2020(02)

■打ち上げる~び~ご苦労さん

++++

「それじゃあステージも終わってお疲れさんでした! かんぱーい!」
「かんぱーい」
「あー! る~び~が美味い!」
「最高ですね」

 丸の池ステージが無事に終わり、みちると2人打ち上げ。場所はいつもの玄で、5種盛りにる~び~からのスタート。ディレクター2人での打ち上げはちょっと寂しいものがあるけど、まあ、後日ちゃんとしたのをやるのか、このままおしまいか。どうすんのかね。
 もしかしたら長門班の残党が暴れに来るかなとも思ったけど、今回はそういうのもなし。至極順調に行って逆に怖いくらいだったね。今日は朝霞サンと洋平も見に来て、差し入れにどれだけあっても嬉しいスポドリと、凍ったパウチドリンクをくれた。

「つばちゃんおつかれでしょでしょ~」
「アンタもよくやるよね、ステージ見に来た後でバイトとか」
「それは別に全然。自分がやってたワケじゃないし。あっ、みちるちゃんも欲しいのあったらどんどん頼んでね~。戸田班の子は俺割利くから~」
「そしたら、枝豆ください」
「は~い」

 洋平割というのは、洋平の関係筋の人間はこの店のメニューが7割の値段で注文できるという有り難いシステムだ。元々そこまでクソ高い店じゃないけど、洋平割が利くからって理由で見事にリピーターになってたよね。店主のおじさん、商売が上手いな~って。

「洋平さんの目から見て、戸田班のステージはどうでしたか?」
「ん~、そうだね~。2、3年生の3人がまず初めて一緒にやるメンバーじゃない。それに、1年生3人がいて。その割に上手くまとまってたかな~って印象」
「歯切れが悪いな。ホントは言いたいこと腹の中に隠してんだろ。去年の合宿ばりのキレッキレのヤツ頼むわ」
「つばちゃんとみちるちゃんに言うのもな~って気はするけど、一応班長に伝えとくね。俺と朝霞クンの意見が一致した点は、MCの海月ちゃん。あの子は最初のステージにしては頑張ってたんだけど、やっぱMCとしては余裕がなさ過ぎたかなと。マリンちゃんがアナウンサーとしての自分の使い方をわかってたらもっと良くなったかもね」
「なるほど。お前の暴走アドリブを止めにステージに上がってた朝霞サン的な」
「的な。普通の班ってMC2人体制がスタンダードだし、自分を使うこともマリンちゃんには今後視野に入れていただきたいなと。マリンちゃんのお手本てメグちゃんじゃない。後ろで構えて見てる感じの。でも、戸田班の今の編成だと、それじゃ難しい。俺はやれてたけど、実際1人って結構キツイから」

 やっぱただステージが終わりました、良かったですねで終わるんじゃ面白くない。何がどうで、良かったところは伸ばし、悪かったところは詰めていかなきゃ次に繋がらない。そういった意味で、第三者の視点で批評をしてくれる朝霞サンと洋平の存在はありがたい。

「たださ、海月に関してはフォローさせてよ。ウチの班はさ、ぶっちゃけアナが弱いんだよ」
「まあ、そうだね。2年生以上にアナがいないから」
「お前がさ、元・自称ステージスターとして今からでもいいから何か置いてってくんないと。育成面ですげー困るワケよ。アタシこっしーじゃないからさ、さすがに全然違うパートのことまではカバー出来んわ」
「なるほどね~。一理はあるでしょ~。あと、雄平さんは他に類を見ない特殊な人だからね~」
「あの脳筋が」
「戸田さん、雄平さんて?」
「こないだ卒業した人。一言で言うと、全パ―ト網羅した脳筋野郎だね。班の都合でパート行ったり来たりしてさ。それでやれるから頭おかしいんだけど」
「器用で頭のいい人だったんですね」

 確かにこっしーは何をやらせても割とそつなくこなすし頭もまあ、良かったんだろうとは思う。ただ、基本的に脳筋だから。あの人が班長だった頃は朝霞サンと洋平、それからアタシっていう3人を丸ごと面倒見てそれぞれを指導してたから、そう考えるとやっぱこっしーはバカだ。
 今年のアタシはDとして、みちるの育成を重点的にやっている。去年はゲンゴローをミキサーとしてある程度使えるくらいには育てられたとは思ってるけど。やっぱ教えるにしても自分が専門的にやってるパートのがいいんだわ、ちゃんと理解した上で教えられて。そういった点で、やっぱアナは弱すぎるんだ。

「これから必要になってくるのは海月ちゃんのレベルアップと、マリンちゃん彩人クンの連携。2人、競争相手でライバルかもしれないけど、ステージをやる時は仲間だからね。しっかり意思疎通をとれるようになること」
「私が一切触れられてませんが」
「みちるちゃんは、つばちゃんからい~っぱい! ディレクターのいろはを教えてもらって、今後も修行してください」
「投げやがったな」
「ううん。つばちゃんはディレクターとしての矜持を持ってる人だから。下手に俺がどうこう言うよりつばちゃんが言った方がいいでしょ」
「はいはい。それじゃあそういうことにしといてやるよ。お前もステージスターの何たるかっつーのをまとめといて。海月に伝えるし」
「それじゃあ後からLINEか何かで。ちなみに、Pとしての何たるかは?」
「それは彩人が隣に行けばいいだけの事だからアタシは要らない」


end.


++++

打ち上げる~び~組の一幕です。ディレクターたちはいつものお店でる~び~で乾杯。しかし洋平ちゃんはタフですねえ。
多分近所だろうし、洋平割が利くとあってこれから下宿組の彩人みちるもよく来るようになるんだろうなあ
で、ステージの話。元・自称ステージスターさんはやっぱりただよかったね~だけで終わらせてくれません。いいことを教えてもらえるといいのだけど。

.
49/100ページ