2020(02)
■目に見える関係の名前
++++
「陸さん、浮かれてますねえ」
「そりゃね。浮かれるよね」
彩人との打ち合わせから明けて土曜日。今日は玲那とデートだ。一応昨日の時点で玲那には彩人との一部始終を報告してあって、その件に関してはその時点でおめでとうと祝福をしてもらえた。玲那は短期間でこの恋愛形式に馴染み過ぎじゃないかと思う。
「でも、まだ付き合ってないって何?」
「向こうの都合だね。星ヶ丘は8月の頭にステージイベントがあるんだけど、それが終わるまで待っててって」
「それに集中したいみたいなこと?」
「そう。今やるべきことが何かちゃんとわかってて、そこに目掛けて動けるところもいいなって思う」
「ホント、陸はよかった探しをさせたら終わらないね」
玲那に言わせれば、俺はそのよかった探しがエスカレートして恋愛に変換されやすいんじゃないか、みたいなことらしい。この人こういうトコいいな、好き! みたいな。でもそんな単純じゃない……はず。いいところがいっぱいあるからと言って恋愛と結びつくとは限らないし。
「でも、そう簡単にいかないとはわかってるよ。俺は玲那と付き合ってる。だけどさらに彩人とも付き合うとなると。大体の人は1対1の恋愛がスタンダードだし」
「仮に私がいなかったとして、その、彩人? 彼と付き合ってることは公に出来る?」
「……どうだろう。微妙。俺は全然いいけど、相手のこともあるし。今では同性愛の認知度も上がってるだろうけど、だからと言って。うーん、難しい」
「ゴメン、意地の悪い質問をした」
「ううん、これは真剣に考えなきゃいけないことだから。浮かれてるだけだったしむしろお礼を言わないと」
俺は大分前からこういう性の在り方を自覚して、そういう風にやってきたからともかく、これまでは異性と1対1の恋愛をするのが普通だと思っていたであろう玲那と彩人を俺の恋愛の仕方に引きずり込んだ以上は、一定以上の責任も出て来るかなとは。
当事者全員の同意は得ている。だけど、2人以上と付き合っていると公にするのとはまた違う。3人が良くても周りが良しとしないというのは十二分に有り得ることで。しかも彩人とは同性間の付き合いになるワケだし。
「私をカモフラージュにしてもいいよ」
「カモフラージュっていう言い方は好きじゃないな。利用してるみたいで。俺は玲那の事も好きだよ」
「ありがとう。私も好き」
玲那とは付き合って1ヶ月。大学で顔を合わせるから、日数以上に一緒にいる感じがする。彩人とは出会って1ヶ月弱。本当にたまにしか会えなくて、だけどその1回の密度が高いと言うか、濃いような気がする。これから、どういう形になって行くだろう。
「そう言えば、彩人って物凄いイケメンなんだってね。サキが言ってた」
「実際凄くカッコいいけど、サキが言ってたってちょっと意外だな」
「こないだ、学食でみんなと話してる時に。シノに無理矢理挨拶させられてって」
「ああ、初心者講習会でな。シノの奴、あんなんだから未だに彩人から「ササキトリオのうるさいシノ」で認知されてんだ」
「実際そうだと思うけど。ササキトリオのうるさいシノ。合ってる合ってる」
「シノは確かにうるさいけど、それだけじゃなくてアイツにはアイツのいいところがあって」
「知ってる。だから陸はシノの相棒やってる。保護者って呼ばれるのは好きじゃないってこともね」
「ありがとう」
「大丈夫。私はちゃんとわかってる。大学祭のラジオも何だかんだシノが私たちを引っ張ってくれる。……たまに、軌道修正は必要になるだろうけど」
「アイツは俺たち6人の中じゃ一番力強く前に進める奴だと思ってる。1人で突き進むんじゃなくて、全員を引っ張れるのはアイツだって俺は信じてるし。……たまに、暴走はするけど」
そのウルサイとか暴走しがちっていうイメージのおかげでシノが問題児扱いされてるんだろうなとは思う。だけど、既に完成されてる奴よりちょっと問題児扱いされてる奴の方が面白いし化ける気もする。型を破ってくれるのもシノみたいな奴だと思うし。
「ササキトリオと言えば、彩人が「サキ君と話してみたい」って言ってたんだよな」
「え、サキ? 何で?」
「どうしてかはわかんないけど何か気になって仕方ないって」
「ちなみに、サキはササキトリオの何のサキ君なの?」
「今のところ大人しいサキ君だな」
「合ってる。陸は何のササ?」
「俺はクールなササ」
「クールね。もう彩人の中でそのイメージも更新されてるでしょ?」
「多分ね。そうだ、ステージが終わったら彼女紹介してとも言われたから、その時はよろしく」
「うん、わかった。私も気になってたし、会いたいな」
複数間恋愛でパートナー同士が顔見知りになるパターンはまああるんだけど、それでどうなるかっていうのは当人たち次第だからある意味賭け。良好な関係になってくれれば嬉しいし。険悪な関係になってしまえば悲しいし。パートナー同士……この場合玲那と彩人が愛し合うパターンもあるっちゃあるので。
「あー……1週間が遠い」
「テスト受けてればすぐだよ」
「テストかー……シノは大丈夫かな」
end.
++++
ササの中では自分はシノのお世話役とか保護者じゃなくて相棒という感覚なんだそうだ。いいね。
多分ササもクールに見られがちなだけで実際はそんなでもないんだろうけど、テンションが上がってても上がってるように見えないからこその印象なんだろうなあ
サキと彩人が言葉少なに空気だけで交流してる様子もやってみたいけど、それは合宿でとか合宿以降とかになるのかなあ。それともササ経由での実現がワンチャン?
