2020(02)
■キマジメ
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「はー…! 難しい! 台本用意しちゃダメなの難しい! 手元見ないでどーやって番組やるの!?」
「えっ、違う違う! ネタ帳はガンガン使ってけって。喋ることを一言一句書くのはよくないってことで、単語とか一文レベルにしとけってことだったと思う!」
「あっ、メモしていいんだ! はー、びっくりしたぁー。でも、台本読まずに喋る自信が……ううん! 私はグレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズ、やれて当然!」
夏合宿の打ち合わせがちょこちょこ進んでて、テスト期間とか星ヶ丘のステージとか、それが終われば盆休みとかで何気に日がない。俺は星ヶ丘のくららこと海月とペアを組むことになって、少ない時間を縫いながら今日はペア打ち合わせをしている。
班の方針としては、基礎的なことをちゃんとやってるなら多少のアソビは許すとエージ先輩の宣言があった。でも先輩が想像以上に厳しくて、それぞれ自分のやりたいことを好きなように主張していた1年生たちはちょっとビビった模様。俺も含めて。
ただ、エージ先輩は厳しいだけじゃなくてこれをどうしたら良くなるとかいう風に教えてくれるし、俺のやりたい構成についてもガチな相談に乗ってくれて頼れるっちゃ頼れるんだ。高木先輩がやってるみたいなカッコいい構成をやりたいけど、俺にはまだ技術が足りない。
俺はくららをリードしてくれっていう風に言われてるけど、くららが苦戦しているのはステージとラジオの違いの部分らしかった。ステージのアナウンサーはラジオのそれとは結構違うらしくって。台本とネタ帳の関係にしてもそうだ。
「つか、前から気になってたけど、そのグレイトフルナントカって、何?」
「グレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズね」
「長っ」
「私は水鈴ちゃんに憧れて星ヶ丘の放送部に入ったんだよ」
「あ、イブスタのリポーターの?」
「そう、岡島水鈴ちゃん! 水鈴ちゃんみたくキラキラになりたくて、放送部でMCやってみようと思って。目標は高くないと上にいけないし」
「それじゃあくららも将来はタレントとかになんのか?」
「うーん、それは考えてないかな。明るくハキハキ人と話せるようになりたいなと思ってるだけだから」
くららはビッグマウスで自信家っていうイメージがある。だけど、明るくハキハキ人と話せるようになりたいという目標のささやかさが普段の態度とのギャップみたいな物を感じさせる。十分臆せず人と話してるじゃねーかってツッコミたい気持ちだ。
「ちょっとさ、聞いてよシノ」
「ああうん、何?」
「今度あるステージなんだけどね。普通、1年生は先輩の動きを見るのが仕事みたいな感じでちょろっとしたことだけしてればいいみたいな感じらしいの」
「最初だからみたいなことで?」
「そう。だけど、戸田班は1年生3人もガツガツ動かなきゃ班が回らなくって。それは全然いいの! 私たちはそれを求めて来てる選ばれし3人だから! だけど、彩人にはマリンさんがいるし、みちるには戸田さんっていうパートの先輩がいる。でも、私には誰もいなくって。マリンさんもアナ兼業だけど、本業はプロデューサーだし。いきなりメインMCとして1時間ずつ2日間のステージを回すの、本当は物凄く不安で、台本読んでるのに声詰まりそうだし、噛んじゃうし。1日1日近付く度に緊張でしんどくって。ううーっ……」
多分、俺が抱いてたイメージのほとんどがただの先入観だったんだな。くららがデカいことを言うのは俺や雨竜みたいな派手好きだからとかじゃなくて、自分を鼓舞するためなんだなって。多分星ヶ丘でも見せてない素顔のくららは、本人が言うよりも大分シャイで謙虚だ。わかば先輩に近いタイプなのかもしれない。
「なあくらら、ラジオの事は、星ヶ丘のステージが終わってからにしよう。今日はもうやめにしようぜ」
「え、何で? 私何かダメだった?」
「ダメじゃない。お前が頑張ってるから、敢えてやめるんだ。しばらくラジオの事は忘れろ! 今はステージに集中して、それが終わったら戻って来い! それまでに俺ももっと勉強する。お前のわかんないトコとか詰まったトコをサポート出来るようになっとくし、ちょっと時間くれ」
「シノ、ありがと。ステージも頑張るし、ラジオもちゃんとやるから」
「いいか、同時にやろうとすんな?」
相方にしばらく準備をやめさせたっていう俺の判断を、エージ先輩はどう見るかな。怒られるかな。ま、言わなきゃバレないか。ラジオ一本に集中出来る俺が頑張るためのペア編成なんだろうから、打ち合わせのことも含めてのリードでいいはずだ! そうだ、そうに違いない!
「あ、そうだシノ。私がシノにいろいろ愚痴ったの、誰にも言わないでよ」
「だーいじょうぶだって、言わない言わない」
「絶対だよ! シノって凄いうるさいんでしょ!? その弾みでポロッと言うとか」
「ちょっと待て、うるさいって何だうるさいって!」
「ウチでは緑ヶ丘ササキトリオのうるさいシノだって」
「あ~……それお前、彩人が言ってんだろ。アイツに言っといて、うるせーだけじゃないトコ見せてやるからビビってチビるなって」
end.
++++
案外いいコンビになるんじゃないかと思ってやってみたシノくら。2年生とか3年生になる頃にはどうなってるでしょう
海月が結構頑張ってグレミューのキャラをやっているというのは星ヶ丘でのお話でも既にやってますが、ステージ前にはその重圧をひしひしと感じている様子。
そんな相方の姿にシノはこれからどうしていくのか! とりあえず自分も改めてラジオについての勉強を始めるみたいですが…?
