2020(02)
■3周回った後の原点
++++
「わ~、すごいね~。何か、自分が立たない丸の池ステージって、感慨深いな~」
「そうだな」
今日は、朝霞クンと一緒に丸の池公園にやってきた。その目的は、もちろん放送部の丸の池ステージの観覧。去年までは俺たちが実際に立っていたそのステージを、今日は普通に一般の人として見に来たんだ。何か、新鮮だよね~。
つばちゃん率いる戸田班を目当てには来てるんだけど、戸田班だけじゃなくて他の子たちがどんなことをやるのかも気になる。だから俺と朝霞クンは2、3時間はここにいることを前提にした準備をして来てるし、熱中症対策はもちろん万全。
「つばちゃんたちって1時からだっけ?」
「ああ。そのように聞いてる」
「それじゃあ、ランチでも食べながら待ってようか~」
夏の丸の池公園にはちょこちょこ移動販売車とか屋台とかがあって、小腹を満たすのには造作ないんだよね。俺と朝霞クンもさっき公園の入り口のところにいた移動販売車でラップサンドを買って来てるから、きっと今年も立ってるだろうテントの下で食べようかなって。
ステージの前には、毎年放送部でテントを何張りか立てている。暑い中公園に来た人が、この影で座って休憩していくついでにステージを見てもらえればっていう考え方だね。でもこれは実際座っちゃうな。木陰もベンチも最高だし。休んじゃうわ。
「でも、この空気、好きだな~」
「ああ。やっぱり俺たちの原点はここだな。だけど、去年の今頃は、こうやってお前と第三者としてステージを見に来るなんて想像もしてなかった」
「だよね~。って言うか朝霞クン、現役の時は1年先の事なんて考えられなかったじゃない。精々1ヶ月先、2ヶ月先にある作品提出かステージかって感じで」
「山口、戸田達への差し入れはいつ渡す?」
「あっ、そうだね~。今が11時45分だし、とりあえずご飯の後でいいかな? いくら朝霞クンでも15分もあればこれくらい食べるよね?」
つばちゃんたちへの差し入れは、どれだけあっても嬉しいスポーツドリンク。一応アイソトニックとかハイポトニックとか、目的別に買って来てあるんだけど、そんなことを気にするのは俺たちくらいかな? ペットボトルのと、凍らせたパウチ状のと。
あと、もしもはない方がいいんだけど、ひょっとするとあるかもしれないまさかのために経口補水液。使わなかったとしても、あるだけでちょっとは気持ちが変わって来るはず。ステージの資本は体だし、戸田班に限らず誰もケガなく病気なく終わるのが一番。
「ん。朝霞クン、あそこ」
「ん?」
「なんか具合悪そうな人がいる」
「ホントだな。一応1人じゃないっぽいけど、大丈夫かな」
俺たちからは少し離れたところのテントに、若い男の子2人組が入って来た。1人はちょっと体がしんどそう。もう1人の子はツラそうにしてる子を介抱しているという感じ。休めそうな場所を見つけて避難してきたのかな。それを見かけるなり、朝霞クンはその子たちの方に行ってしまったから、俺も後を追う。
「あの、大丈夫ですか。連れの方、具合悪そうですけど」
「何かさっきから、しんどそうにしてて。気持ち悪かったり、ちょっとボーっとするって言ってて」
「意識はありそうですか?」
「それは大丈夫です」
「熱中症だと思いますけど、くれぐれも無理のないよう。これ、経口補水液なので、良ければ飲ませてあげてください。それから、これ。凍ってるんで、首とか、太腿とか、そういうトコを冷やしてあげて、しばらく安静に」
「ありがとうございます。ほらシノ、大丈夫か」
「あざます……」
「涼しいところで休むのがベストですけど、大丈夫ですか」
「俺たち、このステージを見に来てるので。でも、よっぽどしんどそうなら無理せず帰ります。ありがとうございました」
朝霞クンは、軽い熱中症か何かでだるそうにしている子に経口補水液と凍ったパウチ状のアクエリをあげてしまった。元はつばちゃんたちへの差し入れとして持って来た物だけど、困ってる人を放っておけなかったのかもしれない。
「朝霞クン、いいの? つばちゃんたちへの差し入れ」
「そもそもアイツらなら熱中症対策くらいしてるだろ。彩人にも帽子は買え、1年同士で周知しろって口が酸っぱくなるほど言ってきたんだ。熱中症は初動が大事っつーのは俺も去年思い知らされたからな」
「そ~うで~すネ。ホント朝霞クンて当時はムチャばっかしてたよね」
「今から思えばな。でも、わざわざこのステージを見に来るとか、アイツら、もしかしてインターフェイス関係者か?」
「それか、放送部に友達がいるのかもね」
俺たちが最初に陣取ったテントの下で、観客側からステージを望む。やっぱりちょっと変な感じはする。だけど、俺がここに立った3年分のステージは記憶にちゃんと残ってるし、それを書いた鬼のようなプロデューサーとも、親友という立場でここに来られたことに時間の経過を感じる。
「さ、ステージ前に時間取らせるのも難だし、つばちゃんたちに挨拶して来よ?」
「ちょっと待て。俺、何だかんだラップサラダ食えてない」
「あ~、はいはい。それじゃあ待ってるけど~、なる早でね~」
end.
