2020(02)
■スケジュール転覆計画
++++
「ギルティ! ハルちゃんおかわり!」
「あずさ、あんまり飲み過ぎないの」
「だって! あんまりだもん! うわ~ん、天はあたしに味方しない!」
ベティさんのお店、プチ・メゾンに先客として来ていたあずさは、とにかく荒れていた。それを見た私とリンは、何があったとそっと彼女の隣へ。こうまで荒れるということは、ロイの関係で何かあったと考えるのがいいのだろうけど……。
だけど、あずさとロイの関係は、良くも悪くも付き合う前と後でさほど変わらない。本当に恋愛関係にあるのかと疑われるくらいには変化がない。今更「ギルティ!」とグラスをテーブルに叩きつけるようなことになるとも思えない。
「福井ちゃんもリンちゃんも、あずさがゴメンなさいね。ちー、あずさにお水」
「はーい」
「いえ……あずさ、どうしたんですか…?」
「今度の水曜日がカオルちゃんの誕生日らしいのよ」
「おめでたい……」
「だけどね。映研の作品制作会議っていうのがそこに入ってきたのよ。終わるまで帰れませんっていうタイプの会議らしくて」
「うわーん! 会議なんか、出たくないいいい!」
あずさは映研の作品制作会議というのに参加しなければならないそうなのだけど、終わるまで帰れない会議をテスト期間中にやるというのもまず驚き。あずさはほとんどテストがないそうだからそれ自体はさほど問題ではないそうなのだけど。
何が都合が悪いのかと言えば、やっぱりテッペンを回ることの多い会議とロイの誕生日が重なってしまったこと。しかも、ロイは映研関係の行事に関しては揚々としてあずさを送り出す。自分を二の次にしてあずさとあずさの作品を応援しているから。
「しかも……しかも……何が最も有罪かって言ったら…!」
「言ったら…?」
「山口洋平! また出た! あたしが会議だからって、朝霞クン29日はフリーですよ~って、山口クンとの予定入れちゃって! 彼女と過ごせなくて残念だね~じゃないんですよ! だからって、だからって丸1日遊ぶ!? ひどない!? 当てつけ!?」
どうやら、29日の予定はアニによって押さえられてしまったようで、ロイはアニと1日を過ごすことになっているとか。6月のアニの誕生日にはロイが丸1日かけてアニを祝ったそうだから、そのお返しのつもりなのかもしれない。
さすがのアニも誕生日には彼女と~と思っていたそう。だけど、彼女に予定が出来て寂しく誕生日を過ごすことになった親友を慰めてあげるよという感覚でやっているとも考えられる。でも、あずさにとってはアニが最大のライバルだから……。
アニの誕生日、ロイはリン監修の西海ドライブコースで彼をエスコートしていた。その中で立ち寄った丼屋で、たまたまリンはロイたちと鉢合わせて少し話していたそう。話の内容はアニの紹介やロイの性癖改善恋愛セミナー。
それによれば、親友に落ち着くまでのアニがロイに見せる執心が、尋常ではなかったと。依存とも言えそう。今では明るく健全な親友だと本人たちは言うけど、話を聞いているとあずさよりもよほど付き合っているような雰囲気やデート内容をしていたと。
「付き合って2ヶ月ですよ!? デートはするけど大体映画か古本屋! それはそれで楽しいけど、付き合ってないときとひとつも変わらないんですよぉ~ハルちゃぁ~ん。手も繋いでない~」
「カオルちゃんのペースに任せてたら、そりゃそうよね。肉体的なオーガズムより精神的なカタルシスに比重があるみたいだし」
「はっ。あたしが強引に引っ張れと」
「そうね。大体、付き合ったのだってアンタが強引に行ったからでしょう?」
「そうです」
「恋愛のムードなんか朝霞に期待する物じゃないからね、あずさ。それらしい付き合いがしたいなら、自分がやらなきゃ。部活のこともデートのことも、朝霞なりにあずさを思ってやってることだけど、そうじゃないって示さなきゃ一生気付かないからね」
「うう~っ……今日もちーはキレッキレだ~。具体的な行動指針をください~……」
