないとマズい。クーラーを入れるためにコンセントを挿す。しまった。お客さんが来る前に試運転をしておくべきだった。カビ臭かったりしたらどうしよう。
 そんな心配があったからしばらくは窓を開けたままクーラーを入れて、俺はハイボール、エイジとハナちゃんはビールで乾杯。2人がいるとおつまみを作ってもらえるのが助かるなあ。自分でやろうという気は微塵もなかったよね。俺は買ったのをそのまま食べる専門だから。

「そしたらエイジ、誕生日おめでとう」
「おー、サンキュ」
「で、今日の副題はハナちゃんの話を聞くっていう会だね」
「ホントしょぼんだよー、ごめーん」
「エイジはある程度聞いてるの?」
「まあ、大体は。夏合宿関係のあれこれっつー感じで」
「あー、なかなか難しい感じかー。ハナちゃんて誰の班だっけ?」
「ゲンゴロー」

 私大組のテストが終わると、夏合宿に向けた動きも再開したように思う。星大・向島の国公立組はまだもうちょっとテストに集中してる頃だけど。夏合宿にトラブルはつきものだそうで、全く平和に終わるということはどんな学年でもほとんどないそうだ。
 で、ハナちゃんの抱えている悩みと言うか問題だ。ハナちゃんはゲンゴローが班長を務める5班の副班長だ。班にはサキを始めとする1年生が4人。ハナちゃんは向島のミキサーの子とペアを組むことになった。その子は初心者講習会にも出てなかったから、フォローも期待されての編成だったそうだけど。

「あの子と打ち合わせが出来る気がしない…!」
「えっ、どういうこと? そんなに素行が悪い子なの?」
「はー……ビールおかわり」
「飲むねえ」
「ハナのペアの奴、忙しいっつって班打ち合わせにも来ないし、1回ペアで打ち合わせしたらしいんだけど、番組の話がひとつも進まないまま終わったっていう」
「うわー、それはなかなか厳しいね」
「向島でもサークルを掛け持ちしてるんだって。で、基本もう1個のサークルとか他の用事を優先するっていうスタンスらしくて」
「でも合宿に出て来てんだから、人もあることだし普通はバランスとって予定入れるモンだべ」
「一応奈々にも言ったの、あの子どうなってんのって。そしたら一応注意はするみたいに言ってたけど、あの調子じゃダメだわ。しょぼんだわ」

 インターフェイス夏合宿では、その最後に班で制作した番組を発表するモニター会がある。合宿が開催されるまでに班で番組を作って、練習して完成させるっていう……なんなら合宿当日より合宿までの方が忙しいまである。
 打ち合わせが出来ないともちろん番組なんかやれっこない。キューシートがあれば練習無しでも番組を出来る人はいる。だけど、それをいくら機材王国と呼ばれた向島のミキサーとは言え、ラジオの活動を最優先にしていない1年生に出来るとは思えない。

「他にもあんだろ、ハナ」
「男が何だってんだ! 知ったこっちゃない!」
「えーと……男?」
「インターフェイスにはイケメンがいるって聞いてきたのに実際そんなでもなかったっつって愚痴られたんだと、ペア打ち合わせで」
「はあ」
「それでさあ、ハナ聞いたの! その話どこから聞いてきたのって。奈々はインターフェイスにイケメンは求めてないし、誰が言ってんのって思って!」
「もしかして、野坂先輩? 向島のイケメン好きと言えば」
「ううん、もう1個のサークルの4年生の先輩だって! は~!? そんな情報何で鵜呑みにした!? それで、聞かれるじゃん。本当にイケメンいるのって。知ったこっちゃない! 強いて言えば4年生の先輩がそうだったかもしれないけど、いない人の話してもって感じっしょ?」
「そうだねえ」
「他の班にはイケメンいますかって聞かれたけど、面識ないから知らないし。出会い系サークルか何かだと思ってる? 合宿で男漁り始めそー、しょぼんだわー」

 ――と聞いて、ちょっとマズいなと気付く。俺の班にいる1年生の男子は3人ともカッコいい。ササと当麻には彼女がいるから問題ないだろうけど、そうなると彩人狙いになってくるんじゃないかと。女性恐怖があるとなれば、自分狙いでグイグイ来られたら相当厳しいはずだ。

「どうした高木、難しい顔して」
「ちょっと、ゲンゴローと連携の必要が出て来たなって思ってるところ。彩人のことでね。あと、うちの班イケメン揃いだから、今の話を聞くと少し怖いなと」
「あ~、タカティしょぼんだよそれー」
「とりあえず、飲もうか」
「そうだね。エージ、おつまみ持って来てー」
「一応俺の誕生日だから飲んでるって体だっていう。俺を扱き使うか」
「しょぼーん」


end.


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タカエイハナの3人がエイジ誕ついでにお酒を飲んでいるようなのですが、確かにハナちゃんちょっと珍しい。
前にりっちゃんが圭斗さんに相談していたのですが、今年の地雷枠候補、現段階では結構ハナちゃんを振り回している様子。
で、向島のイケメン好きで名前がパッと出て来るノサカよwww まあ実際そうなんだけど、それをスッと言うTKGよ

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