2020(02)

■スイムウェアの選び方

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「は!? 何だお前!? 何着ても似合うとかふざけんなよ、これだからイケメンは」
「仕方ないよね、実際何でも似合っちゃうんだもん」
「コーディネートはクソセンスのクセに」
「だから上から下まで朝霞クンに選んでもらわなきゃ成り立たないんじゃない。ごめん朝霞クン、機嫌直してよ」
「怒ってねーよ。お前のカッコよさがムカつくだけだよ」
「怒ってるじゃん!」

 来たるプチメゾン慰労会バーベキューに向け、今日は山口と水着を買いに来た。会場が海ならそれらしいマリンスタイルで行く方が雰囲気もいいだろうし、TPOに合わせた格好をして行きたい。……俺は泳げないんだけど、やっぱ、ファッションのことは気を遣っておきたい。
 だけど、山口はこれが気になる~って言って試着した物が全部似合うっていうな。確かに山口はサッカーやってたから体格もいいし、なんなら顔もいいし。髪は黒の短髪で去年より大人しいけど、相変わらず柄物も似合うし。コイツと買い物に来るとスペック差をまざまざと見せつけられる。

「でも、せっかく買うんだし1回きりっていうのは勿体ないよね」
「水着ってよりボードショーツ寄りで探したらいいんじゃないか。ボードショーツならタウンユースも出来るから、普段着的に使ってもいいし」
「へー、水辺だけでもないんだね」
「水に入るのが今度の1回だけだったら、タウンユースに舵を切った素材で選んでもいいかなとは思う。お前は普通に柄物も似合うから、何着たって問題はないんだけど」
「普段着として買うにしても、問題は陸上で何を合わせるかなんだけど」
「Tシャツかポロシャツでも着とけ。いい加減学習しろ。いつまでも俺に甘えんな」
「えーん朝霞クンが辛辣だよ~」
「実際こないだ弟がくれたのと合わせたっていいんだ」
「あ~、なるほどね~」

 山口の誕生日に奴の弟が送って来たTシャツとポロシャツは、それこそちょっといいブランドのオシャレなものだった。それに合わせるパンツとなると、あんまり安すぎてもなって。でも、私服としても使えるから5000円オーバーでも余裕で元を取れるだろって。
 さて、山口のことはほっといても解決するからいい。問題は俺だ。如何せん水着映えしない体格で、泳げないしインドア派だ。タウンユースするにしても問題ありありなのに、何をどう見繕った物かと。とりあえず、裾はちょっと長めがいいなとは思ってるけど。

「つか、水着より羽織りが欲しすぎる。出来ればフード付きで」
「引き籠もる気マンマンじゃない。って言うか大石クンはどんな水着かな~」
「アイツは水泳ガチ勢だしそれこそ競泳用とかのガチなのじゃないか? それか、この情報をもっと前から持ってたなら会社のファミリーセールでいいのを安く買ってたかも」
「あ~、そっか、ガチ勢か」
「うーん、どうしたものか。あっ」

 パッと目を引いたのは、太ピッチのボーダー柄。それこそ噂をしていた大石の会社のファミリーセールで見たことのあるブランドだ。単なる紺よりもうちょっと深みのある色は、派手過ぎず、地味過ぎず、ちょうどいい。

「これ、いいなあ」
「あ、いいじゃん。朝霞クンならオシャレに着こなせそう」
「……うわっ、8000円。やっぱいい値段するな」
「ホントだね~。これって朝霞クンの通学カバンのブランドだよね? いいの使ってるんだね朝霞クン」
「いや、カバンは5000円だぞ。あ~…! 大石~! 助けてくれー!」

 水着とか、本当に縁がないからな。1着買うのにもこう、な。俺が山口みたく普段からハーフパンツで歩いてるような奴なら8000円でも出してたかもしれないけど、俺はハーフパンツなんか履かないし。如何せんブランドがブランドだけにファミリーセールだったらなって考えてしまう。

「ダメ元だ」
「朝霞クン?」
「あ、もしもし大石? 今いいか。あのさ、水着なんだけどさ。ああ、今探してるんだよ。でもクソ高くて。それで、毎度ファミリーセールで爆買いしてるお前なら、買うだけ買ってワンチャン埋もれてるヤツとかないかなーと思って」
「本当に大石クンに助けを求めてるのね……」
「えっ! マジか! ふんふん、おー! そうそう、今そんなのを丁度見てて! ボーダーの、うんうん! ちなみにおいくら……1600円!? 買います! あー……サイズ問題か。身長だけならそこまで差はないよな俺ら。わかった! 行くわ。じゃあ、後でな」
「え、朝霞クン、西海まで行く感じ?」
「大石が、ちょうど俺が今見てるこれの前のモデルのを眠らせてたみたくて、譲ってくれるってよ! 聞いてみるモンだ」
「ホントだね~」

 大石から家に眠らせてる水着の写真が送られてきたけど、まさに今見ている物と何ひとつ変わらないから改めて「買います」と返事をした。8000円が1600円だぞ。5分の1の値段って考えると本当に助かる。西海までの交通費くらい安い。そうなると、後は山口のボードショーツと俺の羽織問題だ。

「俺はこのカーゴタイプのショーツにしようかな」
「おっ、いいじゃないか」
「こっちを地味にして、上に柄シャツを羽織って夏らしくならない?」
「お前もようやくわかってきたか。俺は嬉しいぞ」
「どんな柄がいいかな朝霞クン」
「何でも似合うんだし好きなのでいいだろ」
「えっ、酷い」


end.


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洋朝の水着お買物回。相変わらずこの手のお買物になると朝霞Pが何でも似合うやまよに対してブチギレてますね。しゃーない、スペックや
やまよは普段からハーフパンツなども履いているのですが、朝霞Pはそうでもないので水着の選び方に難航している模様。プールにも行かないもんね。
でもやっぱり水着のことを相談するならちーちゃんになるのね、まあガチ勢に聞くのが一番よね、そこは。

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