2020(02)
■顔見せの三者面談
++++
「こんにちは」
「あ、えと……こん、にちは」
丸いテーブルにちょうど正三角形の形で3人が座る。そこにいるのはリクと、リクの彼女のレナって子だ。レナは緑ヶ丘でリクと同じサークルのアナウンサー。背中まである長い真っ直ぐの黒髪が印象的で、顔も物凄い美人だ。リクと並んでたら、美男美女っていうのがピッタリな感じの。
リクからレナのことは聞いてたから、全く情報がないワケじゃない。だけどこうやって話すのは初めてだから緊張がヤバい。リクがいるから大丈夫っちゃ大丈夫なんだろうけど。つか、俺から「彼女紹介して」って言ったのにこんな挙動不審とか失礼極まりない。
「栗山玲那です」
「……谷本彩人です。あの、挙動不審っすよね俺。すいません」
「女性が苦手という風には聞いてるので」
リクからこれこれこういう……とお互いについての簡単な紹介が入り、リクの恋人、パートナーとして改めて顔を合わせる。と言うか、複数間恋愛についての話は聞いていたけど、こうして実際に他のパートナーと会うっていうのは変な感じがする。当然だけど、初めてのことだし。
「彩人のことは、陸以外の同期からも話を聞いていて」
「えっ、誰がどんな風に言って、えっ、シノ? シノなの!?」
「シノじゃなくて、サキが」
「サキ君!? え、どうしよう、緊張する……サキ君、俺のこと、何て?」
「私たちの仲間内で夏合宿の近況報告をしてたときに、陸のペアってどんな子って話になって。その場に陸とシノはいなかったから。それで、彩人を知ってたのがサキで。星ヶ丘だったらあのすごい美形の子じゃないか、みたいな感じで」
「はぁー!? 恥ずかしー! あの、俺、サキ君に嫌われてる感じじゃなかった? 何あのチャラい奴、みたいな」
「ううん、全然」
「よかったぁー」
「玲那、前も言ったけど彩人は何故かサキが気になってるみたくて」
深い理由はわからないけど、何故か気になって仕方ないのが緑ヶ丘のミキサー、サキ君。緑ヶ丘にはササキって名字の男子が3人いて、リクは当然として、うるさいシノとは初心者講習会でめちゃくちゃ絡まれたからそこそこ喋ってて。
サキ君はシノが無理矢理俺に挨拶させてたんだけど、挨拶をするだけしてあんまり話せなかったし、サキ君はそのまま手元の資料を黙々と読んでいて。元々口数が少ない子なのかなとか、どういう感じの子なのかなっていう興味が湧いたと言うか。リクやシノより分かりにくいからこそかもしれない。
「サキ君て緑ヶ丘のサークルじゃどんな感じ?」
「部屋の隅っこでただただ過去の書記ノートとかミキノートとか読んでる感じ。それが楽しいみたい」
「あー、でもわかるな。俺もただただ過去のステージの台本とか読ませてもらってるし。それで想像に耽ったり、今との比較が楽しい」
「彩人とサキって意外に似たところがあるんだな」
「なんか、派手そうな印象だったけど静かな趣味もある感じ? 読書とかする?」
「あ、読書する。こっちにはあんまり持ってきてないけど、先輩の部屋で気になる本借りて読んだり」
「彩人? そこは現役書店バイトの俺を頼ってくれていいんだけどな?」
「ちょ、ごめんて」
「わ、すごい。陸が妬いてる」
どうやら、今までリクはレナにこういうやきもちみたいな感じで嫉妬心を露わにすることはなかったらしい。それがとても新鮮なようで、レナはリクの新しい一面を見れたねと言って満足そうにしている。何か、自分も妬いて欲しいとかそういうんじゃないんだな。
「あの、レナ。直球で聞きたいんだけど」
「うん、何?」
「言っちゃえば、レナがリクの1番目の恋人じゃん? なんかさ、リクを独占したいとか、そういうのはなかった?」
「陸の恋愛の仕方を初めて聞いたときは、さすがに少し驚いた。でも、人を独占とか専有とか、どんな関係でも出来ることじゃないし」
「……そっか」
「彩人は? その辺」
「いや、そもそも俺は彼女の存在を知った上でこういう関係になってるし、今更っつーか」
「元々の恋愛対象は男性? 女性?」
「女性。大学入ったら普通に彼女欲しいと思ってた」