「手を繋ぎたいなら自分から。そう言えば、ハグは?」
「それはケーキ修行のお礼で。あと添い寝もあたしが頼み込んで1回」
「聞いてる感じだと、あずさのお願いは聞いてくれるみたいだし、ちゃんと話し合うか強引に引っ張ることをお勧めするよ。何にせよ、朝霞は書き物中心に世界が回ってるからね。あずさの物書き以外のニーズには気付かないから。ちゃんと言うこと。誕生日がダメなら別の日はどうとか」
「はい先生!」
この様子を見ていると、確かに大石君は先生という感じがする。大石君はロイとの大喧嘩を経て彼に対しては歯に衣着せぬ痛烈な物言いをするようになったそう。だけど、あずさの恋愛にとってはそれがかなり功を奏している。
大石君は周りを気遣いすぎると言うか、遠慮しすぎるところがある。だけども実際は育った環境もあってかなり現実的な物の考え方をする人。遠慮がなくなると、こうも物の言い方が変わるものかと感心さえする。
「ひとまず、朝霞クンの予定を押さえるところからですね!」
「伏見、このオレ様がひとつ助言をしてやろう。朝霞だが、31日と2日の夜はすでにスケジュールが埋まっている。それから、3日からの週で2社ほど就活の面接があって、それがない日のどこかでゲーム大会に参加する。丸一日押さえたいなら6か7がいいだろう。それ以降は帰省も絡む」
「リンさん! 詳細!」
「……どうしてロイのスケジュールを、リンが…?」
「……まあ、いろいろあってな」
end.
++++
リン様がPさんのスケジュールを何となく把握してるのはUSDXのメンバーかつMZKメンツだからだよ~、USDX世代の実質同期だからね
というワケでふしみんが荒れております。ここぞというときには必ずやまよが出てくるんですよこれが……不思議だね!
ちーちゃんは朝霞Pに対して遠慮も何もなくなったので、最適なアドバイスをしてあげられるね! やったね!
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「ギルティ! ハルちゃんおかわり!」
「あずさ、あんまり飲み過ぎないの」
「だって! あんまりだもん! うわ~ん、天はあたしに味方しない!」
ベティさんのお店、プチ・メゾンに先客として来ていたあずさは、とにかく荒れていた。それを見た私とリンは、何があったとそっと彼女の隣へ。こうまで荒れるということは、ロイの関係で何かあったと考えるのがいいのだろうけど……。
だけど、あずさとロイの関係は、良くも悪くも付き合う前と後でさほど変わらない。本当に恋愛関係にあるのかと疑われるくらいには変化がない。今更「ギルティ!」とグラスをテーブルに叩きつけるようなことになるとも思えない。
「福井ちゃんもリンちゃんも、あずさがゴメンなさいね。ちー、あずさにお水」
「はーい」
「いえ……あずさ、どうしたんですか…?」
「今度の水曜日がカオルちゃんの誕生日らしいのよ」
「おめでたい……」
「だけどね。映研の作品制作会議っていうのがそこに入ってきたのよ。終わるまで帰れませんっていうタイプの会議らしくて」
「うわーん! 会議なんか、出たくないいいい!」
あずさは映研の作品制作会議というのに参加しなければならないそうなのだけど、終わるまで帰れない会議をテスト期間中にやるというのもまず驚き。あずさはほとんどテストがないそうだからそれ自体はさほど問題ではないそうなのだけど。
何が都合が悪いのかと言えば、やっぱりテッペンを回ることの多い会議とロイの誕生日が重なってしまったこと。しかも、ロイは映研関係の行事に関しては揚々としてあずさを送り出す。自分を二の次にしてあずさとあずさの作品を応援しているから。
「しかも……しかも……何が最も有罪かって言ったら…!」
「言ったら…?」
「山口洋平! また出た! あたしが会議だからって、朝霞クン29日はフリーですよ~って、山口クンとの予定入れちゃって! 彼女と過ごせなくて残念だね~じゃないんですよ! だからって、だからって丸1日遊ぶ!? ひどない!? 当てつけ!?」