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「陸さん、浮かれてますねえ」
「そりゃね。浮かれるよね」
彩人との打ち合わせから明けて土曜日。今日は玲那とデートだ。一応昨日の時点で玲那には彩人との一部始終を報告してあって、その件に関してはその時点でおめでとうと祝福をしてもらえた。玲那は短期間でこの恋愛形式に馴染み過ぎじゃないかと思う。
「でも、まだ付き合ってないって何?」
「向こうの都合だね。星ヶ丘は8月の頭にステージイベントがあるんだけど、それが終わるまで待っててって」
「それに集中したいみたいなこと?」
「そう。今やるべきことが何かちゃんとわかってて、そこに目掛けて動けるところもいいなって思う」
「ホント、陸はよかった探しをさせたら終わらないね」
玲那に言わせれば、俺はそのよかった探しがエスカレートして恋愛に変換されやすいんじゃないか、みたいなことらしい。この人こういうトコいいな、好き! みたいな。でもそんな単純じゃない……はず。いいところがいっぱいあるからと言って恋愛と結びつくとは限らないし。
「でも、そう簡単にいかないとはわかってるよ。俺は玲那と付き合ってる。だけどさらに彩人とも付き合うとなると。大体の人は1対1の恋愛がスタンダードだし」
「仮に私がいなかったとして、その、彩人? 彼と付き合ってることは公に出来る?」
「……どうだろう。微妙。俺は全然いいけど、相手のこともあるし。今では同性愛の認知度も上がってるだろうけど、だからと言って。うーん、難しい」
「ゴメン、意地の悪い質問をした」
「ううん、これは真剣に考えなきゃいけないことだから。浮かれてるだけだったしむしろお礼を言わないと」
俺は大分前からこういう性の在り方を自覚して、そういう風にやってきたからともかく、これまでは異性と1対1の恋愛をするのが普通だと思っていたであろう玲那と彩人を俺の恋愛の仕方に引きずり込んだ以上は、一定以上の責任も出て来るかなとは。
当事者全員の同意は得ている。だけど、2人以上と付き合っていると公にするのとはまた違う。3人が良くても周りが良しとしないというのは十二分に有り得ることで。しかも彩人とは同性間の付き合いになるワケだし。
「私をカモフラージュにしてもいいよ」
「カモフラージュっていう言い方は好きじゃないな。利用してるみたいで。俺は玲那の事も好きだよ」
「ありがとう。私も好き」
玲那とは付き合って1ヶ月。大学で顔を合わせるから、日数以上に一緒にいる感じがする。彩人とは出会って1ヶ月弱。本当にたまにしか会えなくて、だけどその1回の密度が高いと言うか、濃いような気がする。これから、どういう形になって行くだろう。
「そう言えば、彩人って物凄いイケメンなんだってね。サキが言ってた」
「実際凄くカッコいいけど、サキが言ってたってちょっと意外だな」
「こないだ、学食でみんなと話してる時に。シノに無理矢理挨拶させられてって」
「ああ、初心者講習会でな。シノの奴、あんなんだから未だに彩人から「ササキトリオのうるさいシノ」で認知されてんだ」
「実際そうだと思うけど。ササキトリオのうるさいシノ。合ってる合ってる」
「シノは確かにうるさいけど、それだけじゃなくてアイツにはアイツのいいところがあって」
「知ってる。だから陸はシノの相棒やってる。保護者って呼ばれるのは好きじゃないってこともね」
「ありがとう」
「大丈夫。私はちゃんとわかってる。大学祭のラジオも何だかんだシノが私たちを引っ張ってくれる。……たまに、軌道修正は必要になるだろうけど」
「アイツは俺たち6人の中じゃ一番力強く前に進める奴だと思ってる。1人で突き進むんじゃなくて、全員を引っ張れるのはアイツだって俺は信じてるし。……たまに、暴走はするけど」
そのウルサイとか暴走しがちっていうイメージのおかげでシノが問題児扱いされてるんだろうなとは思う。だけど、既に完成されてる奴よりちょっと問題児扱いされてる奴の方が面白いし化ける気もする。型を破ってくれるのもシノみたいな奴だと思うし。
「ササキトリオと言えば、彩人が「サキ君と話してみたい」って言ってたんだよな」
「え、サキ? 何で?」
「どうしてかはわかんないけど何か気になって仕方ないって」
「ちなみに、サキはササキトリオの何のサキ君なの?」
「今のところ大人しいサキ君だな」
「合ってる。陸は何のササ?」
「俺はクールなササ」
「クールね。もう彩人の中でそのイメージも更新されてるでしょ?」
「多分ね。そうだ、ステージが終わったら彼女紹介してとも言われたから、その時はよろしく」
「うん、わかった。私も気になってたし、会いたいな」
複数間恋愛でパートナー同士が顔見知りになるパターンはまああるんだけど、それでどうなるかっていうのは当人たち次第だからある意味賭け。良好な関係になってくれれば嬉しいし。険悪な関係になってしまえば悲しいし。パートナー同士……この場合玲那と彩人が愛し合うパターンもあるっちゃあるので。
「あー……1週間が遠い」
「テスト受けてればすぐだよ」
「テストかー……シノは大丈夫かな」
end.
++++
ササの中では自分はシノのお世話役とか保護者じゃなくて相棒という感覚なんだそうだ。いいね。
多分ササもクールに見られがちなだけで実際はそんなでもないんだろうけど、テンションが上がってても上がってるように見えないからこその印象なんだろうなあ
サキと彩人が言葉少なに空気だけで交流してる様子もやってみたいけど、それは合宿でとか合宿以降とかになるのかなあ。それともササ経由での実現がワンチャン?
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