それがあんなことになって、知らない女性が怖くなって。リクに惹かれたのは、だからってワケじゃないんだけど、気付いたらこんなことになってた。いつの間にか存在がデカくなるって、本当にあることなんだと思って。
「やっぱ、レナもリクがガンガン攻めて来てオトされた?」
「ううん、私から告白した」
「え。もしかしてレナってリク以上の肉食系…!?」
「と言うか、私がそういうのを思った時に言いたい方だし、陸はそういうのに奥手と言うか、硬派だと思ってたから。付き合ってわかったよね、陸は手が早いし、慣れてるって」
「あ、やっぱそうなんだ」
「彩人はガンガン攻めて来られた?」
「今から思えばめちゃくちゃ口説かれてたんだと思う。男同士だし普通そういう風には思わないじゃんか」
「そうだよね。でもいいなあ、私も口説かれてみたかったな」
「えーっと、玲那? 彩人? 何か俺軽くディスられてないか?」
「ディスってはない」
「ただの情報交換だろ」
それから俺とレナは、リクの話でしばらく盛り上がっていた。俺たちにいろいろバラされてしまったリクはたじたじになっていたみたいだけど、俺たちが何となく意気投合したことには代えられないと無理矢理納得していた。
「何はともあれ、これからよろしく」
「こちらこそ。あっ、リク」
「何?」
「あのさ、今度サキ君を紹介して欲しいんだけどさ」
「合宿の時にでも」
「……陸さん、さては個別に会わせる気がありませんね?」
end.
++++
三者面談会ですが、共通の話題がサキというのが多分みんなビックリするヤツ。彩人がサキ君サキ君言ってるといいなあと。
レナの「手が早いし慣れてる」に対して「やっぱそうなんだ」っていうのは彩人、ササのある種の軽さを感じてるのかしら。それとも口説かれまくった経験から?
夏合宿で彩人とサキの掛け合いなんかが見られるのか! ……でも、ササがじーっと警備してそうだね。
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「こんにちは」
「あ、えと……こん、にちは」
丸いテーブルにちょうど正三角形の形で3人が座る。そこにいるのはリクと、リクの彼女のレナって子だ。レナは緑ヶ丘でリクと同じサークルのアナウンサー。背中まである長い真っ直ぐの黒髪が印象的で、顔も物凄い美人だ。リクと並んでたら、美男美女っていうのがピッタリな感じの。
リクからレナのことは聞いてたから、全く情報がないワケじゃない。だけどこうやって話すのは初めてだから緊張がヤバい。リクがいるから大丈夫っちゃ大丈夫なんだろうけど。つか、俺から「彼女紹介して」って言ったのにこんな挙動不審とか失礼極まりない。
「栗山玲那です」
「……谷本彩人です。あの、挙動不審っすよね俺。すいません」
「女性が苦手という風には聞いてるので」
リクからこれこれこういう……とお互いについての簡単な紹介が入り、リクの恋人、パートナーとして改めて顔を合わせる。と言うか、複数間恋愛についての話は聞いていたけど、こうして実際に他のパートナーと会うっていうのは変な感じがする。当然だけど、初めてのことだし。
「彩人のことは、陸以外の同期からも話を聞いていて」
「えっ、誰がどんな風に言って、えっ、シノ? シノなの!?」
「シノじゃなくて、サキが」
「サキ君!? え、どうしよう、緊張する……サキ君、俺のこと、何て?」
「私たちの仲間内で夏合宿の近況報告をしてたときに、陸のペアってどんな子って話になって。その場に陸とシノはいなかったから。それで、彩人を知ってたのがサキで。星ヶ丘だったらあのすごい美形の子じゃないか、みたいな感じで」
「はぁー!? 恥ずかしー! あの、俺、サキ君に嫌われてる感じじゃなかった? 何あのチャラい奴、みたいな」
「ううん、全然」
「よかったぁー」
「玲那、前も言ったけど彩人は何故かサキが気になってるみたくて」
深い理由はわからないけど、何故か気になって仕方ないのが緑ヶ丘のミキサー、サキ君。緑ヶ丘にはササキって名字の男子が3人いて、リクは当然として、うるさいシノとは初心者講習会でめちゃくちゃ絡まれたからそこそこ喋ってて。