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「はー…! 難しい! 台本用意しちゃダメなの難しい! 手元見ないでどーやって番組やるの!?」
「えっ、違う違う! ネタ帳はガンガン使ってけって。喋ることを一言一句書くのはよくないってことで、単語とか一文レベルにしとけってことだったと思う!」
「あっ、メモしていいんだ! はー、びっくりしたぁー。でも、台本読まずに喋る自信が……ううん! 私はグレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズ、やれて当然!」
夏合宿の打ち合わせがちょこちょこ進んでて、テスト期間とか星ヶ丘のステージとか、それが終われば盆休みとかで何気に日がない。俺は星ヶ丘のくららこと海月とペアを組むことになって、少ない時間を縫いながら今日はペア打ち合わせをしている。
班の方針としては、基礎的なことをちゃんとやってるなら多少のアソビは許すとエージ先輩の宣言があった。でも先輩が想像以上に厳しくて、それぞれ自分のやりたいことを好きなように主張していた1年生たちはちょっとビビった模様。俺も含めて。
ただ、エージ先輩は厳しいだけじゃなくてこれをどうしたら良くなるとかいう風に教えてくれるし、俺のやりたい構成についてもガチな相談に乗ってくれて頼れるっちゃ頼れるんだ。高木先輩がやってるみたいなカッコいい構成をやりたいけど、俺にはまだ技術が足りない。
俺はくららをリードしてくれっていう風に言われてるけど、くららが苦戦しているのはステージとラジオの違いの部分らしかった。ステージのアナウンサーはラジオのそれとは結構違うらしくって。台本とネタ帳の関係にしてもそうだ。
「つか、前から気になってたけど、そのグレイトフルナントカって、何?」
「グレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズね」
「長っ」
「私は水鈴ちゃんに憧れて星ヶ丘の放送部に入ったんだよ」
「あ、イブスタのリポーターの?」
「そう、岡島水鈴ちゃん! 水鈴ちゃんみたくキラキラになりたくて、放送部でMCやってみようと思って。目標は高くないと上にいけないし」
「それじゃあくららも将来はタレントとかになんのか?」
「うーん、それは考えてないかな。明るくハキハキ人と話せるようになりたいなと思ってるだけだから」
くららはビッグマウスで自信家っていうイメージがある。だけど、明るくハキハキ人と話せるようになりたいという目標のささやかさが普段の態度とのギャップみたいな物を感じさせる。十分臆せず人と話してるじゃねーかってツッコミたい気持ちだ。
「ちょっとさ、聞いてよシノ」
「ああうん、何?」
「今度あるステージなんだけどね。普通、1年生は先輩の動きを見るのが仕事みたいな感じでちょろっとしたことだけしてればいいみたいな感じらしいの」
「最初だからみたいなことで?」
「そう。だけど、戸田班は1年生3人もガツガツ動かなきゃ班が回らなくって。それは全然いいの! 私たちはそれを求めて来てる選ばれし3人だから! だけど、彩人にはマリンさんがいるし、みちるには戸田さんっていうパートの先輩がいる。でも、私には誰もいなくって。マリンさんもアナ兼業だけど、本業はプロデューサーだし。いきなりメインMCとして1時間ずつ2日間のステージを回すの、本当は物凄く不安で、台本読んでるのに声詰まりそうだし、噛んじゃうし。1日1日近付く度に緊張でしんどくって。ううーっ……」
多分、俺が抱いてたイメージのほとんどがただの先入観だったんだな。くららがデカいことを言うのは俺や雨竜みたいな派手好きだからとかじゃなくて、自分を鼓舞するためなんだなって。多分星ヶ丘でも見せてない素顔のくららは、本人が言うよりも大分シャイで謙虚だ。わかば先輩に近いタイプなのかもしれない。
「なあくらら、ラジオの事は、星ヶ丘のステージが終わってからにしよう。今日はもうやめにしようぜ」
「え、何で? 私何かダメだった?」
「ダメじゃない。お前が頑張ってるから、敢えてやめるんだ。しばらくラジオの事は忘れろ! 今はステージに集中して、それが終わったら戻って来い! それまでに俺ももっと勉強する。お前のわかんないトコとか詰まったトコをサポート出来るようになっとくし、ちょっと時間くれ」
「シノ、ありがと。ステージも頑張るし、ラジオもちゃんとやるから」
「いいか、同時にやろうとすんな?」
相方にしばらく準備をやめさせたっていう俺の判断を、エージ先輩はどう見るかな。怒られるかな。ま、言わなきゃバレないか。ラジオ一本に集中出来る俺が頑張るためのペア編成なんだろうから、打ち合わせのことも含めてのリードでいいはずだ! そうだ、そうに違いない!
「あ、そうだシノ。私がシノにいろいろ愚痴ったの、誰にも言わないでよ」
「だーいじょうぶだって、言わない言わない」
「絶対だよ! シノって凄いうるさいんでしょ!? その弾みでポロッと言うとか」
「ちょっと待て、うるさいって何だうるさいって!」
「ウチでは緑ヶ丘ササキトリオのうるさいシノだって」
「あ~……それお前、彩人が言ってんだろ。アイツに言っといて、うるせーだけじゃないトコ見せてやるからビビってチビるなって」
end.
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案外いいコンビになるんじゃないかと思ってやってみたシノくら。2年生とか3年生になる頃にはどうなってるでしょう
海月が結構頑張ってグレミューのキャラをやっているというのは星ヶ丘でのお話でも既にやってますが、ステージ前にはその重圧をひしひしと感じている様子。
そんな相方の姿にシノはこれからどうしていくのか! とりあえず自分も改めてラジオについての勉強を始めるみたいですが…?
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