++++
部活を引退して第三者となった洋朝が丸の池ステージを見に来た様子。この2人はばっちり夏の屋外対策をしています。
なんかどっかで見たようなコンビが来てたみたいだけど、片割れは体調を崩した様子。この辺からちょこちょここういう感じになるのかしらね
なる早で飯食えっていうのも朝霞Pにとっては何気にムチャ振りよね。ゆっくり食べるの知ってるはずのやまよなんだけどね
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「わ~、すごいね~。何か、自分が立たない丸の池ステージって、感慨深いな~」
「そうだな」
今日は、朝霞クンと一緒に丸の池公園にやってきた。その目的は、もちろん放送部の丸の池ステージの観覧。去年までは俺たちが実際に立っていたそのステージを、今日は普通に一般の人として見に来たんだ。何か、新鮮だよね~。
つばちゃん率いる戸田班を目当てには来てるんだけど、戸田班だけじゃなくて他の子たちがどんなことをやるのかも気になる。だから俺と朝霞クンは2、3時間はここにいることを前提にした準備をして来てるし、熱中症対策はもちろん万全。
「つばちゃんたちって1時からだっけ?」
「ああ。そのように聞いてる」
「それじゃあ、ランチでも食べながら待ってようか~」
夏の丸の池公園にはちょこちょこ移動販売車とか屋台とかがあって、小腹を満たすのには造作ないんだよね。俺と朝霞クンもさっき公園の入り口のところにいた移動販売車でラップサンドを買って来てるから、きっと今年も立ってるだろうテントの下で食べようかなって。
ステージの前には、毎年放送部でテントを何張りか立てている。暑い中公園に来た人が、この影で座って休憩していくついでにステージを見てもらえればっていう考え方だね。でもこれは実際座っちゃうな。木陰もベンチも最高だし。休んじゃうわ。
「でも、この空気、好きだな~」
「ああ。やっぱり俺たちの原点はここだな。だけど、去年の今頃は、こうやってお前と第三者としてステージを見に来るなんて想像もしてなかった」
「だよね~。って言うか朝霞クン、現役の時は1年先の事なんて考えられなかったじゃない。精々1ヶ月先、2ヶ月先にある作品提出かステージかって感じで」
「山口、戸田達への差し入れはいつ渡す?」
「あっ、そうだね~。今が11時45分だし、とりあえずご飯の後でいいかな? いくら朝霞クンでも15分もあればこれくらい食べるよね?」
つばちゃんたちへの差し入れは、どれだけあっても嬉しいスポーツドリンク。一応アイソトニックとかハイポトニックとか、目的別に買って来てあるんだけど、そんなことを気にするのは俺たちくらいかな? ペットボトルのと、凍らせたパウチ状のと。
あと、もしもはない方がいいんだけど、ひょっとするとあるかもしれないまさかのために経口補水液。使わなかったとしても、あるだけでちょっとは気持ちが変わって来るはず。ステージの資本は体だし、戸田班に限らず誰もケガなく病気なく終わるのが一番。
「ん。朝霞クン、あそこ」
「ん?」
「なんか具合悪そうな人がいる」
「ホントだな。一応1人じゃないっぽいけど、大丈夫かな」
俺たちからは少し離れたところのテントに、若い男の子2人組が入って来た。1人はちょっと体がしんどそう。もう1人の子はツラそうにしてる子を介抱しているという感じ。休めそうな場所を見つけて避難してきたのかな。それを見かけるなり、朝霞クンはその子たちの方に行ってしまったから、俺も後を追う。
「あの、大丈夫ですか。連れの方、具合悪そうですけど」
「何かさっきから、しんどそうにしてて。気持ち悪かったり、ちょっとボーっとするって言ってて」
「意識はありそうですか?」
「それは大丈夫です」
「熱中症だと思いますけど、くれぐれも無理のないよう。これ、経口補水液なので、良ければ飲ませてあげてください。それから、これ。凍ってるんで、首とか、太腿とか、そういうトコを冷やしてあげて、しばらく安静に」
「ありがとうございます。ほらシノ、大丈夫か」
「あざます……」
「涼しいところで休むのがベストですけど、大丈夫ですか」
「俺たち、このステージを見に来てるので。でも、よっぽどしんどそうなら無理せず帰ります。ありがとうございました」
朝霞クンは、軽い熱中症か何かでだるそうにしている子に経口補水液と凍ったパウチ状のアクエリをあげてしまった。元はつばちゃんたちへの差し入れとして持って来た物だけど、困ってる人を放っておけなかったのかもしれない。
「朝霞クン、いいの? つばちゃんたちへの差し入れ」
「そもそもアイツらなら熱中症対策くらいしてるだろ。彩人にも帽子は買え、1年同士で周知しろって口が酸っぱくなるほど言ってきたんだ。熱中症は初動が大事っつーのは俺も去年思い知らされたからな」
「そ~うで~すネ。ホント朝霞クンて当時はムチャばっかしてたよね」
「今から思えばな。でも、わざわざこのステージを見に来るとか、アイツら、もしかしてインターフェイス関係者か?」
「それか、放送部に友達がいるのかもね」
俺たちが最初に陣取ったテントの下で、観客側からステージを望む。やっぱりちょっと変な感じはする。だけど、俺がここに立った3年分のステージは記憶にちゃんと残ってるし、それを書いた鬼のようなプロデューサーとも、親友という立場でここに来られたことに時間の経過を感じる。
「さ、ステージ前に時間取らせるのも難だし、つばちゃんたちに挨拶して来よ?」
「ちょっと待て。俺、何だかんだラップサラダ食えてない」
「あ~、はいはい。それじゃあ待ってるけど~、なる早でね~」
end.
++++
部活を引退して第三者となった洋朝が丸の池ステージを見に来た様子。この2人はばっちり夏の屋外対策をしています。
なんかどっかで見たようなコンビが来てたみたいだけど、片割れは体調を崩した様子。この辺からちょこちょここういう感じになるのかしらね
なる早で飯食えっていうのも朝霞Pにとっては何気にムチャ振りよね。ゆっくり食べるの知ってるはずのやまよなんだけどね
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