サキ君はシノが無理矢理俺に挨拶させてたんだけど、挨拶をするだけしてあんまり話せなかったし、サキ君はそのまま手元の資料を黙々と読んでいて。元々口数が少ない子なのかなとか、どういう感じの子なのかなっていう興味が湧いたと言うか。リクやシノより分かりにくいからこそかもしれない。
「サキ君て緑ヶ丘のサークルじゃどんな感じ?」
「部屋の隅っこでただただ過去の書記ノートとかミキノートとか読んでる感じ。それが楽しいみたい」
「あー、でもわかるな。俺もただただ過去のステージの台本とか読ませてもらってるし。それで想像に耽ったり、今との比較が楽しい」
「彩人とサキって意外に似たところがあるんだな」
「なんか、派手そうな印象だったけど静かな趣味もある感じ? 読書とかする?」
「あ、読書する。こっちにはあんまり持ってきてないけど、先輩の部屋で気になる本借りて読んだり」
「彩人? そこは現役書店バイトの俺を頼ってくれていいんだけどな?」
「ちょ、ごめんて」
「わ、すごい。陸が妬いてる」
どうやら、今までリクはレナにこういうやきもちみたいな感じで嫉妬心を露わにすることはなかったらしい。それがとても新鮮なようで、レナはリクの新しい一面を見れたねと言って満足そうにしている。何か、自分も妬いて欲しいとかそういうんじゃないんだな。
「あの、レナ。直球で聞きたいんだけど」
「うん、何?」
「言っちゃえば、レナがリクの1番目の恋人じゃん? なんかさ、リクを独占したいとか、そういうのはなかった?」
「陸の恋愛の仕方を初めて聞いたときは、さすがに少し驚いた。でも、人を独占とか専有とか、どんな関係でも出来ることじゃないし」
「……そっか」
「彩人は? その辺」
「いや、そもそも俺は彼女の存在を知った上でこういう関係になってるし、今更っつーか」
「元々の恋愛対象は男性? 女性?」
「女性。大学入ったら普通に彼女欲しいと思ってた」
それがあんなことになって、知らない女性が怖くなって。リクに惹かれたのは、だからってワケじゃないんだけど、気付いたらこんなことになってた。いつの間にか存在がデカくなるって、本当にあることなんだと思って。
「やっぱ、レナもリクがガンガン攻めて来てオトされた?」
「ううん、私から告白した」
「え。もしかしてレナってリク以上の肉食系…!?」
「と言うか、私がそういうのを思った時に言いたい方だし、陸はそういうのに奥手と言うか、硬派だと思ってたから。付き合ってわかったよね、陸は手が早いし、慣れてるって」
「あ、やっぱそうなんだ」
「彩人はガンガン攻めて来られた?」
「今から思えばめちゃくちゃ口説かれてたんだと思う。男同士だし普通そういう風には思わないじゃんか」
「そうだよね。でもいいなあ、私も口説かれてみたかったな」
「えーっと、玲那? 彩人? 何か俺軽くディスられてないか?」
「ディスってはない」
「ただの情報交換だろ」
それから俺とレナは、リクの話でしばらく盛り上がっていた。俺たちにいろいろバラされてしまったリクはたじたじになっていたみたいだけど、俺たちが何となく意気投合したことには代えられないと無理矢理納得していた。
「何はともあれ、これからよろしく」
「こちらこそ。あっ、リク」
「何?」
「あのさ、今度サキ君を紹介して欲しいんだけどさ」
「合宿の時にでも」
「……陸さん、さては個別に会わせる気がありませんね?」
end.
++++
三者面談会ですが、共通の話題がサキというのが多分みんなビックリするヤツ。彩人がサキ君サキ君言ってるといいなあと。
レナの「手が早いし慣れてる」に対して「やっぱそうなんだ」っていうのは彩人、ササのある種の軽さを感じてるのかしら。それとも口説かれまくった経験から?
夏合宿で彩人とサキの掛け合いなんかが見られるのか! ……でも、ササがじーっと警備してそうだね。
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