どうやら、29日の予定はアニによって押さえられてしまったようで、ロイはアニと1日を過ごすことになっているとか。6月のアニの誕生日にはロイが丸1日かけてアニを祝ったそうだから、そのお返しのつもりなのかもしれない。
さすがのアニも誕生日には彼女と~と思っていたそう。だけど、彼女に予定が出来て寂しく誕生日を過ごすことになった親友を慰めてあげるよという感覚でやっているとも考えられる。でも、あずさにとってはアニが最大のライバルだから……。
アニの誕生日、ロイはリン監修の西海ドライブコースで彼をエスコートしていた。その中で立ち寄った丼屋で、たまたまリンはロイたちと鉢合わせて少し話していたそう。話の内容はアニの紹介やロイの性癖改善恋愛セミナー。
それによれば、親友に落ち着くまでのアニがロイに見せる執心が、尋常ではなかったと。依存とも言えそう。今では明るく健全な親友だと本人たちは言うけど、話を聞いているとあずさよりもよほど付き合っているような雰囲気やデート内容をしていたと。
「付き合って2ヶ月ですよ!? デートはするけど大体映画か古本屋! それはそれで楽しいけど、付き合ってないときとひとつも変わらないんですよぉ~ハルちゃぁ~ん。手も繋いでない~」
「カオルちゃんのペースに任せてたら、そりゃそうよね。肉体的なオーガズムより精神的なカタルシスに比重があるみたいだし」
「はっ。あたしが強引に引っ張れと」
「そうね。大体、付き合ったのだってアンタが強引に行ったからでしょう?」
「そうです」
「恋愛のムードなんか朝霞に期待する物じゃないからね、あずさ。それらしい付き合いがしたいなら、自分がやらなきゃ。部活のこともデートのことも、朝霞なりにあずさを思ってやってることだけど、そうじゃないって示さなきゃ一生気付かないからね」
「うう~っ……今日もちーはキレッキレだ~。具体的な行動指針をください~……」
「手を繋ぎたいなら自分から。そう言えば、ハグは?」
「それはケーキ修行のお礼で。あと添い寝もあたしが頼み込んで1回」
「聞いてる感じだと、あずさのお願いは聞いてくれるみたいだし、ちゃんと話し合うか強引に引っ張ることをお勧めするよ。何にせよ、朝霞は書き物中心に世界が回ってるからね。あずさの物書き以外のニーズには気付かないから。ちゃんと言うこと。誕生日がダメなら別の日はどうとか」
「はい先生!」
この様子を見ていると、確かに大石君は先生という感じがする。大石君はロイとの大喧嘩を経て彼に対しては歯に衣着せぬ痛烈な物言いをするようになったそう。だけど、あずさの恋愛にとってはそれがかなり功を奏している。
大石君は周りを気遣いすぎると言うか、遠慮しすぎるところがある。だけども実際は育った環境もあってかなり現実的な物の考え方をする人。遠慮がなくなると、こうも物の言い方が変わるものかと感心さえする。
「ひとまず、朝霞クンの予定を押さえるところからですね!」
「伏見、このオレ様がひとつ助言をしてやろう。朝霞だが、31日と2日の夜はすでにスケジュールが埋まっている。それから、3日からの週で2社ほど就活の面接があって、それがない日のどこかでゲーム大会に参加する。丸一日押さえたいなら6か7がいいだろう。それ以降は帰省も絡む」
「リンさん! 詳細!」
「……どうしてロイのスケジュールを、リンが…?」
「……まあ、いろいろあってな」
end.
++++
リン様がPさんのスケジュールを何となく把握してるのはUSDXのメンバーかつMZKメンツだからだよ~、USDX世代の実質同期だからね
というワケでふしみんが荒れております。ここぞというときには必ずやまよが出てくるんですよこれが……不思議だね!
ちーちゃんは朝霞Pに対して遠慮も何もなくなったので、最適なアドバイスをしてあげられるね! やったね!
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